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烏丸の「くるくる回転図書館 駅前店」

 
今後、新しい私評は、
  烏丸の「くるくる回転図書館 公園通り分館」
にてアップすることにしました。

ひまじんネットには大変お世話になりましたし、
楽しませていただきました。
その機能も昨今のブログに劣るとは思わないのですが、
残念なことに新しい書き込みがなされると、
古い書き込みのURLが少しずつずれていってしまいます。
最近も、せっかく見知らぬ方がコミック評にリンクを張っていただいたのに、
しばらくしてそれがずれてしまうということが起こってしまいました。

こちらはこのまま置いておきます。
よろしかったら新しいブログでまたお会いしましょう。
 

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2001-08-19 消えたマンガ家 その七 『君を待つ千夜』 笈川かおる / 秋田書店Candle Comics
2001-08-17 科学戦隊トクレンジャー 『ST 警視庁科学特捜班』 今野 敏 / 講談社文庫
2001-08-15 3匹めのどぜう 『超・殺人事件 推理作家の苦悩』 東野圭吾 / 新潮エンターテインメント倶楽部
2001-08-13 科学者も人の子 『科学史の事件簿』 「科学朝日」編 / 朝日選書
2001-08-09 [鎮魂] 原爆の日によせて 『いしぶみ』 ポプラ社文庫,『チョウのいる丘』 那須田稔 / 講談社青い鳥文庫
2001-08-08 [雑談] アルバムのお遊びあれこれ
2001-08-07 すべての子供たちと子供の心をもった大人たちに,この夏の一番星 『なつのロケット』 あさりよしとお / 白泉社JETS COMICS
2001-08-06 [私見] 新指導要領について
2001-08-04 インテリ農民の陵辱的ヰタ・セクスアリス? 『赤目のジャック』 佐藤賢一 / 集英社文庫
2001-08-03 [雑談] 手はあるか,iモードの迷惑メール対策


2001-08-19 消えたマンガ家 その七 『君を待つ千夜』 笈川かおる / 秋田書店Candle Comics


【…だから何があっても見つけてやんな おまえの嫁さんだろ】

 21世紀後半,北米大陸・西海岸。
 "10年ガール" つかさは無事に目を覚ました。彼女は人工冬眠(コールドスリープ)第一号にしてキャンペーンガールなのだ。

 実は彼女は男に騙され,金で売られていた。落ち込み,荒れるつかさ。彼女は8歳のときにテロリストに両親を殺され,施設からその男・ユーダに誘い出されるままに詐欺の道に入る。だが,ユーダが結婚を言い出したことで,やっと家族ができると喜んでいたのだ。しかし,結婚式の前日,眠くなって,気がついたらそこは10年後の世界だった。
 ストーリーは入り組んで,少々ややこしい。SFマンガのお約束どおりユーダは実は生きており,顔かたちを変えてつかさの動向を見守っている。
 つかさは面倒見役の通訳クロゥ・ル・ノワと新しい恋に落ち,だがまたしても結婚式直前,クロゥが仕事で火星に行っている間に地下核実験のやりすぎからか地殻変動が起こり,つかさは生き残るために地下の人工冬眠センターに向かう(つかさの出番はここまで)。
 荒廃した地上に降り立ったクロゥは,体内を500年は生きられるという人工臓器に変え,どこに眠るかわからないつかさを探し続けることに決める。

 笈川かおるはりぼんでデビューし,ぶーけに移り,その後いくつかの雑誌で散発的に作品を発表したのち,ここ数年はとんと噂も聞かない。「消えたマンガ家」というより「売れないマンガ家」といったほうがよいのかもしれない。
 しかし,それはなぜなのだろう。
 少々ハスにかまえたところはあるが,キャラ立てはオーソドックスな少女マンガであり,絵柄が悪いとは思えない。セリフはシャレているし,たとえばぶーけで作品を発表している当時は『へ・へ・への方程式』など,そんなに人気がないようには見えなかった。

 意識してかどうかはわからないが,メジャーになることを拒んでいるのは作者当人ではないか。
 たとえばこの『君を待つ千夜』,コールドスリープをテーマに報われない想いを描くことでは清原なつのの『真珠とり』に似ている。しかし,『真珠とり』が宇宙開発時代の待たせる(しかも事故で肉体を失った)男と待たされる女という過酷な愛を描きながら,どこかでその世界を甘やかに許しているのに比べ,笈川作品は根っこのところで世界を,愛を拒否,拒絶しているように見える。クロゥのつかさへの想いは本物だが,それがこの世で成就するとはとても思えない。単にすれ違いの甚だしいメロドラマ,とかいう次元ではないのだ。
 たとえば同時期の笈川の『羽衣一景』シリーズでは,単行本2冊分の読み切り短編を重ねて主人公の青年をいじめにいじめたあげく,最後にはあっさり死なせてしまっている。

 ファンとして哀しいことではあるが,おそらく笈川かおるは読み手が描き手に期待するような意味ではマンガが好きではないのだ。おそらく彼女にとって,この世はマンガに描くにはあまりに曲がりくねり,苦いのだ。さりとて,アバンギャルドな,あるいは人生論的な作風に走るには,彼女はあまりに適度なセンスと社会感覚に満ち,言ってみれば都会的なのだ。作品の中で人生を説いてどうなる,という地平に,彼女はいるのではないか。
 夜毎の苦い酒が必要な大人が,甘いケーキを売っている,そんな感じか。

 だからこそ,笈川かおるの作品にごくまれに顕れる「救い」は,心を洗うのかもしれない。
 楽しくもないかもしれないが,どうかまたメジャー誌で活躍してほしいと願っているのだが……。

先頭 表紙

確かに,笈川かおるは当時の同じ雑誌の作家の中ではなかなか見つからないほうです。実は,買い逃がした単行本が1冊だけあって,けっこう本気で探しています。……でも,ない。 / 烏丸 ( 2001-08-22 19:23 )
まとまりがよいのは確かに『へ・へ・へ』ですが……あれはやはり十代で読むべきでした……。1作,となると「咲きにさくらん」かな。当時のぶ〜けの読み切りで,確か単行本未収録。 / 烏丸 ( 2001-08-22 19:17 )
けっこうマメに神保町を探し回ったのですが、ぜんぜん笈川かおるは見つからず。徒に体重を減らしただけ(ウソ、言ってみただけ)に終わりました。 / こすもぽたりん ( 2001-08-22 18:14 )
私も笈川さんの作品では「へ・へ・へ・の方程式」が一番好きかも。十代の頃、何回も繰り返し読みましたねー。 / けろりん ( 2001-08-20 19:50 )
「へ・へ・への方程式」好きでぶ〜け掲載ぶんのファイルから単行本から未だに手元にありまする。オーソドックスなのにオーソドックスじゃない人? / よこ! ( 2001-08-20 09:42 )

2001-08-17 科学戦隊トクレンジャー 『ST 警視庁科学特捜班』 今野 敏 / 講談社文庫


【ねえ,僕,帰っていい?】

 今野敏にはすでに100冊以上の著作があるというが,購入したのは今回が初めてだと思う。「警視庁科学特捜班が解明する連続猟奇殺人事件」とかいう惹句におどろおどろした猟奇サスペンスと勝手に思い込んで「お,読んでみよう」と購入し,いざ購入はしたものの「こうも暑いとぬたぬたどろどろの猟奇殺人の話を読むのもなぁ,なんか匂いそうだしなぁ」と勝手に思い込んで敬遠していたのだ。いやいやとんでもはっぷんであった。やはり本は読んでみなければわからない。

 本書はパトリシア・コーンウェルの『検屍官』シリーズなどに比べれば……はっきり言えばよほど「秘密戦隊ゴレンジャー」に近い。それも,シリーズの中でも,ちょっと頓狂なギャグ色の強いオーレンジャーやカーレンジャーあたりだろうか。
 いや,実際,解説でも触れられているように,主人公たる科学特捜班の面々の名前たるや城左門,崎勇治,山翔,結城山吹才蔵と,それぞれ色も織り込まれ,もはやトクレンジャーと呼びたいほどだ(リーダーはお約束どおりレッドだし。ただ,翠がピンクでもイエローでもないのは……戦隊シリーズでグリーンが女性だったケースはあるのだろうか)。
 個々のキャラクターの性格付けもなかなか秀逸で,一匹狼を理想とするも人望があって周囲に人が集まってしまうリーダー・赤城(法医学担当),無口な武道の達人・黒崎(第一化学担当),おそろしく美麗な外見のくせに極端な秩序恐怖症,要するに整理整頓が大嫌いな青山(文書鑑定,すわなち筆跡鑑定やポリグラフ,プロファイリングなどの担当),グラビアアイドルも色あせるプロポーションを挑発的な服装で覆う,もとい,あまり覆ってない紅一点の翠(物理担当),そして得度して僧籍を持つ山吹(第二化学担当)。

 さて,本書は,彼らトクレンジャーの面々が,特技があるゆえに身勝手で,捜査偏重のベテラン刑事たちといがみ合いつつ補い合って犯人の正体を暴いていく,そんな構造である。
 要するに,これはマンガだ。たとえば超人的な聴覚を持つ翠は,峰不二子とサイボーグ003を足して割った,とみてあながち間違いではないだろう。

 従って,健全な男子たるもの,ここはミニスカートの翠に「ふーじこちゃんたらふーじこちゃん」状態になるが務めかとも思われるのだが……翠は処女だと自分で公言しており,正直言って外見だけ挑発的,なおかつ数十メートル離れたところのひそひそ話まで聞こえてしまう生娘のお相手は面倒くさい。……いや,別に本の中のキャラのお相手をする必要はないのだが,どちらかというとこの第1作では青山君がポイントだ。なにしろ,彼は殺人事件の現場に行こうが捜査本部の会議に呼び出されようが,すぐに口をついて出る言葉が
 「ねえ,僕,帰っていい?」
そのくせ,実際に犯人像をプロファイリングしていくのは彼の役割なのである。
 いいなぁ,このキャラ。映像化するなら,俳優は誰がいいだろう?

先頭 表紙

「ねえあなた,今の電話,お仕事の話なんて言いながら……」「いや,その,つまり,うううううっ」,カチッ,加速装置。    (それにしても,サイボーグ戦士たちの首のひらひらはなんのため?) / 烏丸 ( 2001-08-24 13:32 )
フランソワーズ・アルヌールとの愛の暮らしの中では、迂闊に携帯電話も使えませんなあ。くわばら、くわばら、桑原茂一(古い)。 / こすも桃内 ( 2001-08-23 19:53 )
いや,「お相手」しないでよいのでしたら,身近においておくことについてやぶさかではありません。 / 烏丸 ( 2001-08-19 02:10 )
どあ〜〜〜〜〜っ、そんな女には、10km以内に近付きたくないわ〜〜〜!! / まやひこ ( 2001-08-17 22:08 )

2001-08-15 3匹めのどぜう 『超・殺人事件 推理作家の苦悩』 東野圭吾 / 新潮エンターテインメント倶楽部


【読者に読ませるには,とにかく大長編でなきゃならんのです。分厚い本でなきゃいけないんです】

 東野圭吾はどちらかといえば好きなミステリ作家ではあるが,単行本を買う機会はめったにない。たいていしばらく待てば文庫化されるし,それを待てないほど鮮度が必須とも思えないためである。
 しかし,本作はつい腹帯の惹句につられて買ってしまった。なにしろ「日本推理作家協会、除名覚悟!」である。商売巧いぞ,新潮社(フォーカスではしくじったみたいだけど)。

 で,読んでみてどうだったかといえば,まー,その。決してつまらないわけではなかったが……どうだろう,文庫化を待ってもよかったかな。

 東野にはすでに『名探偵の掟』や『名探偵の呪縛』という,ミステリというジャンルそのものをおちょくった作品(メタ・フィクションというのかな?)がある。
 とくに『名探偵の掟』は,E・A・ポー以来のあらゆるミステリに通底する「お約束」をぐるりと裏返ししてみせた袋小路のどんづまりのような短編集で,ある程度ミステリにはまった読み手なら必ず拍手喝采大爆笑,かんらからからと笑う大声がそのうち乾く,クールといえばクール,シビアといえばシビアな作品である(ただ,東野という作家は決して学究肌でもおたっきーでもないため,締め付けが少し甘いといえば甘い。そのため,どこか救いが残るのである)。

 さて,本作でそういった楽屋落ちも3冊め,当然当初の目新しさも失せ,それなりに目先を変えないと待ち受けるのはマンネリの濁った沼。ということで今回作者がチャレンジしているのは推理作家当人の楽屋,すなわち編集者との関係や出版業界そのものである。たとえば……と短編のあらすじを紹介したのではネタばれになってしまうため詳細は避けるが,「超税金対策殺人事件」あるいは「超高齢化社会殺人事件」といった収録作のタイトルで,どのあたりを狙っているのか,だいたいのところをご想像願いたい。そして,それらは「ほぼ」成功している,ように思われる。

 しかし。
 巻末の「超長編小説殺人事件」と「超読書機械殺人事件」の2編は,さすがに笑うことができなかった。なぜなら,前半の数編が,売れない推理作家が編集者の言を真に受けるうちに素っ頓狂な苦境に陥ってしまう,といった程度のお話であるのに対し,この2編は,出版業界の抱えた問題を,うっかり正面から扱ってしまっているのである。
 登場人物の一人の独白,「本を読んでいないということに罪悪感を覚える者,本好きであったという過去に縛られている者,自分を少々知的に見せたい者などが,書店に足を運ぶにすぎない。彼らが求めているのは,本を読んだ,という実績だけなのだ」……これはパロディでもなんでもない。ただの現実である。しかも,実際には,いまや「罪悪感を覚える者」「過去に縛られている者」「知的に見せたい者」すら少数派ではないか。

 腹帯の裏表紙側には「もう二度とこんな小説は書けない!」とある。書けるも書けないも,そも大丈夫か,出版界。

先頭 表紙

まやひこさま,昨今は書店のスペースに対して新刊本が多すぎて,段ボールの箱を開けもしないで返品する「ジェット返本」というケースさえ少なくないそうです。それでもなぜ大手は新刊を出し続けるのか……『出版大崩壊』『だれが「本」を殺すのか』の私評もご参照ください。 / 烏丸 ( 2001-08-17 02:43 )
いやまったく。ほにゃらら大名,どこに参勤交代でお出かけやら。少し下で「登呂遺跡の売店で売られている宮崎産の埴輪」の話題を出したのも,ほにゃららさまとのやり取りを思い出してのことでありましたものを。 / 烏丸 ( 2001-08-17 02:38 )
新刊もすぐ手に入らなくなるし、確かに問題は多いですよね>出版界  / まやひこ ( 2001-08-15 06:58 )
誰か書いてくれないかな〜、「花のOLほにゃらら湯けむり失踪事件」。京都に行ったきり。本当に知りたいです。 / ほに〜さまは今いずこ? ( 2001-08-15 06:50 )

2001-08-13 科学者も人の子 『科学史の事件簿』 「科学朝日」編 / 朝日選書


【自分の科学者生命を賭け,そして賭けに負けた】

 出先の病院で思ったより待たされ,手持ちの文庫2冊を読み終えてしまった。活字中毒の発作が出るとまずい。小雨の中,私鉄駅ビルの小さな書店に駆け込み,著者名も確認せずにレジに運んだのがこの本である。

 本書は近代から現代にかけての著名科学者24人を取り上げ,その業績ではなく,スキャンダルな面にスポットを当てる。
 巻頭を飾るのはクローンマウス発生の成功で脚光を浴びたカール・イルメンゼー。しかし,彼はのちにデータ偽造の疑いがかけられ,研究助成が取り消された。このあたり,昨年の東北旧石器文化研究所副理事長による旧石器捏造事件を思わせるが,事件としてのメリハリは旧石器捏造事件のほうが格段に上だ。なんといっても現場をビデオで押さえられたのだから。イルメンゼーのほうは,証言は多々あるが,グレーのまま黙殺といった感じだろうか。
 考古学からは,この旧石器捏造事件の折りにも新聞等で引き合いに出されたピルトダウン人事件(人間の頭骨とオランウータンの下顎骨,歯を組み合わせた偽造品だった)が紹介されている。しかし,ピルドダウン事件は容疑者ばかりが多くて真相はいまだ明らかではない。この意味でも旧石器捏造事件はスキャンダルとして一流なのである。褒められたものではないが。

 そのほか,ダーウィン,パスツール,アインシュタインといった無差別級の大物も扱われているが,当然ながら彼らについてのスキャンダルはさほど面白くはない。驚くような事件があったなら,とっくに津々浦々で話題になっていたはずである。だから,むしろ読んで面白いのは,体重別の世界選手権でメダルに手が届くか届かないかくらいの選手,もとい科学者たちであろうか。
 共同研究したつもりでいたのにほかの2人と違ってノーベル賞をもらえず,選考委員会に公開質問状を送りつけた医学博士。占星術は非科学的だ,と宣言したために喧喧囂囂酷いめに遭った天文学者。新しい放射線(N線)の発見で脚光を浴びながら,どうしてもそれが立証できなかった物理学者。桁はずれに性欲が強くて,科学と共産主義が結びつく未来のユートピアではそのへんもうまく鎮静されるに違いないと夢見た物理学者。and so on...

 本書のもう1つの特徴は,科学という実証主義的なジャンルを得意とする記者ライター諸氏の文体の切れ味である。事実を克明に表現しようとする試みは,結果として現代の文学的文体が失ってしまったキレのよさを示す(よい意味での紋切り型とでも言おうか)。たとえば以下のとおり。

 マジャンディはベルの説が正しいことを証明するために四〇〇〇頭の犬を殺し,ベルの説の誤りも証明するために,さらに四〇〇〇頭の犬を殺したといわれたのだった。(渋谷章)

 (ユングとフロイトは)初めのうちはお互いに手紙で相手を褒め合っていたが,そのうちにこのような間接的な方法では我慢できなくなり,やがて直接会って褒め合うことになったのだった。(渋谷章)

 彼の上司となったのが,ほとんどの伝記や研究所が一致して無能の烙印を押しているヨハン・クライン教授であった。いつの世にも悪玉役のボス教授はいるものだ。(井山弘行)

 こうして,ダーウィンを巻き込む「いざこざ」の舞台が出来上がるのである。あとはダーウィン自身の不注意を待つばかりだ。(斎藤光)

 ……と,読んでいるうちに雨もあがったようだ。
 さあ,本屋に行こうか。

先頭 表紙

まやひこさま,いらっしゃいませ。「科学者は客観的」とおなじくらい「学者○○」という言葉も普及していますから,まぁそこそこバランスとれてるんじゃないでしょうか。日記は拝読しております,古いアナログレコードのCD-R化は大変ですよね(カラスは投げ出して,邦盤or輸入CDでそろえてきました)。 / 烏丸 ( 2001-08-13 18:55 )
美奈子さま,いえいえ,病院に少々用件があっただけで,治療にいったわけではございません。漆黒の着流しを身にまとって魍魎を「祓い」に行った……わけでもありません(残念)。 / 烏丸 ( 2001-08-13 18:54 )
科学者が客観的というのは、ちまたに流布している最大級の迷信ですからね。なんか面白そ〜 / まやひこ ( 2001-08-13 17:21 )
診断名は、ディスプレーの見過ぎによる角膜剥離?(笑) どうぞお大事に。 / 美奈子 ( 2001-08-13 10:10 )

2001-08-09 [鎮魂] 原爆の日によせて 『いしぶみ』 ポプラ社文庫,『チョウのいる丘』 那須田稔 / 講談社青い鳥文庫

 
 今日9日は長崎原爆忌。
 6日の広島原爆忌に,クローズドな掲示板で次のようなことを書いた。

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「語り継ぐ」という言葉はよく聞くが,以前に比べると原爆体験者の言葉や写真がメディアに載る機会がなんとなく少ないような気がする。
パッと思い浮かぶのは中沢啓治『はだしのゲン』だが,あれはとっくに連載が終わっているし,絵にクセがあってちょっとツラい。
ごく普通のドラマの中などで,登場人物が被爆体験者,といった設定も見かけない(たとえば,刑事モノで犯人が被爆者というのは今ではもう難しい)。
56年も前の話だから,やむをえないことなのかもしれないけど。

また,8月になるとお約束のようにテレビで関連ニュースが流れるが,これも昔に比べるとその酷い状況をリアルに語る,という感じではない。
沢山の人が死んだという設定だけ語られて黙祷してオシマイ,な印象。

昔,多分1968年か69年,広島の爆心地の小学校の生徒全員がどうなったかを1人1人追う,というテレビ番組があって,当時の写真を背景に女性ナレーターが淡々と読み上げる,という構成だったのだけれど,これはキツかった。
「6年4組,木村静江。2年前に家族で大阪から疎開。祖母の実家から学校に通う。6日は校庭で被爆。右半身に一面のやけどを負い,担任の藤田先生が抱きかかえて校舎の中に運びこむが,『お母ちゃん』とだけ言い残し,30分後に死亡。藤田先生も3時間後には死亡」
みたいなのを,何百人分も静かに読み上げていくのだ。
小学生だった僕は,チャンネル変えることもできず,呆然と見入っていた。
最後のシーンは,それら読み上げられた膨大な紙の1枚1枚に火がともり,ぱあっと燃え上がる。
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 すると,これに小学校教師のA氏からコメントが付いた。それは「いしぶみ」という番組ではないか,というのだ。本も出ていると。
 以下,A氏のコメントを一部引用させていただく。

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小学校三年生のときに担任の先生が、夏休み前にこの本を朗読し、あまりの内容に胸がしめつけられました。子ども心にも感じるものがあったのか、親に頼んで近所の本屋で取り寄せてもらいました。

現在は私が教える側になり、毎年、学級文庫には必ずこの本を入れ、夏休み前には読み聞かせております。
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 驚いた。30年以上前にたまたま見たテレビ番組のタイトルが,今になってわかるとは。

 Webで「いしぶみ 原爆」で検索すると,1968(昭和43)年に広島テレビで放映されていることがわかる。出演(ナレーション)は杉村春子。
 昭和20年8月6日午前8時15分,広島二中(当時)の生徒たちは広島市本川の土手(現平和公園の近く)で作業従事中に被爆した。1年生322人と4人の教師は全滅。番組は,全員の顔写真とともに死に至る過程を淡々と,克明に,読み上げる。

 本はポプラ社文庫で手に入る。正直,記憶が強烈にすぎて,今読めるとは思えない。
 だが,子供たちには必ず読ませたい。いや,読ませなくてはならない。Aさん,感謝。

 それにしても,細かな記憶違いはともかく「1968年か69年」とはよく覚えていたものだ。
 調べてみると,当時の課題図書にやはり小学生向けの『チョウのいる丘』(那須田稔)というのがあり,その発刊が1968年。こちらは被爆二世の少女が白血病で死んでいく話なのだが,おそらく夏休みに『チョウのいる丘』を読み,さらにテレビで『いしぶみ』を見て,原爆の恐ろしさ,悲しさが意識に焼きついたのだろう。
 『チョウのいる丘』は講談社青い鳥文庫で再販されている。現在は絶版。

先頭 表紙

その「世界」9月号の特集のテーマらしい,風化,空洞化,が問題ではありますね。さりとて,直接の被害者のことを思えば,無闇に騒ぎ立てるのは酷いことでしょうし。この『いしぶみ』にしても,亡くなった子供たちの親のことを思えば,つらい,酷い本なのだろうとは思います。 / 烏丸 ( 2001-08-17 02:37 )
ここで、烏丸さまとお話していたら、今月の9月号に当の岡村氏が水島教授と「世界」という雑誌で対談をしています。ここで今月の目次をクリックするとちょっと読めます しつこくてごめんなさい。 / koeda ( 2001-08-15 13:45 )
その『広島に原爆を落とす日』を見ていませんので,これ以上はなんとも判断できません。ただ,いかなる形であれ,被爆という事実を黙殺していくよりは,さまざまな形で情報を伝達していくことが大切かと思います。それにしても烏丸が不勉強なだけなんでしょうが,昨今のテレビ,新聞は,どうも過去の事件として綺麗に語りすぎるような気がして……。 / 烏丸 ( 2001-08-13 18:27 )
もちろん、東京公演、大阪公演を経ての公演でありましたが、この公演をするにあたって、マスコミが動き、ニュース23や、報道2001で取り上げられ、また公演のため全国から広島に集まった原爆を知らない人たちのことを考えれば、少し時期尚早であったかもしれないが、次段階へのステップアップとして、意義はあったのではないかと思われますが、このままで終わらせてしまうのなら、ただのエンターテイメントと言われても仕方のないような口惜しい気持ちです。 再々公演に向けての地道な活動を期待してします。 / koeda ( 2001-08-13 12:43 )
うーん……被爆体験者が多数おり,日常生活のあちらこちらに原爆の影がいまだ残っている広島で公演することにどれほどの意義があったのか,よくわかりません。ヒロシマ,ナガサキのことなんか何も知らないヨソの人々に被爆とはという事実を伝えるのが優先のような。もちろん,基本的な知識もない人につか流のアクロバティックな展開で伝わるのか,ということもありますが。逆説がインパクトを持つためには,正論がゆきわたってないと……。 / 烏丸 ( 2001-08-13 03:17 )
ちなみに『広島に原爆を落とす日』(稲垣吾郎、緒川たまき主演、原作つかこうへい演出いのうえひでのり)たしかプロデューサーの岡村氏の関係者に被爆体験者がいらっしゃるとか聞き、広島市の教育委員会にも声をかけて広島で公演をした。緒川たまきさんも広島の方だし、稲垣吾郎くんもライフワークにしていきたいと言っていたので期待していたのだが、未だに再々公演がなされず残念だ。 / koeda ( 2001-08-12 13:03 )
『広島に原爆を落す日』を見てから、うちの娘は原爆や、第二次世界大戦に興味を持つようになり、手塚治虫氏の「アドルフに告ぐ」を読み、ヒトラーやルーズベルトにも関心を持つようになった。先日「パール・ハーバー」も見て来て、その帰りに靖国神社にも行ってきたという。先日「火蛍の墓」がテレビでやっていたのを教えなくて文句を言われたが、もう何度も見ていて私には辛すぎるけれど、子供たちは何度も見て同じ過ちは繰り返さないでおこうと思うらしい。 / koeda ( 2001-08-12 12:53 )

2001-08-08 [雑談] アルバムのお遊びあれこれ

 
 古いCDを取り出してとっかえひっかえ聴いているうちに思ったこと。
 なんとなくだけれど,昔のレコードのほうが,遊び心があったのではないか。

 レコードジャケットにジッパーつけてみたり,ブリキの缶にしたり,ジャケットの一部がくるくる回って窓から絵や写真が覗いたり,ジャケットを紙ヤスリにしてみたり(極悪)。ジャケットをばかばか開くと横尾忠則の大きなイラストが描かれている,というのもあった。

 こうしたジャケット遊びは,LPレコードの大きさがあってはじめて成立するようで,音楽CDでも一時豪華な箱入りが流行ったことがあるが,どうもあれはCDのコンパクトさ,整理整頓しやすさと相容れないらしく,ブームはすぐに去った。

 アルバムの中身では,たとえばPINK FLOYDの『原子心母』(ATOM HEART MOTHERの直訳)はA面(CDでは単に1曲目なのだが)の最後にRemergenceという曲が収録されていて,これは何かといえば要するにそこまでの組曲の一部を再現したもの。mergeが「合併する,合流する」といった意味だから,「最合併,再構成」といった程度の意味か。
 同じ手法は,エルトン・ジョンのファーストアルバムEmpty Sky(邦題『エルトン・ジョンの肖像』)でも用いられている。9曲目にクレジットされたGulliver/It's Hay Chewed/RepriseのRepriseのところがそうで,8曲目までのサビをメドレーでががっと再演してくれると,つまらない曲までなかなかシブい出来に聞こえるあたりが不思議だ。
 和モノでは何故か小椋佳の『残された憧憬〜落書き〜』というアルバムでこのRepriseが採用されていた。「白い一日」などを含む,まだ小椋佳の顔が知れ渡る前の作品だが,このアルバムではメインの曲の間に「落書」(I〜VIII)と題された短い曲のピースというか詩の朗読のようなものがはさまれ,なかなか凝ったアルバムである。まぁ,凝ってみても小椋佳は小椋佳なのだが。

 凝ったアルバムといえば,岩崎宏美の初期のアルバム『ファンタジー』がなかなか楽しい。全体が,オールナイトニッポンで知られる故・糸居五郎がDJをつとめるディスコ仕様なのである。
 (1)パピヨン (2)キャンパス・ガール (3)ファンタジー (4)愛よ、おやすみ (5)感傷的 (6)おしゃれな感情 (7)ひとりぼっちの部屋 (8)グッド・ナイト (9)月のしずくで (10)センチメンタル,と選曲もなかなかで,機会があればぜひ一度お聞きください。
 ちなみに岩崎宏美で一番好きなのは『ウィズ・ベスト・フレンズ』に収録された「わたしの1095日」。地味だけれど,潤います。

先頭 表紙

そうですねえ,'70sというと,まずは昌子,淳子,百恵の花の中3トリオ,そしてヒロミ,ヒデキ,ゴローの新御三家……あっ,そーいう話でもない? / 烏丸 ( 2001-08-14 11:26 )
やってくださいよ '70s! バラードでしょ、ル・グインでしょ、ニーヴン、ホーガン、ティプトリーはもうお書きになりましたっけ・・・ / えっ そーいう話じゃない?失礼しました ( 2001-08-14 00:04 )
だうもー。ところで,しっぽなさま&404さまのアーリー'80sを拝読するにつけ,つくづく烏丸はアーリー'70sだなぁとため息をつく今日この頃。 / 烏丸 ( 2001-08-13 18:30 )
おめでとうございます。いちも、高品質な品揃えの貴店の存在に感謝して拝読させていただいております。ますますのご発展を期待しております!! / しっぽな ( 2001-08-13 03:19 )
ややっ,たった今たまたま気がついたのですが,今日で「くるくる回転図書館」ひまじん店が開店して1周年ですね。いつもお読みいただいて,ありがとうございます。 > all / 烏丸 ( 2001-08-08 16:34 )
りりさま,観音開きを開いたらメデューサが,というのでしたら『恐怖の頭脳改革』(Still...You Turn Me Onが好き)ですね。映画「エイリアン」のエイリアンをデザインしたギーガーの作品です。ちなみに『タルカス』は戦車の砲台がアルマジロの顔になっているやつ。 / 烏丸 ( 2001-08-08 12:52 )
私は幼い頃に、近所のお姉さんから見せてもらったELPのジャケットが衝撃でした。「恐怖の頭脳改革」だったか「タルカス」だったか忘れたけど…。 / りり ( 2001-08-08 08:48 )

2001-08-07 すべての子供たちと子供の心をもった大人たちに,この夏の一番星 『なつのロケット』 あさりよしとお / 白泉社JETS COMICS


【待てよ! 違うんだ こんな事 言うつもりじゃ なかったんだ】

 教育,などというと大げさだが,まぁ子供たちにメシを食わせて育てる途中で多少なりとも意識するのは,第一に読書の習慣を身につけさせること,第二に「技術」とそれによる達成感を楽しみとして経験させること,この2つだろうか。

 技術というのは,知識をカタチに変えるワザのことである。
 お絵描きでも工作でもサッカーでも鉄棒でも歌でもピアノでも料理でもテーブルマジックでも泥団子作りでも,素材や目的はなんでもいい。この世には技術によって構築される(逆にいえば技術がないとどうしても実現できない)ものがあるということ,その達成感を体で経験してほしいと願う。
 裏返していえば,PCや携帯電話,あるいは高層ビルのようにいかにも技術技術したものだけでなく,公園のブランコも割り箸もパイプ椅子も綿のシャツもアルマイトの鍋もポケモンのぬいぐるみも,あらゆるものが大小の技術の積み重ねの上に成り立っているという認識,手応えを持ってほしい。それは先人たちがこつこつと日夜積み重ねた工夫の結晶だということ,小さな,あるいは大きなブレークスルーを繰り返してはじめて当たり前のような顔をして僕たちの手元に届けられたものだということを。

 あさりよしとお『なつのロケット』は,1999年,白泉社「ヤングアニマル」に集中連載された作品。「ヤングアニマル」は水着アイドルのグラビアと『ベルセルク』,『ふたりエッチ』が売りという,どうにも小学生にはお奨めしづらい雑誌だが,この夏,ようやく単行本が発売された。

 作品中に登場する理科教師は,教育の壁に苦しんでいる。偏差値偏重の時代に,カリキュラムに添うだけではどうしても教えられないことがあるからだ。彼女の教え子たちもまた,見えない壁の中にいる。自分たちが何をなすべきか,どうやってなすべきかわからないためだ。
 だが,夏休みも終わりに近い夕暮れ,彼らはそれを突破する。
 『なつのロケット』はそんな子供たちの堂々たる成功を謳い上げる,同時にこの上なくいたましい物語である(123ページの三浦少年の笑顔には泣かずにいられない)。

 小学校高学年以上のすべての子供たちには,どうかこの作品を手に取ってほしい。
 そしてほんの少し,勉強や遊びの時間をふりわけて読んでもらえると嬉しい。
 『なつのロケット』はとてもささやかな,短いお話だけれど,その中にこめられた大切なものをどうか汲み取ってほしい。
 そして,これからの人生のいつか,どこかで,この作品に出てくる子供たちのように自分たちの作ったロケットを追って,夕暮れの空を見上げてほしい。


 今 真上……



 なお,「あとがき」によれば本作は第15回サントリーミステリー大賞優秀作品賞受賞作『夏のロケット』に触発されて描かれたとのことだが,これは作者の謙遜が過ぎるように思う。川端裕人『夏のロケット』は1998年刊だが,あさりよしとおが小学生を主人公にロケット開発の歴史を描いた名作『まんがサイエンスII ロケットの作り方おしえます』は1992年の刊行なのだから。

先頭 表紙

koedaさま,いらっしゃいませ。そうですね,そのへんが実に難しい。押し付けを含む「提供」と,自主性に任せた「放任」と,子育てはそのへんのサジ加減かと思います(決め言葉並べた子育て論やそれをふりかざす人くらい信用ならないものはありません)。 / 烏丸 ( 2001-08-13 03:16 )
まさにわが子が悩んでいることが書かれているように思います。 なんでちゃんと色々なことを教えてくれないのだろうと、今貪欲に吸収しようとするわが娘。 できるだけ力にはなりたいと思うけれど、力になっているのかどうか、いつも疑問に思いながら見守っています。 / koeda ( 2001-08-12 17:30 )

2001-08-06 [私見] 新指導要領について

 
【無理数としてのπ】

 数年前に発表された文部省の新指導要領に,戸惑いと憤りを覚えた方は少なくないと思う。「ゆとり」の名のもとにπを3.14…でなく3で計算させたり,台形の面積を指導からはずす,という例のカリキュラムである。
 幸い2002年の実施時点ではπを3で通すヘタレ教科書は1冊もないもようだが,この国の未来を担う子供たちにこれではあまりに心もとない。たとえばソフトウェア産業でめざましく躍進を遂げつつあるインドでは,基礎教育の中で,九×九ではあきたらず,二十×二十までを暗誦させるそうである。かなうわけがない。

 ただ,この新指導要領に今さらかみついたとしても,たいした意味はない。
 というのは,本当の問題はこの新指導要領が求められた背景にあり,たとえば旧来のπを3.14,台形の面積ありの指導要領によっても子供たちの学力は低下し続けてきた,という事実である。

 最大の問題は,悪しき人権主義だ(日教組の弊害についてはここでは触れない)。要するに,体罰がいけないのは自明としても,それに代わる強制手段を何一つ持てない現状の公立学校では,低いほうに学力をならす悪平等以外にいかなる指導もできないということである。極端な例をいえば,女の子全員が赤頭巾,男の子全員が狼を演ずる学芸会,生活水準差が表れないよう弁当持参を禁ずる運動会での順位をつけない徒競走,そして優秀な子供を特別扱いせず,できない子供を受容する心のこもった授業である。
 これらのとんでもなさについて,いちがいに学校,教師のせいにすることはできない。授業中に携帯電話で喋り続ける子供から携帯電話を取り上げると,「子供の権利が侵害された」と両親が県教委にかけこむご時世なのだから(実話)。もちろん熱血先生の個別指導もセクハラで左遷されかねないので要注意だ。
 一部の公立校の「心ある」教師は,学習,進学の意欲の高い児童と親に,塾での学習や私立への編入を奨めていると聞く。「心ない」場合は推して知るべし。

 これだけ問題の根が深いと(なにしろ温床は日本型民主主義原理そのものなのだ),文部省の指導ごときで事態が改善されるとはとうてい思えない。必要なのは構造改革だが,それはすべての教師とすべての親の意識や水準を変える,ということでおよそ現実的ではない。
 結局,郵政事業同様,公立学校による義務教育というシステムそのものが限界にきているのかもしれない。少子化も進んでいることだし,公立学校や教師はどんどん統廃合,リストラして,民間,つまり私立学校や塾に名実ともに任せてしまうのはどうだろう。そして,型通りの平等な教育など諦めて,いっそ徹底的な特殊教育を競わせればよい。たとえばスポーツ選手を育てる学校(すでにあるか),音楽家,政治家,あるいは宇宙開発者を育てる学校。

(これは,ある作品を紹介するための前文なのですが,紹介そのものとこのへんは分けておきたかったのです)

(つづく)

先頭 表紙

九九……快感……。それは青池保子『イブの息子たち』のニジンスキー。ペシ! / 烏丸 ( 2001-08-08 13:00 )
私も20x20まで覚えようかな?インド人の子供に負けたくないもん。 / りり ( 2001-08-08 08:46 )
いえいえ,そういうストレートな教育論本ならこんな回りくどい分け方しないざんす。新刊マンガを紹介するのに,教育論は欠かせないなーとは思ったのだけれど,こういうぐじゃぐじゃした教育の話とは分けたかっただけなのです(3000字におさまらんなーと思っているうちにおねむの時間になった,というのが正確なところですが)。 / 烏丸 ( 2001-08-06 11:42 )
『学力があぶない』ですかい? / 蛇足ぽたりん ( 2001-08-06 11:25 )

2001-08-04 インテリ農民の陵辱的ヰタ・セクスアリス? 『赤目のジャック』 佐藤賢一 / 集英社文庫


【ひひ,まずは奥方さまを優先して】

 相次ぐリストラに倒産,雇用不安の高まる昨今だが,そんな中でもなり手が少なくて求められている職業がある。その1つが時代小説家だ。
 池波,司馬遼といった大物が去り,残るおばさまがたもこの暑さではいつ風太郎に続いて,コホン,いや失礼。ともかく力のある時代小説家の登場が強く望まれ続けてきたにもかかわらずなかなか現れない最大の理由は,創作にともなう時代考証の面倒くささだろう。しかも時代小説の熱心な読み手は歴史や風俗にうるさ,ゴホゴホゴホ,いやつまり,文芸の徒たるもの,常に資料にあたり,正確な表記をむねとするのは最低のつとめであって。

 まあそのくらい大変なのが時代小説家なのだが,よその国の昔の話ともなるとその谷はさらに深く険しい。
 衣食住から言語,役職,宗教,交通,性生活,その他風俗習慣あらゆる項目について詳細な資料をしかも外国語であたらねばならず,その困難たるや想像を絶するものがある。
 ところが,だ。数年前にひょいと登場したこの佐藤賢一,なんと異国の歴史モノを得手とする。しかも,日本人でも多少は人物,ファッションについて知らないでもないフランス革命やルネッサンス期でさえなく,得意な時代が中世,英仏百年戦争期という珍しさである。14世紀ですぞ,14世紀(もっとも中世人が徹底的に暗愚だったとはルネッサンスを贔屓しすぎで,すでに英知の萌芽はあったというのが最近の説らしいが)。

 本書は,裏表紙の惹句によれば「十四世紀半ばの北フランス。百年戦争の果てない戦乱に蹂躙され,疲弊しきった農村に一人の男が現れた。人身を惑わす赤い目を持ったその男・ジャックに扇動された農民たちは理性を失い,領主の城館を襲撃,略奪と殺戮の饗宴に酔いしれる。燎原の火のように広がった叛乱はやがて背徳と残虐の極みに達し…。中世最大の農民暴動『ジャックリーの乱』を独自の視点で濃密に描く,西洋歴史小説の傑作。」

 ……百年戦争で日本人の耳に唯一馴染んでいる名前がジャンヌ・ダルクと思われるが(続いて青ひげ公ジル・ドゥ・レかな),ジャンヌ・ダルクが登場するのは同じ佐藤賢一の作品でも『傭兵ピエール』のほう。こちらは,農民暴動「ジャックリーの乱」……。うーむむむ。

 と肩に力入れて読み始めたが,別に歴史の知識を要求されるわけでもなくすたすた読めて(極論すれば,イギリスとフランスの場所を知らなくても読める。どちらかといえば,イタリアの歴史を多少知っていたほうがよいかも),まぁ面白かったし,登場人物もなかなか個性豊か,最後のオチも,オチとは言わないかもしれないが,まあなかなかうまくまとめているし。

 でも,一番の印象は,なんといっても────いやぁ,こんなえっちな小説とは思ってもみませんでした。勝目梓ほどではないが,花村萬月くらいにはえっちですねー。青少年諸君,電車の中で読むのはやめたまいよ。

 ちなみに,本文庫を手にするのなら,絶対に巻末の作者による「あとがき」や細谷正充の「解説」を先に読んだりしないこと。とくに「解説」。ミステリでいえば犯人とトリックを書いてあるようなものです。まったく何考えてんだか,最低。

先頭 表紙

某出版社勤務の知人が言うには,時代小説家が求められたのは昔のこと,今は「なんでもいいから売れる作家」がほしいとのことです。 / 烏丸 ( 2001-08-04 03:27 )

2001-08-03 [雑談] 手はあるか,iモードの迷惑メール対策

 
 iモードのデフォルトメールアドレスが,電話番号からランダムな英数文字に変わったと宣伝されていますが,相変わらず出会い系サイト等からのスパムメールは届いているようですね(人ごとのように書いているのは,携帯のメールは使っていないから)。

 考えてみれば,「090********@docomo.ne.jp」の数字8桁が数字とアルファベットの3〜30桁になるというのは単に量的な変更にすぎません。むしろコンピュータの得意分野といってよいかもしれない。
 もちろん,メールアドレスだけでなくドメイン名なども複雑にし,ランダムではなかなかヒットしないようにするのは可能でしょうが,それだと今度はユーザーの利便性が損なわれてしまう。とても覚えられない,手打ちできない。

 また,着信拒否を10件に増やした程度ではなんの対処にもならないことは,PCでメールをやり取りしていてもわかることです。同じアドレスからスパムを送り続ける業者のほうが珍しい。

 DoCoMoに打てる決定的な手段としては,素のインターネット経由メールを禁止し,メール発信者から金を取るシステムを開発することでしょうか。効果の不確かなスパムメール10万通に30万円払うなんてのは,さすがの業者もつらいでしょう。でも,これも一般からの利便性考えると多分無理。

 iモードはインターネットと違って集中管理なんだから,同一アドレスから一定以上の数のメールが送られたらそれを廃棄,これはいい考え……と思ったら,すでにシステム改変が検討されているようですね。
 もっともその論拠は「電気通信設備に多大な負荷を与えるため」とかになってしまうでしょうから,数万通程度で禁じられるのかどうかは疑問。しかも大量メールを機械的にはじくのならともかく,後で責任を問う程度では効果はどうか。
 DoCoMoのお知らせを見た限りでは,「裁判所に対し送信を控える旨の仮処分を申請」とのこと,これで業者が動じるとは到底思えません(宣伝メール発信は別業者に委託したと責任回避,業者は複数のPC,複数の使い捨てメールアドレス,複数のIP経由で分散発信……いくらでも逃げの手はありそう)。

 もう1つの手として,iモードのユーザー(Iさんとしよう)にメールを送ると,いったん自動リプライが届き,そのリプライにキーワード(Iさんが設定。姓名とか)を添えてリプライして初めてIさんがメール着信を知る,というのはどうか。これならメールの末尾にシークレットコード4桁を付けるのと違って,Iさんと面識がなければまずヒットしない。もちろん,メール送信側は,1行目にキーワードを書くなりすれば対応メーラーが自動的にリプライするようにすれば実際は2度送る手間はない。
 ただし……当然ながらトラフィック面ではとんでもないことになりそう。

 いずれにしても,メール受信で無条件に金を取るのは,今後難しくなりそうですね。着信メールを一覧表示してからダウン,ということになるのかな。でもそれだとタイトルに要件書けば,それだけで連絡通じますからね。もともとが1〜数行メッセージなんだし。タイトル用の「本文なし」の符牒が流行するんでしょう,きっと。
 それどころか,友達と示し合わせ,フリーメールアドレスを利用して
  ok@****.co.jp
からのメール着信音なら「了解」,
  no@****.co.jp
からなら「やだよ」の意思表示。これなら,タイトル表示すら必要ない。

 まぁ,この問題の根を絶つには出会い系サイトがはびこる社会と人間性のほうをなんとかしろよ,ですが……これがなんとかなるようなら人類なんてとっくの昔に滅びているわな。

先頭 表紙

ところで,とりあえず,メール着信音と電話受信音を個別に時間制限する機能(ex. 深夜2:00〜朝8:00はメールを着信しても鳴らない)なら簡単に開発できるような気がしますが……。いかがかな > NTT DoCoMo / 烏丸 ( 2001-08-03 20:21 )
あややさま,スパムメール送信を請け負う業者のアルバイト君がPCの前で仕事する姿を想像したら……やはりそれは夜中から朝方にかけてでしょうか。机の上にはゲーム機のコントローラとコーヒー牛乳,かな。 / またしりとり誘ってくださいませ ( 2001-08-03 20:19 )
なるほど!読んでるほうが面白くて、しばらく迷惑メールのメイワクサをわすれてしまいました。個人で変更したのにまだくる出会い系・・。しかも真夜中とか朝方です。ぷんすか。 / あやや ( 2001-08-03 19:33 )

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