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烏丸の「くるくる回転図書館 駅前店」

 
今後、新しい私評は、
  烏丸の「くるくる回転図書館 公園通り分館」
にてアップすることにしました。

ひまじんネットには大変お世話になりましたし、
楽しませていただきました。
その機能も昨今のブログに劣るとは思わないのですが、
残念なことに新しい書き込みがなされると、
古い書き込みのURLが少しずつずれていってしまいます。
最近も、せっかく見知らぬ方がコミック評にリンクを張っていただいたのに、
しばらくしてそれがずれてしまうということが起こってしまいました。

こちらはこのまま置いておきます。
よろしかったら新しいブログでまたお会いしましょう。
 

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2001-06-11 カラスマルは偉くもなんともないが 『カラスは偉い ─都会のワルが教えてくれること─』 佐々木 洋 / 光文社知恵の森文庫
2001-06-10 子カラスたちへ
2001-06-06 20年の疲弊 『奇術探偵 曾我佳城全集』 泡坂妻夫 / 講談社
2001-06-03 ようやく発売! 『となりのののちゃん』 いしいひさいち,おがわひろし / 東京創元社
2001-06-01 これまたヒーロー復活 『大魔神』 筒井康隆 / 徳間書店
2001-05-29 [閑話] 何が足りない? 陽水の「花の首飾り」
2001-05-29 [閑話] どうなる? インターネット上の歌詞配布
2001-05-27 『だれが「本」を殺すのか』 佐野眞一 / プレジデント社
2001-05-23 [閑話] うおへんの親分
2001-05-22 出版バブル崩壊,流通パニックへの百の予兆 『出版大崩壊 いま起きていること,次に来るもの』 小林一博 / イースト・プレス


2001-06-11 カラスマルは偉くもなんともないが 『カラスは偉い ─都会のワルが教えてくれること─』 佐々木 洋 / 光文社知恵の森文庫


【またとない】

 うるさい,怖い,汚い,不吉だ……カラスにあまりよいイメージはない。とくに都市部では巣の周辺でヒトが襲われて怪我をするケースもあり,ゴキブリ,ネズミ等と並んで嫌われものの1つである。
 東京都では,昨年来,カラスの捕獲作戦が進められている。電話で申し込みを受け付け,巣を除去し,ひなを捕獲するというものだ。数百か所規模で実施が予定されているという。しかし,実際のところ,彼らの喜ぶ生ゴミを放置して,遠方から呼び寄せているのはヒトの側である。呼びつけておいて捕獲,撤去,カラスにしたらひどい言いがかりだ。まぁ,国内でも最もありふれた鳥の一種だった朱鷺を無造作に滅ぼし,オス,メスとも中国から借りてきて「ひな元気に育つ」と喜ぶのに比べれば同じ身勝手でも正直なだけましかもしれないが(子孫のためにもはっきりと言うべきだろう,私たちはニッポニア・ニッポンと名づけられた大切な鳥の,野生種の最後の1匹まで死なせた国民である)。

 と,ややカラスに肩入れした書き方をしてはみたものの,烏丸は(ハンドルに烏の名を用いているくせに)カラスが好きか嫌いかといえば,とくにどちらの意識もない。ニュートラルといっていいだろう。
 ただ,夜明け前の電信柱にずらりと200羽(ひぃふぅ……10匹でこのくらい,全体では,と大雑把に数えてみた)ばかり並んでいるのを見たりすると,さすがにちょっと怖い。一斉に襲ってきたら少しまずいんじゃないかという凄みがある。しかも,「きゃつら,こちらをの個体を識別し,考えを把握しているんじゃないか」と思わせるにたるだけの頭のよさを感じることが多いことだし。

 本書は,江戸川区北小岩に世界でただ1つの「カラス博物館」を公開するほどのカラス好きな著者が,カラスの賢さ,家族愛,さまざまな不思議な習性(言葉を覚える,遊ぶ,適応能力が高い,などなど)に注目し,紹介した本である。
 埼玉県川口市のグリーンセンターをねぐらとするカラスの大群が早朝京浜東北線に沿って上京して都心で生ゴミをあさり,また帰っていく,という話に「あれっ?」とカバーを見直すと,著者近影に見覚えがあった。著者の佐々木洋氏は「プロナチュラリスト(自然案内人)」という変わった肩書きを持つ人物なのだが,最近たまたま覗いた「町中で見られる生き物」というタイトルの講演の講師だったのであった。

 数羽でチームを組んで,1羽が電線の上から小石やクルミの実を落とし,ほかの数羽でそれを奪い合う「石落とし」に興じるカラス,滑り台で滑って遊ぶカラス,ごった返すラッシュ時のホームで電車を覗き込む鉄道マニアのカラス,中高年のオバちゃんの笑い声そっくりの声でなくバカ笑いカラス,高いところから貝を落として割るカラス,公園で居眠りする人のポケットからものを取り出す「すりガラス」などなど,さまざまなカラスが紹介される。
 カラスを呼ぶことのできる伊豆大島出身のタレント(森川朱里)まで紹介される。

 付録として,「烏」や「鴉」という文字を使った言葉や地名一覧,さらにはカラスの登場する主な本まで紹介されて,(なんの役に立つかはともかく)資料性もなかなかだ。
 おや,エドワード・D・ホックの『大鴉殺人事件』も入っている。椎名誠の『銀座のカラス』もそういえばそうだ。『カラスがハトを黒くする?』ってほんとか。『カラスの勝手はゆるさない!!』,ごめんなさい,『烏の沽券』,いやはや,『カラスの死骸はなぜ見あたらないのか』,矢追先生の有名なとんでも本,『烏天狗カブト』,コブラの寺沢武一の作品,『蛸とカラスの共和国』,なんだそりゃ……。

先頭 表紙

八咫烏(ヤタガラス)は古事記に出てくる伝説上のカラスで,熊野灘に上陸した神武天皇の道案内のために天からつかわされたものだそうです。日本サッカーのシンボルとされたのは意外と古くて,1931年のことだそうです。 / 烏丸 ( 2001-06-18 13:19 )
ヤタガラスって例のJFAエンブレムのやつですね! あれもきっといろいろ由来があるのですね! あの日は僕も脱力してました…(笑) / TAKE ( 2001-06-17 19:08 )
実はコンフェデ杯とヤタガラスについてまで書く予定だったのですが,準優勝(残念)ということで,なんとなく気が失せてしまいました。 / 烏丸 ( 2001-06-11 02:15 )

2001-06-10 子カラスたちへ

 
 この週末は家人が京都に出かけ,子カラスと3人で留守番である。
 プールや買い物で楽しい1日を過ごした子カラスたちだが,最近それなりに大人びて,と思われていた上の子カラスが夜になって突然顔をくしゃくしゃにして泣き出した。考えてみればこの子カラスども,生まれてからずっと母親のいない夜など過ごしたことがなかったのだ(父親はいないことのほうが多いが)。
 叱ったりなだめたりしながらも,思うのは大阪の事件の子供たちのことだった。

 お母さんが一晩いないくらいで泣いてはいけない。
 殺された8人の子供たちはね,もう,お母さんの胸に抱かれることも,お父さんの膝ではねることもできないんだよ。夏の海でいっぱいに光を浴びることも,木枯らしの中でサッカーボールを追いかけることもできないんだよ。どきどき新しいページをめくることも,肩を寄せて歌うことも,もう二度と,二度とできないんだよ。

先頭 表紙

当たり前に育ち,育てられることがいかに幸せか,ということを考えたりもしました。亡くなった子供たちのこと,親御さんのこと,残された子供たちのこと,どう考えてもたまりません。 / 烏丸 ( 2001-06-11 02:20 )
悲しい事件でした・・。 / あやや ( 2001-06-10 13:36 )
ホントに痛ましい悲しい事件でした。なんでこんなことが起こりうるのだろう…、咀嚼消化不可能のままの三日目です。 / TAKE ( 2001-06-10 12:26 )
本当につらい事件です。許せません。 / Ecru ( 2001-06-10 11:56 )
何の前触れもなく、突然、命を奪われた8人の子供たち。無限の将来を断ち切られたことが悲しい。泣くことも笑うことも出来なくなった子供たち、ただただ合掌するだけです。 / 夢楽堂 ( 2001-06-10 07:55 )

2001-06-06 20年の疲弊 『奇術探偵 曾我佳城全集』 泡坂妻夫 / 講談社


【佳城というのは墓場の意味だった】

 本書は,引退した美貌の奇術師・曾我佳城を探偵とするミステリ短編集で,二段組500ページを越えるハードカバー大作である。昨年6月の発行,「このミステリーがすごい!」2001年版第1位作品でもある。

 しかしこれを3,200円で購入するには少々抵抗があった。実は収録22編のうち14編は
 『天井のとらんぷ』(講談社文庫 1986年8月発行 420円)
 『花火と銃声』(同 1992年8月発行 480円)
で発行済み。420円,480円で各7編,残り7編のために2,300円……というさもしい算段もなくはない。だがそれ以上に気になったのは,最近の泡坂作品のクオリティである。

 念のため書いておくが,泡坂妻夫は国内のミステリ作家としてはベスト3に入れたい大好きな作家である。短編集「亜愛一郎」シリーズはチェスタートンのブラウン神父譚に匹敵,いやそれ以上と面白く読んだし,今もたまに夢に見るほどだ。
 しかしここ数年の作風は……。
 近作の文庫の解説を見てみよう。

 『宝引の辰捕物帳 凧をみる武士』(文春文庫 1999年8月発行)
  ──絶妙な趣向が凝らされていると同時に,深い人間洞察に裏づけられて……

 『からくり東海道』(光文社文庫 1999年6月発行)
  ──からくり尽くしで構築したこの贅沢な伝奇小説……

 『亜智一郎の恐慌』(双葉文庫 2000年7月発行)
  ──亜愛一郎シリーズをはじめ泡坂さんのほかの作品の熱心な読者であればあるほど,にやりとさせられる仕掛けがあちこちに施されているのですが,そんなことは知らなくても,これ一冊だけでじゅうぶんに楽しめ……亜愛一郎の現代シリーズに比べて,ミステリーとして少し物足りない気が……

 実のところ,『凧をみる武士』については絶妙な趣向とも深い人間洞察とも思えなかった。『からくり東海道』のからくりはぴんとこない。『亜智一郎の恐慌』にいたっては解説からもつまらないことが明らかだ。

 最近の泡坂作品の解説者は,作者がマジシャンとして有名であること,本職が紋章上絵師であることを繰り返すばかり。関係ないだろう。そんなこと知らなくとも泡坂作品は十分,いや破天荒に面白かったではないか。
 あの(ネタばれになるので作品名は伏すが)お遊び精神の権化ともいえる信じがたいトリック,製本・編集にまでタネを仕込んだからくりの数々,「本の体裁をとったマジックショー」の作者はもういない。作者の情熱が失せたのか,空回りしているのか,それはわからないが……。

 曾我佳城シリーズも,旧い文庫2冊に収録されていた作品のほうがずっとよい。
 大学の先生がついつい目先のことに興味を引かれ,ふらふら深入りしてしまう「天井のとらんぷ」,テレビのニュースバラエティショウの会話だけで事件を描き上げる「白いハンカチーフ」,スキー場の山荘を経営する若夫婦ウナトット,カマトットの二人の会話が奇妙な漫才のように展開する「ビルチューブ」などなど。各編に登場するきりりとした女たちもすがすがしい。

 今回初めて収録された7編はそれらに匹敵する出来とは思えず,最終話の「魔術城落成」にいたってはミステリ史上何度も書かれたウェットかつ凡庸な締め方,しかもそれまでの切れ味,探偵の存在感を全否定しかねない不自然さである。トランプはこぼれ,帽子は濡れてしまった。手品の域ではない。

 とっぴんしゃん,とんでもはっぷん,すっとんきょう。
 願わくば,もう一度あのとぼけたアクロバットの妙味を味わいたいものだ。解説,選評の諸氏も,持ち上げるばかりでなくもう少し正直に書くべきと思うのだが,如何。

先頭 表紙

ブラウン神父の名言中の名言といえば「木の葉を隠すには森を,死体を隠すには……」ですが,最近は「失言を隠すには失言を,利権を隠すには利権を……」な事件のあまりにも多いことよ。 / 烏丸@社会派 ( 2001-06-06 12:41 )
ブラウン神父は所々で滋味のように光るフレーズが記憶に残っています。 / ces@変な日本語で失礼 ( 2001-06-06 06:47 )

2001-06-03 ようやく発売! 『となりのののちゃん』 いしいひさいち,おがわひろし / 東京創元社


【トホホケキョ】

 この機会に,と,手元のいしいひさいち本を数えてみた。
 双葉社『ドーナツブックス』35巻,チャンネル・ゼロ『問題外論』17巻,同『バイトくんブックス』7巻,少年画報社『スクラップスチック』7巻,東京創元社『大問題』シリーズ6巻など合わせて114冊

 中にはプレイガイドジャーナル社『バイトくん』3巻,双葉社『がんばれ!!タブチくん!!』3巻などいまやレアとなった単行本も含まれている(オークションで万単位でやり取りされるものもあるようだ)。
 我ながら少々鼻が高いのは,昭和53年(1978年)11月1日発行のWeekly漫画アクション増刊『いしいひさいちのがんばれ!!タブチくん!!』があることだ。プガジャのバイトくんが単行本になるより前のものだから,いしいひさいちの作品が全国区でまとめられた最初の冊子ではないかと思う。もちろんタブチくんはまだ阪神の現役扇風機で,後藤監督,チームメイトが中村,藤田,ブリーデン,江本,古沢,佐野の頃である。
 同じアクション増刊で昭和61年(1986年)8月3日発行,『タブチくん みんなのプロ野球』もある。この増刊にはなんと欄外にタブチくんシリーズの研究データ(キャラクター別4コマ出演本数,セリフ文字数ランキング,タブチくんの阪神,西武時代の(もちろん4コマの中での)全成績,球団別総比較など)が掲載されており,何に使えるかはともかく,恐ろしく資料性が高いのだ。

 ……と,いささか自慢げに書いてはいるが(否定はしない),さりとて自分がいしい本のコレクターであるという意識はない。なにしろ朝日新聞連載の『ののちゃん』を1冊も持っていないのだ。単に「おもしろそうな4コママンガ」を買って積んで捨てなかった結果が114冊。いしいひさいちがいかに凄いかということだろう。

 さて,115冊めの『となりのののちゃん』は,一見朝日の『ののちゃん』の単行本のように見えて,実は違う。東京創元社の新刊案内には,なんと「経営危機に陥ったアニメ制作会社チャンネル・ゼロリが起死回生の一策として打ち出したいしい被災地原作『となりのののちゃん』のアニメ化をめぐる一大騒動。連作長編漫画」とある。連作長編漫画!
 本書をめぐっては,いしい本の発行・委託編集で知られるチャンネル・ゼロの業務縮小やアニメ「ホーホケキョとなりの山田くん」のスタジオ・ジブリとの確執などが噂され,それを裏付けるかのように再三発行が延期されてきた。気になる,気になる……。そして,ついに書店店頭に並んだ『となりのののちゃん』!

 ……なんということはない,ののちゃん回りの単行本未収録4コマに旧作を加えて,前後に「ののちゃん」をアニメ化するぞというストーリーギャグ(といえるかどうか)の枠をはめただけ。アニメの企画書や脚本,絵コンテなどもちょこちょこっとはさまってはいるが,どうも企画倒れというか,別にそんな枠がなくてもという感じである。

 まぁ,そう思うのも,発売前の噂に勝手に下世話な期待をふくらませた反動だろう。新作,未収録作の数からみたコストパフォーマンスには少々疑問があるものの,個々の4コマがつまらないというわけではない。それらにおいて,いしいひさいちはいつものようにいしいひさいちである。また,妙な「枠」があるだけ,コレクターズアイテムとしての価値があることも否定はしない。

 というわけで,結論。
 悪くはないが,「連作長編」としては「地底人」シリーズの勝ち。あっ,あほーっ。 ←それは「最低人」

先頭 表紙

発売当時,わりあいあちこちで見かけましたが……ちなみに,いしいひさいち本にしては珍しくB6判(青年誌のコミック単行本に多いサイズ)でございます。 / 胃の具合はいかが ( 2001-06-13 02:26 )
(売って)ない…、(売って)ないの。 / ドーナツブックスは発見した胃潰瘍男 ( 2001-06-13 00:59 )
いえいえ,なんのお役にも立てませんで。で,ニューマシンはそろそろ届いたころでしょうか? / 烏丸 ( 2001-06-06 02:22 )
色々とアドバイスありがとう〜ございました! / ムッシュ ( 2001-06-05 15:41 )
6月12日には双葉社『ドーナツブックス』第36巻が発売予定。ぶんぶんぶんぶん……。 / 烏丸 ( 2001-06-04 12:19 )

2001-06-01 これまたヒーロー復活 『大魔神』 筒井康隆 / 徳間書店


【だ,大魔神さまだ! 大魔神さまがお怒りになったのだ!】

(ナレーション)
ときは平成十三年。巷ではコミックやポップスのリメーク,カバーが相次ぎ,政界では二世,三世議員が永田町の利権を争う。人々は新しいヒーロー,ヒロインを産み出す力を喪い,底知れぬ不景気にあえいでいた……。

(シーン1)
おたく風の村人A 徳間映画があの「大魔神」を復活させると発表してもう1年以上経つんじゃが,いったいどうなったんだか。
おたく風の村人B ありゃあ1999年1月だったかのう。しかも,脚本が筒井康隆。どんな作品になるかわしら特撮ファンはわくわくしたもんじゃが,その後とんと便りもない。ポシャってしまったのかのう。
子供 たっ,大変だよう,本屋さんに,こんな本が。こんな本が。

(ごごごぉぉっ……と嵐の音)

(メイン・タイトル「大魔神」。スタッフロール
  脚本 筒井康隆
  カバー 寺田克也
  カバー/ポスター 菅原芳人
  帯・表紙 唐沢なをき
  扉・本文挿画 沙村広明)
   :

(だんだん面倒になってきたので,以下普通の文体で)

 今や大リーガー・佐々木投手のニックネームのほうが通りのよい「大魔神」だが,ご存知の通り,これは1966年に上映された大映の特撮映画のタイトルである。具体的には
 「大魔神」(1966年4月公開。併映「大怪獣決闘ガメラ対バルゴン」)
 「大魔神怒る」(同年8月公開。いわゆる水の大魔神)
 「大魔神逆襲」(同年12月公開。いわゆる雪の大魔神)
の3作。

 公開年にご注目いただきたい。たった1年の間のことなのだ。
 しかし,埴輪のように穏やかな顔の魔神が腕を顔の前にかざすや一転鬼のような形相に変じ,ずしぃぃん,ずしぃぃんと重い足音とともに城下を踏みにじる姿は毎回圧巻。この3作だけで「大魔神」の名はゴジラ,ガメラとともに特撮映画の代名詞となった。
 演出的にも,重厚な時代劇設定はゴジラシリーズなどよりむしろリアリティを感じさせ,一方青をバックに前景を撮影,別に撮った後景と合成する「ブルーバックシステム」を初めて導入するなど,技術的なポイントも高い。
 もしレンタルビデオ屋などで見かけたら,ぜひご覧いただきたい。馬鹿馬鹿しいまでの勧善懲悪ストーリーではあるが,それゆえ今見てもいっこう見劣りしない(さすがに3作目は少々お子様ランチの感があるが)。

 さて,新作である。
 「大魔神」を復活させるなら,方針は2つしか考えられない。1つは旧作と同じく時代劇とし,シンプルに押し切る。もう1つは現代,あるいは未来を舞台にし,思いきりSF色,カルト色を加味する(たとえば「ターミネーター」。あるいは「帝都物語」という手もあるか)。
 はたして天下の異才・筒井康隆が選んだのは……。

 実はこれが意外なことに,まったくオーソドックスな時代劇。多少スプラッタな要素はあるが,もともとが悪役人を踏みつぶしたり非道な領主を杭で突き殺したりする作品である。この脚本なら,1966年に公開されていてもまったく違和感はなかったろう(1箇所,お約束のギャグはあるが,どうも駄作と言われた平成「ゴジラ」の武田鉄矢登場シーンを思い起こさせて嫌な予感がよぎる)。

 正直にいえば,筒井らしくねじれまくったシチュエーションSF「大魔神」を期待していたのだが,これはこれで1つの判断か。少々疑問な展開もあるが,映画は空間×時間芸術であり,脚本だけでは測れない面もある(単純な話,ヒロインの魅力だけでヒットする可能性だってある)。
 とりあえず,徳間映画のお手並み拝見。

先頭 表紙

おっ,天&七だ。元気? さて「大魔神(だいまじん)」というのはね。今から35年くらい前に「ガメラ」(知ってるかなあ,空飛ぶカメの大怪獣)の映画と同じ会社が作った映画のタイトルなんだね。大魔神というのは,大むかしの神さまの土でできた像なんだけど,おひめさまが悪いやつにいじめられると,怖い顔であらわれて悪いやつをぜんぶやっつけてしまうんだ。ちょっとむずかしいかもしれないけど,お話と写真がここにのってるよ。 / 烏丸 ( 2001-06-03 02:55 )
このカバーの裏にはいかにも邦画,といった感じのかなりこゆいポスターが印刷されておりますし,腹帯の裏には大魔神変顔のマンガ,本そのものの表紙にはこの同じ位置に埴輪顔の魔神,と,なかなかこった本の作り。 / 烏丸 ( 2001-06-03 02:53 )
大魔神ってなに? / てんなな ( 2001-06-02 23:04 )
「筒井康隆」の赤字が強烈。しかも「大魔神」よりずっとでかいのがまたナンともいい味だしてる。 / 椎 ( 2001-06-01 21:50 )

2001-05-29 [閑話] 何が足りない? 陽水の「花の首飾り」

 
 井上陽水は嫌いではない。だが,彼の「花の首飾り」には,タイガースの加橋かつみが歌ったものに比べて,明らかに何か,足りないものがある。こちらがウブで影響を受けやすかった時代に耳にした,ということだけでは説明がつかない,というかそれを引き算してもまだ足りない何か。

 それは,「こがれる」ということではないか。加橋かつみの声は,ここではないどこか,手の届かない高みへの思い,たとえば絵や物語の中の乙女たちに向けられていたのではないか。成就が難しい,のではなく,そもそも成就などあり得ない思い。それゆえにピュアに抽出された絶望的なまでの「こがれ」。

 陽水のアルバムの中では,振り返ってみれば「勝者としてのペガサス」や「今夜」「海へ来なさい」「なぜか上海」を含む『スニーカーダンサー』が一番好きだ。時期的には麻薬事件から復活したころの作品だったかと思う。物語世界にダイブしていそうで,実はそれをこちら側から見ている陽水。「廃墟の鳩」においても後先考えずにダイブしてしまう加橋。ちょっとあてはめすぎだろうか。

先頭 表紙

そうなんです,Ecruさま,「花の首飾り」「廃墟の鳩」は加橋かつみ(トッポ)なんです。ちなみに「青い鳥」は森本タロー。ところで本は見つかりましたか? クレイグ・ライスはここ「くるくる」でも『マローン殺し』を取り上げました。とても好きな作家の1人です。 / 烏丸 ( 2001-06-08 20:39 )
「花の首飾り」そうか!タイガースが歌ってたんですね。なんか、子供の頃耳にしたのと違う気がしてました。でも、ジュリーじゃないんだ…。陽水さんといえば、私もドラマの主題歌だった「リバーサイドホテル」が印象深いです。最初の出だしが好き。 / Ecru ( 2001-06-08 19:10 )
加橋かつみのソロとなると,以前,古い名作を集めたいわゆる「Q盤」シリーズで「花」というアルバムを見かけただけです。CD NOW JAPANにデータすらないんですから,新譜,貸しCD屋店頭とも,今から見つけるのは難しいかもしれませんね。 / 烏丸 ( 2001-06-01 21:03 )
加橋かつみはありませんでした。 / アナイス ( 2001-06-01 20:40 )
リバーサイドホテルの、「ベッドの中で魚になった後」なんて歌詞、凄く好き。昔のCD借りてきちゃいました。えへへ。 / アナイス ( 2001-06-01 20:38 )
しっぽなさま,烏丸の場合,♪まっしろな〜とオーじきが〜〜〜♪は小椋佳のほうが出てきてしまいます。『残された憧憬』というアルバムがわりあい好きだったもので……。 / 小椋佳の顔をまだ知らないころ…… ( 2001-06-01 17:05 )
「リバーサイドホテル」はドラマの主題歌になっていましたね〜それゆえかタイトルきくと浮かんでるのは田村正和と岸本加代子とニューヨークの花火。中学斎の時、親友のお兄ちゃんがギター持って♪まっしろな〜とオーじきが〜〜〜♪と歌っていたのをおもいだします・・・陽水といえば。。 / ヘアスタイルが印象的だったな〜 ( 2001-06-01 14:11 )
どもども小枝さま。とはいえ,今回の陽水のカバーアルバムは大ヒットのきざしだそうです。マンガのほうでは「鉄腕アトム」も新作発表だそうで,なんだかなぁ。このカバー,リメーク,トリビュート文化,ほどほどにしてほしい。 / 烏丸 ( 2001-05-31 13:02 )
ああ烏丸さま。この歌を聴きながらなんか消化しきれないものがあったのですが、そうだったのですね。ピュア / 小枝 ( 2001-05-31 00:49 )
たらママさま,「リバーサイドホテル」はカラスめも大好き。ちなみにジュリーが歌った「背中まで45分」と同じアルバム『ライオンとペリカン』に収録です。ちなみにカラスめがカラオケで歌う陽水の歌は……ナイショなのでございます。 / 烏丸 ( 2001-05-30 13:07 )
もちろん,復帰できたとはいえ逮捕の経験は陽水にとって愉快な経験ではなかったようで(当たり前),本文でタイトルを上げた「勝者としてのペガサス」の歌詞には,そのあたりをふっきりたい,ふっきれない,みたいな手ごたえがにょにょにょとあらわれていてなかなか揺れます。 / 烏丸 ( 2001-05-30 13:06 )
陽水が逮捕されたころにはほかにも美川憲一,にしきのあきら,桑名正博,研ナオコ,内藤やすこ,ジョー山中らが続けて逮捕されたため,なんとなく「芸能人はみんなやってるみたいだから」と皆さん復帰も早かったのですが,加橋かつみはかなり長い間ほされてた印象です。その後演歌で出直したりしたのですが,年齢もあってか,あの独特の高音の伸びは見る(聞く?)かげもありませんでした。……。 / 烏丸 ( 2001-05-30 13:06 )
アナイスさま,「自分のやりたいのはアイドルじゃない,音楽性が違う!」とタイガースを脱退し(ちなみにそのとき代わりに入ったのが岸辺一徳(サリー)の弟・岸辺シロー),「花」などソロアルバムを発表してさあこれから,だった加橋かつみ(トッポ)が失墜したのも,実はやはり大麻事件のためでした。 / 烏丸 ( 2001-05-30 13:06 )
私も「リバーサイドホテル」が好き。でも、陽水本人が歌ってるのはきいたことない。。。(要はカラオケ)。 / たらママ ( 2001-05-30 09:23 )
加藤かつみも麻薬事件も知りませんでした。「リバーサイドホテル」の歌詞が好き〜 / アナイス ( 2001-05-30 00:01 )
我が家の娘たちは、冷蔵庫からお茶を出す度に、「花咲く〜♪」と、一言歌います。へんなの。 / アナイス ( 2001-05-29 23:57 )

2001-05-29 [閑話] どうなる? インターネット上の歌詞配布

 
 日本の音楽関係の著作権は非常にうるさい。
 日本音楽著作権協会(JASRAC)が著作権者の権利を代行して,執拗に取り締まりを行っているためである。この団体についてはよからぬ噂もなくはないが,代行団体に問題があろうがなかろうが著作権者の了解なしに楽曲や歌詞をインターネットで配布するのは著作権法違反にあたり,場合によると警察沙汰である。

※権利にうるさい欧米だが,インターネット上の歌詞配布は日本に比べてかなり呑気で,Pink FloydだろうがDavid Bowieだろうが,アルバムに歌詞を掲載しなかったことで知られるNew Orderさえ,公式サイトあるいはファンサイトを探せばLyricsがアルバムごとに全部並べてある。

 さて,国内の歌詞配布の実情だが,JASRACのチェックがうるさいため(JASRACのサイトには無断で楽曲,歌詞を配布しているホームページはないか,という告げ口フォームさえ用意されている),ファンサイトはおろか公式サイトでも歌詞の配布はあまり見うけられない。いや,正確にいえば,マジメに運営されているファンサイト,公式サイトほど歌詞は見られない(無許可のアンダーグラウンドサイトは歌詞に限らずなんでもアリだからとりあえず置く)。
 極端な例として,あるミュージシャンが自分の作品を自分のサイトに貼り付けようとしてJASRACから無断掲載を注意されたという話があるくらいで,要するにあれこれやっかいなのである。それでは許可を求めて使用料を払えばよいのかといえば,デジタルデータの配布については,雑誌や書籍に歌詞や楽譜を掲載する場合(発行部数にもよるが1曲数千円程度でたいした金額ではない)に比べても「不特定多数に配布する」「何人が入手するかわからない」「デジタルデータはコピー可能」などで,規約がはっきりしなかったり手間がかかったりするのである。たとえば雑誌の付録CDやFDにJASRACのシールが貼ってあることがあるが,あれが手間と日程と経費を食うのだ。

 ところが。
 昨日のYahoo!JAPANの今日のオススメに「歌詞検索サーチ・歌ネット」というサイトが紹介されていたのだが……ここでは古い歌謡曲から最近のJ-POPまで,タダでがしがし歌詞が配られているのである。
 たとえば浜崎あゆみのベストや宇多田ヒカルの新譜など,全曲,簡単に検索・表示できるようだ。トップページ右下にJASRACのアイコンがあるから,無許可ではないのだろうが……有料カラオケサイトを除いて,これだけ大量の歌詞が配られるのは過去,例がないのではないか。こんな無造作な配布の仕方には正直びっくりだ。
 1ヒットいくら,でこの歌ネットがJASRACに金を払っているとしたら,バナー広告程度ではとても収支がもたないのではと心配されるし(余計なお世話),インターネットにおける歌詞配布のモラルが無茶苦茶になってしまいそうな気もしないでもない。いったいどうなっているのだ……。

 実は調べてみたところ,昨年暮れ,インタラクティブ配信を含む著作物使用料の規定変更が文化庁により認可され,インターネット上のデータ配布についての規定が詳細に決められたらしい。詳しくはこちらをご参照いただきたい。
 規定によると,情報量,広告料等の収入のないサイトの場合についての課金も定められているようだ。動向に注目したい。

 ところで,ここの歌詞データに直リンクするのは,著作権法上,どうなのだろう。従来のWebリンクについての考え方なら,「おとがめなし」でいいはずなのだが……。

先頭 表紙

そうなんです,「コンビニで最近たまにこの曲を耳にするけど,誰なんだぁ〜」ということ,少なくありません。わかってみると,案外名前は知ってるミュージシャンだったりするのです。 / 烏丸 ( 2001-06-01 17:02 )
ハッ!なるほど! そういう曲けっこうあります。どうかこのサイトが違法だとかで無くなりませんように・・・ / よちみ ( 2001-06-01 09:39 )
よちみさま,もう1つ別の意味で便利なのが,たとえば「CMや有線でたまに耳にするあの曲,誰の何だろう」「どんな曲?」「うー,歌えるほどには覚えてないけど,サビがふふふーん♪で……」というときに,歌詞の一部から誰のなんという曲か調べられそう。これは便利ではないかと。 / 烏丸 ( 2001-05-31 18:03 )
これ!びっくりしました〜!いつも音楽はレンタルしてるので歌詞カードが無くて困ってたんです。コピーするほどマメじゃないし。ドライブ中、サビ以外は「ふふふ〜ん♪」でごまかしていたけど、不明な歌詞はこれでチェックできますね!すごい! / よちみ ( 2001-05-31 17:24 )

2001-05-27 『だれが「本」を殺すのか』 佐野眞一 / プレジデント社


【ヘエッー,がんぱ書店っていうんですか,かわった名前ですね】

 本書は『東電OL殺人事件』などで知られるノンフィクション作家・佐野眞一が,出版クラッシュの現状と打開策を探る労作。雑誌「プレジデント」に1999年2月号から約1年間連載,連載当時は原稿用紙にして200枚弱だったものを,書店・流通・版元・地方出版・編集者・図書館・書評・電子出版と広角的かつ詳細な取材を積み重ね,約1000枚(!)まで加筆している。

 無造作にページをめくっても,
「取次には汗を流して売ろうという発想がないんです。小さなバイクで街中を走り回って利用者に紙を届けているコピー機の会社や,自販機に商品を補充して回る清涼飲料会社のようなロジスティックスの発想がない。取次はビジネスパートナーだとは思うけど,まったくアテにはしていません」(往来堂書店店長 安藤哲也)
「いまの出版流通問題を解決するには,もし僕だったら,すべての出版物を収録した電子目録をまずつくる。各書店にその端末を置けば,誰でも自由に店頭にない本を発注することができる」(セブン-イレブン・ジャパン会長 鈴木敏文)
「図書館は近代的市民を育成していかなければならない,ちびくろサンボ問題に象徴される差別図書問題は全国図書館人共通の問題として今後も粘り強く取り組んでいかねばならない……。進歩的文化人そのままの言説の洪水に,私はやれやれと思った」(「本の学校」シンポジウム 図書館関係者の分科会について)
などなど,容赦ない言葉が並ぶ。

 その意味で,先に紹介した『出版大崩壊』より格段に現場主義的であり,多面的である。それぞれの現場における温度差,覚悟の違いもより明確だ。たとえば『出版大崩壊』では一方的に悪者扱いだったブックオフも,ビジネスとしてクールで正常に見える。
 しかし,「事実だから真実に近い」は必ずしも真理ではない。

 読書家の多くはまじめに作られた本をよしとする。「よい本が売れない」ことが問題で,言ってしまえば古い教養主義のまま現状を愁う。みすず書房や晶文社は「よい出版社」であり,セブン-イレブンやブックオフ,さらにアマゾン・コムのようなビジネスライクな売り方には違和感を持つ。
 だが,歴史や哲学の本が超訳本より大切というのは,1つの考え方にすぎない。著者は「良書信仰にこり固まった,いわゆる名門出版社といわれる版元ほど,出版文化の砦を守れという口あたりのいいスローガンをいいたてて,出版流通の四十年体制と労使対立の五十五年体制を結果的に温存しつづけた」と非難するが,雑誌やコミックより書籍ばかり話題にする著者自身,「よい本」信者のようにも見える。少なくとも本のデジタル化やオンライン書店についての発言にはミルクの皮膜を通したようなもどかしさが残る。
 本当に殺されかけているのは何で,悲鳴をあげているのは誰なのか。それが名門出版社や大手取次だとしたら,読書家の知ったことではない。

 もう1点引っかかったのは,「力のあるリーダーが1人現れたら,何とかなるのでは」といった楽天主義が見え隠れすることだ。本好きゆえの楽天主義なのだろうが,どうにも甘い印象で鼻についた。
 数千社の年商全部足してホンダ1社とどっこいのちっぽけな業界である。自社の扱う製品が売れない原因に若い顧客の「本離れ」や「頭の悪さ」を挙げて平気な現状の大手名門がつぶれてしまうなら,その程度に脆弱なものだったということ。それでも書かれる「本」,読み継がれる「本」があるならそれでよし。

 本は大切だから大切にしなければ……これは同語反復,ただの思い込みに過ぎない。

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現実というか……少なくともこの本の中で紹介されているエピソードであります。 / 烏丸 ( 2001-06-03 02:53 )
↓これは完全に近未来SF中のセリフかと思いました。 / まさか現在の書店員とは ( 2001-06-01 21:52 )
ちなみに【 】の「がんぱ書店」というのは,岩波の営業が書店でこう言われた,最近の書店の不勉強ときたら! というお話。いいじゃん,小さい本屋には岩波の本なんて新書くらいしかないんだから。歌舞伎役者がゲームセンターの客が自分を知らないとスネるようなもんです。 / 烏丸 ( 2001-05-29 02:48 )

2001-05-23 [閑話] うおへんの親分

 
 調べものをしていて,ふと「魚偏」は「うおへん」なのか「さかなへん」なのか気になって,辞書を引いてみた。
 結果は以下の通り。

  『広辞苑 第四版』
  うお‐へん【魚偏】
    漢字の偏の一。「鯨」「鮮」などの偏の「魚」の称。

  『大辞林』
  うおへん 【魚偏】
    漢字の偏の一。「鯨」「鮮」などの「魚」の部分。

 ……「うおへん」の漢字の代表は「鯨」と「鮮」なのか。哺乳類に代表を奪われてしまった,ほかの魚たちの立場(いや,泳場か)はいったい。

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たらママさま,ちなみにインターネットで通常やり取りできる魚偏の漢字は,だいたい次の通りでございます。「粳オ魯鮓艾シ鮒鮃鮑鮖鮗鮟鮪鮭鮠鮨鮫鮮裨セ鯀跌タ鮹鯆鯉鯏鯑鯒鯣鯢鯨鯤鯔鯖鯵鯛鯡鯰鯱鯲鰄鰛鰕鰐鉉ミ鰉鰓鰌鰍鰆鰈鰒鰊鰮鰥鰭鰤鰡鰯鰰鱇鰲鱆鰺鰻鰾鱈鰹鱒鱗鱚鱠鱧鱶鱸」 / 烏丸 ( 2001-05-28 15:21 )
鮮はわかるけど、鯨は今や食べるわけにもいかないから、代表格にするのは納得いかないですわ。鮭と鯛あたりがいいです。で、寿司ネタの他の漢字の大半が読めない私。 / たらママ ( 2001-05-28 13:43 )
魚といえば,サケビクニンとザラビクニンは別の魚だったのか……。バラビクニンなんてのも。うーむむむむ。 / 烏丸 ( 2001-05-25 20:53 )

2001-05-22 出版バブル崩壊,流通パニックへの百の予兆 『出版大崩壊 いま起きていること,次に来るもの』 小林一博 / イースト・プレス


【腐海のほとり】

 本や雑誌といったペーパーメディアの売れ行きが悪いというのは少し前から言われていることである。最近はコミックさえ不調,とよく耳にする。若者の活字離れ,ブックオフなど新古書店に圧迫を受ける新刊書店……しかし。そんな認識は甘い,今出版の現場に起こっていることはもっとずっと深刻で,もっとずっと危険だ,というのが著者の主張である。

 たとえば,書籍の場合,発行から約6か月間,書店店頭に置かれ,6か月が経過したところで売れなかった本は版元に返本される。そこで売上が確定するわけだ。ところが,ごく一部の大手出版社に限り,書籍を納入すると本来7か月後にもらえるはずの売り上げ金を取次からなんと即金でもらえるのだという。で,7か月後に返本数と調整して精算される。
 なんとも甘い優遇だが,これら大手出版社の本が売れ続けている間はまだよい。ところが,最近のように本が売れなくなると,返本がかさむ。当然,精算時に赤字が発生し,出版社から取次に膨大な返金が必要になる。そこでどうするかというと,返本時までにともかく本を作り,取次に卸す。すると,あら不思議,刷った本の数だけお金がもらえる。
 しかし,粗製濫造の本がそんなに売れるわけもないから(返本率50%はおろか,70,80%の書籍もざら),精算するとさらに減益。だから,さらに新刊を発行して取次に……。
 という構図で,ここしばらく新刊書籍の点数が増大し(70年代の約3倍),その一方で本が売れず書店が1万店規模で減っているため書店の売り場を圧迫,長期間置いておけば売れそうな本も(ひどい場合は箱も開けずに)返本に回る。

 この悪循環で,もはや業界最王手の講談社でも,『五体不満足』400万部という超スーパーヒット(なんだそうな。知らなかった)をもってしても書籍部門の赤字がまかなえなかった,というのである。ほとんどサラ金に手を出しての自己破産パターンではないか。

 ブックオフ等の新古書店と出版社間のトラブルというのも,読み手が新刊を買わなくなる,程度の問題かと思いきや,
(1) 一部の赤字に苦しむ出版社が返本を断裁するよりマシと新古書店に売って再販モラルを崩す。
(2) 旧来の古書店と違って古本持ち込み時に客のチェックをしないため,書店店頭の万引きが増える。書店の利益率は低いので,1冊万引きされると同額の本を5,6冊売らないと赤字。
(3) 一部の書店が新古書店やマンガ喫茶の在庫(つまり古本)を返本と称して出版社に返本(定価の7割近くが返金される……立派な詐欺)。
といった,重く苦い問題を含むのだそうだ。とくに3つ目は,実は地方の新古書フランチャイズ店は新刊書店と同じ経営者によるものが多く,組織的な犯罪の可能性もあるらしい(返本の中に,スリットがない,カバーと中身が違う,マンガ喫茶のハンコが押してある(笑)などが増えているとか)。

 このほか,雑誌の売上・広告の低落,大型書店開店時の優遇とそれに起因する市場在庫逆流の危険など,さまざまな問題が明らかにされる。以前から出版業界の問題を内部告発する本はあったが,ここまで深刻な内容のものではなかった。これらが事実なら,バブル崩壊の大パニックは目前である。

 著者は出版社,取次,書店それぞれに向けて,悪循環からの脱却を主張するが,閉鎖的でプライドの高い出版業界に変化への適応ははたして可能なのだろうか。
 三度の飯よりの本好きとしてはまこと心配な限り。食欲がわかなくて,本書と一緒に購入してきた『だれが「本」を殺すのか』(佐野眞一,プレジデント社)もまだ開く気にならないのだ。

先頭 表紙

500円以上の価格設定が当たり前の最近の文庫本など,実質はその理屈だと思います。1人の著者,1冊の本に対してかけた手間,原価を,単行本だけだと回収できないので,文庫にすることによって,いわば2回に分けて書店店頭に並べようとするわけです。新潮文庫の一部などを除いて,スタンダードな名作を長期にわたって廉価に売るという文庫の役割はとっくに崩壊しているとみなすべきでしょう。 / 烏丸 ( 2001-05-27 23:34 )
小枝さま,コンスタントに売れる本以外は,リメークしませんと取次や書店が扱ってくれません。ところが,その作者のファンなどはリメーク前にある程度買ってしまっているでしょうから,リメーク版はさほど売れるはずがありません。そのため,かなり価格を高めに設定してリメークの原価を回収しようとするのだと思います。この場合,リメーク再販してくれるだけマシ,という考え方もアリです。 / 烏丸 ( 2001-05-27 23:30 )
なるほどねえ。見たいと思っても手を出さずにいるとなくなってしまうのは、そういう訳だったんですね。特に子供の本は探すのがたいへん。ところで、この間講談社の絵本がリメイクされて1500円で売っているのには、びっくりしました。廃刊に一度なってまた出ると高くなるのはどういう訳なのでしょう。 / 小枝 ( 2001-05-27 22:56 )
それとは関係ないざますが,幻冬舎文庫は,背表紙(水色)の文字が,作品名・作家名の順になっているのと作家名・作品名の順になっているのがごちゃ混ぜで,すっごく探しにくいざんす。珍しい無頓着さざます。 / 烏丸 ( 2001-05-25 20:00 )
うーむ、『血と骨』がなぜ今ごろになって・・・。 / こすもぽたりん ( 2001-05-24 15:38 )
出版といえば,この4月発刊の幻冬舎文庫,宮本輝『草原の椅子』(上・下),群ようこ『ヤマダ一家の辛抱』(上・下),梁石日『血と骨』(上・下)等が,なぜがアチコチの本屋でとーーんでもない高さの平積みになっています。いずれも売れセンの作家ではあるのですが,タイトルからするとちょっと常軌を逸した数だし,現に発売からずいぶん経つのに山が片付きません。発行部数を間違えたか,それとも……。 / 烏丸 ( 2001-05-24 15:02 )
返本率が高いということは,計算上,累積で何十億冊もの本が無駄に廃棄されているということだそうです。まぁもったいない,と見るべきか,もったいなくもない本がそれだけ多いということか。少なくとも環境資源の面ではとんでもないことであります。 / 烏丸 ( 2001-05-23 16:21 )
にゃるほろ〜、これは早速買いだにょ〜。 / こすもぽたりん ( 2001-05-23 15:17 )

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