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烏丸の「くるくる回転図書館 駅前店」

 
今後、新しい私評は、
  烏丸の「くるくる回転図書館 公園通り分館」
にてアップすることにしました。

ひまじんネットには大変お世話になりましたし、
楽しませていただきました。
その機能も昨今のブログに劣るとは思わないのですが、
残念なことに新しい書き込みがなされると、
古い書き込みのURLが少しずつずれていってしまいます。
最近も、せっかく見知らぬ方がコミック評にリンクを張っていただいたのに、
しばらくしてそれがずれてしまうということが起こってしまいました。

こちらはこのまま置いておきます。
よろしかったら新しいブログでまたお会いしましょう。
 

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2001-09-19 独身者の機械 その三 ルイス・キャロルの言葉遊び
2001-09-14 [考察] アメリカ同時多発テロ事件によせて - 2
2001-09-12 [考察] アメリカ同時多発テロ事件によせて
2001-09-10 独身者の機械 そのニ 『少女アリス』 沢渡 朔 / 河出書房新社
2001-09-09 独身者の機械 その一 『謎の怪奇現象を追う 科学を超えた世にも不思議な事件ファイル』 北岡 敬 / 河出書房新社 KAWADE夢文庫
2001-09-05 [回顧] ホームランバッターについて
2001-09-03 [紹介] 『プロ野球不滅のヒーローたち 豪打列伝』ほか 文春文庫ビジュアル版
2001-09-01 使用権フリー短編集? 『天狗の落し文』 筒井康隆 / 新潮社
2001-08-31 ピッチングの真髄をアンダースローに読む 『野球花伝書VOL2 山田久志 投げる』 矢島裕紀彦 / 小学館文庫
2001-08-29 [異説] 野球こそ個人主義な球技である


2001-09-19 独身者の機械 その三 ルイス・キャロルの言葉遊び


【木(TREE)から森(WOOD)を得よ】

 Googleなど,インターネットの検索エンジンで「聖書」「次いで」「世界」「読まれる」といったキーワードで検索を実行してみると,聖書に次いで世界で最もよく読まれている本は,たとえばドイルのシャーロック・ホームズ譚であったり,アラビアン・ナイトであったり,グリム童話であったりすることがわかる。けっこういい加減だ。コーランは候補にあがっていない。聖書に次いでコーラン,では剣呑にすぎるためだろう。
 『不思議の国のアリス』は,そんな,聖書に次いで世界で二番目によく読まれている書物の1冊である。

 というわけで,テロ事件についての考察から一転,再びルイス・キャロルの話に戻ろう。
 ずいぶん極端な,と思う方もおられるかもしれないが,実は頭の中ではそんなに離れた場所にあるわけではない。
 たとえば,こういうことだ。
 今回,ハイジャックされた旅客機は,2機が世界貿易センタービルへ,1機が国防総省へ,残る1機は墜落した。いずれも訓練されたテロリストが自ら操縦したものだという。自爆テロである。
 信じられない,と我々は簡単に口にするが,その我々の父親,あるいは祖父の世代,ほんの50数年前にカミカゼアタック,特攻を敢行したのは日本であって……という方向に話を進めるのが今日の目的ではない。少しだけ文章を巻き戻そう,自爆テロは信じられない,オーケイ,その通りだ。
 では,我々,ないし我々の周辺の者が,ときに舞い上がって(もしくは追い詰められて)口にする,「死んでも離さない」「死んでも許さない」「死んでも守る」,これらの言葉は一体何なのだろうか。
 ただの形容詞,ただの嘘八百,ただの勘違い,もちろんそれはそうなのだけれど,それを口にするほうも耳にするほうもかぁっと舞い上がるのなら,それはリアルとは別の次元で言葉が勝手に躍動するということではないか。言葉は本来リアルな事象と1対1,いわばリアルの影であったはずなのに,どこかで突然リアルな事象以上にリアルなものとして機能してしまうのではないだろうか。

 ルイス・キャロルが少女たちをこよなく愛し,コスチュームプレイ,あるいはヌード写真を撮影し,詩や物語を捧げ,やがて少女たちが大人の兆候を呈するやきっぱりと別れを告げた……ということは先にも簡単に紹介した。
 彼が金色の昼下がり,ピクニックのボートの上でアリス・リデルに語った物語をのちにまとめたもの,それが『不思議の国のアリス』だが,一読すれば明らかなように,この物語の面白さ,複雑さは,同じ子供向けロングセラーでも,たとえばグリム童話収録の物語などとはまるで次元が異なる。それは,単に登場人物の設定や置かれた状況,それに対するアクションや結果といったものではなく,それが書かれた言葉,つまり物語を物語る行為そのものの問題なのである。

 『アリス』に限らない。ルイス・キャロルが少女たちに書き送った詩や手紙には,たとえば次のような言葉遊びが含まれている。

○アクロスティック
 「折り句」ともいう。各行の頭の文字に人名や言葉を配置すること。たとえば,詩の各行の最初の1文字を続けて読むと少女のファーストネーム,最後の1文字を続けて読むとセカンドネームになる。

 日本でいえば,在原業平の
  からころも 着つつ馴れにし 妻しあれば はるばる来ぬる 旅をしぞ思ふ
に「かきつばた」が折り込まれている,そんな感じだろうか。

○タブレット
 キャロルが少女たちのために考案した言葉遊びで,ロンドンの女性週刊誌「ヴァニティ・フェア」に懸賞クイズとして掲載されて話題になったもの。ある単語の綴りを1文字ずつ変えて所定の別の単語に到達させる。たとえば,

  お茶を熱くせよ
    TEA
    sea
    set
    sot
    HOT

  涙を微笑みに変えよ
    TEARS
    sears
    stars
    stare
    stale
    stile
    SMILE

 ほかにも「ライオン(LION)から子羊(LAMB)を救え」「うなぎ(EEL)をパイ(PIE)にせよ」「4(FOUR)を5(FIVE)にふやせ」などなど。

○アナグラム
 キャロルの作品には,言葉や文章の文字を並べ替えてほかの言葉に変えるアナグラムが頻繁に登場する。たとえば

  WHERE MABEL?(メイベルはいかが?)
    ↓
  WE BLAME HER.(どうも感心しない)

といった具合。
 ミステリ作家「泡坂妻夫」のペンネームは本名の「厚川昌男」のアナグラムだし,今回のテロ事件の黒幕とも言われるオサマ・ビン・ラディン氏の名前Osama Bin Ladenを並べ替えると「a lebanon midas」(レバノンのミダス王)にして「
abased lion mam」(失墜した獅子)になるのだそうだ。
 本や人の話からの引用ばかりでは説得力に欠けるだろうから,日本語のアナグラムといえばやっぱりアレだよアレ,ということでおなじみ「いろは歌」を1つ即興でひねってみよう。

  アリス お茶会へ
  笑え 猫を
  ほっとけ そんな暇 無駄さ
  見ろよ 夢も 失せて
  不思議の国は 濡れる

 ほかにも,キーワードを利用したアルファベット暗号や,絵文字を組み込んだ手紙(dearの代わりに鹿,Iの代わりに目の絵が書かれる,など),文字で形を描いたアポリネールばりのカリグラフ,ダ・ヴィンチふうの鏡文字など,キャロルの言葉遊びはその執拗さにおいて少々常軌を逸している。まるで文章や単語をアルファベットレベルまで解剖し,切り刻み,手足を入れ替え,陵辱しつくすような……。

 もちろん,ルイス・キャロル,というよりチャールズ・ラトウィジ・ドジソンは,ビクトリア朝期の極めて冷静な常識人であり,少女たちとのお付き合いにはきちんとその両親の了解を得,ヌードを撮影するときにも必ず母親を同伴させている。
 つまり,ナボコフの『ロリータ』のハンバート・ハンバートや埼玉の幼女誘拐殺害事件のM君や最近のレイプビデオ好き手錠教師らと明らかに異なるのは,チャールズ・ラトウィジ・ドジソンは決して少女たちとのリアルなセックスをもくろんだのではなく,そういったリアルな行為の代わりに,言葉遊びや論理のアクロバットがあったのではないか,ということである。

 結論を急ぎすぎている? そうかもしれない。しかし,まだ旅は続く。

先頭 表紙

添付画像は「別冊現代詩手帖第二号 ルイス・キャロル」(思潮社)。表紙に使われた写真は,こじき娘に扮したアリス・リデル,撮影はもちろんルイス・キャロルです。アリスは黒髪なのに注意。本の挿絵が金髪なのは,キャロルが挿絵画家にほかの金髪の少女の写真を渡して,「こんな感じで」と求めたためだそうです。なぜだろう? / 烏丸 ( 2001-09-23 03:35 )
もちろん,タブレットは日本語でも可能で,高橋康也氏は「アタマをシッポに変えよ」,アタマ-アンマ-サンマ-サンポ-シンポ-シッポという例を紹介しています。 / 烏丸 ( 2001-09-20 01:13 )
せっかくですから,もういくつか「ヴァニティ・フェア」に掲載されたという問題を紹介しておきましょう。「盗め(STEAL),コイン(COINS)を」「釣れ(HOOK),魚(FISH)を」「粉(FLOUR)からパン(BREAD)を作れ」「黒(BLACK)を白(WHITE)に変えよ」。難問としては「魔女(WITCH)を妖精(FAIRY)に変身せしめよ」(間に12単語),「冬(WINTER)を夏(SUMMER)にめぐらせ」(間に13単語)というのもあります。 / 烏丸 ( 2001-09-20 01:12 )
「うなぎをパイに」のほうの模範解答にはe'enというの(evenの詩語)が出てきます。e'enはけっこう頻繁に出てきますね。ちとずるい……。 / 烏丸 ( 2001-09-20 01:12 )
「4を5に」の模範解答はFOUR-foul-fool-foot-fort-fore-fire-FIVEだそうです。タブレットでは早く到達するのをよしとするそうですが,逆に,長く回るのも偉い!という気がするんですが。 / 烏丸 ( 2001-09-20 01:11 )
あ、もうひとつ。EEL-sel-SED(Sozialistische Einheitpartei Deutschlands←ちょっとズルかも(笑))-fed-ped-pea-pee-PIE / なんか回り道してるっぽい ( 2001-09-19 19:05 )
ひとつ、できました! FOUR-foul-foil-fail-fall-fell-fill-file-FIVE / うーん クセになりそう。。。 ( 2001-09-19 18:50 )
チュウチュウさま,今ひとつご質問の趣旨がわかりませんが……犯罪とはルール破りのことであり,常に相対的なものですから,「やめられない遊び」だからイコール犯罪である,なんてことはないんじゃないでしょうか。 / 烏丸 ( 2001-09-19 16:30 )
言葉は所詮,生き物だから,捕らえようとしたら逃げるものなのか?遊びでしかないのならやめればいいのにね.やめられない遊びは犯罪でしかないのかなあ.どう思いますか? / チュウチュウ ( 2001-09-19 14:24 )

2001-09-14 [考察] アメリカ同時多発テロ事件によせて - 2

 
 たとえば,大半の方が言葉としてしか記憶していないかもしれない「ユーゴ空爆」は,NATO軍(といいつつ,実質大半が米軍)によって,国連安保理事会の召集も,経済制裁という通常の手口も踏まずに行われ,民間人を多数含む数千人の死者を出した。NATO軍側の死者は,ゼロである(*1)。
 ユーゴスラビアの内紛が捨て置いてよいものだったかどうかは別として,この手続きのすっ飛ばし加減,この数字は国際紛争のあり方としてどう考えても尋常でない。

 いや,それなら,過去のさまざまな紛争へのアメリカの介入は尋常だったのか。正しい情報の収集と公開,戦闘を避けるための最大限の努力を経たものだったのか。
 そもそもそれは,本当にその誰かの平和と独立のためだったのか。

 先のニューヨーク,ワシントンへのテロ攻撃は,数日経ってオサマ・ビン・ラディン氏が関与した,ということにほぼ確定した(らしい)。それは事実なのかもしれない。間接的な証拠は少なからずあるのだろう。しかし,では,なぜ彼らが生命を賭して反米テロに邁進することになったのか,それについて十分納得のいく説明をしてくれた報道はあったか。
 今日の夕刊紙の見出しを見ても「悪魔の軍隊」「狂信的」「テロ支援 悪のネットワーク」……まるで魔女狩りの標語である。よしんば彼らが狂信的なテロ集団だとしても,レッテルを貼る前になぜそのようなテロ集団が登場したかについての歴史を(たかだか数十年程度)さかのぼる必要はないだろうか。

 言うまでもないが,テロは絶対に許されるべきでない。ことに一般市民を巻き込んでの無差別テロは,無法,論外と口にするのもいまいましい。
 しかし,過去の多くの戦争において,勝者は常に敵を「超一級の悪」呼ばわりしてきたこともまた忘れてはいけない。
 大辞林によれば,テロルとは「あらゆる暴力的手段を行使し、またその脅威に訴えることによって、政治的に対立するものを威嚇すること」とある。だとするなら,たとえば冒頭で紹介したNATO軍による空爆は,はたしてテロでなかったと言い切れるのだろうか。

 ジェット機がビルに追突する瞬間や倒壊するビル,逃げ惑う人々,たむけられた花束……これらの目にインパクトの強い報道ももちろん大切だが,アメリカが今回「何をされた」かだけでなく,事件(戦争)に至った過程,正確な経緯を明らかにする努力も大切だ。
 まず,情動に流されず,何が真実かを見極める努力をしたい。簡単に真実が明らかになるなんて甘いことを期待しているつもりはない。正解に見えた答えが狂信に結びつく可能性だってある。だが,テロリストにとってコロンブスの卵と言えるだろう今回の大成功は,今後,さらなるテロルと報復の連鎖を生み続けるに違いない。そんな連鎖は,どこかで断たれねばならない。

 さて,案の定というか,ブッシュ大統領の「報復」宣言に対し,小泉首相の「対米支持」意思表示が英仏独3か国に比べて後手後手に回ったという批判がなされているらしい。判断,意思表示に遅れるのは為政者としては確かに問題だが……。
 かつて「パールハーバー」「カミカゼアタック」を実践したのが日本なら,「戦争を終わらせるため」という名目の元に2度にわたる原爆投下を経験したのもまた日本だ。戦争の矛盾,悲劇を経て平和憲法を掲げる日本には,日本にしかできない平和へのアプローチがあるのではないか。単に「報復」に賛成するだけが同盟国の務めではないように思われるのだが,どうだろう(*2)。

*1……コソボに駐屯する兵士に白血病や癌が多発して話題になった。これはNATO軍が対戦車で大量に使用した劣化ウラン弾のせいではないかという指摘がある。だとすると,それが投下されたイラク,ボスニア,コソボの住民の健康ははたしてどうなっているのか。これが,「人道のため」の「正義の戦争」の実態である。

*2……どうだろう,とカッコつけたところで,簡単に代案が出るなら誰も苦労はしない。とりあえず手元にある情報についてだけでもない知恵絞り,マスコミ報道に流されるのだけは避けたい。

先頭 表紙

フィー子さま,アメリカ軍による報復攻撃がなされた場合,アフガンの難民は100万人を越える可能性もあるそうです。結局,いつものように貧しき者と子供に漂流と飢えと病のしわ寄せがくる。この連鎖を断ち切るには,いったいどうすればよいのでしょうか。今朝の朝日新聞には,坂本龍一の「報復をしない勇気」という言葉もありました。それは,本当の勇気だと個人的には思うのですが。 / 烏丸 ( 2001-09-23 01:19 )
ゆっくり読めるときにとっておこう(笑)と思っていたらこんなに出遅れてしまいました。上手く書けないけどこういうことが言いたかったし、誰かがこう言ってくれないかなあと思っていた文章でした。やはり烏丸様です!テロという手段は言語道断だとしても、<なぜ>という点についてアメリカが考えていないように思えてなりませんでした。何でもそうですが、同時にいろんなレベルで物事を考えていかないと進んでいきませんよね。 / フィー子 ( 2001-09-21 14:45 )
おまけ。「下のつっこみへの返事はもうなさらないでください」って,これがどれほど身勝手な言いようかご理解できませんか。ちょっとあきれてしまいました。 / 烏丸 ( 2001-09-21 12:42 )
もう1点,感情を分離したら是非はどうなのか,ということを想定できないなら,それは一般的に「冷静な判断力を失っている」ということになります。ブルーさまの書き込みだけからでは,アメリカは今,冷静な判断力より感情論を優先して報復を進めようとしている,と読めます。それではテロリストを非難できません。クールダウンのために水をかけている者に対して「冷たい」と言われても,それは当然だろうなと思うばかりです。以上。 / 烏丸 ( 2001-09-21 12:37 )
「意図はわかりました」,これは勘違い,もしくは言葉の使い方が正確ではありません。相手の意図が正確に理解できたとき,人は相手と同じことを主張しなければなりません。それが論理というものです。ちなみに,僕はブルーさまのおっしゃりたいことが何なのかよくわかりません。「犠牲者をもっと思いやるべき」ということ以外,何一つ建設的なことが書かれているようには読めないためです。 / 烏丸 ( 2001-09-21 12:37 )
下のつっこみへの返事はもうなさらないでください。烏丸さまの意図はわかりました。私の考えが分かって頂いたのかどうかは疑問ですが。どちらにせよ、平行線をたどるばかりですから。 / プルー ( 2001-09-21 04:26 )
誤解をしないでほしいのは、烏丸さまのお話は建設的でないとは、言ってません。反米論は十分聞きました。では、テログループのほうはどうでしょう。議論が一方的に反米で、かなり感情も移入されているように見受けました。それから、やっぱりご返事をもらってもこのテロの攻撃で被害に遭った方への何らの感情も感じられません。感情論だけでは、何も進まないでしょう、が人間は感情の動物であり、今アメリカ(とくにNYは)はその感情に支配されていると言ってもいいでしょう。 / プルー ( 2001-09-21 04:20 )
最後に。家族が巻き込まれたり,現場を見たりで変わる理想論なら,それは単にその論が間違っていただけの話です。極端なことを言えば,当時現場にいなかった僕達はナチスの行為やヒロシマ,ナガサキについて語れないのでしょうか? 今回,この同時多発テロ事件について書いた際にずっと心にあったのは,たら子母さまのお知り合いの方の「傍観者に安易に語ってほしくはありません」という言葉です。「安易に」語ってはいけない。しかし,語るべきを語らないのも,許されないことだと思います。 / 烏丸 ( 2001-09-21 02:50 )
ちなみに,個人的な見解としては,ヒューマニティということが問題になるのは事故,犯罪の次元までであって,「戦争」はその範疇にありません。つまり,戦争とは,いかなる名目のもとになされようが,相手国,相手民族のヒューマニティを武力によって抑圧,抹殺せんとする行為です。アメリカは,この10年に限ってみても,テログループを圧倒しようとはしても,戦争を避けようとはしてきませんでした。それを心から残念に思います。 / 烏丸 ( 2001-09-21 02:43 )
4つめについて。Respect,ヒューマニティについて,軽んじるつもりはありません。しかし,イスラム原理主義者たちがここまで反米にこりかたまった原因も,そもそもパレスチナをはじめとするイスラム諸国民へのRespect,ヒューマニティ尊重の欠如ではありませんか。 / 烏丸 ( 2001-09-21 02:43 )
3つめについて。だからといって「今回はやむを得ない」とは申しませんし,テロは許しがたいという点についても本文に書いた通りです。アメリカの過去の行為,とくにイスラエルの建国がさまざまな紛争の根源にある,と主張することと,今回のテロを是とすることはまるで別の話。というより,過去の遺恨をさっと洗い流すいい手なんかあるわけがない,でも報復がベストとも思えないぞ,というのが本文の主旨です。これを建設的でないと言われても困ります。建設的でないのはここにいたった過程なのですから。 / 烏丸 ( 2001-09-21 02:42 )
そして,酷なようですが,犠牲者やその家族を悼む気持ちと,戦略,戦術級の類推をする機能を混ぜこぜにするのは,それはそれで判断においては危険が生ずる可能性もあります。顰蹙を承知で書きますが,今回の,ハイジャックした旅客機を高層ビルに激突させるというのは,実に見事な作戦だと認めざるを得ません。現在,世界中のテロリストがこのバリエーションを考案しているでしょう。しかも彼らは核,原発という切り札をまだ用いていません。亡くなった方々はお気の毒ですが,戦争はまだ始まったばかりかもしれません。 / 烏丸 ( 2001-09-21 02:42 )
2つめについて。僕は個人的,感情的には戦争が大嫌いです。とくにユーゴ空爆のように,高所から自らは安全に爆弾を降らすという行為に対しては憎悪を感じます。しかし,人の感情と知性は同じ色一辺倒ではありません。RespectはRespectとして,ブッシュの打つ手は,タリバンの出方は,ビン・ラディン氏の応戦は,といった戦略,戦術級のことに目を光らせないなら,それはそれで情勢分析について欠けると言わざるを得ません。 / 烏丸 ( 2001-09-21 02:41 )
安全,についてはまたの機会に。アメリカの国民性ですが,アングロサクソンかどうかは関係ありません。この50年間,大統領の首は変われど,ヨソの国の揉め事に再三軍事力を持ち出し,思うようにおさまらないと気がすまないということを執拗に繰り返した,ここに極めて明確な国民性を感じます。植民地主義とはまた別の,保安官シュミ,空母を持った鍋奉行とでも言うのでしょうか。今回もいきなり「報復に賛成80%」,これはアングロサクソン系だけの数字ではありませんよね。 / 烏丸 ( 2001-09-21 02:40 )
各国との交渉ありや,という点ですが,たとえば昨日のインドネシアとの交渉において,経済,軍事力を背景にしたごり押しの要素がゼロなのか,多少あるのか,凄くあるのか,それを分離できない時点ではフェアな交渉であったかどうかはよくわかりません。日本なんか,交渉以前に「旗もってこい」の一言。ま,パワーポリティクスとはもともとそんなもんでしょうが。 / 烏丸 ( 2001-09-21 02:40 )
1つめについて。アメリカはフェアか,ということだと思いますが,まず,なぜビン・ラディン氏に確定でアフガン侵攻なのでしょうか。決意はともかく,納得のいく説明は聞いた記憶がありません(もちろん,ビン・ラディン氏を中心とする国際テロネットワークの仕業なんだろうな,とは僕だってそう思いますよ。でも,今回のテロを正確に察知できなかった情報網の得た資料でこんな短期にそう決めてしまっていいんでしょうか?)。 / 烏丸 ( 2001-09-21 02:40 )
建設的な意見有り難うございます。さらに展開したものをお書きになるのを待っています。皮肉でもなんでもなく、冷静なこの日記は、貴重に読ませて頂きました。 / プルー ( 2001-09-20 22:40 )
私は、戦争推進派でもないし、ブッシュ大統領ばんざいとも思っている訳ではありません。ただ、もしここに突っ込みなどしておられる方も含め、自分や愛すべきものが被害に合い、遺体すら見つけられない状況でもこのような理想論を戦わせている事が出来るのかどうか疑問に思います。 あるいは、被害に遭わなくとも現場を見てみれば、また見方も変わるかもしれません。感情的になるつもりはありませんが、ここでの議論にはヒューマニティが欠けていると感じます。 / プルー ( 2001-09-20 22:10 )
言っておられることが、アメリカが過去にやってきた事を考えれば、今回の事件は自業自得であり、それを報復などと言ってまた、他国の市民をまきこむことは許されない。亡くなられた方には仕方ないが、今回はやむを得ないという事だろうか、とこのように聞こえますが、そうでしょうか? / プルー ( 2001-09-20 21:58 )
烏丸さまの日記は、きわめて、冷静でおられますし、内容そのものにすべて、不愉快になったわけではありませんが、このつっこみを読んでいると、この事件を皆で議論して、楽しんでいるかのようです。それが、いささか、憂うつになった原因です. / プルー ( 2001-09-20 21:55 )
では、アメリカは、各国との交渉無しに、独断、勝手に報復の準備をしているというのでしょうか。 安全なところというのは、日本です。危険性がない、あるの議論はあるでしょうが、少なくとも、同じ事が、東京であるとは考えにくいです。アメリカの国民性という名の一般化は、おおざっぱすぎますね。それは、多分アングロサクソン、を差しておられるのでしょうか。 / プルー ( 2001-09-20 21:45 )
また,安全なところというのがどこのことを指しているのかわかりませんが,この世界には,戦争によって,継続的に安全を脅かされ,それに苦しむ者だっております。私は,私のような者をこの世にこれ以上一人でも増やしたくはないのです。 / 烏丸 ( 2001-09-20 16:30 )
建設的な意見,ということで申し上げれば,烏丸の結論は1つです。一刻も早く報復の準備を停止し,中東和平会議に向けて努力すべきだと思います。別途,国連平和維持軍と米軍との分離,核廃絶,当面の原子力発電所へのテロ防衛に努めるべきでしょう。アメリカの国民性,世界の趨勢から,簡単とは思いませんが,それらを抜きにしてのいかなる軍事行為も,最終的な勝者を生むとは思えません。 / 烏丸 ( 2001-09-20 14:07 )
私が、思うのは、安全なところにいる人々が、簡単に出来る批判という行為より、もっと解決するための建設的な意見を聞きたいということです。 / プルー ( 2001-09-20 06:10 )
何を書いていいのかしばし、呆然とするばかりです。批判は、あって当然ですけど、亡くなった方(あるいは、行方不明の方)達や残された方へのRespectがあってもいいと思います。暇人は、もっと良識のある方々と思っていましたが。。。 でもこれも表現の自由と言えばそうですから、何とも言えません。 / 一気にブルーになってしまった@プルー ( 2001-09-20 06:04 )
とりあえず周辺は平静を取り戻しているようですが,そのビルの業務再開は無理っぽい感じ。便乗愉快犯によるいたずら電話なのかもしれませんが,時節柄,シャレになりませんね。 / 烏丸 ( 2001-09-18 18:08 )
シティバンクに爆弾をしかけた,という電話があったらしく,赤坂のビルから人が避難しています。一時あたりはサイレンの音,ヘリコプターの騒音で騒然としていましたが,現在はやや平穏を取り戻しているようです。 / 烏丸 ( 2001-09-18 15:17 )
ふーっ,この事件のせいではないんでしょうが,ちょっとコンディション崩してしまいました。アンテナは張ったまま,いったん通常の本の紹介に戻ろうと思います(テロや中東関係の本……は,迷ったけど扱うのやめ。ハンパな知識でハンパなこと書いてしまいそうなので)。 / 烏丸 ( 2001-09-17 14:00 )
TAKEさま,そんなふうな「含み」はあるんでしょうか。ブッシュ大統領の顔にありありと浮かぶ「選ばれた恍惚と不安」,でもお父さんより小物な感じが心配。小物がキレるとどこまで突っ走るかわかりませんし。も1つのポイントは,ペンタゴンがやられたこと。世界の戦争史を見渡しても,これはまれに見る事件でしょう。このショックは数十年,トラウマとして影響を残すのではないかなぁ(死者,不明者数−−わかってないわけがない−−を明確にしないのは,よほどの,身悶えるほどの恥辱を感じているせいでは)。 / 烏丸 ( 2001-09-17 13:56 )
いや,ガス欠コインさま,別に日本だけではないと思います。イスラエル,パレスチナの戦闘があれだけ激化し,それを放置しておいて(しかもイスラム原理主義者はずっと以前から反米,宣戦を公言しているわけで),今さら「奇襲」「アンビリーバブル」とびっくりするアメリカも平和ボケではどっこいです。海に囲まれた国(アメリカも,南北はメキシコとカナダですから)の伝統的呑気さでしょうか。 / 烏丸 ( 2001-09-17 13:55 )
↓戦闘の被害者は出ないかもしれませんが、違った怖さがいっぱいですね。。 / TAKE ( 2001-09-17 13:03 )
同時に同盟国の踏み絵も済ませて、灰色諸国を監視。軍事行動は控えめに実行。そんなシナリオだったら現実的で納得が行く気もします。 / TAKE ( 2001-09-16 19:06 )
もしかしたらアメリカ軍、やるぞやるぞ…とブラフかけて、いぶり出し作戦かなあ…とも思ってます。ビン・ラディン氏狙いと見せかけて置いて、実は米国内・欧州の拠点潰しが目的じゃないか…と。例のエシュロン、フル回転でしょうね。。。 / TAKE ( 2001-09-16 18:39 )
コソボには現在、米軍基地が建設中なのではないでしょうか。烏丸さんの熱意には強く賛同します。しかし、今回のテロ事件以降、同盟国でありながら、日本だけが相も変わらず平和ボケの暮らしをしています。さらなる経済危機に加速に繋がることは疑いないのに。僕もとりあえず、*2が精一杯かな。 / ガス欠コイン ( 2001-09-16 02:05 )
出水彩霞さま,今日あたりまではかなりアメリカ寄りだったように思います。ただ,無差別テロを容認することをマスコミに求めるのも無理というものでしょう。今朝の朝日新聞あたりは,かなりフェアな記事もフォローされている印象があります。 / 烏丸 ( 2001-09-15 21:47 )
ただ,第三次世界大戦,という様相になるかどうかはまだわかりません。世界中が戦場になる,ということはないだろうとは思いますが,まんべんなく緊張に包まれる,という可能性はあるかもしれません。 / 烏丸 ( 2001-09-15 21:47 )
Hirokoさま,テロというのは,本質的には,(1)戦争をしかけられた側が相手の最初の戦闘行為,(2)大国が小国と戦闘する場合の相手のゲリラ戦術,のいずれかを指して言うことが多いようです。要するにアメリカは,自国ないし自分の同盟国ないし自分が面倒をみている(みたい)国に対する戦闘を全部テロと呼びます。全部「悪」扱いされるのは,当たり前ですね。 / 烏丸 ( 2001-09-15 21:46 )
TAKEさま,ベトナム戦争のときにもアメリカは混乱していました。当時の映画は,キツいのが多いですね。超大国のエゴが何もかもまかり通って胸張りっぱなしのこの十数年のほうが異常だったのかもしれません。 / 烏丸 ( 2001-09-15 21:46 )
マスコミは中立でも公正でもないですね。 / 出水彩霞 ( 2001-09-15 20:55 )
本当にアメリカが正義の国なのでしょうか。なんだか疑問なのです。いよいよ第三次(大惨事)世界大戦の始まりですか。 / Hiroko ( 2001-09-15 15:53 )
私は「充分な証拠もみつけられないまま、この国へ報復行動に出るとしら、それこそテロ行為だ」といった言葉が脳裏から離れません。 / Hiroko ( 2001-09-15 15:51 )
定住民が遊牧民を追っかけるのって、大昔から困難な戦いですものね。何を最終目標として報復するのか…というのも、もうひとつ不鮮明。いつになく余裕のない雰囲気のアメリカを見ていると不安です。 / TAKE ( 2001-09-15 02:35 )
その「貧民街の札付き不良」が山の中に隠れて,金持ちオヤジ,追いかけられるか。泥沼化しそうだし,ビン・ラディン1人を捕縛あるいは殺害したから片付く問題とも思われないし(このへん,すでに欧米風の意識でことにあたっているような気がしないでも)。 / 烏丸 ( 2001-09-15 01:43 )
いや、これもまたひとつの寄った見方に過ぎないかもしれません。(すみません) / TAKE ( 2001-09-15 01:00 )
…ということで、オイラも烏丸さま同様、今後の不安でいっぱいです。 / TAKE ( 2001-09-15 00:05 )
今回のテロは許せませんが、「金持ちの剣道三段のオヤジ」が多数で集って、「貧民街の札付き不良」を制裁する…みたいな絵もあんまり気持ちのいいものには思えません。はたして。。。 / TAKE ( 2001-09-15 00:03 )
「テロを見て喜ぶパレスチナ民衆」の絵をそのまま受け取る気もありませんが、「持てる者」「持たざる者」の間に深い溝ができているのも事実に思えてなりません。 / TAKE ( 2001-09-14 23:56 )
テロリズム・テロリストそのものは悪と呼んで構わないと思いますが、根底にある「南北問題」に関してなんらかの建設的救済がない限りテロの温床はなくならないのでは…と思います。 / TAKE ( 2001-09-14 23:36 )
akemiさま,毎度毎度エラそうなことばかり申しましてすみません。それにしても子供たちに戦争などについてどう説明するかというのは本当に難しい問題ですよね。いつかヒロシマ,ナガサキについて語ることになると思うのですが,そのときはちと重いぞ,こっちもしんどいがそっちも覚悟しておけよ,などと子供の顔見ては思ったり。 / 烏丸 ( 2001-09-14 21:57 )
子どもたちに、きちんと説明できる大人でいるために(になるために)私も学ばねばなりません。以前、こちらにつっこみをさせていただいたとき「一方からだけ見ていては、本当の歴史はわからない」と教えていただいたことがありました。そのことを思い出しています。 / akemi ( 2001-09-14 21:01 )

2001-09-12 [考察] アメリカ同時多発テロ事件によせて

 
 一般市民を巻き添えにするテロが許しがたい行為であること。
 今回の事件で犠牲になった方々に深く哀悼の意を表すること。
 事件がこれ以上拡散しないこと,世界の恒久的な平和を心から願うこと。


 これらについてはすでに多くの会員の方々も書かれているとおり,いわば自明の理であり,全く,何1つ異論はない。
 ここでは少し別の視点から,2,3指摘しておきたい。


 第一に,今回の事件を「思いがけない」「まるで戦争」と表現するのはどうかという点だ。
 第二次世界大戦後のアメリカ合衆国の外交を俯瞰すると,実は再三にわたってどこかの紛争に加担してきたことがわかる。朝鮮戦争,ベトナム戦争,湾岸戦争などなどなど。この10年間に限ってもイラク,スーダン,アフガニスタン,ユーゴスラビア,要するにひっきりなしにどこかに爆撃を繰り返してきたわけだ。
 これらの多くは国連軍として,あるいはNATOとの合同爆撃で,その都度アメリカ側は「紛争調停」「民族独立」「国際平和」を名目としてきたわけだが,逆に近代以降,「平和」あるいは「民族独立」を旗印としない戦争など存在しない。
 要するに,この50年間に限っても,世界中のあらゆるいざこざに口をはさみ,圧倒的な兵力をもってそれを制圧しようとしてきたのがアメリカという国なのである。
(前もってお断りしておくが,その是非や責任を問いたいわけではない。)
 つまり,アメリカ国民がどう認識していたにせよ,アメリカという国はほとんど常にどこかと紛争状態にあったのであり,アメリカ本土が攻撃を受けなかったのは1に攻撃力,防衛力に差があったこと,2に東西冷戦が世界規模の紛争を抑止する構図があったためである。
 単純な話,アメリカ軍がイラクやユーゴスラビアを空爆した際に報復としてワシントンやニューヨークが空爆されなかったのは,イラクやユーゴ側にそれだけの力がなかったためにすぎない。

 昨日の攻撃に対してアメリカ当局が非常事態宣言を発令し,内外のアメリカ軍が最厳戒態勢に入ったという報道があったが,アメリカが継続的に紛争の当時者であったとみれば当然のことだろう。また,パールハーバー以来の奇襲,という認識もおかしい。奇襲ではない。単に,これまでたまたま戦闘の現場がアメリカの外にあっただけなのだ。

 第二に,宗教のからむ紛争には,第三者の理屈は一切通用しない。
 アメリカは「世界のリーダー」を自称し,他国の紛争において自らの立場を「正義」と公言する。だが,別の宗教,別のイデオロギー上に成り立つ国家,集団にとって,それが同様に「正義」である保証などまるでない。
 中近東,アフガニスタン,東欧等に派兵し,爆撃をした,ということは,少なくとも紛争当事者のどちらか一方にケンカを売った,ということだ。ケンカを売っておいて,相手がいつまでも殴ってこないと思うなら,それはそう期待するほうがおかしい。
 保安官を自認するなら,相手が撃ち返してくること,背後から撃たれる可能性だってあること,そのくらいの想像力は必要だろう。ましてや,相手も常に自分が保安官のつもりなのだ。

 宗教がらみの紛争には,もう1つの大きな問題がある。
 たとえば経済が焦点であるなら,損得の限界点を越えた時点で紛争はゲームセットである。しかし,宗教は現世の利益,いや生存すら超越する。信長が一向宗に手を焼いたのは彼らが死を恐れないためだし,今回の自爆攻撃も退路を想定しないからこそ防ぎがたかったといえる。
 塩野七生が語っているが,外交戦術にたけたヴェネチアが失敗したのは,必ず,相手国が自分たちと同程度に外交を深読みするだろうと勘違いしたときだったという。アメリカの腕力は認めるが,相手のことをどれだけ正確に把握しているかといえば,ときに疑問だ。

 第三に,今後の推移は全くのところ見当がつかないが,日本はアメリカの同盟国である,ということだ。日本側の意識がどうであれ,周囲は連帯保証人のハンコを押した国,とみなす可能性が高い。
 テロ許しがたしという道義的な問題は別として,反米テロが日本国政府あるいは日本国民に向かっても,それはテロリストからみてそれほど筋違いではない。そもそもテロというのは,必ずしもターゲットのダメージを正面から狙うものではない。それは今回,民間機で民間ビルを攻撃した事実からも明らかだろう。

 とりあえず,しばらくは(日本国内においてさえ)何が起こっても驚かない程度の覚悟はしておいたほうがよさそうだ。

 一夜が明け,14時間の時差があるニューヨークは朝を迎えたころだろうか。
 事件がこれ以上広がらず,1人でも多くの方の命が助かることを心から祈りたい。

先頭 表紙

↓「一部の夕刊」「という報道があり」とあいまいな書き方をしてよかった,拘留された11人のうち10人はすでに釈放,1人もナイフなどは確認できず,で無関係だそうです。逆にいえば,各地でアラブ系の人が「テロリストじゃないのか」という目で見られているのでしょうか。 / 烏丸 ( 2001-09-15 01:31 )
peachさま,一部の夕刊に,13日夕にニューヨーク市のケネディ,ラガーディア両空港でナイフを持って旅客機に乗り込もうとして計10人が逮捕された,という報道があります。もし事実なら,攻撃はまだ継続中ということですね。うーん,長期化するのは,いろんな意味でまずい……。現在まで攻撃対象は東海岸に集中しているようですが,どうぞお気をつけて。 / 烏丸 ( 2001-09-14 20:48 )
今回の事件に対して、どの様な対応をして行くのか?表には出ていないだけで既に報復措置?が行なわれているのか?世論を無視する事は出来ないと想うのですが、今後の事が凄く気に掛かります。そして、当事者の方たちの気持や状況を想うと、胸が潰れる思いなのですが。。。争いは避けて欲しい… / peach ( 2001-09-14 15:48 )
烏丸様、お久し振りです。実はこちらに居ながらアメリカ人では無い所為か?アメリカの戦争の仕方には疑問を持っていたのですよ。。。本当に自国では戦わずに、他国へ出掛けて行って戦争しちゃうから、来られた国の被害は甚大ですよね。無理やりにコジ付けて戦争したりするので、当然怨まれてしまう所も出て来る訳ですよ…。民間人の犠牲も来られた方には沢山出ているでしょうし。お父さんブッシュの時には戦争を仕掛けていますよね。 / peach ( 2001-09-14 15:42 )
ブッシュ,「善と悪」「善は勝つ」か……やだやだ。テロが犯罪なのは間違いないことですが,なぜテロが起こったのかに目を向けなければ何も変わりはしません。……ただ,アメリカってのは,善と世界平和のためには原爆の1発や2発落としたっておっけーな(少なくともトラウマは残ってない)国だからなぁ。イスラムを思いやる気にはなれないだろうなぁ。 / 烏丸 ( 2001-09-13 12:06 )
TAKEさま,いえいえ,申し訳なく思っていただく必要はありません,TAKEさまが指摘せずとも,このカラスが腹の中のことを最後まで書かないわけがない……(笑)。ワールドカップが直接メインターゲットになる,とはさすがに思いませんが,テロリストグループが今後「いやがらせ連発」型テロを展開したとき,爆破事件など非常にやりやすいシチュエイションになること,それが心配です。 / 烏丸 ( 2001-09-13 12:05 )
Hirokoさま,はじめまして。テロリストが現実に日本をターゲットとするかどうかはわかりませんが,現在の世界情況は,地雷の上で歩行者天国やってるようなもの,と心のどこかにとめておいてもよいのかもしれません。これはテロに限ったことではなく,たとえば核ミサイルについても同様です。今回の事件は「平和」というカバーがちょっとほころびただけ,と認識しています。ブッシュの「これは戦争だ」には,正直,「お前,今ごろ何言ってるんだ」な気分。ゲームでもやってたつもりだったのか? / 烏丸 ( 2001-09-13 12:04 )
シズカさま,はじめまして。しかし小泉首相はインタビューに応えて「テロを黙ってみすごすわけにはいかない,国際社会が許さない。断固たる措置をとる。ブッシュ大統領を支持する。必要な援助と協力を惜しまない」等と語っています。同盟国としては正当な姿勢ですね。というより,アメリカと長年同盟を保ってきたというのは,正しくそういうことだったのです。……しかも,フジテレビ,この小泉発言にノンストップで「日本は何をできるか。まず法律から考えないと」ときたもんだ。さすがフジサンケイグループ。 / 烏丸 ( 2001-09-13 12:04 )
烏丸さま、僕もつっこもうかどうか迷ったのですが、烏丸さまの勇気に便乗するカタチになってしまって申し訳ありません。「南」の国も多数参加するワールドカップ、そこまで無差別に敵を増やすようなことは考えないのではないか…と思っていたいのですが。。。 / TAKE ( 2001-09-13 01:51 )
>シズカさん。でも小泉首相はアメリカ側につく、というような意見を出されてます。これってテロを起こす側には充分に攻撃対象になりえるものだと思いますが・・・。 / Hiroko ( 2001-09-13 01:48 )
烏丸さま。はじめてお邪魔します。とーってもわかりやすく、簡潔にまとめてあったのでスゴイと思いました。自分でもなんとな〜く、そんな理由付けとか考えてたんですけど、うまく頭の中でまとめられなくて・・・。そう、日本は今危険な状況なのです。なのに自覚のない人が異常に少ない気がして、危惧しています。 / Hiroko ( 2001-09-13 01:45 )
日本は米国の同盟国であることなど引きずってはいけないと思います。世界がそう見なし、ターゲットとされるのは、在る意味ずるずると同盟国の名に甘んじてきた日本の責任とも言えると思います。しかし、同盟国の名の下に参戦に踏み切るのは許されない。いざとなればそんなものは断ち切って、断固不戦の態度をとるべきです。それは日本一国を守るためというのではなく、ひとつの国でも参戦しないことが平和への意思表示だと思うから。 / シズカ(はじめまして ( 2001-09-13 01:38 )
ガス欠コインさま,本書き込みをアップすべきかどうかは,非常に迷いました。とくにアメリカ在住の方々,今回犠牲になった,あるいは連絡のとれない方のご家族,お知り合いの皆様に,およそ愉快な内容とは言いがたいものですし。しかし,今なすべきことは,歴史的背景を含めていったい何が起こっているのかを見定めることだと思います。安直な「嘆き」,安直な「報復」は何も生み出しません。 / 烏丸 ( 2001-09-13 01:18 )
国家,宗教,政治などは常に流動的,相対的で,腕力・経済力が簡単に真実の表と裏を塗り替えます。パレスチナ地方に2000年前ユダヤ王国があった,という歴史がイスラエルの正当性だというなら,南北アメリカ,オーストラリアはほんの数百年前まで先住民のものだったことを思い起こすべきじゃないの,などと考えたりもします(せめて,アメリカインディアンに変わるちゃんとした誇りある名称を。アメリゴ・ベスプッチの名前の一部と「インド人と勘違いしちゃったよ」ではあんまりだ)。 / 烏丸 ( 2001-09-13 01:12 )
……もし自分がアメリカ(の威信への)攻撃を計画するなら,貿易センタービルを陽動作戦とし,原子力発電所をメインターゲットとします。メルトダウンまでいかなくとも,近隣で爆破事件を起こしてみせるだけで効果的でしょう。 / 烏丸 ( 2001-09-13 01:12 )
八百八六助さま,烏丸が上の本文で書かなかった,もう1点についても書いておきましょうか。実は,昨夜のニュースでハイジャックされた可能性がある機体が11機と聞いて少なからずほっとしました。テログループの今回の目的が世界貿易センタービル,ペンタゴンなどへのハイジャック機自爆テロで(準備期間など考えると)ほぼ全部と想像されたからです。 / 烏丸 ( 2001-09-13 01:11 )
アラブテロによる球場へのアタックについては,『羊たちの沈黙』『ハンニバル』のトマス・ハリスのデビュー長編『ブラック・サンデー』(新潮文庫)が詳細です。アメリカではこの映画,上映禁止らしいですね。 / 烏丸 ( 2001-09-13 01:10 )
うーん,TAKEさま,「思い切って書いた」つもりの烏丸が,それでも迷ったあげくに書かなかったことを……。そうです,来年のワールドカップが。フーリガン対策だけで不安視されているのに,対テロの経験のない日本に海外から人が押し寄せる……混乱に乗じるのは絶好のチャンスというか。心配です。 / 烏丸 ( 2001-09-13 01:10 )
覚悟はできても準備はできない。それが、今の日本の現状だと思います。おっしゃっていることは、大変良く理解しますが。 / ガス欠コイン ( 2001-09-13 01:10 )
ぷよんさま,先ほどブッシュ大統領は「これは戦争だ」と明言しました。犠牲者の方だけでなく,世界の平和に対して喪章をつけたい気分です。 / 烏丸 ( 2001-09-13 01:10 )
↓一方の側を非難するつもりで書いたわけではありません.考えがどうしてもまとまらないのです.気分を害された方には前もってお詫びします. / 八百八六助 ( 2001-09-13 00:13 )
TAKEさんも書かれているとおり,横浜線に乗りながら来年のワールドカップ,新横浜あたり危ないなと思ってました.テロは憎むべきものでしょうが,この件についてはどう考えて良いのかまだ結論出ません.2000年前のとある1人の行動が,今までこんなに混乱を引き起こすとはどうしても腑に落ちないのです.きっと結論は出ないでしょう.被害が広がらないことのみお祈りします. / 八百八六助 ( 2001-09-13 00:09 )
考えたくないコトですが、来年のワールドカップも怖いです。 / TAKE ( 2001-09-12 22:55 )
弱いところ狙いになれば、テロに対して脆弱なわが国が(ご指摘通り)狙われることも可能性がある気がしています。警備し難い長い海岸線、集積度の高い都市構造、なにかあると非常に怖いなあ、と感じています。 / TAKE ( 2001-09-12 22:36 )
危惧されるのは、過去は大使館や軍施設などの公的施設を狙ったテロが多かった記憶があるのですが、今後、無差別テロへ向かうのでは…という点でしょうか。ご指摘の通り、より「弱いトコロ狙い」になっていくのが怖いです。 / TAKE ( 2001-09-12 22:33 )
おっしゃられる通り、過去、アメリカ本土はサンクチュアリ。キューバ危機もありましたし、過去にもテロはありましたがここまでの直接的な被害を受けたのは今回が初なのではなかったのでしょうか。アメリカのショックの大きさも分かる気がします。 / TAKE ( 2001-09-12 22:30 )
はじめまして。この件に関しては、なかなか文章がまとまらなくて、あえて日記としては書きませんでした・・・。ただ、烏丸さまのご意見、すごくよくわかります。私も同じ事が頭をよぎりました・・・。だからこそ標的にされたというわけで・・・。ホント、今後が怖いです。いや、怖いなんていっちゃいけないんでしょうけど・・・。うまくまとまらなくてすみません。 / ぷよん ( 2001-09-12 22:17 )

2001-09-10 独身者の機械 そのニ 『少女アリス』 沢渡 朔 / 河出書房新社


【あなたにも,チェルシー】

 というわけで話題がたとえばミリオン出版『リトル・プリテンダー』,石川洋司のソフィー,清岡純子のプチ・トマト,SCORPIONSのVIRGIN KILLERジャケ写……と続けば,一部の方々にはさぞや喜んでいただけるのだろうが,あいにくロリータヌード写真集について書くほどの知識もストックもない。ソフィーは新書サイズのを購入した覚えがあるな,とか,せいぜいそんな程度。

 そもそも,1980年頃に全盛を誇ったロリータヌード写真集の大半は,所持することが剣呑なわりにはどうも焦点が定まらず,楽しくない。もともとは剣持加津夫あたりがヌード写真の可能性を拡大しようと始めたものらしいが,のちに性器が無修正で見られると舞い上がった買い手によってブームに,が実情だったのではないか。要するに,ヘアさえ写っていれば○○や**の裸でも喜ぶかこのオヤジ,と似たり寄ったり。
 もちろん,買い手には真性の幼女フェチも含まれていたのだろうが,このロリータコンプレックスとか幼女嗜好とかいうものの正体がはっきりしない。「大人の女ではもう全然ダメ」なのか「小さくて可愛いのがタマラナイ」程度なのか,そのあたりが判然としないし,ロリコンという言葉のもととなったウラジミール・ナボコフの『ロリータ』を読み返しても,主人公ハンバート・ハンバートは当のロリータと再三セックスを営み,妊娠さえさせてしまう。幼女というよりたまたま年齢の低いマノン・レスコーといった感じだし,ハンバート・ハンバートにも病的な印象は希薄である。
 ましてやここ数年のいくつかの事件のように,単に大人の女性とコミュニケートできない,社会性に未成熟ないし欠損があるとしか思えない輩が自分より弱い相手として少女,幼女を弄ぶ,というのにいたっては最低かつ論外である。

 露出度を競い,法令改正とともに消えていったロリータヌード写真集群の中で,他と一線を画す『少女アリス』は,写真家の沢渡朔がイギリスで出会った8歳のモデル,サマンサをフューチャーし,『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』に重ねた幻想的な世界を展開したもの。ヌード写真は数葉にすぎず(現行の法令下ではそれでも十分問題になりそうだが),全体としては「アリス」へのオマージュ,工芸品の色合いが強い。
 サマンサ=アリスが日本で最初に公開されたのは,1973年10月の西武百貨店「不思議の国のアリス」キャンペーン。週刊ポスト誌(1973年47号)がそれを受けて巻末グラビアに写真を掲載した。
 同年12月に河出書房新社から発行された写真集には滝口修造と谷川俊太郎が詩を贈り,ルイス・キャロルの断章や手紙を高橋康也が訳し,帯には種村季弘が献辞を添えている。
 さらには青土社「ユリイカ」誌がサマンサを表紙に登用し,ことに1974年7月臨時増刊「オカルティズム」はその内容とあいまって独特の雰囲気を醸し出した。
(のちにサマンサは日本のお菓子のテレビCMにも登場した。「あなたにも,チェルシー」というのがそれである。)

 要するにサマンサは,1970年代のある時期(それはたまたま何度目かのシュルレアリスムブーム,ルイス・キャロルブームと期を一にしていたのだが),この国のシュルレアリストや文学的オカルトファンの間で由緒正しき彼らの「アリス」として扱われたのである。それはつまり,彼らがビクトリア朝期の一数学者の残した作品を,単なる子供向けの童話でなく,自らと同じベクトル,同じ臭いを発する装置として捉えていたことの証しにほかならない。

 では,ルイス・キャロルが彼らを引き寄せた要素とは,いったい何だったのだろうか。

先頭 表紙

沢渡朔は最初から「アリス」を求めて渡英し,モデルオーディションでプロ意識が強いと推薦されたサマンサを選んだそうです。どうしても少女ヌードという路線で語られることの多いこの写真集ですが,「少女でポルノを撮った」のではなく「少女のもつ根源的なポルノグラフィック性」を暴いた,というほうが近いような……って,結局うだうだと「うらやましがらせ」を重ねているだけ? / ああそのじと目が…か・い・か・ん…(笑) ( 2001-09-11 17:51 )
うらやましがらせてるだけ? ハイ、ええもうひじょーに羨ましゅうございます・・・(じと目)。サービス・ショットのご紹介ありがとうございます。ズルズル(よだれ音)。これで8歳とは、さすが白人女性。足の線なんてほぼ大人、お尻から太ももにかけては特に。上半身と下半身のギャップに惹かれますね。妖精と人間を合体させたみたい。コスプレ意欲をそそられる気持ち、わかるような。 / 美奈子 ( 2001-09-10 22:25 )
短いスペースで舌足らずに言うと、話がどんどん逸れて行きそうなんで止めます(^^; お騒がせして済みませんでした / まやひこ ( 2001-09-10 22:12 )
いや,だから……困りましたね(笑),「世紀末ロンドン」→「退廃的」みたいなのを検証なしに持ち出しても,あんまり意味ないとは思われませんか? あの時代の都市の闇なんて,その後の時代から見れば十分に牧歌的だと思いますよ。もしあの時代にも牧歌的でない闇があったのだとしたら,それはその時代に限った闇ではないのではありませんか。 / 烏丸 ( 2001-09-10 18:20 )
済みません。私にとってのビクトリア期の勝手なイメージは、世紀末ロンドンなんです。本来のビクトリア期とは、大きくずれていますね。 / まやひこ ( 2001-09-10 17:42 )
ルイス・キャロルのアリスも沢渡朔のアリスも,田園,庭園を舞台に描かれています(単に物理的な場所,というだけではなく)。そこにエロティシズムが現れているとしても,少なくとも「都市の暗闇に住む魔物の跋扈した時代」とかはあまり関係なく,むしろ(状況や環境などに左右されない)ギリシア神話に近いものと考えますが。なお,細かいことですが,ビクトリア期を「産業革命以来の都市文化のピークというか爛熟期」と表現するのはどうでしょうか。 / 烏丸 ( 2001-09-10 14:34 )
はい,フィー子さま,このシリーズは本やマンガをいくつか取り上げつつ,もう少し続きます。この『少女アリス』みたいに入手の難しい本をいかに避けるかが思案のしどころ,頭痛のタネ,コースターの裏に書かれたスペードの2だったりするのであります(謎)。 / 烏丸 ( 2001-09-10 14:04 )
言葉足らずなので補足します。ビクトリア期というのは、産業革命以来の都市文化のピークというか爛熟期です。森の中ではなく、都市の暗闇に住む魔物の跋扈した時代と言うイメージが、私にはあるのです。そういう意味でのエロティズムとご理解下さい。<余計わかりにくいかな? / まやひこ ( 2001-09-10 13:59 )
何だったのだろうか、って続きはあるんでしょうかー?!き、気になる・・・。 / フィー子 ( 2001-09-10 13:37 )
う〜ん、建前としては確かにそうですね。でも、表面が立派なときほど裏がぐちゃぐちゃというのは、古今東西変わりませんしね〜。 / まやひこ ( 2001-09-10 13:20 )
うらやましがらせるだけではアレなので,ちょっとだけサービス。『少女アリス』の姿はこちらで1枚だけ見ることができます。 / 烏丸 ( 2001-09-10 12:34 )
ちなみに,本そのものに「滝口」とあるのでそう転載しましたが,「澁澤龍彦」を「渋沢竜彦」と書くようで実にキモチワルイ。やはり「瀧口修造」は「瀧口修造」でなくてはと思われる今日このごろ。 / 烏丸 ( 2001-09-10 12:30 )
美奈子さま,古本屋でも入手はかなり困難な状況なのではないかと。ロリータヌード写真集はいまや世界的に一種の「禁書」ですが,図書館での閲覧はどうなのでしょうね。ちなみに,着衣ならいいかといえば,3月ウサギのパーティでサマンサが煙草を手に男たちの真ん中でテーブルに横たわるなど,なかなかデカダン。 / 烏丸@うらやましがらせてるだけ? ( 2001-09-10 12:14 )
まやひこさま,ビクトリア朝といえば英国国教会の全盛期みたいなもんですから,裏はともかく表向きはエロについてはがちがちの石部金吉(世紀末には切り裂きジャックなんかも現れたようですが)。アリスにエロティシズムを読むなら,ビクトリア期「らしからぬ」と言ったほうが妥当なのではないでしょか? / 烏丸 ( 2001-09-10 12:13 )
うわ・・・その写真集に関わったメンバー、むちゃくちゃ豪華ですね!ぜひ手にとってみたいものですが・・・今となっては図書館か古本屋に通うしかないのでしょうか。 / 美奈子 ( 2001-09-10 06:51 )
確かに『アリス』には怪しいエロティズムを感じますね。ビクトリア朝という時代そのものの持つ、雰囲気だったのかもしれません。 / まやひこ ( 2001-09-10 03:00 )
本文中の「法令」とは,1999年11月1日に施行された「児童買春・児童ポルノ禁止法施行」。 / 烏丸 ( 2001-09-10 02:43 )

2001-09-09 独身者の機械 その一 『謎の怪奇現象を追う 科学を超えた世にも不思議な事件ファイル』 北岡 敬 / 河出書房新社 KAWADE夢文庫


【ロリコンヌードとコスプレの大先輩の話】

 赤坂の小さな書店の地下に向かう階段には,この夏ささやかなホラー文庫コーナーが設けられた。心霊体験,霊の世界,呪いと怪奇……聞いたことのないライターが書き散らしたような,稲川本が権威に見えるような,いかにものB級本ばかりだ。
 夏の初めからずっと気になっていた1冊があった。
 新刊というわけでもない,本の作り,タイトルからしていかにもチープで,ぱらぱら開いた限りでもとくに必要とは思えない気配だった……が,7月,8月,そして9月とその書店に足を向けるたびにその本は存在を主張し,手に取って,レジに運んで,と購入をせがむのだった。

 その誘惑に抗しがたく,結局購入してしまったのだが,電車の片道で読み終えてしまいそうなその内容は他愛ないと指摘するも虚しい,根拠の怪しい伝聞情報ばかりだ。3冊挙げられた参考資料の1冊がリーダーズダイジェスト社の『世界不思議物語』というだけでご想像いただけるのではないか。
 たとえば,こんな具合。
・1950年10月,ロンドンのディスコで突然19歳の女性が炎を噴き出して燃え上がった
・北大西洋,激しい嵐が吹き荒れる中,定期客船シティ・オブ・リマリック号の乗客のもとに自宅にいるはずの妻が訪れた(年代不明)
・アボリジニーの間では,死の歌を歌いながら人間かカンガルーの骨を敵に向けて指すと,見えない矢で人を殺すことができると伝えられている
・1889年,万国博覧会に沸くパリで,病気で倒れた母親の薬を取りに病院に向かった娘が戻ってみると母親の姿はなく,ホテルの支配人も医者もそんな女性は最初からいなかったと言った
・1945年,チャールズ・ウォルトンという老人が熊手で首を刺されて殺されたが,これはおそらくイギリスで行われた最後の魔術の儀式による犠牲と思われた
などといった2,3ページの記載が全79話。オーストリア皇太子が暗殺時に乗っていた呪われたオープンカー,ケネディ暗殺の予言など,有名な史実にかかわる話もある。いずれも怖くもなんともない,眉唾もいいところで,たとえば1845年,ロシアのリボニアで女教師が同時に二箇所に存在したという話で,その証人は「決して嘘を言ったりすることはない」「しごくまじめな生徒たち」なのだが,その女教師の名前も不詳,「マダム・ザーゲ」と呼ばれていたが結婚していたのかどうかもわからない。従兄妹の友達にでも聞いたのか?

 話を戻そう。
 では,なぜそんな本が気になったのか。
 表紙の怪しい少女の顔の由来を知っていたからだ。

 この本のどこにも表紙の少女について触れていないが(カバーイラスト担当者がどこかからコピーしてきて黙って使ったのだろう),この写真の少女の名はモード・コンスタンス・マルベリー。
 元の全身像写真の中で彼女は幼い胸をさらし,裸足の両足をこちらに投げ出している。インターネット上で公開したら少々物議をかもしそうな幼女ヌード写真だ。
 撮影者は幼い少女たちを愛し,ともにピクニックに出かけ,手紙を書き,詩を送り,少女が大人に近づくと決然と別れを告げる。
 彼が撮影した少女たちの写真は多数残っているが,それらの写真の中で少女たちのある者は憂いをふくんだ目で遠くを見やり,ある者は赤頭巾や中国娘や「聖ジョージと竜」に扮し,ある者は裸体をさらして撮影者をじっと見つめている。

 撮影者は牧師の家に生まれオクスフォードに数学を教え,家中に温度計を吊るして均一な温度が保たれるように暖炉の火を調節した。
 その撮影者の名はチャールズ・ラトウィジ・ドジソン,またの名をルイス・キャロル。

先頭 表紙

ドジソンは妙なところの多々ある人物だったようですが,「そのシュミ」と常人としての境目については非常にきちんと区別していたように思われます。本当の本当のことはわかりませんが,「アリス」を読んで喜んだ女王に数学の本を送るというのは,一見「らしい」ように見えて実はどうも「らしくない」逸話のようにも思われます。 / 烏丸 ( 2001-09-09 23:33 )
ご免なさい、エリザベスは現在の女王でしたね。出来すぎた話とは思ったけれど、そんな裏がありましたか(笑) / まやひこ ( 2001-09-09 09:20 )
まやひこさま,「もっとほかの本も読みたい」とご所望のビクトリア女王のもとに大量の数学の本が届けられた……豆知識本などでよく出てくる逸話ではありますが,ドジソン本人に「そんな事実はない」と否定されているもようですよ。 / 烏丸 ( 2001-09-09 03:21 )
アリスの作者でしたか。そう言えば、幼い頃のエリザベス女王だったと思うけど、アリスを読んで、この作者の他の本を読みたいと言ったら、数学の本が届けられたという逸話があるそうです。数学者なんですよね、この人……。 / まやひこ ( 2001-09-09 02:03 )

2001-09-05 [回顧] ホームランバッターについて

 
 今度はホームランバッターの話。

 ところで烏丸の言うホームランバッター,それはたとえばシーズン40本以上のホームランを打つこと5回を数えた全盛期の山本浩二,申しわけないがああいったものではない。
 叱られることを覚悟であえて言おう,ホームランバッターは,ジャストミートしたなら間違ってもファーストに向けて慌ただしく走り出したりしてはいけない。ましてや,振り切ったはずのバットが走り出すときに体の前に戻る原辰徳などもってのほか。

 そうした中距離ヒッターの打球がたまたまフェンスを越えるのではない,本当のホームランバッターの,本当のホームランというものが,ある。

 たとえば,ロッテで実働11年,通算283本のホームランをかっ飛ばしたレロン・リー。彼のバックスクリーンに叩き込むホームランをご記憶だろうか。
 ピッチャーの指からボールが離れる。バットが始動,ヘビーな体重がバットにかぶさるようにぐんとやや下に移動する。
 ぶ。ごん。
 彼は走らない。なぜなら,自分のバットがその角度,そのタイミングでボールをとらえたなら,スタンドに届かないはずはないのだ。しかも打球の方向はセンター正面。ファールはない。だから,もう,バッターボックスでの彼の仕事は終わっているのである。彼はボタンもちぎれよとばかりに胸を張る。それだけのことをなしとげたのだから。後は仕上げとしてゆっくりとバットを置き,ただ声援を受けるためにダイヤモンドを一周する。

 これこそがホームランバッターの仕事ではないか。

 たとえば,いしいひさいちの四コママンガですっかりコミカルなキャラクターとされてしまった田渕幸一。彼のホームランは,夢のように美しかった。打球は重力を無視するかのように高く舞い上がり,彼の左手を離れたバットはバッターボックス左後ろに軽やかな弧を描く(近鉄の中村紀洋がやはりホームランの直後にバットを高く飛ばすが,あれはスウィングの結果としてバットが飛ぶわけではない。一種のパフォーマンス,いうなればガッツポーズと同じ次元のもの)。
 田淵は阪神時代に一度ホームランキングとなり,王の連続記録を阻んでいるが,ホームランとしての美しさは,多少太り気味で体のキレが悪くなった西武時代のほうが,手や足が無用に動かないだけさらに極まったような気がする。

 あるいは,門田博光。
 決して上背はないが腰を据え,バットは高く構え,スイングに入るや重い鉄独楽が高速に回転するごとく腰から上を回し,さらにその外に大きな弧を描くバットは球場で遠く見ていても空気を焦がすようだった。
 たとえば近鉄の左腕エース鈴木啓示との対戦。鈴木のピッチングフォームは,テレビで正面や真後ろから見るのと違って,球場で見ると腕が前後に実にゆったりとした大きな軌跡を描くのだが,その軌跡からムチの先が飛ぶように放たれたストレートを,また大きな弧,高速回転する円形ノコギリのような門田のバットが切る瞬間。高い音を残すファウルチップに対してすら金を払う価値があったように思う。ことに,アキレス腱の怪我から復帰した1980年,大阪球場でのオールスター戦で福士敬章から打ったホームランは圧巻だった。

 また,実働16年で278本と,通算のホームラン数ではさほどでもないが,強烈に記憶に残っているホームランバッターの一人,それが大洋の田代富雄である。全盛期の田代は,日本人としては数少ない,本当に胸を張って打球の行方を見送ることの出来る選手だった。あの横浜球場の青く高いフェンスを悠々と超えていった打球。彼のホームランシーンだけを集めたビデオが手に入らないものか。

 一方,いまだにうまく説明がつかないのが落合博満だ。彼はホームランバッターではない。少なくとも,全打席,より遠くへボールを飛ばすことだけを考えているわけではない。
 彼が,遅い入団の数年後,オールスター初出場ながらパの4番に抜擢されたとき,烏丸はやはりビールを飲みながらテレビを見ていたのだが,重いゴムの固まりで後頭部を殴られたような気がしたものだ。
 そのときの彼の打席がどういう結果に終わったのかは記憶にない。しかし,バットを立てた彼は,ブラウン管の中に自分のストライクゾーンを四角く描いてみせた。そこは明らかに空気の厚みが違い,ボールがその中を通過するとき,彼の強力なリストは,あたかもそのストライクゾーンそのものが巨大なラケットであるかのように,そのボールをぐいんと弾き返すのである。右方向へのホームランも打てる,と当時の新聞は評価していた。当然だろう。巨大なラケット面を作り,角度を調節しながらそれを強く振り抜くことができるのなら,打球の飛ぶ方向や角度など自由自在である。

 その後,西武球場で生の落合の打席を見たときに,その衝撃はより大きなものに変わった。その日の彼は,西武の,誰だったかいわゆるローテの谷間のピッチャーの継投に,結局4タコ,つまり4打数ノーヒットに終わった。しかし。
 その日の最後の打席,彼は初球のストライクを見逃し,外角に逃げるボールを見逃し,それから,3球目の内角球にためらいなくバットを出した。
 決して強い振りではなかった。王や門田のそれのように,「何々大学工学部で調べたところ,スウィングのスピードはこれこれこんな」というような振りではないように思われた。しかし,そのスウィングは明らかに「このあたりに来るボールをこのタイミングでこう払えば,レフトスタンドのあのあたりに入るな」という振りだった。1塁側の内野席から見ていた烏丸には,その瞬間,落合のイメージ通りの軌跡を描く打球,そしてそれを避ける者,追う者で揺らぐレフトスタンドの一角が見えたような気がした。
 実際には,落合のバットの上をかすめた球は高く舞い上がったファールフライで,キャッチャーは苦もなくそれを捕球した。苦笑いを浮かべ,バッターボックスを去る落合が最後にピッチャーに見せた目は,遠くからでも「ちゃんとお前さんが自分で狙ったところに投げてくれないと,困るな」と読めた。

先頭 表紙

先日の左打席の流し打ってのホームランはまれに見るナイスミート……ってそれは西武の松井(ぺしっ)。ゴジラ松井は,個人的には好きな選手なのですが(松井が打って讀賣が負ける,やれうれし),ちょっと好人物にすぎるというか,ランナーなんか気にせず振り抜けよ,というシーンが多すぎる。そのほうがチームのため,ということもあるでしょうに。あと,松井,清原は看板まで届く特大ホームランが多いのですが,東京ドームの空調が球をよく飛ばす,という噂を否定しづらい面もあります。 / 烏丸 ( 2001-09-10 17:15 )
個人的にはホームランバッターって好みではないんだけど、烏丸さんと同じように、徹底して欲しいーって思ってみてしまいますね。松井はどうなんでしょか? / フィー子 ( 2001-09-10 13:41 )
わくわくといえば,新庄4番のメッツ,連勝がとまりません。ひょっとしてひょっとしてひょっとすると。しっかし,新庄ってのも,イチローとはまるで別の意味でいい選手だなぁ。 / 烏丸 ( 2001-09-09 03:24 )
ESPNも報じてますなあ。Rhodes approaching Oh's record. わくわく。 / こすもぽたりん ( 2001-09-09 03:17 )
ところで,ローズがダイエー戦で51号,52号連発。その前にはセンター前ヒットで打点。コースにさからわず打ったローズも凄いが,打たせたダイエーも文句なし。四球攻めなんぞなしにばんばん力の勝負してほしい(しかし,今日は近鉄が勝ってほしかった。それならまた3チームゲーム差なしだったのに……)。 / わくわく烏丸 ( 2001-09-09 01:45 )
そういえば,掛布と,もう1人,アキレス腱の怪我から復帰したあとの矢沢のバットの軌跡,好きなんですよー。木のバットがムチのようにしなる感じで。 / 烏丸 ( 2001-09-06 15:13 )
掛布は,ご指摘の通り烏丸の分類ではホームランバッターではありませんが,中距離ヒッターとしては「凄玉」だったと思います。ボールを,ではなくボールの芯をハードヒット,というタイプですよね。個人的にはイチローよりずっと好みかも。 / 烏丸 ( 2001-09-06 15:13 )
僕はタイガースファンだったので、田淵かなあ。幼い頃、それ以降なかった阪神vs巨人が地元札幌で行われ、田淵のホームランなどで、5点差ぐらいあったのを引き分けに持ち込んだのを覚えています。ジャイアンツファンの兄貴と僕を抱え、ダフ屋から余裕のない経済状態で買ってくれたチケット。面と向かってなかなか言えないけれど、今でも、ずっと感謝しています。それから、烏丸さんのホームランバッターからは絶対外れると思うけど、他に4番がいなかったので、無理矢理、腰に負荷かかえてホームラン打っていた掛布雅之も忘れられません。リ / ガス欠コイン ( 2001-09-06 03:09 )
一部(リーのところと落合の最後の一段落),過去にアップしたものと内容がダブっています。すみません。 / 烏丸 ( 2001-09-05 16:37 )

2001-09-03 [紹介] 『プロ野球不滅のヒーローたち 豪打列伝』ほか 文春文庫ビジュアル版


 野球に限ったことではないが,「楽しむ」と一口に言っても,その楽しみ方はいろいろだ。
 よく,テレビ観戦では駄目,野球場に行かなければ,というようなことが言われるが,それを言うなら見ているだけなんて最低だ,ライトの8番でもプレイしてこそ楽しい,という考え方だってある。元地区大会準優勝ピッチャーにカーブ抜きで4タコ食らうも(うっきーっ!),居酒屋で記録博士を気取るも,楽しければそれで善哉。

 さて,同じ野球観戦にも,1球の投球,打球を見つめる,2〜3時間の試合展開に手に汗握る,1年間のペナントレースに一喜一憂する,そして数十年にわたるチームや選手の浮沈に祇園精舎の鐘の音,などなど,さまざまな切り口がある。

 そして膨大な数の投球,打球の中には,ペナントレースの流れに大きく棹をさす一瞬,一人の選手の人生を変える1プレイ,というものが必ずある。そして,それを発見するのがテレビ桟敷の野球ファンの大きな楽しみの1つだ。
 そういった勝負の分かれ目,人生の分かれ目に着目するスポーツジャーナリズムは決して多数派ではない。だがそれは,少なくとも,ただ勝ち負けにこだわり,(現場の前向きな姿勢としてならともかく)現状を把握せずにメイクドラマ,ミラクルアゲインとのべつ騒ぎ立てるよりはずっとよい。

 というわけで,そういった一瞬,1プレイにこだわって,鋭いカメラアングルと丁寧な取材を元にさまざまな選手を取り上げたのが,文春文庫ビジュアル版の一連の野球シリーズである。なにしろ山際淳司の「江夏の21球」でも知られる雑誌Numberのスタッフによるものだから(*印は文藝春秋編),内容の濃さはたいへんなものだ。また,スポンサーや視聴率に気を遣うテレビ,新聞と違って,讀賣やセ・リーグ偏重の気配が(逆に言えば妙な平等主義も)ないのが嬉しい。
 この15年間に発行されたラインナップは以下の通り。

『プロ野球不滅のヒーローたち 豪打列伝』(1986/05発行)
 長島茂雄,王貞治,田淵幸一,藤村富美男,野村克也,大杉勝男,長池徳士,張本勲,中西太,マニエル ほか全37人

『プロ野球不滅のヒーローたち 豪球列伝』(1986/10発行)
 稲尾和久,平松政次,村山実,金田正一,足立光宏,尾崎行雄,山口高志,沢村栄治,外木場義郎,江夏豊 ほか全30人

『スーパーグラフ 清原和博VS桑田真澄』(1987/05発行)

『プロ野球意外史 助っ人列伝』(1987/10発行)*
 バース,リー,マルカーノ,スペンサー,ブーマー,トマソン,ソレイタ,シピン,ライト,郭泰源 ほか全28人

『プロ野球乱闘史 暴れん坊列伝』(1988/04発行)*
 東尾修,別所毅彦,クロマティ,江本孟紀,江藤慎一,アニマル,大沢啓二,星野仙一,バッキー,スペンサー ほか全24人

『プロ野球不滅のヒーローたち 功守功走列伝』(1989/03発行)
 吉田義男,高木守道,広岡達朗,山下大輔,柴田勲,広瀬叔,辻恭彦,大矢明彦,福本豊,藤瀬史朗 ほか全37人

『プロ野球不滅のヒーローたち 魔球伝説』(1989/09発行)
 村田兆治,山田久志,西本聖,松本幸行,藤沢公也,小林繁,安田猛,高橋一三,永射保,杉浦忠 ほか全36人

『熱闘!プロ野球三十番勝負』(1990/08発行)
 天覧ホーマー,長嶋デビュー,王756号,阪神のバックスクリーン3連発,ブライアント4連発,王が山田からサヨナラ3ラン,上田抗議に大杉2発,江夏9連続奪三振 ほか全30試合

『さまざまなヒーロー伝説 豪打列伝2』(1991/08発行)
 矢沢健一,有藤通世,若松勉,水谷実雄,落合博満,加藤英司,山本浩二,衣笠祥雄,門田博光,掛布雅之 ほか全29人

『プロ野球ヒーロー伝説 みじかくも美しく燃え』(1992/03発行)
 権藤博,三井雅晴,新美敏,木田勇,塩瀬盛道,安藤元博,久保征弘,堀本律雄,佐々木信也,木暮力三(色川武大のエッセイより) ほか全28人

『野茂&イチロー』(1996/04発行)

 超一流を集めた『豪打列伝』『豪球列伝』は逆にいえばおなじみのエピソードが少なくなく,なんといっても読み応えがあるのは『暴れん坊列伝』『功守功走列伝』『魔球伝説』『豪打列伝2』あたりだろうか。
 文春文庫ビジュアル版の多くは残念ながら現在新刊としてはなかなか入手できないようだが,もし手にする機会があったらぜひご覧いただきたい。プロ野球ファンなら,絶対損はしない。

先頭 表紙

ガス欠コインさま,今日は印象の強いバッターについて,ちょっとまとめてみました。いかがでしょう。……書いてみて気がついたのですが,どうやら烏丸はバッターについては豪快なホームランバッター,ピッチャーはアンダースローなど個性的な技巧派が好みのようですね。 / 烏丸 ( 2001-09-05 17:34 )
クライド(クレージー)ライトって,吼えたり暴れたり,というイメージは強いけど,乱闘はありましたっけ。彼は長嶋監督の使い方に怒っていただけかな。ピッチャーはどちらかといえば乱闘では殴られ役,バット投げつけられ役ですね(デービス・東尾とか清原・平沼とか)。 / 烏丸 ( 2001-09-05 17:31 )
僕は決して野球を嫌いではないのですが、そんな野球が少なくなったと感じるのは僕だけでしょうか。ジョニー黒木や近鉄の中村など、魅力的な選手はいますが。 / ガス欠コイン ( 2001-09-05 04:08 )
バッキーは乱闘で指折っちゃいましたからねえ。投手にあるまじき行為。同じ乱闘に参加したカネヤンは、予め左手をタオルでグルグル巻きにしてから飛び掛ったというのに。 / こすもぽたりん ( 2001-09-03 20:50 )
文庫のカラー本は,そもそも原価が高いため,同程度に売れそうな本なら,刷り数を抑えて発行される可能性があります(返本のダメージを少なくするため)。新潮文庫の泡坂妻夫の製本お遊び本が絶版なのも,多分そのあたりかと。 / 烏丸 ( 2001-09-03 19:01 )
↓の「完投」は「巻頭」の変換ミスでござい。 / 烏丸 ( 2001-09-03 18:50 )
『暴れん坊列伝』の完投は東尾なんですが,日本シリーズで満塁の場面,2-2から顔のあたりのブラッシングボールで原をのけぞらせ,(ボールとカウントされるおそれのある得意球のスライダーでなく)外角のストレートで三振に取る場面など,実に格闘技的です。 / 烏丸 ( 2001-09-03 18:50 )
プロレスの場外乱闘でもあるまいに『暴れん坊列伝』と言うのが、なんか笑えて良いですね。 / まやひこ ( 2001-09-03 18:44 )
なるほど、カラー本にはそういう背景があるのですか。これからはカラー本は迷わず買っておくことにします。 / こすもぽたりん ( 2001-09-03 17:43 )
烏丸がここひまじんネットに一番最初にアップした私評が『人はなぜストーカーになるのか』だったのですが,その著者の岩下久美子氏(41歳)がタイ,ブーケット島で遊泳中に高波にさらわれ,亡くなったそうです。黙祷。 / 烏丸 ( 2001-09-03 13:29 )
カラー写真満載で製本代が高そうなこと,内容が古い(松坂も松井も扱ってない)ことから,このままの増刷はまずないでしょう。品切れは非常に残念です。「昭和」のプロ野球ファンは,古本屋で探すだけの価値はあると思います。 / 烏丸 ( 2001-09-03 12:28 )
ちょいと紀伊国屋BOOKWEBを覗いてきましたが、ぜんぜんないですなあ。残念。「豪球列伝」欲しかったなあ。 / こすもぽたりん ( 2001-09-03 02:31 )
「長嶋茂雄は死ぬまで不滅です」が正しかったですなあ。 / こすもぽたりん ( 2001-09-03 02:16 )
ところで,添付画像の3番氏は引退試合で「栄光の巨人軍は永遠に不滅」云々と申しましたが……20xx年,讀賣巨人軍が地上からなくなることをここに予告しておきましょう。いや,プロ野球衰退のせいなどではありません,人の身体的特徴を示す「巨人」という言葉が差別用語として言葉狩りにあい,さらに「軍」という言葉が軍国主義復活のおそれありとして近隣アジア諸国から厳しい非難をあびるためであります。 / 本気に読まないように…… ( 2001-09-03 01:51 )

2001-09-01 使用権フリー短編集? 『天狗の落し文』 筒井康隆 / 新潮社


【ありがたく思え。】

 添付画像にご注目いただきたい。「盗用御自由」なのだそうだ。
 その上は「アイディアが溢れすぎる天才作家はついに決意した」,下には「前代未聞の新形式文学か? 絢爛豪華なネタの玉手箱か? 全356編+∞、文学史上初の使用権フリー短編集!」。

 では,本書収録の掌編を自作と偽ってWeb上で配ってもかまわないのだろうか。全ページ取り込んで本の形にして売ってもかまわないのだろうか。
 わからない。「盗用御自由」「使用権フリー」とあるのは帯だけで,本の中には二次利用についてなどどこにも書かれていない。ちなみにアイディアやトリック,標語の類については,著作権法は保護の対象としておらず,つまりこの惹句はあってもなくても結果は同じ,夢日記や思いつきのダジャレといったちゃっこい掌編を1冊にまとめる際の,テイのいい煽り文句に過ぎない。

 さて,肝心の内容だが……二重の意味でがっかり,というか物悲しい気分に陥ってしまった。

 まず,フリーデータ集として。データ集の質とは,もちろん,文例なりイラストなり写真なりのクオリティが高いほうがよいのは言うまでもないが,高ければよいというわけではない。汎用性とでも言おうか,1つ1つのデータの用途がなるべく広いことがポイントだ。さまざまな人がさまざまに流用できるようでないと,フリーの意味はないのだ。しかし,本書収録作の多くは,あまりにも「筒井」個人と密着しすぎ,要するに神戸在住の大物小説家で役者もやっていて,というもので,盗用しようにも誰がどう利用するのか,見当がつかない。少なくとも書いている時点では,データ集という意識はなかったのだろうと思う。

 第二に,では,フリーとかデータ集とかいったことを抜きに,純粋に掌編集としてみてどうか。残念ながらそう面白いものではない。なにか,ぼそぼそ雑感を記したもの,オヤジギャグのレベルにすら達しないダジャレ,ショートショートとして熟す前の段階で,練り込んでいない断章,そんな印象のものが多いのである。

 そもそも登場時の筒井康隆は,SF作家の中でも,ロケットやタイムマシンといったハードウェアでなく,トリッキーな言葉遣いや展開で社会や個人の既成概念を覆す,そんな作家だった。さらに,攻撃対象そのものや,武器としての文体を次々に切り替える,作家としての変容が魅力だった。

 しかし,本書に見られる筒井康隆は,「大家」扱いされることに慣れた傲慢で保守的な老人に過ぎない。傲慢はともかく,保守的なところが気にかかる。社会のほうが音を立てて変わってきているのに,当人は同じところで同じ槍を振り回しているようにしか見えないのだ。個人的な日記でも20年前30年前のもののほうがずっと面白かったし,ショートショートについては比較する気にもなれない。かつて世界を「時間」と「情報」の2軸に分け,縦横にスラップスティックな哄笑を撒き散らしてくれた天才はどこに行ってしまったのだろうか。

 少なくとも,一度でもSF作家として鳴らした以上,新しい技術や風俗について,独自の取り込み,解釈,発案をしてほしいものだ。携帯電話文化が気にさわるらしく再三取り上げているのだが,「うるさい」「そんなものより本を読もう」「バイクの運転しながら携帯電話を使って事故」……これではそこらの小言オヤジだ。
 がっかりだな。天狗になってんじゃないの。

先頭 表紙

筒井やっちゃんには一時期はまりまして、修学旅行で神戸に行った際は家をつきとめて記念撮影してくる程だったんですが(ミーハー)断筆解除以来サッパリ読んでいません。書店で写真を見て、なんだか大家っぽい偉そうな顔になっちゃったなあ、なんて勝手に思っていたのですが、そうですか、書くものもそうなってきちゃったのか。 / みなみ ( 2001-09-11 21:56 )
まゆぞさま,はじめまして。もともとはそうでも,筒井康隆はもうずいぶん前からSF作家とはいえないでしょう(ではなに,というと,何なんだろう?)。この掌編集も,およそSFとは縁もゆかりもない印象でした。まして,七瀬シリーズや「時をかける少女」,あるいは「佇む人」の雰囲気はおよそカケラもありません。 / 烏丸 ( 2001-09-02 02:32 )
もちろん,たくさんのファンがついているわけですから,単に烏丸と波長が合わなくなった,というだけのことかもしれません。でも,あの波長なら,合わなくてもいいや。 / 烏丸 ( 2001-09-02 02:29 )
そうなんですか〜残念。SFは基本的に読まないのですが、筒井氏のは七瀬シリーズが好きで愛読してました。あの独特のテンポがいいんですけどね。 / まゆぞ ですはじめまして ( 2001-09-01 17:04 )
筒井康隆の小説は、話としてよりもその設定とかシチュエーションに面白さがありましたからね。う〜ん、永久に走り続けるというのは、どんな天才にも不可能なんでしょうかね? / まやひこ ( 2001-09-01 17:01 )

2001-08-31 ピッチングの真髄をアンダースローに読む 『野球花伝書VOL2 山田久志 投げる』 矢島裕紀彦 / 小学館文庫


【そういうのはね,生きない。そういう野球やってるうちは,絶対駄目ですよ。】

 さて,下でも触れたが,最近,形態模写が宴会芸になる選手が希少価値となってしまったのは大変残念なことだ。
 たとえば今日の時点で勝ち星の多いピッチャーはセが藤井,野口,入来(巨),石井一,入来(ヤ),上原,メイ,パが西口,松坂,星野,黒木,ミンチー,前川といった面々だが,ピッチングフォームのシルエットから名前が当てられる選手は何人いるだろう。少なくとも村田や野茂,小林のようなわけにはいかないだろう。
 また,最近はオーソドックスなオーバースローが大半で,サイドスローやアンダースローのピッチャーがほとんどいない。確かにまっこうから投げ下ろしたストレートがずばり決まるのもよいが,サイドやアンダーから繰り出される生きた球も野球の魅力の1つだ。たとえ130kmのストレートであっても,コースとタイミングが合わなければ魔球に等しいのである。

 そういうことをきちんと書いた本は,意外とない。野球本の多くは勝ち負けをベースにした懐古本であり,せいぜい記録集であり,ときにはビジネスマン向け精神論,組織論だったりする。いかに打つか,いかに打ち取るかについて詳解した本はめったにないのである。

 『山田久志 投げる』は,プロ生活20年で284勝をあげた山田久志がインタビューに答える形でピッチングの極意を語った1冊。ビジネスマン,組織論,全然関係なし,バッターについてさえ「自分はピッチャーなので」扱い。ただもうピッチングについて語り尽くした印象である。8章からなる章立てが「アンダースロー」「ボール」「ストレート」「変化球」「配球〈I〉(データ)」「配球〈II〉(投球術)」「体」「打たれる」であることからもご想像いただけるのではないか。

 その語りが,またいい。
「ピッチャーのフォームっていうのは(中略)楽ならいかんのですよ。あんまり楽したら体が開いてしまったり,フォームに軽さというものを感じてしまう」
「勝負してるふりして,四球で歩いてもらう。で,次のバッターでゲッツーだと。よくやりましたよ。ほんと,マウンド上でげらげら笑いたいくらいですよ」
「(野球のカウントは)ゼロ・ゼロから始まって,ツー・スリーまで。12種類しかない。ところが,それぞれの状況によって全部違うんです。同じゼロ・ゼロでも,『プレーボール』で始まったばかりのそのゼロ・ゼロと,次の打者のゼロ・ゼロと,まったく違う。(中略)野球は,結論は出ないです」
 キャンプ期の肩作り,爪の管理,ボールの感触,コーチとしての若手の育て方。もう全部,ピッチャーの話。

 ことに,全盛期のシンカーをまじえての配球論は実に面白い。
 シンカーというのはコースを狙うのではなく,真ん中に投げ込んでいくものだというのだ。バッターが待ってましたとがっと振ったら,ぴゅっと落ちる。で,ボテボテのゴロ。
 そのシンカーを下からすくうのでなく,上から叩いた落合との闘いは,今こうして本を読んでも背筋が冷える思いだ。さらに,そんな山田が挑戦して,最後まで満足に使えるにいたらなかったスライダーの話。

 奥が深い。
 矢島裕紀彦にはほかに掛布や大矢,桑田を扱った著書があるが,ぜひとも落合に打撃論を語ってもらいたい。最も「頭で」打ったように思われたのは落合だったからだ。なにしろ2度目に三冠王を取った年,西武球場で見た彼は4タコ,4打席目にキャッチャーフライに倒れてベンチに戻る彼の背中は「このピッチャーは狙ったコースに投げる技術がないから打ちにくいわい」と悠然と語っていたものなあ。

先頭 表紙

渡辺俊介,スポーツ新聞でも好評ですね。どんどん活躍して,真似する高校生が増えるといいな。ちなみに大リーグでアンダースローが少ないのは,昔,アンダースローの投手の投球が頭に当たってバッターが亡くなった事故があり,以来ブーイングが激しいため,とマンガか何かで読みました。 / 情報源,マンガばっかし ( 2001-09-04 16:31 )
そうそう,大町だっ! ……下のほうで思い出せなかった阪神の,サングラスかけたアンダースローピッチャーの名前です。 / 烏丸 ( 2001-09-04 16:24 )
来ましたねえ、渡辺俊介、と書こうとしたらすでにセルフつっこみがっ!! 早い!! さすがはアンダースローおたくでいらっしゃる。 / こすもぽたりん ( 2001-09-04 01:06 )
おっ,ロッテ渡辺俊が,ダイエービッグバン打線相手に完封勝利だそうな。正統派アンダースローの完封って,相当久しぶりなのでわ。 / 烏丸 ( 2001-09-03 21:32 )
(ついでにいえば,僕はその当時,少年サンデーだかマガジンだかに載っていた「宇宙人・王貞治」という読み切りマンガを読んで,その中に描かれていた,王が一本足打法を編み出すために目隠しして車を運転し,波止場で落ちるぎりぎり前に止める訓練(当然,最初のうちは失敗して何度も車が海に落ちる)をけっこうのちのちまで信じていました。のちに,荒川道場の話などを知っても,「あの訓練が話題に出てこないなぁ」みたいな。……そういう時代の上級生からの言葉なので,今思えばはなはだ心もとない……うう……) / 烏丸 ( 2001-09-02 02:40 )
ええ,90度でなくて,マークのちょうど裏側。「よく言われていた」という表現は無理があるかもしれません。子供のころの近所の上級生からの話ゆえ,「へー,ほんとかー」とか思いながら聞いていたのですが。長嶋や王は,ほかの選手と違ってどんなボールでもジャストミートできるから,そうするんだぞ,とか。で,「そりゃーすごいや」と,その空き地では誰もが真似をしていた,と。でも,マークの裏側なら飛ぶ,なんてことはあるんでしょうかね。 / 長年,そう思い込んでいただけ? ( 2001-09-02 02:27 )
それは、マークから90度横という意味ではないですか?私が言っているのは、マークの真後ろなんですが。 / まやひこ ( 2001-09-01 16:57 )
まやひこさま,バットのマークの裏でミートというのは,僕が子供のころ(1960年代)にすでによく言われていたことですが……? マークのほうで打つと折れやすいぞ,とか,長嶋は目をつむってもぴたりとマークが裏になるように構えるらしいぞ,とか。金属バットが出てきた当時も,マーク側で打っていいのかどうか,友達とあーだこーだと議論した記憶があります。 / 瓶ビールを注ぐときもマークが上 ( 2001-08-31 13:27 )
ロッテの渡辺は,久々,正真正銘のアンダースローですね。フリーバッティング用のケージがなくて困っているそうです(そもそも,渡辺でフリーバッティングの練習やっても,他球団にあんなピッチャーいないんだからあんまり意味ないと思うぞ)。 / 烏丸 ( 2001-08-31 13:27 )
アンダーかサイドかはともかく,小林は,上げた左足を止める独特のフォームといい,バネの効いたピッチングといい,実にかっこいいピッチャーでした(キャラクターはともかく)。讀賣時代,一度だけ,あの左足のかっくんをやめて,だらりと投げて完投したのを見たことがあります。タイミングをはずすためだったのか,その一試合だけでしたが。 / 烏丸 ( 2001-08-31 13:26 )
なお,小林繁(讀→神),高橋直樹(日→あちこち),潮崎(西),高津(ヤ),斉藤雅(讀),それに先に出した角あたりは,アンダースローというより,サイド変則という印象があります(サウスポーの永射,角も通常はサイドスロー扱い)。少なくともサブマリンと言われるような,上体を傾けて沈める感じはないですよね。ちなみに,プロで手首を立てないアンダースロー,つまりソフトボール投げは,水原勇気くらいしか……。 / 烏丸 ( 2001-08-31 13:26 )
山田以外のアンダースローというと,杉浦,秋山,皆川,足立,金城,仁科あたりでしょうか。あ,松沼の兄やんもいるな。決して勝ち星は多くないけど,いかにもアンダースローということでは会田(ヤ),望月(広。讀賣の15連勝を阻止した),中日の青山(青エンピツ),最近では宮本(ヤ)らのフォームが好きでした。あれ? 阪神のグラサンアンダー,誰だっけ。甲子園では広商の佃(江川に投げ勝つ),箕島の石井(春夏連覇),それからもちろん明訓里中ですね。 / 烏丸 ( 2001-08-31 13:25 )
山田投手の現役時代の投球は知らないので、アンダースローというと高津と潮崎、あとロッテの渡辺しか思いつかないです。 / 地鶏ヂドリ ( 2001-08-31 07:39 )
落合選手は、他の選手とヒッティングポイントが違うと、バットの職人さんが言ってました。バットのマークの裏側で打っていたそうです。 / まやひこ ( 2001-08-31 07:38 )
アンダースローのピッチャー、↓に同じく好きでした。中でもやっぱり小林かな。特に江川との一件でタイガースのトレードされた時のジャイアンツ戦は圧巻でした。確か、7連勝だったような。 / ガス欠コイン ( 2001-08-31 05:22 )
僕はアンダースローのピッチャーって好きだったんです。山田の他にも、足立とか小林繁とかも思い出深いです〜。 / TAKE@これも宿題リスト入りです ( 2001-08-31 02:16 )

2001-08-29 [異説] 野球こそ個人主義な球技である


 こすもぽたりん氏の「銀座ガスライト書店」がここしばらく野球の話題で熱い。ガルシアパー太氏の「BOSOX日記」がこれまたこゆい。

 ところで,ロバート・ホワイティングの『和をもって日本となす』やボブ・ホーナー(元ヤクルト)の「地球の裏側に別のベースボールがあった」という言葉が物語るように,日本野球は,チームへの滅私奉公が絶対優先すると指摘されることが多い。そして,それが日本野球のつまらなさであると。

 確かに欧米人から見れば,日本野球はチーム重視に見えるかもしれない。しかし,ここでは異議をとなえてみよう。本当にそうなのだろうか?

 たとえば日本野球史上最高のスター,長嶋,王は,はたして本当にフォア・ザ・チームな存在だったろうか? 彼らこそは誰よりも初回の送りバントやランナーを進める流し打ちから解き放たれた存在だったではないか。
 ピッチャーはどうか。金田,村山,江夏,堀内,鈴木,東尾,江川。ざっと見渡しても,ぎらぎらとキャラの立った輩ばかりではないか。

 実際,あらゆる集団球技の中で,野球ほど個人のプレイが優先されるゲームはない。
 ピッチャーがストレートでバッターをなで切るとき,実は内野手も外野手も必要ない。バッターがスタンドに打球を叩き込むとき,チームの残り8人はどこにいても関係ない。内野手がゴロに横っ飛びに飛びつく瞬間,そのプレイは彼一人の責任だし,ノーステップでそれをファーストに投げ終わった後はもう彼の知ったことではない。
 バックアップ,フォア・ザ・チームの大切さを強調する向きもあるだろうが,それらは勝率を高める要素であってプレイの絶対条件ではない。1個のボールにからむ敵味方2人さえいれば成り立つ,それが野球なのである。

 つまり,こういうことだ。
 組織に埋没してきたきたはずの日本人が,幕末の開国,明治の文明開化,昭和の民主主義という歴史の中で自らがなかなか成し遂げられぬ「個人主義への夢」をゆだねたものこそプロ野球や大相撲という個人競技だったのではないか。地域や会社,家族というがんじがらめの組織の中で,湯上がりのビールと枝豆を前に身勝手な開放を夢見る,それがプロ野球や大相撲の意味だったのではないか。

 実際,管理野球をうたわれた讀賣ジャイアンツの全盛期より,昨今の各チームのほうがよほどバントが多い。犠打の記録は,最近になって何度も更新されている。プロ野球にはかつては野武士,要するに身勝手な個人主義者がうようよいたのであり,それこそがプロの魅力だったのだ。
 託すべき夢の枯れた今,プロ野球はただ勝ち数を競うつまらない1競技になり下がった。もはやオリンピックや日本人の参加したメジャーリーグのほうがナショナリズムという付加価値があるだけ,よほど楽しめる。地域ナショナリズムが発揚する高校野球のほうがまだしも面白い。
 「午後8時の男」なるつまらぬクイズや,他番組の出演者を呼んで騒がせるテレビ局の発想は,だから必ずしも間違いではない。欠けているのは付加価値なのだから。間違っているのは,発想ではなく,その付加価値の中身なのである(うざいからやめてほしい。 > 日テレ)。

 自由が夢でしかなかった団塊の世代までは,選択の余地なく切実な野球ファンたらざるを得なかった。「会社ぁ? 家族ぅ? いいじゃんそんなの」とのびのび口にできるようになった若い世代は,まっすぐな目でサッカーの組織プレーを評価,賛美できるようになった。水泳,陸上,F1,いずれも楽しい。
 それでいい。それがいい。広い選択肢の中からそのときどきに自由に選べるということは,それだけで幸福なことなのだから。

先頭 表紙

いやまったく,ファンが見たいのはトラやライオンやオオカミであって,子犬の芸ではないんですが……。たまたまですが,今日発売の週刊文春の元西鉄・豊田氏の対談記事が,かつてプロ野球には個性的な選手がいっぱいいたのに,巨人がドジャース戦法を持ち込んで(しかもたまたまそれで勝ち続けてしまったため)おかしくなった,ということを取り上げています。 / 烏丸 ( 2001-08-31 02:02 )
感動しました、僕はタイガースファンで、江夏がノーヒットノーランを続けていたドラゴンズ戦、延長10回に自らサヨナラホームランを打ったのをよく覚えています。超個人主義が野球を面白くしていた時代、例えば、王が流し打ちする時、それはスランプがひどく、自らの力で立ち直りのきっかけを掴みたかった時だと思います。だって王がもっとヒットを稼ごうと思えば、5回に1回ぐらい流し打ちすれば、簡単に王シフトの裏を取れたのですから。ただ、極端なジャイアンツ時代が、今の現実をもたらしたのも事実だと感じます。 / ガス欠コイン ( 2001-08-31 01:10 )
未だにギャグになるのが長嶋の口ぐせばかり,というのはなんとも。 / 烏丸 ( 2001-08-30 02:01 )
最近の日本プロ野球のつまらないもう1つの原因は,ピッチャーもバッターも,フォームに特徴がなくて形態模写ができないことだと思います。両・松井,松坂,清原……モノマネが宴会芸になる選手がエースや4番にぜんぜん見当たらない。珍しくフォームが変則だった野茂もイチローもアメリカに行ってしまったし。 / 烏丸 ( 2001-08-30 02:00 )
いつもながら、深いですね。身勝手な奴もいれば、職人的なプレーヤーもいるという多様さが無くなったことが、つまらなくなった最大の原因では無いかと。勝つこと『だけ』を追求するのも、ひとつの美学ですしね。といいながら、まやひこは野球を全然見ません(笑) / まやひこ ( 2001-08-29 23:33 )

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