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烏丸の「くるくる回転図書館 駅前店」

 
今後、新しい私評は、
  烏丸の「くるくる回転図書館 公園通り分館」
にてアップすることにしました。

ひまじんネットには大変お世話になりましたし、
楽しませていただきました。
その機能も昨今のブログに劣るとは思わないのですが、
残念なことに新しい書き込みがなされると、
古い書き込みのURLが少しずつずれていってしまいます。
最近も、せっかく見知らぬ方がコミック評にリンクを張っていただいたのに、
しばらくしてそれがずれてしまうということが起こってしまいました。

こちらはこのまま置いておきます。
よろしかったら新しいブログでまたお会いしましょう。
 

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2001-06-19 たまにはベタボメもいいでしょう 『ガダラの豚』(全3巻) 中島らも / 集英社文庫
2001-06-17 ほんの少し復調 『不肖・宮嶋の天誅下るべし! 写真に嘘は写らんど!』 宮嶋茂樹 / 祥伝社
2001-06-16 『陰陽師 10 大裳』 原作 夢枕獏,作画 岡野玲子 / 白泉社(Jets comics)
2001-06-13 ドーナツブックスいしいひさいち選集 36『クローン猫』 いしいひさいち / 双葉社
2001-06-11 カラスマルは偉くもなんともないが 『カラスは偉い ─都会のワルが教えてくれること─』 佐々木 洋 / 光文社知恵の森文庫
2001-06-10 子カラスたちへ
2001-06-06 20年の疲弊 『奇術探偵 曾我佳城全集』 泡坂妻夫 / 講談社
2001-06-03 ようやく発売! 『となりのののちゃん』 いしいひさいち,おがわひろし / 東京創元社
2001-06-01 これまたヒーロー復活 『大魔神』 筒井康隆 / 徳間書店
2001-05-29 [閑話] 何が足りない? 陽水の「花の首飾り」


2001-06-19 たまにはベタボメもいいでしょう 『ガダラの豚』(全3巻) 中島らも / 集英社文庫


【あんたも来んかね】

 かつて,ブンガクといえば面白いものだった。
 バルザックやデュマは言うに及ばず,『罪と罰』だって『赤と黒』だって『ウィルヘルム・マイステル』だって読み始めれば手に汗握る面白さである。難解と言われるボードレールやランボーですらウキウキワクワクするし(さすがにマラルメやヴァレリーは少々しちめんどくさいが),漱石や鴎外のネ暗な話もハラハラドキドキの心持ちである。

 面白いブンガク作品はそうでないのとどこが違うのか。
 第一に,スジである。スジのないオデンにはコクがない,と言われたときに関西風と関東風で実は全く別のスジのことになってしまうのだが,そのスジはまた別の機会に。
 第二に,キャラである。キャラが立たねば男がすたる,女がしおれる,火星人が枯れる。
 第三に,言葉遣いである。ここは覚えといて今度あの店でレイコちゃんの前で一発キメたろ,というくらいかっこよいキメゼリフの2つ3つはちりばめてほしい。
 人生や社会を語るのもよいが,それは人様に読んでいただけるものを提供したうえでの話である。読んでもらえぬ純ブンガクになんの価値がある。

 というわけで,今夜取り上げるのは,面白さではスーパーヘビー級,中島らも『ガダラの豚』。

 第一に,スジが凄い。
 主人公は,アフリカの呪術を研究する大学教授とその妻である。彼らはフィールドワークでアフリカを訪れた折に娘を失い,それ以来8年間,やや投げ遣りな人生を送っている。そんな折,妻が新興宗教にかぶれ,その教祖の奇跡はすべてトリックであると証明することになり……と,しごく理性的な第一部が氷だとしたら,夫婦とその息子,スプーン曲げで一世を風靡した超能力青年らがテレビ局の特報番組の撮影のためにアフリカに向かい,恐ろしい呪術者と出会う第二部が水,命からがら日本に戻った後のジェットコースター的展開の第三部がもうもうたる水蒸気。著者がプロレスをはじめ格闘技のファンであることも影響しているのだろう,理性と呪術敵味方入り乱れてのタッグマッチはひとたび読み始めるとページを繰る手が止まらない。
 第二に,キャラが凄い。
 アル中気味だがどこか憎めぬ大学教授,第二部以降俄然生気を取り戻す妻,生真面目な教授の弟子,世をすねた超能力青年をはじめ,殺られ役の端役にいたるまで個性派がそろう。マンガすれすれの破天荒な性格付けながら,いずれもどこかに白いもの,黒いものを抱えた者たちである。
 第三に,見事なまでの会話の妙。
 随所に味のあるやり取りが重ねられ,1ページ分を抜き出しただけても味のあるコントができ上がりそうだ。ことに後半無残に殺されてしまう……いや,読んでいただければ一目瞭然だろう。

 怒涛の展開に面白がって付き合うだけでもよいが,語られる問題は決して軽くはない。超常現象について,甘い考えを持つ者には少々キツい内容かもしれない。殺害シーン,寄生虫についてなど,少々エグい描写もある。
 だが,全体を通しての爽快感,あふれる元気,これはどうだ。
 本書は推理作家協会賞受賞作品である。賞などどうでもよいが,それにしてもなぜそんな賞なのか。直木賞選考委員は何をしていたのか。

 この国のブンガクは,ミステリだ時代小説だホラーだ恋愛小説だとジャンル分けに熱心なあまり,一番大切な面白さをないがしろにしてきた。それでもたまにこうしてどのジャンルにも押しはめようのない,しかも底抜けに面白い作品が登場するからたまらない。『ガダラの豚』,しいていえば「大文学」である。

先頭 表紙

これは真氏さま,いらっしゃいませ。「医療・生活」では医療について,あれこれ勉強させていただいております。病気というのは……やっかいで大変で逃げられないものですね。身近な者もあれやこれや引きずり込まれてしまい,なんとも。お忙しいでしょうが,これからも書き込みお願いいたします。 / 烏丸 ( 2001-06-24 14:47 )
ありがとうございます、ためになります / 真氏 ( 2001-06-24 06:43 )
ちなみに,「大文学」の評価は体積がものを言いますが,ブンガクの評価は体積だけでなく,密度や質量,色合い,とんがり具合などあれこれありますね。体積も質量もたいしたことないけど,触媒として化学反応をうながすタイプ,なんてのもあります。 / 烏丸 ( 2001-06-20 12:39 )
それにしても,中島らもという人は,エッセイ(とくに朝日新聞の『明るい悩み相談室』)や短編におけるウケの印象が強く,小器用なマルチタレント,と認識しておりました。『ガダラの豚』はその印象とはまったく逆で,このフロシキの大きさ,小器用で書けるものとはとても思えません。おみそれおみそれ。 / 烏丸 ( 2001-06-20 12:34 )
知り合いから,面白いのはともかく「大文学」はほめすぎでは,という指摘をくらってしまいました。確かにこの作品,パーフェクトというわけではありません。「大文学」というのは,言ってみれば私小説や本格推理と並ぶような一種の分類であって,広く大きなテーマにのっとった長編小説,といった感じでしょうか。テーマ性,人物の造詣,物語の展開などの各要素(xyzの各軸)の絶対値が大きい,つまり体積が大きいというか。『ガダラの豚』は「大文学」の中では並の上,あたりかな。 / 烏丸 ( 2001-06-20 12:34 )
いやいや、ホントに面白かったと思います。結末も予想外の展開、最後まで楽しめた記憶があります〜。 / TAKE ( 2001-06-20 00:17 )
なるほど『レスターとスピッツの山』と同年ざんしたか。そっちのオバサンも直木賞をやらないわけにはいかないし,しょうがないですかね。ただ,中島らもはこれ以上の作品は難しいかもしれません。書き手には励みかもしれませんが,芥川賞論外,直木賞もどうでもよい今日この頃。芥川賞なんて受賞後初の単行本が1000部程度というのもざらだそうざんす。 / 烏丸 ( 2001-06-19 13:11 )
『ゴーダ、山に登るの巻』に破れて、直木賞逃したざんすよ。『じんたも』の時もダメでしたなあ。残念至極。 / こすもぽたりん ( 2001-06-19 09:52 )

2001-06-17 ほんの少し復調 『不肖・宮嶋の天誅下るべし! 写真に嘘は写らんど!』 宮嶋茂樹 / 祥伝社


【よっしゃあ! 任したらんかい!】

 前作『不肖・宮嶋の一見必撮!』は,写真がつまらない,文章のノリが悪い,編集が底なしに勘違いと,とことんがっかりさせられた1冊だった。個々の記事が「一発やったらんかい」的破壊力に欠けるため,どうにも救いがないのである。

 たとえば初期の快作『ああ、堂々の自衛隊』では,カンボジアのPKOに動向して動向を撮影する記事や写真の1つ1つに,大朝日・大毎日やピースボートへの強烈な反発があった。世のおきれいごとにおさまらない報道カメラマンの骨太いガッツとでもいうか,無茶を承知のバイタリティがあった。振り返ると,その力が最も明確な形で結実したのが『不肖・宮嶋 史上最低の作戦』であったように思われる。ノルマンディー上陸50周年記念式典にて旧ドイツ軍砲台後で日章旗を振る,北朝鮮に潜入し偉大なる首領様の銅像の前でポーズを真似る,CIA秘密訓練センター潜入,四泊五日ほとんど飲まず食わず眠らずのレインジャー訓練動向,硫黄島戦勝(!)記念日撮影,そしてオウムとの確執など,もはや伝説レベルの強烈な記事が並んでいる。東京拘置所の麻原彰晃スクープ,韓国・光州動乱,ハマコーの裸参り,成田闘争,人肉事件の佐川一政などの記事の並ぶ『突撃取材・血風録 死んでもカメラを話しません』と並ぶお奨めの1冊である。
 そのほか『不肖・宮嶋 南極観測隊ニ同行ス』についてはやはりこすもぽたりん氏の詳解を,『不肖・宮嶋の ネェちゃん撮らせんかい!』については拙文をご参照いただきたい。

 などと,旧作の名シーンばかりあつめたドラえもんビデオみたいな書き方になるのは,新刊『不肖・宮嶋の天誅下るべし!』について書くことがあまりないからである。
 前作『不肖・宮嶋の一見必撮!』よりは1つ1つの記事にボリュームがあるだけなんぼかましだが,それでも角投手の愛人マンション張り込み,森進一・昌子の熱海温泉旅行強撮,オーストラリアでハレー彗星撮影(失敗),三田寛子の大学受験入試会場潜入,フロリダ・ディズニー取材などのフライデー,クレアネタは,雑誌が雑誌だけにターゲットからしてヌルい。南極観測隊同行ウラ日記なども,不肖・宮嶋の著作に長年付き合ってきた身には少々インパクトにはかける。全体に,これまでの単行本で後回しにされたネタであることは否定できないのである。

 しかし,それでも,面白くないかといえば,やはりそこそこ笑えるのが不肖・宮嶋本である。
 また,チベットで行方不明になった長谷川美子カメラマンについて触れた一節,東名高速に出没するベンツ300Eの覆面パトカー撮影,そして出所したオウムのマハーケイマこと石井久子の追跡記事には,初期よりヌルいとはいえ,宮嶋らしい反骨精神がうかがえる。「子どもたちと静かな普通の生活を送っていけたらと希望しております」という石井に対し「殺された十九人も六〇〇〇人以上の被害者も皆,静かな普通の生活を送りたかったのである」と返すあたりは溜飲が下がる。

 ところで,本書の「まえがき」には,タレントの告白本が売れていることに対抗して「彼女は自分で書いてたかどうか知らんが,私は本当に自分で書いたぞ!」とある。サイバラの『鳥頭紀行』で有名になった,ホモカツこと勝谷誠彦が原稿を書いていた,あの話はどないなっとんや?

先頭 表紙

現在はいかなるミッションをかかえて潜伏しているのでしょう。かの地はそろそろ秋? / 烏丸 ( 2001-06-19 02:37 )
ミナ嶋さん、お元気かしら。。。 / アナイス ( 2001-06-19 00:00 )

2001-06-16 『陰陽師 10 大裳』 原作 夢枕獏,作画 岡野玲子 / 白泉社(Jets comics)


【晴明が生命を選ばないのなら おれは海の藻屑だ】

「なんだかなあ……心配になるのだ晴明よ」
「博雅の心配ぐせは新刊が出るたびだな」
「ひどいな。お前が出てくる本だから心配しておるというのに」
「そういうおぬしも出てくるではないか」
「それはそうなのだが……このごろ一冊ごとに分厚くなり、最初のうちは一巻の中に二つ三つの話がおさまっておったものが、今度の十巻めではとうとう一つの話さえ終わらなかったことが心配なのだよ」
「ほう」
「おれはな、晴明。このシリーズにはなにやら深い意味があるように思えてならんのだ」
「わかるか博雅」
「だがそれはな、言葉にあらわしてはいけない、なにか尊いもののように思えるのだよ。ところが今度の十巻では晴明、お前がずっと喋り続け、心をあらわにし、髪をふりみだして安摩を舞う。おれはそれが心配なのだ」
「うむ。しかし主人公たるもの、わかったような顔でうなずいているだけではいかんのだがな」
「そうだろうか晴明。夢枕獏原作のこのシリーズでは、陰陽師たるおぬしの凄みを描くためにおれが呼ばれてきたように思われてならないのだよ。だからおれは多少呑気でピュアなワトスンでそれはかまわぬのだ。おれを間において菅公が暴れ、おぬしが軽々と受ける。おれをはさんんで黒川主が攻め、おぬしが悠々と受ける。おれを道化にして真葛どのが怒り、おぬしが蒼々と受ける。それが陰陽師のあり方ではなかったのか」
「ほう。博雅、案外わかっているではないか」
「それがこの十巻では……一巻を初めて手にした者は二巻の発刊を待ったことだろう。二巻を初めて見たものは一巻を探したことだろう。三巻、四巻、五巻とそれは変わらぬ。だが今回の十巻をはじめて手にした者に、はたして晴明、おぬしの凄みはわかるだろうか。真葛どの妖しさは伝わるだろうか。菅公や黒川主、玄象ら、鬼の眷属ならではの一本はずれた調子は伝わるであろうか」
「確かに……今回は少し本音を喋らさせられすぎたとは思っているのだよ、博雅。おれも真葛も嘆いたりあわてたり、少々人間味を出しすぎたようだ。おまけに、ハナピーだのウェイブだの、たまに混ぜるから効果のある現代用語も多用しすぎときている。要するに過剰すぎるな、あれもこれも」
「そうなのだよ、晴明。不思議のあらわれはそうでないもののなかにすべり込んであるときに一番驚かされるものだ。塔が炎に包まれた中でいかに衣を焼こうとも、人の目には見えぬのではないか」
「うむ、おれもな、困ってはいるのだよ。今回、ことに前半などまるで岡野玲子の創作ノートだからな。しかもそんな折も折、義父たる手塚治虫賞受賞(岡野玲子は手塚眞の妻)ときたものだ。余計なことを……」
「晴明、おれはどうすればよいのだ。なにかできることはないのか。真葛どのが泣きくれるなど、このウェットさ、まるで日出処天子終盤の二の舞ではないか」
「うむ……そうだな、博雅。ひとつ笛を吹いてくれぬか」
「む。こんなときにか」
「こんなときだから、笛の音がいいのさ。葉二は持ってきているのだろう」
「そうか、わ、わかった。吹こう」

     ヒィリ ラ… ヒィラ ハ…
                  ヅ ドォ ドォン ドォン

     ヒィ…ラ…ハ… フロ…ルロ…オ…
                  ヅ ドォ ドォン ドォン
                  ヅ ドォ ドォン ドォン

先頭 表紙

そうなんです小枝さま,これまでにない分厚つさで,それでも今回はお話が完結しないのです。続刊が出るまで,フラストレーションがたまりそうで,もう。 / 烏丸 ( 2001-06-18 13:20 )
JAIさま,それでは「陰陽師」の映画化のときにはやとってもらうことにして。シナリオ集がベストセラーになって,別荘「のろいの館2」を建てて……とらぬ陰陽師の呪算用。 / 烏丸 ( 2001-06-18 13:20 )
なるほどねー。本屋さんであまりの厚さにびっくりしてしまいました。 / 小枝 ( 2001-06-18 12:02 )
うーん、お上手。読みいってしまいました。烏丸様にドラマの脚本書いて欲しかったような(笑)。 / JAI ( 2001-06-16 17:25 )

2001-06-13 ドーナツブックスいしいひさいち選集 36『クローン猫』 いしいひさいち / 双葉社


【キーボードでつき指してアイテテ革命】

 昨秋2年ぶりに新刊2冊,と喜んでいたら早くも36巻の登場である。
 「クローン猫」というサブタイトルは過去の「いかにも葡萄」「椎茸たべた人々」「ああ無精」「毛沢東双六」「とかげのアン」などに比べると今一つパッとせず,さすがにネタ切れかと思われるものの,収録4コマたるや言うべきにあらず,いしいひさいちはやはりいしいひさいちである。
 ここしばらくの定番,ナベツネワンマンマンをはじめ,ノーテンキ森ヨシロー,グリーンビル・ワドル艦長,ノンキャリウーマン三宅さん,101匹忍者くんまで,例によって例のごとし。一時期少し目についた「ずっこけ」オチがほとんど見当たらないなど,高め安定のクオリティである。

 それにしても,あの不肖宮嶋,鳥頭サイバラですら単行本をいくつか売るうちにいまやどことなくゴージャス,ゴーマンなもの言いが目につき始めたものを,いしいひさいちのこの変わらなさはどうだ。バイトに明け暮れる貧乏学生を描いてその情けなさ加減が20年以上維持できるというのはいかなる精神構造なのか。

 ことに,仲野荘13号室のオッサンの電車とび込みを描く最後の1編に漂うものはもはや幽味,玄妙としか言いようがない。

「リストラされて,ラーメン店失敗して,タクシーの運転手で体をこわした,とか言う」
オッサンの人身事故に集まったバイトくんら野次馬が,
「15分で運転再開」
と聞いて線路の信号線こっそりぶち切って言うのだ,
「1時間ぐらい止まったれよ」

先頭 表紙

2001-06-11 カラスマルは偉くもなんともないが 『カラスは偉い ─都会のワルが教えてくれること─』 佐々木 洋 / 光文社知恵の森文庫


【またとない】

 うるさい,怖い,汚い,不吉だ……カラスにあまりよいイメージはない。とくに都市部では巣の周辺でヒトが襲われて怪我をするケースもあり,ゴキブリ,ネズミ等と並んで嫌われものの1つである。
 東京都では,昨年来,カラスの捕獲作戦が進められている。電話で申し込みを受け付け,巣を除去し,ひなを捕獲するというものだ。数百か所規模で実施が予定されているという。しかし,実際のところ,彼らの喜ぶ生ゴミを放置して,遠方から呼び寄せているのはヒトの側である。呼びつけておいて捕獲,撤去,カラスにしたらひどい言いがかりだ。まぁ,国内でも最もありふれた鳥の一種だった朱鷺を無造作に滅ぼし,オス,メスとも中国から借りてきて「ひな元気に育つ」と喜ぶのに比べれば同じ身勝手でも正直なだけましかもしれないが(子孫のためにもはっきりと言うべきだろう,私たちはニッポニア・ニッポンと名づけられた大切な鳥の,野生種の最後の1匹まで死なせた国民である)。

 と,ややカラスに肩入れした書き方をしてはみたものの,烏丸は(ハンドルに烏の名を用いているくせに)カラスが好きか嫌いかといえば,とくにどちらの意識もない。ニュートラルといっていいだろう。
 ただ,夜明け前の電信柱にずらりと200羽(ひぃふぅ……10匹でこのくらい,全体では,と大雑把に数えてみた)ばかり並んでいるのを見たりすると,さすがにちょっと怖い。一斉に襲ってきたら少しまずいんじゃないかという凄みがある。しかも,「きゃつら,こちらをの個体を識別し,考えを把握しているんじゃないか」と思わせるにたるだけの頭のよさを感じることが多いことだし。

 本書は,江戸川区北小岩に世界でただ1つの「カラス博物館」を公開するほどのカラス好きな著者が,カラスの賢さ,家族愛,さまざまな不思議な習性(言葉を覚える,遊ぶ,適応能力が高い,などなど)に注目し,紹介した本である。
 埼玉県川口市のグリーンセンターをねぐらとするカラスの大群が早朝京浜東北線に沿って上京して都心で生ゴミをあさり,また帰っていく,という話に「あれっ?」とカバーを見直すと,著者近影に見覚えがあった。著者の佐々木洋氏は「プロナチュラリスト(自然案内人)」という変わった肩書きを持つ人物なのだが,最近たまたま覗いた「町中で見られる生き物」というタイトルの講演の講師だったのであった。

 数羽でチームを組んで,1羽が電線の上から小石やクルミの実を落とし,ほかの数羽でそれを奪い合う「石落とし」に興じるカラス,滑り台で滑って遊ぶカラス,ごった返すラッシュ時のホームで電車を覗き込む鉄道マニアのカラス,中高年のオバちゃんの笑い声そっくりの声でなくバカ笑いカラス,高いところから貝を落として割るカラス,公園で居眠りする人のポケットからものを取り出す「すりガラス」などなど,さまざまなカラスが紹介される。
 カラスを呼ぶことのできる伊豆大島出身のタレント(森川朱里)まで紹介される。

 付録として,「烏」や「鴉」という文字を使った言葉や地名一覧,さらにはカラスの登場する主な本まで紹介されて,(なんの役に立つかはともかく)資料性もなかなかだ。
 おや,エドワード・D・ホックの『大鴉殺人事件』も入っている。椎名誠の『銀座のカラス』もそういえばそうだ。『カラスがハトを黒くする?』ってほんとか。『カラスの勝手はゆるさない!!』,ごめんなさい,『烏の沽券』,いやはや,『カラスの死骸はなぜ見あたらないのか』,矢追先生の有名なとんでも本,『烏天狗カブト』,コブラの寺沢武一の作品,『蛸とカラスの共和国』,なんだそりゃ……。

先頭 表紙

八咫烏(ヤタガラス)は古事記に出てくる伝説上のカラスで,熊野灘に上陸した神武天皇の道案内のために天からつかわされたものだそうです。日本サッカーのシンボルとされたのは意外と古くて,1931年のことだそうです。 / 烏丸 ( 2001-06-18 13:19 )
ヤタガラスって例のJFAエンブレムのやつですね! あれもきっといろいろ由来があるのですね! あの日は僕も脱力してました…(笑) / TAKE ( 2001-06-17 19:08 )
実はコンフェデ杯とヤタガラスについてまで書く予定だったのですが,準優勝(残念)ということで,なんとなく気が失せてしまいました。 / 烏丸 ( 2001-06-11 02:15 )

2001-06-10 子カラスたちへ

 
 この週末は家人が京都に出かけ,子カラスと3人で留守番である。
 プールや買い物で楽しい1日を過ごした子カラスたちだが,最近それなりに大人びて,と思われていた上の子カラスが夜になって突然顔をくしゃくしゃにして泣き出した。考えてみればこの子カラスども,生まれてからずっと母親のいない夜など過ごしたことがなかったのだ(父親はいないことのほうが多いが)。
 叱ったりなだめたりしながらも,思うのは大阪の事件の子供たちのことだった。

 お母さんが一晩いないくらいで泣いてはいけない。
 殺された8人の子供たちはね,もう,お母さんの胸に抱かれることも,お父さんの膝ではねることもできないんだよ。夏の海でいっぱいに光を浴びることも,木枯らしの中でサッカーボールを追いかけることもできないんだよ。どきどき新しいページをめくることも,肩を寄せて歌うことも,もう二度と,二度とできないんだよ。

先頭 表紙

当たり前に育ち,育てられることがいかに幸せか,ということを考えたりもしました。亡くなった子供たちのこと,親御さんのこと,残された子供たちのこと,どう考えてもたまりません。 / 烏丸 ( 2001-06-11 02:20 )
悲しい事件でした・・。 / あやや ( 2001-06-10 13:36 )
ホントに痛ましい悲しい事件でした。なんでこんなことが起こりうるのだろう…、咀嚼消化不可能のままの三日目です。 / TAKE ( 2001-06-10 12:26 )
本当につらい事件です。許せません。 / Ecru ( 2001-06-10 11:56 )
何の前触れもなく、突然、命を奪われた8人の子供たち。無限の将来を断ち切られたことが悲しい。泣くことも笑うことも出来なくなった子供たち、ただただ合掌するだけです。 / 夢楽堂 ( 2001-06-10 07:55 )

2001-06-06 20年の疲弊 『奇術探偵 曾我佳城全集』 泡坂妻夫 / 講談社


【佳城というのは墓場の意味だった】

 本書は,引退した美貌の奇術師・曾我佳城を探偵とするミステリ短編集で,二段組500ページを越えるハードカバー大作である。昨年6月の発行,「このミステリーがすごい!」2001年版第1位作品でもある。

 しかしこれを3,200円で購入するには少々抵抗があった。実は収録22編のうち14編は
 『天井のとらんぷ』(講談社文庫 1986年8月発行 420円)
 『花火と銃声』(同 1992年8月発行 480円)
で発行済み。420円,480円で各7編,残り7編のために2,300円……というさもしい算段もなくはない。だがそれ以上に気になったのは,最近の泡坂作品のクオリティである。

 念のため書いておくが,泡坂妻夫は国内のミステリ作家としてはベスト3に入れたい大好きな作家である。短編集「亜愛一郎」シリーズはチェスタートンのブラウン神父譚に匹敵,いやそれ以上と面白く読んだし,今もたまに夢に見るほどだ。
 しかしここ数年の作風は……。
 近作の文庫の解説を見てみよう。

 『宝引の辰捕物帳 凧をみる武士』(文春文庫 1999年8月発行)
  ──絶妙な趣向が凝らされていると同時に,深い人間洞察に裏づけられて……

 『からくり東海道』(光文社文庫 1999年6月発行)
  ──からくり尽くしで構築したこの贅沢な伝奇小説……

 『亜智一郎の恐慌』(双葉文庫 2000年7月発行)
  ──亜愛一郎シリーズをはじめ泡坂さんのほかの作品の熱心な読者であればあるほど,にやりとさせられる仕掛けがあちこちに施されているのですが,そんなことは知らなくても,これ一冊だけでじゅうぶんに楽しめ……亜愛一郎の現代シリーズに比べて,ミステリーとして少し物足りない気が……

 実のところ,『凧をみる武士』については絶妙な趣向とも深い人間洞察とも思えなかった。『からくり東海道』のからくりはぴんとこない。『亜智一郎の恐慌』にいたっては解説からもつまらないことが明らかだ。

 最近の泡坂作品の解説者は,作者がマジシャンとして有名であること,本職が紋章上絵師であることを繰り返すばかり。関係ないだろう。そんなこと知らなくとも泡坂作品は十分,いや破天荒に面白かったではないか。
 あの(ネタばれになるので作品名は伏すが)お遊び精神の権化ともいえる信じがたいトリック,製本・編集にまでタネを仕込んだからくりの数々,「本の体裁をとったマジックショー」の作者はもういない。作者の情熱が失せたのか,空回りしているのか,それはわからないが……。

 曾我佳城シリーズも,旧い文庫2冊に収録されていた作品のほうがずっとよい。
 大学の先生がついつい目先のことに興味を引かれ,ふらふら深入りしてしまう「天井のとらんぷ」,テレビのニュースバラエティショウの会話だけで事件を描き上げる「白いハンカチーフ」,スキー場の山荘を経営する若夫婦ウナトット,カマトットの二人の会話が奇妙な漫才のように展開する「ビルチューブ」などなど。各編に登場するきりりとした女たちもすがすがしい。

 今回初めて収録された7編はそれらに匹敵する出来とは思えず,最終話の「魔術城落成」にいたってはミステリ史上何度も書かれたウェットかつ凡庸な締め方,しかもそれまでの切れ味,探偵の存在感を全否定しかねない不自然さである。トランプはこぼれ,帽子は濡れてしまった。手品の域ではない。

 とっぴんしゃん,とんでもはっぷん,すっとんきょう。
 願わくば,もう一度あのとぼけたアクロバットの妙味を味わいたいものだ。解説,選評の諸氏も,持ち上げるばかりでなくもう少し正直に書くべきと思うのだが,如何。

先頭 表紙

ブラウン神父の名言中の名言といえば「木の葉を隠すには森を,死体を隠すには……」ですが,最近は「失言を隠すには失言を,利権を隠すには利権を……」な事件のあまりにも多いことよ。 / 烏丸@社会派 ( 2001-06-06 12:41 )
ブラウン神父は所々で滋味のように光るフレーズが記憶に残っています。 / ces@変な日本語で失礼 ( 2001-06-06 06:47 )

2001-06-03 ようやく発売! 『となりのののちゃん』 いしいひさいち,おがわひろし / 東京創元社


【トホホケキョ】

 この機会に,と,手元のいしいひさいち本を数えてみた。
 双葉社『ドーナツブックス』35巻,チャンネル・ゼロ『問題外論』17巻,同『バイトくんブックス』7巻,少年画報社『スクラップスチック』7巻,東京創元社『大問題』シリーズ6巻など合わせて114冊

 中にはプレイガイドジャーナル社『バイトくん』3巻,双葉社『がんばれ!!タブチくん!!』3巻などいまやレアとなった単行本も含まれている(オークションで万単位でやり取りされるものもあるようだ)。
 我ながら少々鼻が高いのは,昭和53年(1978年)11月1日発行のWeekly漫画アクション増刊『いしいひさいちのがんばれ!!タブチくん!!』があることだ。プガジャのバイトくんが単行本になるより前のものだから,いしいひさいちの作品が全国区でまとめられた最初の冊子ではないかと思う。もちろんタブチくんはまだ阪神の現役扇風機で,後藤監督,チームメイトが中村,藤田,ブリーデン,江本,古沢,佐野の頃である。
 同じアクション増刊で昭和61年(1986年)8月3日発行,『タブチくん みんなのプロ野球』もある。この増刊にはなんと欄外にタブチくんシリーズの研究データ(キャラクター別4コマ出演本数,セリフ文字数ランキング,タブチくんの阪神,西武時代の(もちろん4コマの中での)全成績,球団別総比較など)が掲載されており,何に使えるかはともかく,恐ろしく資料性が高いのだ。

 ……と,いささか自慢げに書いてはいるが(否定はしない),さりとて自分がいしい本のコレクターであるという意識はない。なにしろ朝日新聞連載の『ののちゃん』を1冊も持っていないのだ。単に「おもしろそうな4コママンガ」を買って積んで捨てなかった結果が114冊。いしいひさいちがいかに凄いかということだろう。

 さて,115冊めの『となりのののちゃん』は,一見朝日の『ののちゃん』の単行本のように見えて,実は違う。東京創元社の新刊案内には,なんと「経営危機に陥ったアニメ制作会社チャンネル・ゼロリが起死回生の一策として打ち出したいしい被災地原作『となりのののちゃん』のアニメ化をめぐる一大騒動。連作長編漫画」とある。連作長編漫画!
 本書をめぐっては,いしい本の発行・委託編集で知られるチャンネル・ゼロの業務縮小やアニメ「ホーホケキョとなりの山田くん」のスタジオ・ジブリとの確執などが噂され,それを裏付けるかのように再三発行が延期されてきた。気になる,気になる……。そして,ついに書店店頭に並んだ『となりのののちゃん』!

 ……なんということはない,ののちゃん回りの単行本未収録4コマに旧作を加えて,前後に「ののちゃん」をアニメ化するぞというストーリーギャグ(といえるかどうか)の枠をはめただけ。アニメの企画書や脚本,絵コンテなどもちょこちょこっとはさまってはいるが,どうも企画倒れというか,別にそんな枠がなくてもという感じである。

 まぁ,そう思うのも,発売前の噂に勝手に下世話な期待をふくらませた反動だろう。新作,未収録作の数からみたコストパフォーマンスには少々疑問があるものの,個々の4コマがつまらないというわけではない。それらにおいて,いしいひさいちはいつものようにいしいひさいちである。また,妙な「枠」があるだけ,コレクターズアイテムとしての価値があることも否定はしない。

 というわけで,結論。
 悪くはないが,「連作長編」としては「地底人」シリーズの勝ち。あっ,あほーっ。 ←それは「最低人」

先頭 表紙

発売当時,わりあいあちこちで見かけましたが……ちなみに,いしいひさいち本にしては珍しくB6判(青年誌のコミック単行本に多いサイズ)でございます。 / 胃の具合はいかが ( 2001-06-13 02:26 )
(売って)ない…、(売って)ないの。 / ドーナツブックスは発見した胃潰瘍男 ( 2001-06-13 00:59 )
いえいえ,なんのお役にも立てませんで。で,ニューマシンはそろそろ届いたころでしょうか? / 烏丸 ( 2001-06-06 02:22 )
色々とアドバイスありがとう〜ございました! / ムッシュ ( 2001-06-05 15:41 )
6月12日には双葉社『ドーナツブックス』第36巻が発売予定。ぶんぶんぶんぶん……。 / 烏丸 ( 2001-06-04 12:19 )

2001-06-01 これまたヒーロー復活 『大魔神』 筒井康隆 / 徳間書店


【だ,大魔神さまだ! 大魔神さまがお怒りになったのだ!】

(ナレーション)
ときは平成十三年。巷ではコミックやポップスのリメーク,カバーが相次ぎ,政界では二世,三世議員が永田町の利権を争う。人々は新しいヒーロー,ヒロインを産み出す力を喪い,底知れぬ不景気にあえいでいた……。

(シーン1)
おたく風の村人A 徳間映画があの「大魔神」を復活させると発表してもう1年以上経つんじゃが,いったいどうなったんだか。
おたく風の村人B ありゃあ1999年1月だったかのう。しかも,脚本が筒井康隆。どんな作品になるかわしら特撮ファンはわくわくしたもんじゃが,その後とんと便りもない。ポシャってしまったのかのう。
子供 たっ,大変だよう,本屋さんに,こんな本が。こんな本が。

(ごごごぉぉっ……と嵐の音)

(メイン・タイトル「大魔神」。スタッフロール
  脚本 筒井康隆
  カバー 寺田克也
  カバー/ポスター 菅原芳人
  帯・表紙 唐沢なをき
  扉・本文挿画 沙村広明)
   :

(だんだん面倒になってきたので,以下普通の文体で)

 今や大リーガー・佐々木投手のニックネームのほうが通りのよい「大魔神」だが,ご存知の通り,これは1966年に上映された大映の特撮映画のタイトルである。具体的には
 「大魔神」(1966年4月公開。併映「大怪獣決闘ガメラ対バルゴン」)
 「大魔神怒る」(同年8月公開。いわゆる水の大魔神)
 「大魔神逆襲」(同年12月公開。いわゆる雪の大魔神)
の3作。

 公開年にご注目いただきたい。たった1年の間のことなのだ。
 しかし,埴輪のように穏やかな顔の魔神が腕を顔の前にかざすや一転鬼のような形相に変じ,ずしぃぃん,ずしぃぃんと重い足音とともに城下を踏みにじる姿は毎回圧巻。この3作だけで「大魔神」の名はゴジラ,ガメラとともに特撮映画の代名詞となった。
 演出的にも,重厚な時代劇設定はゴジラシリーズなどよりむしろリアリティを感じさせ,一方青をバックに前景を撮影,別に撮った後景と合成する「ブルーバックシステム」を初めて導入するなど,技術的なポイントも高い。
 もしレンタルビデオ屋などで見かけたら,ぜひご覧いただきたい。馬鹿馬鹿しいまでの勧善懲悪ストーリーではあるが,それゆえ今見てもいっこう見劣りしない(さすがに3作目は少々お子様ランチの感があるが)。

 さて,新作である。
 「大魔神」を復活させるなら,方針は2つしか考えられない。1つは旧作と同じく時代劇とし,シンプルに押し切る。もう1つは現代,あるいは未来を舞台にし,思いきりSF色,カルト色を加味する(たとえば「ターミネーター」。あるいは「帝都物語」という手もあるか)。
 はたして天下の異才・筒井康隆が選んだのは……。

 実はこれが意外なことに,まったくオーソドックスな時代劇。多少スプラッタな要素はあるが,もともとが悪役人を踏みつぶしたり非道な領主を杭で突き殺したりする作品である。この脚本なら,1966年に公開されていてもまったく違和感はなかったろう(1箇所,お約束のギャグはあるが,どうも駄作と言われた平成「ゴジラ」の武田鉄矢登場シーンを思い起こさせて嫌な予感がよぎる)。

 正直にいえば,筒井らしくねじれまくったシチュエーションSF「大魔神」を期待していたのだが,これはこれで1つの判断か。少々疑問な展開もあるが,映画は空間×時間芸術であり,脚本だけでは測れない面もある(単純な話,ヒロインの魅力だけでヒットする可能性だってある)。
 とりあえず,徳間映画のお手並み拝見。

先頭 表紙

おっ,天&七だ。元気? さて「大魔神(だいまじん)」というのはね。今から35年くらい前に「ガメラ」(知ってるかなあ,空飛ぶカメの大怪獣)の映画と同じ会社が作った映画のタイトルなんだね。大魔神というのは,大むかしの神さまの土でできた像なんだけど,おひめさまが悪いやつにいじめられると,怖い顔であらわれて悪いやつをぜんぶやっつけてしまうんだ。ちょっとむずかしいかもしれないけど,お話と写真がここにのってるよ。 / 烏丸 ( 2001-06-03 02:55 )
このカバーの裏にはいかにも邦画,といった感じのかなりこゆいポスターが印刷されておりますし,腹帯の裏には大魔神変顔のマンガ,本そのものの表紙にはこの同じ位置に埴輪顔の魔神,と,なかなかこった本の作り。 / 烏丸 ( 2001-06-03 02:53 )
大魔神ってなに? / てんなな ( 2001-06-02 23:04 )
「筒井康隆」の赤字が強烈。しかも「大魔神」よりずっとでかいのがまたナンともいい味だしてる。 / 椎 ( 2001-06-01 21:50 )

2001-05-29 [閑話] 何が足りない? 陽水の「花の首飾り」

 
 井上陽水は嫌いではない。だが,彼の「花の首飾り」には,タイガースの加橋かつみが歌ったものに比べて,明らかに何か,足りないものがある。こちらがウブで影響を受けやすかった時代に耳にした,ということだけでは説明がつかない,というかそれを引き算してもまだ足りない何か。

 それは,「こがれる」ということではないか。加橋かつみの声は,ここではないどこか,手の届かない高みへの思い,たとえば絵や物語の中の乙女たちに向けられていたのではないか。成就が難しい,のではなく,そもそも成就などあり得ない思い。それゆえにピュアに抽出された絶望的なまでの「こがれ」。

 陽水のアルバムの中では,振り返ってみれば「勝者としてのペガサス」や「今夜」「海へ来なさい」「なぜか上海」を含む『スニーカーダンサー』が一番好きだ。時期的には麻薬事件から復活したころの作品だったかと思う。物語世界にダイブしていそうで,実はそれをこちら側から見ている陽水。「廃墟の鳩」においても後先考えずにダイブしてしまう加橋。ちょっとあてはめすぎだろうか。

先頭 表紙

そうなんです,Ecruさま,「花の首飾り」「廃墟の鳩」は加橋かつみ(トッポ)なんです。ちなみに「青い鳥」は森本タロー。ところで本は見つかりましたか? クレイグ・ライスはここ「くるくる」でも『マローン殺し』を取り上げました。とても好きな作家の1人です。 / 烏丸 ( 2001-06-08 20:39 )
「花の首飾り」そうか!タイガースが歌ってたんですね。なんか、子供の頃耳にしたのと違う気がしてました。でも、ジュリーじゃないんだ…。陽水さんといえば、私もドラマの主題歌だった「リバーサイドホテル」が印象深いです。最初の出だしが好き。 / Ecru ( 2001-06-08 19:10 )
加橋かつみのソロとなると,以前,古い名作を集めたいわゆる「Q盤」シリーズで「花」というアルバムを見かけただけです。CD NOW JAPANにデータすらないんですから,新譜,貸しCD屋店頭とも,今から見つけるのは難しいかもしれませんね。 / 烏丸 ( 2001-06-01 21:03 )
加橋かつみはありませんでした。 / アナイス ( 2001-06-01 20:40 )
リバーサイドホテルの、「ベッドの中で魚になった後」なんて歌詞、凄く好き。昔のCD借りてきちゃいました。えへへ。 / アナイス ( 2001-06-01 20:38 )
しっぽなさま,烏丸の場合,♪まっしろな〜とオーじきが〜〜〜♪は小椋佳のほうが出てきてしまいます。『残された憧憬』というアルバムがわりあい好きだったもので……。 / 小椋佳の顔をまだ知らないころ…… ( 2001-06-01 17:05 )
「リバーサイドホテル」はドラマの主題歌になっていましたね〜それゆえかタイトルきくと浮かんでるのは田村正和と岸本加代子とニューヨークの花火。中学斎の時、親友のお兄ちゃんがギター持って♪まっしろな〜とオーじきが〜〜〜♪と歌っていたのをおもいだします・・・陽水といえば。。 / ヘアスタイルが印象的だったな〜 ( 2001-06-01 14:11 )
どもども小枝さま。とはいえ,今回の陽水のカバーアルバムは大ヒットのきざしだそうです。マンガのほうでは「鉄腕アトム」も新作発表だそうで,なんだかなぁ。このカバー,リメーク,トリビュート文化,ほどほどにしてほしい。 / 烏丸 ( 2001-05-31 13:02 )
ああ烏丸さま。この歌を聴きながらなんか消化しきれないものがあったのですが、そうだったのですね。ピュア / 小枝 ( 2001-05-31 00:49 )
たらママさま,「リバーサイドホテル」はカラスめも大好き。ちなみにジュリーが歌った「背中まで45分」と同じアルバム『ライオンとペリカン』に収録です。ちなみにカラスめがカラオケで歌う陽水の歌は……ナイショなのでございます。 / 烏丸 ( 2001-05-30 13:07 )
もちろん,復帰できたとはいえ逮捕の経験は陽水にとって愉快な経験ではなかったようで(当たり前),本文でタイトルを上げた「勝者としてのペガサス」の歌詞には,そのあたりをふっきりたい,ふっきれない,みたいな手ごたえがにょにょにょとあらわれていてなかなか揺れます。 / 烏丸 ( 2001-05-30 13:06 )
陽水が逮捕されたころにはほかにも美川憲一,にしきのあきら,桑名正博,研ナオコ,内藤やすこ,ジョー山中らが続けて逮捕されたため,なんとなく「芸能人はみんなやってるみたいだから」と皆さん復帰も早かったのですが,加橋かつみはかなり長い間ほされてた印象です。その後演歌で出直したりしたのですが,年齢もあってか,あの独特の高音の伸びは見る(聞く?)かげもありませんでした。……。 / 烏丸 ( 2001-05-30 13:06 )
アナイスさま,「自分のやりたいのはアイドルじゃない,音楽性が違う!」とタイガースを脱退し(ちなみにそのとき代わりに入ったのが岸辺一徳(サリー)の弟・岸辺シロー),「花」などソロアルバムを発表してさあこれから,だった加橋かつみ(トッポ)が失墜したのも,実はやはり大麻事件のためでした。 / 烏丸 ( 2001-05-30 13:06 )
私も「リバーサイドホテル」が好き。でも、陽水本人が歌ってるのはきいたことない。。。(要はカラオケ)。 / たらママ ( 2001-05-30 09:23 )
加藤かつみも麻薬事件も知りませんでした。「リバーサイドホテル」の歌詞が好き〜 / アナイス ( 2001-05-30 00:01 )
我が家の娘たちは、冷蔵庫からお茶を出す度に、「花咲く〜♪」と、一言歌います。へんなの。 / アナイス ( 2001-05-29 23:57 )

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