himajin top
烏丸の「くるくる回転図書館 駅前店」

 
今後、新しい私評は、
  烏丸の「くるくる回転図書館 公園通り分館」
にてアップすることにしました。

ひまじんネットには大変お世話になりましたし、
楽しませていただきました。
その機能も昨今のブログに劣るとは思わないのですが、
残念なことに新しい書き込みがなされると、
古い書き込みのURLが少しずつずれていってしまいます。
最近も、せっかく見知らぬ方がコミック評にリンクを張っていただいたのに、
しばらくしてそれがずれてしまうということが起こってしまいました。

こちらはこのまま置いておきます。
よろしかったら新しいブログでまたお会いしましょう。
 

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2000-12-21 ガメラの炎が2本になったのは火薬をケチるため 『史上最強のオタク座談会2 回収』 岡田斗司夫・田中公平・山本 弘 / 音楽専科社
2000-12-19 [雑談] オススメの検索エンジンはどこ?
2000-12-19 あとは白紙 『消えたマンガ家』 大泉実成 / 新潮OH!文庫
2000-12-18 どちら側の山田正紀 『女囮捜査官』シリーズ試論 最終回
2000-12-17 山田正紀はミステリに寝返ったのか!? 『女囮捜査官』シリーズ試論 第2回
2000-12-16 ミステリ者必読! 『女囮捜査官』 山田正紀 / 幻冬舎文庫
2000-12-15 『猟奇文学館2 人獣怪婚』 七北数人 編 / ちくま文庫
2000-12-14 [雑談] 日本語入力時の単語登録テクニックあれこれ そのニ
2000-12-14 [雑談] 日本語入力時の単語登録テクニックあれこれ その一
2000-12-13 少年・少女の科学ゴコロをくすぐる 『まんがサイエンスVII 「見る」科学』 あさりよしとお / 学習研究社(NORAコミックス)


2000-12-21 ガメラの炎が2本になったのは火薬をケチるため 『史上最強のオタク座談会2 回収』 岡田斗司夫・田中公平・山本 弘 / 音楽専科社


【脳みそを薄目開けたような感じにして見る】

 少し前にご紹介した,『史上最強のオタク座談会 封印』に続く極悪鼎談。
 オタキング・岡田斗司夫,アニメ音楽家・田中公平,と学会会長・山本弘の今回の標的は「特撮モノ」。現役のアニメスタッフ,声優をぼこぼこにした前回に比べると,古い特撮映画,番組が対象で,アングラな色合いは薄れ,特撮文化全般についてのフランクな批評がベースとなっている(そうか?)。

 ところで,アニメオタク,マンガオタクも切ないものがあるが,それ以上に特撮オタクは業が深い。
 なぜなら,特撮オタクが蓄積し,咀嚼するのは戦後という時の蔭であり,時代の背景にへばりついた濁りなのだ。そうでなくて,いかに『ゴジラ対ヘドラ』の「100万人ゴーゴー大会! イカす,イカすぅ!!」なんてのを愛せるだろう。
 とにもかくにも特撮モノを楽しむためには

岡田 中学生ぐらいの時にね,心の中のシフト・チェンジがあって,「酔狂」というギアがガチャッと入るじゃないですか。

この「酔狂」が必須。幼稚園児がタイムレンジャー見るならともかく,大人が特撮モノに走ると

岡田 前頭葉あんまり使わんようにして見へんかったら,つらいやないですか。

だから,シッポ丸めて空を飛ぶゴジラ(本当)に「まさか」「あほな」と常識フィルターが入る直前,「酔狂」方面に意識を流し,その上で「ほぉ,よーできとるやないか」とラスクくわえて楽しむのである。

 烏丸は十数年前の平成ゴジラブームの折り,毎週都内のオールナイト,二番館をはしごした。浅草で『フランケンシュタイン対バラゴン』を見た夜は,その頃亡くなったゴジラ博士(オキシジェンデストロイヤーで唯一ゴジラに勝った男)平田昭彦の名がスタッフロールに表示された際,場内に沸き起こった拍手に参加。その翌週,池袋で『獣人雪男』を見た折りには幕間の通路で同世代の青年に目で「ライター貸してもらえますか」と訴えられ,「あなたは先週も浅草に」と目で語れば,向こうも「お互いに……」と煙草のけむりをくゆらせるのであった。

「ここは危険です。オタクが,出るのです」目のすわった若林映子
「オウ,あなたここで待っていてくだサイ」ラス・タンブリン
「これをオタク電撃作戦と命名する」田崎潤
「この先は進入禁止であります」轟天号無名兵士
「いいんだ」後部座席の平田昭彦
「あ,あ〜,こりゃ大変だ」ゆで玉子こぼしながら藤木悠
「おくらせるわけにはいかないだろう。1日いくらかかると思ってるんだ」苦りきった佐原健二
「青春を返してください」どこからともなくザ・ピーナッツ
「惜しい。実に惜しい」沈鬱,志村喬

 まぁ,とりあえず,ここは特撮カルトクイズをいくつか。

(1) 初代『ゴジラ』を「素晴しい着想で面白い」と絶賛した著名作家は?
(2) ホラー映画『マタンゴ』,食べちゃいけないのは?
(3) 『モスラ対ゴジラ』,インファント島民が宝田明,小泉博たちに赤い液体を飲ませた際,何と言って飲ませた?
(4) キングギドラの3つの首には,実は名前がある。左から順に答えよ。
(5) 『サンダーバード』のロンドン支部,ペネロープの声を担当したのは?
(6) 『決戦!南海の大怪獣』,ある怪獣が現れる時は海の水が凍りついた。なぜ?
(7) 『アルマゲドン』,彗星に核爆弾を仕掛けた後,脱出しようとしたらスペース・シャトルのエンジンが掛からない。どうやって直した?
(8) ロシアからポンキッキーズの「ガチャピン宇宙へ行く」企画,その後音沙汰ないのは?

先頭 表紙

このほか,『大怪獣バラン』で「日本のチベット」と呼ばれたのはどこ? という問題を考えたんですが,昨夜,最初の十数分だけ見直してみたところ,「秘境です」としか言われてない。おっかしーなー,記憶間違いかしらん。それとも「日本のチベット」というセリフはほかの映画だったか……。(ちなみに『バラン』で「秘境」扱いされるのは東北地方の北上川上流) / 烏丸 ( 2000-12-21 18:20 )
ちょっと問題のランクがバラバラすぎましたね。マタンゴはそれで正解なんですが,そのマタンゴって何の名前,という初級問題。ほかにいくらでも問題作れるのに,ちょっと悪問でした……。(4)はスタッフ間の名称なんでしょう,映画の中で発音されたとは思えません。だから,その「日本的な」で多分正解。 / 烏丸 ( 2000-12-21 18:16 )
う〜む、(5)しかわからん…。(4)は、絵コンテ上の話なんですかね、本当に名前がついていたんですかね? あの極めて日本的な三兄弟の名前だろうか…。(2)もわからんよなあ。『マタンゴ』で食べちゃいけないのは、「マタンゴ」だし…。しかし、それでは問題にならんし…。うむむ。 / こすもぽたりん ( 2000-12-21 16:44 )

2000-12-19 [雑談] オススメの検索エンジンはどこ?


 
 インターネット上で,キーワードを入力するとその言葉の書かれたページをかたっぱしから探し出してくれるサービスのことを「検索エンジン」と言います。ここでは烏丸が本やマンガについての情報を探すときによく利用する検索エンジンについて,簡単に紹介しましょう。

 日本で検索エンジンという言葉をメジャーにしたのは,「Yahoo!JAPAN」(ヤフージャパンと読む)でした。しかし,Yahoo!のデータは審査・登録制かつカテゴリ分類式で,ロボットと呼ばれるプログラムがインターネット上をかけめぐり,自動的にデータを集めてくる他の検索エンジンに比べると見つけられるサイトの数は非常に貧弱です。その分,大手企業のトップページなどを探すのは簡単です。
 Yahoo!JAPANはいまやニュースや株価,テレビ番組表,掲示板など,総合情報サービスとみなしたほうがよいでしょう。
※「ひまじんネット」で検索するとヒット10件。これは,Yahoo!JAPANの場合,自前の検索候補がない場合は次に紹介する「goo」の助けを借りてページを検索するため。

 ロボット型の代表的な検索エンジンといえば「goo」(グーと読む)でしたが,ここはページ表示や検索が重く,最近は今一つです。ただ「■最新の結果(**件)」は最近書かれたページ,存在が確認されたページを教えてくれて便利です。
※「ひまじんネット」で最新の結果ヒット1件,一般の結果ヒット10件。

 「インフォシーク」はgooに比べるとずっと軽いのが魅力で,データもなかなか充実しています。ただ,たとえばキーワードに「SFの衰退」と入れた場合,勝手に構文解釈して「SF」と「衰退」に分け,両方あるページを探し出してしまいます。そんなときは半角ダブルクォーテーションで囲って「"SFの衰退"」で探せばよいのですが,そもそもそういう複合語検索向きでないようで,あまりたくさんは得られません。
※「ひまじんネット」でヒット7件。

 「先週のニュースにあったはずなんだけど……」というような新しいデータを探すなら「フレッシュアイ」がオススメ。ともかくここのロボットは活きがよく,ほんの数日前の出来事でもきっちり見つけられます。その分,有名サイトなど,ある程度データがかっちり構築され,手が加えられてない場合はあまりヒットしないので,ほかの検索エンジンと組み合わせる必要があります。
※「ひまじんネット」でヒット2件。

 さて,最後に,烏丸が最近一番頼りにしている検索エンジン,それは「Google」(グーグルと読むという説が優勢)です。ここは添付画像のようにシンプルで,ともかく軽い,データをよく見つける,新しいデータにも比較的強い,などいろいろ利点があり,さらに見つけ出したページについて,もしそのページの内容がすでに書き換えられていたり消されていたりしていても「キャッシュ」ボタンでテキストだけ表示させることができるのです。この「キャッシュ」機能,いずれは著作権の問題が派生するのではないかと思われますが,なかなか便利に使えています。
※「ひまじんネット」でヒット23件。

 その他の検索エンジンについては,「検索エンジンの山」をご参照ください。

先頭 表紙

okkaさま,GS独特の擬似欧風ロマンティシズム,大好きです。とくにタイガース。「落葉の物語」なんて「愛のショコラーテ」ですもんね,「ショコラーテ」。明治ミルクチョコレート。はーい。ああ「銀河のロマンス」!おお「花の首飾り」! / 烏丸 ( 2000-12-21 19:03 )
絵子縁さま,".sh"とか".to"に弱いというのは存じませんでした。なるほど〜。 / 烏丸 ( 2000-12-21 18:52 )
撫子さま,My Yahoo!は登録しておられますか。いろいろ設定できて便利です。 / 烏丸 ( 2000-12-21 18:51 )
Googleたしかに重宝します。いいですね。早速GS関係いろいろ調べました。ありがとうございます。 / okka ( 2000-12-21 17:41 )
大抵InfoseekかGoogleですね。ただ、Googleは".sh"とか".to"系の検索に弱いように感じます。でも、それ以外であればかなり重宝します。 / 絵子縁 ( 2000-12-21 10:22 )
検索エンジンかぁ。もっぱらyahoo!です。なぜならパソコンを始めたときにここが主流だったから・・・。 / 撫子 ( 2000-12-20 23:46 )
早速お答えいただきありがとうございます。Yahoo!やInfoseekの使い勝手、まったく同感です。ところで…ヤバイですかねぇ、あのキャッシュは私も重宝してますが。あれだけのデータをとっといてくれるのはユーザーとしては助かるなぁと単純に喜んでおりました。あとグーグルは結果の表示順もいいですよね。プライオリティ高いサイトがちゃんと最初の方に表示されてくる気がします。どういう仕組みなんでしょう。リンク張られている数とかでサイトの質を判断しているのかな。 / 美奈子 ( 2000-12-19 22:12 )
2ダブさま,しかしこのキャッシュ,サイトやプロバイダ側がデータを消した後にも残るというのは,ヤバい橋のような気もします。個人情報とか漏洩したときはやっかいかも。(画像はキャッシュされないようなので(容量考えれば当たり前!),エログロ,少年東クンまわりなどはかなり回避できるとしても。 / 烏丸 ( 2000-12-19 14:51 )
えむさま,最近は,企業の公式カタログや商品ラインナップは「Yahoo!」で,それ以外,まずは「Google」,最新ニュースは「フレッシュアイ」,それでも情報が足りないときはほかを順繰りに……といった感じです。たいてい「Google」でこと足りるんですけどね。 / 烏丸 ( 2000-12-19 14:48 )
googleはホント便利だと思います。削除されたヤツまでキャッシュしてるのはスゴイ。妖しいけど。調べものがあるときの、強い味方です。 / 2ダブ ( 2000-12-19 14:46 )
なるほどー。用途にあわせて色々な検索エンジンを使い分けるといいんですね。いつもだいたいYahooかGooかInfoseekかLycosしか使ってませんでした・・。余談ですが、前勤めてた会社の課長が自慢気に「ヤホーがね・・」と話しててずっこけ(死語)ました。本人曰く「ネットには詳しいんだよね」とのことです。・・うーむ。 / えむ ( 2000-12-19 14:41 )
基本的なお作法として,通常,複数のキーワードをスペースで区切って入力すれば,両方書かれたページを検索してくれます。 / 烏丸 ( 2000-12-19 14:33 )

2000-12-19 あとは白紙 『消えたマンガ家』 大泉実成 / 新潮OH!文庫


【誰も聞こうとはしなかったということですかね】

 本書巻頭で,クイックジャパン編集長・赤田祐一氏は言う,「でもさ,誰にでも胸の中に一人くらい『消えたマンガ家』がいるんだよ」。
 もちろん,消えるのはマンガ家だけではない。ロックミュージシャンも,映画人も,お笑いタレントも,誰もが消えていく。だが,マンガ誌が週刊化された後の時代に現れ,「実力があるがゆえに量産を強制され,その繊細さゆえに,やがて毀れて,消えていく」マンガ家たちには,どこか共通の気配がある。

 オウム真理教をはじめとする宗教団体潜入ルポで知られる大泉実成の『消えたマンガ家』シリーズは,その,消えた(消された)マンガ家たちにスポットをあて,その軌跡を追い,現在を(執拗に)訪ねる。太田出版版では3分冊だったものが,新潮OH!文庫版では「ダウナー系の巻」「アッパー系の巻」の2冊にまとめ直されている。
 それぞれに収録されたマンガ家は,
◎ダウナー系の巻
 ちばあきお・山田花子・鴨川つばめ・安部慎一・中本繁・冨樫義博・内田善美・ねこぢる
◎アッパー系の巻
 とりいかずよし・ふくしま政美・山本鈴美香・美内すずえ・黒田みのる・徳南晴一郎・竹内寛行
(太田出版版の第3巻に収録された「“消えたマンガ家”からの手紙 高橋伸次」「早すぎた“二四年組” 岡田史子ロング・インタビュー」はなぜか削除され,代わりに「鳥山明はエホバの証人だった!?」が収録されている)

 全体に,ダウナー系の作家は,自らの生きざまと作家活動に倦み疲れ,マンガ家であることを放棄したり,何人かは生きることそのものからリタイアしている。
 ことに,通常の生活者としてすら生きながらえなかったあるマンガ家,子供の頃からいじめなどの疎外感に悩み,自分の個人的な見解を世間一般の“常識”にすり換えて作家を支配しようとし恩着せがましく説教を繰り返した編集者に対し後でセクハラ行為があったと訴え執拗にいたずら電話をかけ,バイト先の喫茶店を解雇された後でも通い従業員待合室に座り込む。「痛い」としか言いようがない。
 ハイテンションに勘違いを増幅していくアッパー系では,なんといっても死者まで出した宗教団体「神山会」のヒメ(巫女)と化した山本鈴美香の「とんでも」度が高く,一種,素晴らしい。大泉,赤田両名は神山会に潜入取材を試みるが,山本当人には会えないものの,その父親の自我肥大度が強烈で,彼の繰り出す怒涛のごとき「ありがたいお言葉」を読むだけでもこの本を買う価値があろうというものだ。そして,その顔が六〇代になった宗方コーチだった,というオチ付きでもある。アマテラスについての講演イベントで「大地を固める」ためにシコをふみ狂う一見五〇歳くらいの関西弁のおばちゃん(無論,美内すずえのことである)も実にいい味出している。

 その他,あれやこれやの中で,最も心を打たれたのは『マカロニほうれん荘』鴨川つばめのロングインタビューだった。破天荒な父親のもとに育ち,既存のマンガ界に刃向かう苛烈な青春時代,破滅的な創作活動,終結,布団にもぐり込み死を思う数年,宗教に関する本を読みまくる時期。
 人間は,これほどの沈潜の後でも再生できるのか。

 消えたマンガ家たちの絶頂期が幸福だったのか,不幸だったのか,それはわからない。
 1つだけ言えるのは,人には誰でも「いかに世に出るか」ではなく「いつ,いかに消えるか」がテーマになる時期がやがて訪れる,ということだ。本書を興味深いサブカル本と読むべきか,先人の苦い蹉跌と見るべきか……前者でいられる間は,よいのだ。

先頭 表紙

一時期「死亡説」も出てましたからねぇ<鴨川氏。復帰後の彼の作品もある意味「ぶっ飛んだ感じ」がして好きですね。 / 絵子縁 ( 2000-12-21 10:26 )
okkaさま,同じ作者の前後の作品はなくはありませんが,あれはワン・アンド・オンリーではないでしょうか。烏丸は連載当時,ちょっと自分とズレがあってそんなに熱中はしませんでしたが,夜の巷の魑魅魍魎の中をとしちゃんが歩く有名な1ページには鳥肌立ちました。『こまわりくん』が陰部の皮膚なら,『マカロニ』は内臓的な印象。 / 烏丸 ( 2000-12-20 15:09 )
TERESAさま,いらっしゃいませ。ちばあきおは白く,シンプルな絵柄でしたが,あれは何度も何度も何度も何度も何度も何度もメモや下描きを重ね,展開を検討したあげくの作画だったそうです。ちなみに,烏丸は『キャプテン』『プレイボール』は持っていません。老後の元気玉にとっておくのです。 / 烏丸 ( 2000-12-20 15:05 )
ふむふむ。あれの「続」ではないのね。「マカロニほうれん荘」のノリの新しい漫画ってあるんでしょうか?あったら読んでみたい。 / okka ( 2000-12-19 22:34 )
初めてこちらにおじゃましまーす。うーむ。「ちばあきお」何気に「プレイボール」夢中で読みましたね〜。一人の高校生が、自らの力で弱小野球部を立て直していくお話、好きだったのになー。 / TERESA ( 2000-12-19 21:11 )
だって,「あらあらあたしは乙女のきんどーちゃん!」だって男ですもの。 / 烏丸 ( 2000-12-19 14:44 )
山田花子は……サブカル本のコーナーなどで評価高いようですが,読みたい絵柄,内容ではなさそうなので,ちゃんと目を通していません。今回のを読んで,ますます腰が引けました。病的なのは嫌いではないけど,ちょっと方向が違うかなあ。 / 烏丸 ( 2000-12-19 14:40 )
笈川かおる,絵柄は『すずめ報告』のあたりからそんなに変わっていません。ただ,内容が……なんというか情け容赦なし,アンハッピーエンドだからなんだよ,なんですね。 / 烏丸 ( 2000-12-19 14:36 )
えっ、鴨川つばめって「彼」なんだ。「彼女」だと思ってた…。 / こすもぽたりん ( 2000-12-19 14:04 )
んんん〜、山田花子かあ。死んでからというもの評論家の間で何かと取り沙汰されているので、一度読んでみようと思っていたんですけど、痛そうだからやめときましょうか。それにしても、笈川かおるがまだ描いていたとわっ。絵柄は全然違うものになっちゃったんでしょうね〜。 / こすもぽたりん ( 2000-12-19 14:03 )
笈川かおるは,最新刊『ばってんbox』が1997年,その前も数年に1冊テンポですから,まだ完全に消えたというわけでは……。でも,最近はどんどんメジャーになることを拒否しそうな内容に走っていたからなあ。 / 烏丸 ( 2000-12-19 11:40 )
okkaさま,鴨川つばめのインタビューは親本(2巻?)にも載っていたと思うのですが……。いずれにしても,彼は,強い。ものすごく明確かつ戦闘的な作家意識があって,マンガ界,編集者に対抗し,それでもすり潰されて,ぼろぼろになって,そこからなんとかぎりぎりで復帰している。多少インタビューの内容にツクリが入っているとしても,感動しました。 / 烏丸 ( 2000-12-19 11:38 )
「痛い」のは山田花子。本には載ってることだから名前明記しても別にいいんですが,セクハラ疑惑を言いふらされた編集者とか,本人以外を思うとシャレにならんなーと思って,ちょっと。 / 烏丸 ( 2000-12-19 11:33 )
えむさまのところにもつっこもさせていただきましたが,美内すずえ,続編はちょっと難しいのではないでしょうか。それとも,宇宙から電波が届いたら,じゃじゃっと復帰するのか。ところで,漫画家同様,芸能人もよく宗教にはまると言われますよね。創作・演技系であること,お金や名声がある程度得られると,次に心のよりどころが欲しくなること,などからでしょうか。 / 烏丸 ( 2000-12-19 11:32 )
あややさま,いっちゃってる系のマンガ家は,ファンが書いた別シナリオなんか,歯牙にかけてないと思います。少なくとも美内すずえは。この本に載ってるほかの「とんでも」さんとの対談読めばわかります。 / 烏丸 ( 2000-12-19 11:32 )
笈川かおる…。 / こすもぽたりん ( 2000-12-19 11:18 )
親本は買ったのですが、鴨川氏のインタビュー気になりますね。oh!文庫イイトコ持って来てますねぇ。 / お久しokka ( 2000-12-19 10:40 )
そ、その「痛い」のは誰だろう…。ねこぢるだろうか。ねこぢるのダンナって山野一なんですねえ。最近の「ねこぢるy」って山野一のことだそうで…。 / こすもぽたりん ( 2000-12-19 08:34 )
タイムリーに「ガラスの仮面」について書いてみました。うーん、漫画家って結構宗教ハマる人多くないですか? / えむ ( 2000-12-19 07:44 )
美内先生、公演はいいから続き描いておくれよ〜。ガラかめの続きが気になって、明日死んだらと飛行機にも乗れない。ネット上では、勝手にファンが続きを書いてるよ・・。ひょっとして、あらゆる展開が素人によって出尽くして、プライドに触って描けないのか・・。 / あやや ( 2000-12-19 01:54 )

2000-12-18 どちら側の山田正紀 『女囮捜査官』シリーズ試論 最終回

 
【みなし新本格派】

 期せずして3回連載での紹介になってしまった『女囮捜査官』だが,なんとか今回で片付けたい。

 二階堂黎人の解説では,彼において(おそらく他のかなり多くの新本格派の作家においても)「新本格ミステリ」の一種教条主義化が進んでいることが明確にうかがわれた。それは,おそらくいくつかの新興宗教がそうであるように,中にいる分には確たる目標が得られ楽かもしれないが,外から見ればフレキシブルな発想の放棄,誤解を恐れずいえば体育教練の理性放棄からそう遠くない。

 たとえばSFというジャンルも一部マニアによって支えられた面が強かったが,それでもSFそのものは根のところで自由な発想や表現法を追い求める精神のあり方で,その成果については実にノンシャランだった。星ファンと小松ファンと筒井ファン,ハインラインファンとJ・P・ホーガンファンとブラッドベリファンとが同じテーブルにつけることだけでそれは明らかだろう。
 それに比べると自称・新本格派は「教条主義」が揶揄的な言葉,ということすら通じないほど「かくあるべし」にこだわる者が少なくないように見える。《こちら側》の者は《あちら側》のモノを読めない,《あちら側》の者は《こちら側》のモノは読めない……これがシャレでないとしたら,それはなんと貧しい地平線だろう(もっとも第2巻「視覚」の解説を担当した我孫子武丸は,作家にとってジャンル分けなどレッテルに過ぎないこと,山田正紀は初期からミステリを書いていること,山田正紀がSF入門に格好の存在であることを明言,意外や常識的かつ良識的(失礼)だった)。

 さて,では山田正紀はすっかり《本格推理側》の人間になってしまったのか。烏丸の想像ではノーである。
 確かに『女囮捜査官』シリーズは,新本格派が泣いて喜ぶ(悔しがる)パズラー的トリックにあふれている。しかし,そういう素材はそれを尊ぶ読者に対する作者のエンターテイメントの所産であるように思う。だから,もしこのシリーズが《官能サスペンス》として巷で話題になったのなら(実は官能的シーンなどほとんど書かれてはいないのだが),作者は泰然とそちらの色合いを強め,続いて2,3,それに見合った作品を書き起こしたのではないか。

 それが,山田正紀という作家の恐るべき引出の広さであり,逆にいえば彼がどのジャンルにおいてもナンバー1になれない理由でもある。山田正紀はある意味器用に過ぎ,編集者や読み手に応えられ過ぎるのではないか。その姿勢はプロの職人としてはまことに立派だが,どこかに個人の濁ったコアがなければ大成しないのもまた創作という世界なのだ。
 思えば1970年代後半,SF作家として『神狩り』でデビューした折りも,その作風は「小松左京以来,スケールの大きな作風のSF作家がいない」という声に応えてのものだったように思う。そして,「いかにも山田正紀」という手応えは得られず,さりとて小松ほどのゼネラルな印象にも乏しかったように思う。
 結局,山田正紀とは何者かに対する解答はおろか,問いさえないことが問題なのだ。

 山田正紀が今後,どのカードの代わりにも使える便利なワイルドカードとして終わるのか,それとも稀代のエンターテイナーとしてスペードのエースたり得るのか,それはわからない。しかし……いずれにしてもこれほどのスケール,しかも大小のアイデアの詰まった新本格・サスペンス・官能・ポリティクスミステリの大作,全5巻,文庫本にしてざっと2000ページを,たった9か月で書いてはいかんと思うわけよ,オレとしては。

先頭 表紙

というわけで,美奈子さま,ちゃっちゃっと書いてしまいました。最近のイチオシはやはりグーグル。 / 烏丸 ( 2000-12-19 14:37 )
「よおぉ〜し,ここにつっこみを入れろぉ」「イ,イエス」 / スネーク烏丸 ( 2000-12-19 11:46 )
検索エンジンですか……ちょっとつっこみだと長くなりそうなので,あとで簡単にまとめましょうか(たいした内容にはなりませんが)。 / 烏丸 ( 2000-12-19 11:43 )
ちょっと待ってくださいカラスさん、ミナ嶋さん。私はSFのレコードを3,000枚持っているんですが、その結果言えることは「いいものもある、わるいものもある」…。 / スネークぽたりん ( 2000-12-19 08:32 )
おはようございます。昨日は鷹揚にお誘いいただき、ありがとうございました。今朝見るとやっぱり大風呂敷で恥ずかしい(苦笑)。ところで烏丸様、検索エンジンはどちらをお使いですか? よろしかったらお教えくださいませ。(「SFの衰退」と入れてそんなに出てくるものなのですか、面白いですね。) / 美奈子 ( 2000-12-19 06:07 )
『ハリー・ポッター』を《こちら側》の手柄にするのはさすがにずるい! と思うと同時に,いろいろなものを《あちら側》といって排除しちゃうと同族婚が進む……難しいですね。SFとは,となるとテーマが重い……。それにしても,ヴェルヌやウェルズは,今でも超弩級に面白い。それが不思議。 / 烏丸 ( 2000-12-19 01:19 )
「星や筒井はSFだったのか?」なるほど。確かに彼らはアシモフ、ハインラインのような「万人向け」ではないですね。強烈すぎて、それぞれがワン・アンド・オンリーという感じ。……この点は深い話になってくるのでは、という気がします。つまり換言すると「そもそもSFって何?」という問題につながりますよね。Science fiction? Speculative fiction? 「科学知識が散りばめられてさえいればSF」ってわけじゃない。う〜ん、この点はじっくり考えてみたいです。 / 美奈子 ( 2000-12-19 01:08 )
今年のネビュラ賞候補作品には『ハリー・ポッター』シリーズが含まれている(た?)そうです。アメリカでも苦しいんでしょうか、それほどまでして読者層を広げて、何としても盛り上げたいという意図の表れ……? でも「それは違うんじゃないの?」というファンの声もかなり出ているようです。ハリー・ポッターは邦訳で読もうと思っていますが(遠い知人が翻訳を手がけたので)。 / 美奈子 ( 2000-12-19 01:06 )
けれども、SFにはそれしか途がないわけじゃない。ブラッドベリやJ.G.バラードのように、ハードな知識バリバリというわけではまったくないのに燦然と輝きつづける作品もある。いつか烏丸様がおっしゃっていたように、ヴェルヌも依然として古びていない。だから、「SFで描きうる世界が現実世界の進化する速度に追いつけなくなった」というのは言い訳にすぎないのでは、という見方もあると思います。 / 美奈子 ( 2000-12-19 01:04 )
「すごく読み手を選ぶ」、そうだと思います。作家自身がすごく勉強して書いた分、読み手にも前提とされる知識が必要となると、それはエンターテインメントとしてかなり苦しい。ホーガン型ハードSFの系譜を担いつつストーリーに矛盾のないフィクションを書こうとすると、極度に読者を限定して、ぽたりん様が示されたように「読者も作者も限定される同族婚状態」という袋小路に陥ってしまう。 / 美奈子 ( 2000-12-19 00:58 )
日本でも『X電車で行こう』の山野浩一らがニューウェーブを提唱しましたが,実は御大・小松左京の同時期の短編集『牙の時代』のほうがよほどニューウェーブ。これじゃ新人は出て行けないよ,と当時思ったものです。 / 烏丸 ( 2000-12-18 23:42 )
少なくとも,ハインライン,アシモフを目標とする(さらに彼らに対するアンチとしてニューウェーブを持ち出す)ほうがわかりやすい。スターウォーズ以降のじゃんじゃかあるアメリカ産SFを彼らは「胸を張って」作れるのに,日本では(予算の問題だけでなく)どこか純文学における実験的というか,ゆがんだ作品でないと評価されない,そんな気がします。 / 烏丸 ( 2000-12-18 23:38 )
あと,あまり言われてないこととして,日本では,シュルレアリスム等にあたる表現の実験とSFとが混乱した面があると思います。星や筒井,そして小松の一部は本当にSFだったのか,ということ。それはそれで凄い作品群だったのですが,後進にとっては目標がつかみにくかったのではないかと思います。 / 烏丸 ( 2000-12-18 23:36 )
検索エンジンで「SFの衰退」で検索してみたところ,だいたい先ほどの(1)〜(3),それに加えて「SFプロパーの新人賞がなくて若手作家を発掘できなかった」というのをちらほら見ました。しかし,出版社からみて商売にならないから賞が設けられなかった,ということだとすれば,それは原因なのか結果なのか……。あと,全般にSFの現状と未来について能天気な印象がいや。もっと現状の「衰退」「キツさ」を認識してほしい。 / 烏丸 ( 2000-12-18 23:36 )
美奈子さま,ありがとうございます。まったく同感,海外でも全盛期のSF的な作品の噂はあまり聞きませんね。ネットワークや遺伝子工学など最新科学をよく勉強して盛り込んだ作品もあるにはあるようですが,それはアシモフの読者に比べればすごく読み手を選ぶような気がします(それって,細分化された科学の現状と見事にクロスするような)。 / 烏丸 ( 2000-12-18 23:36 )
あ〜なんかゴチャゴチャと(汗)……読みづらくしちゃってすみません。 / 美奈子 ( 2000-12-18 21:53 )
つまり、ご指摘のように、SFスピリッツが日常へ「拡散」した結果、文字媒体の担う領域が(表面上)狭まってきているのではないかと。拡散するようになった要因としては、日本では烏丸様の挙げられている(2)がやはり大きそうですね。(3)については、科学の成果が専門化・細分化されすぎて素人にはとてもフォローしきれない状態になっていることに加えて、宇宙開発については、東西冷戦終結以後「国威をかけた(外向きの)」宇宙開発に振り向けられる予算が世界的に縮小したという政治環境の変化も背景にあるかもしれません。 / 美奈子 ( 2000-12-18 21:23 )
私が知らないだけかもしれませんが、日本モノに限らず海外SFの話題も最近はあまり耳にしません。烏丸様の言葉を借りると、生活していて「昔ほどSFにニーズを感じない」状態になってきたから――一昔前まではSFの世界でしか想定して語りえなかっただろう現象が、(ネットの爆発的な拡大に代表されるように)現実の中に急速に浸透してきているせいではないかと感じております。たとえば先日は、AIBO第二世代やホンダの人型ロボットが踊るのを見て「ああアシモフのロボットがついに」と唸った人も多かったのではないでしょうか。 / 美奈子 ( 2000-12-18 21:21 )
もう1つ,従来の枠組みの「日本SF」は確かに衰退したけれど,ナウシカやエヴァンゲリオン,ドラゴンボール,バイオハザード,ポケモンなどにSFスピリッツを見れば,層はむしろ広がったという見方もできます。「拡散」ってやつですが……。美奈子さまはこのへん,いかがお考えでせう。 / 烏丸 ( 2000-12-18 16:31 )
日本SFがなぜ衰退したか,は……実は,よくわからないのです。(1)星,小松,筒井が巨大過ぎて並みの新人は相手にされなかった,(2)アニメ,ゲーム界に優秀な才能が流れた,(3)科学の成果が宇宙開発のように目に見えるイメージでなくなってしまった(しかも後ろ向き),などなど。読者と作者が同族婚というのもあるとは思いますが,それだと「自分自身,昔ほどSFにニーズを感じない」説明ができないのです。 / 烏丸 ( 2000-12-18 16:24 )
なるほどなるほど、SFの状況がよくわかりました。さて、私が「日本のSFが滅びに至った道」と考えているのは、読者も作者も固定された状況が長く続いたことによる代謝機能の退化であり、新本格者どもも「かくあるべし」なんて言っちゃってると、そのうち日本中でミステリクラブの部員しか読まなくなっちゃうよん、という感じのことでございます。ところで、SFが読者も作者も固定されたいわゆる同族婚状態を永く続けたために衰退した、というのは「と学会」の受け売りなのですが、実際のところはそうではないのでしょうかねい。 / こすもぽたりん ( 2000-12-18 13:55 )
しかし,新本格派をこきおろす勢いで山田正紀氏については必要以上にキツい内容になってしまいました。なんだかんだとブーたれつつ,『神狩り』以来の大ファンなんですが。 / 烏丸 ( 2000-12-18 12:44 )
我孫子武丸の解説が「意外や常識的かつ良識的(失礼)」のくだりで含み笑い…そして最後の一文で大笑いしてしまいました。「2000ページを9か月」とは…赤川次郎かいっ(笑) / 筒井もホーガンもブラッドベリも、ですね! ( 2000-12-18 06:57 )

2000-12-17 山田正紀はミステリに寝返ったのか!? 『女囮捜査官』シリーズ試論 第2回

 
【──女は花だ。しかし病んでいる。】

 さて,昨日『女囮捜査官』シリーズを紹介するのに第5巻「味覚」の表紙を添付画像としたのは,カバーデザインが辰巳四郎で,殊能将之の『ハサミ男』と同じ人ですよ,ということが言いたかっただけである。

 それはさておき,同シリーズは随所に「それだけで1冊書けそうな」アイデアにあふれている。そもそも,この警視庁科学捜査研究所(科捜研)特別被害者部(特被部)が設けられたのは異常犯罪の被害者データを分析し,現実の事件における理想的な被害者像を割り出す「被害者学」の成果による……という設定からして,SF(Science FictionというよりはSpeculative Fiction)的力ワザである。

 各巻の内容をざっと追ってみよう。

 オーソドックスな警察小説の手法に乗っ取り,容疑者が二転三転するフーダニットモノの第1巻「触覚」。
 首都高速5号線上りの大事故の現場で,三十代後半の白髪の怪我人と女の右足が発見される。その男と女の右足,そしてそれを運んだ救急隊員たちが血痕だけ残して消失し,数時間後,首都高の各所で女の左腕,首,胴体,左足が発見される……トリッキーな女性バラバラ連続殺人をメインにし,シリーズ中,パズラー色,猟奇色が最も濃い第2巻「視覚」。
 凶暴な殺人犯を射殺したことで軽度の神経症に陥った志穂は,嬰児誘拐事件で犯人から名指しで身代金の運搬役を命じられる。志穂の頭から,いないはずの双子の妹のことが離れない……。誘拐についての秀逸なアイデアが連発する,多重人格モノの心理サスペンス,第3巻「聴覚」。
 連続放火事件の捜査現場に,全身のムダ毛を剃られ,日焼け止めクリームをくまなく塗られた女性の全裸死体が発見され,傍には被害者を模した人形が……捜査が同時進行的に描かれる(モジュラー形式と呼ばれる)見たて殺人モノ,第4巻「嗅覚」。
 そして新宿西口で発見された若い女の上半身だけの死体をきっかけに天才犯罪心理学者・遠藤慎一郎と彼の産み出した特被部が壊滅に追いやられ,その存在(そして本シリーズ全体)の意味がダイナミックに描かれる最終巻「味覚」。

 いずれも本格推理小説のアイデアに満ちあふれながら,スピード感あふれる文体と展開で,読み手は理屈を噛み締めるヒマもなく作者の演出するジェットコースターにふりまわされる。

 ところで,各巻の解説にいわゆる「新本格」派と呼ばれるミステリ作家が顔をそろえていることは先に述べた通りだが,第4巻「嗅覚」の二階堂黎人の解説は新本格「側」の傲岸不遜さがよく現れていて興味深い。たとえば,こんな具合だ。
「トクマ・ノベルズ版の『触姦』とか『視姦』とかいった語感は…(中略)…その下品な感触が,本格推理のもつ理性の崇高さに煙幕を張っていた。…(中略)…その責は,狙いを誤った作者と出版社に課すべきだろう」
(山田正紀が好きなミステリー作家として挙げた作家について)「カチンと来た。厳密に言えば,この二人の小説は《本格推理》ではないし,セバスチァン・ジャプリゾに至っては《サスペンス》である」
「山田正紀氏が《あちら側》の作者であることを望むなら,《こちら側》の読者である私が,彼の良い読者になることなど絶対にできない」
「氏は今や,完全に《こちら側》の人間になったと信ずるに足りる」
「私としては,山田正紀氏が単なる助っ人で終わるのでなく,《本格推理》を愛する《こちら側》に完全に帰化して,永遠に我々と共に《不思議の国》の住人となってくれることを望むものなのである」

 さらに,続く。

先頭 表紙

新本格派の現状は,日本SFとはちょいと違うように思う,ということは次の3回めにて扱っています。いかがでせうか。 / 烏丸 ( 2000-12-18 00:22 )
いやまったく,新本格派の若いもんに「セバスチァン・ジャプリゾに至っては《サスペンス》」なんて言われたかーありません。『シンデレラの罠』はそんなに大長編というわけではないのに,でんぐり返りました。(もっとも,今やあらすじも記憶してないんですが) / 烏丸 ( 2000-12-18 00:21 )
二階堂黎人の望む世界は、日本のSFが滅びに至った道そのもののような気がしますねえ。誰がどちらがわにいるかとか、分類としてはとかどうでもいいことなんですがねえ。そこまで傲岸不遜になれる理由がわかりませんですねえ。 / こすもぽたりん ( 2000-12-17 12:16 )
山田正紀は本当に著作が多いですね。「帰化」されたら悲しいかも(笑)。それはさておき、セバスチァン・ジャプリゾ!! 懐かしい〜! 『シンデレラの罠』でしたっけ? 夢中になりましたよ〜。 / 美奈子 ( 2000-12-17 06:40 )

2000-12-16 ミステリ者必読! 『女囮捜査官』 山田正紀 / 幻冬舎文庫


【生まれながらの被害者】

 ロングヘアー,細くしなやかな体,ミニスカートを穿いて,ピアスをつけた若い娘―同じタイプの犠牲者三人はいずれも絞殺されたばかりか,二人はミニスカートを剥ぎ取られ,一人は髪の毛を鋭利な刃物で切られた無残な姿で発見された。
 「山手線連続通り魔殺人事件」の謎を追う警視庁・科学捜査研究所の特別被害者部の女囮捜査官の北見志穂は,犯人の食欲を誘う餌食に扮し,有力な被疑者たちの前にその美貌と肉体を晒す違法ぎりぎりのおとり捜査を強行した。
 犯人は痴漢か,異常者か,驚天動地の意外な真相とは。

 ……というのが,『女囮捜査官1 触姦』(徳間ノベルズ版)の惹句である。
 主人公・北見志穂は“生まれながらの被害者”タイプであり,それを活かした囮捜査官になるのだが,これは正規の捜査官ではなく「みなし公務員」扱いで,そのため現場でも捜査本部でも決してよい顔はされない。
 そんな囮捜査官が凶悪な犯罪に立ち向かう連作長編,しかも全5巻のサブタイトルが徳間ノベルズ版ではそれぞれ「触姦」「視姦」「聴姦」「嗅姦」「味姦」,カバーデザインや惹句もそれに合わせて官能小説っぽいものだった……となると,なんとなく勝目梓ばりの官能バイオレンス路線を想像してしまうが(また,そういうシーンが全くないわけでもないが),実は本シリーズのからくりはそんなに単純ではない。

 まず,作者が,あの,山田正紀である。
 1970年代後半,『神狩り』『チョウたちの時間』をはじめとする壮大かつ挑戦的なSFで当時のSFファンを驚嘆させ,かと思えば『崑崙遊撃隊』などの辺境冒険譚,かと思えば『謀殺のチェス・ゲ−ム』などのサスペンスアクション,あるいは『少女と武者人形』などのホラー,と,さまざまな分野で非常に密度の高い作品を連発し続ける作家である。個々の作品は必ず一定以上の水準を保ち,重いテーマを抱えつつも見事にエンターテイメントたる軸をはずさない。

 では,この『女囮捜査官』シリーズの狙いが官能バイオレンスでないなら,一体何なのか……。
 答えは,サブタイトルの「姦」の文字をそれぞれ「覚」に変えた幻冬舎文庫版の解説の担当者を見れば一目瞭然であろう。
  「触覚」法月綸太郎
  「視覚」我孫子武丸
  「聴覚」恩田陸
  「嗅覚」二階堂黎人
  「味覚」麻耶雄嵩
 そう,本シリーズは,不可能犯罪のトリックに挑戦する,バリバリの「新本格ミステリ」なのであった。そして,それぞれの作品で猟奇的な殺人事件のフーダニット,ハウダニット,ホワイダニットが問われ,それぞれに論理的な決着が与えられるというのが本シリーズの魅力なのである。

 ちょっと書ききれないので,明日に続きます。

先頭 表紙

なんだか,書いているうちに3回シリーズになってしまいました。「日常の謎」のときみたいに,練っているつもりはないんだけどなー……。 / 烏丸 ( 2000-12-17 02:32 )
「神狩り」「崑崙遊撃隊」好きでした。久しぶりに読んでみよう! / TAKE ( 2000-12-16 13:29 )
ほえ〜、まったく知らない世界だにょ〜(©でじこ) / こすもぽたりん ( 2000-12-16 10:21 )

2000-12-15 『猟奇文学館2 人獣怪婚』 七北数人 編 / ちくま文庫


【美女と野獣,つうとよひょう】

 少し前にご紹介した『猟奇文学館1 監禁淫楽』の続巻である。
 今回は「人獣」,つまり人間と人間以外のものが結ばれる話で,リアルな「獣姦」となるとさすがに少々エグいが,言ってみれば鶴の恩返しや雪女,羽衣伝説などの民話,昔話がジャンルとしてはこれにあたる。陰陽師・安倍晴明が父と狐の間に生まれた子である,などというのも広義には含まれるかもしれない。
 前巻のテーマ「監禁」は全く対人間的というか,いわば現世のテーマであり,ある意味よほど作家が頑張らないと現実のほうが迫力に満ちた内容となりかねない。というより,前巻に感じたひ弱さは現実の事件をどれだけ凌駕できるかという点でやや心もとなかったことに由来する。
 しかし,今回のテーマは現世的な「獣姦」をテーマにした場合を除けばいわゆるファンタジーの領域であり,作家の自由な発想にゆだねられる。というわけで,客観的・数値的な作品の評価(そんなものがあるとしてのことだが)は別にして,読み手としては素直に楽しめるものが多かったように思う。

 今回の収録作品は,ほんの数ページの掌編も含め,次の12点。

  阿刀田高「透明魚」
  赤江 瀑「幻鯨」
  眉村 卓「わがパキーネ」
  岩川 隆「鱗の休暇」
  村田 基「白い少女」
  香山 滋「美女と赤蟻」
  宇能鴻一郎「心中狸」
  澁澤龍彦「獏園」
  中 勘助「ゆめ」
  椿 實「鶴」
  勝目 梓「青い鳥のエレジー」
  皆川博子「獣舎のスキャット」

 軽い変化球から蟻のたかる毒団子,SFから中間小説,散文詩風まで,種々雑多な品揃えだが,楳図かずお初期の怪奇マンガを彷彿とさせる「鱗の休暇」,ゴジラの原作者・香山滋による秘境趣味あふれる「美女と赤蟻」,馬鹿馬鹿しくも物悲しい「心中狸」など読みどころは少なくない。

 特筆したいのは村田基。あまり知られているとはいえないSFホラー作家だが,「白い少女」が収録されたヤハカワ文庫『恐怖の日常』は,絶版ながら古本屋でぜひとも探してほしい傑作揃い。ことに「反乱」という作品など,全身の毛穴から蟲が沸いて出るような異様な皮膚感覚ホラーで圧巻である。この最後の1ページ分ときたら……思い出しても身の毛がよだつ。
 次いでは,かなり直接的な「獣姦」を描いたある短編だが,それがどれかは言わぬが薔薇の刺か。内容(BGM?)に一部うなずけない点はあるものの,作品を被う生理的なキショク悪さはなんとも言えない。短編集を文庫化する際に他の作品と差し返られたのも「あまりに不健康かなァと自粛」したとのことで,そのくらいの作品の1つ2つ収録しないと「猟奇文学館」の肩書きが泣くというものである。
 ……それにしても,人間ほど気持ちの悪い生き物はいないのかもしれない。妙なバラエティなど意識せず,はっきりエログロに絞って作品を選べばよいのに。それが出来ないのも,筑摩書房ならではか。

 ところで,今回の収録作のうち,「ゆめ」と「鶴」には人間のお相手(?)として鶴が出てくるのだが,実は前巻『監禁淫楽』収録の赤江瀑「女形の橋」も将軍お抱えの若太夫が鶴の新作能を舞うために鶴の里を訪ね歩き,やがて禁忌に触れてしまう,というものだった。「猟奇文学館」2巻,合わせて20編中3編が鶴にかかわるというのは,編者・七北数人の性向をおもんばかるに余りあり,純文学へのくどいこだわりともども,少しいやな匂いだ。

先頭 表紙

ははあ、カラス神父さまが「気色悪い」ということは、『大猟奇』の比ではないということですな。剣呑、剣呑。 / こすもぽたりん ( 2000-12-16 10:22 )
いや,まったく,その1ページの内容をここに書きたいが,それはネタバラシになるのでとてもできなくて。ああ,しかしキショク悪い。 / 烏丸 ( 2000-12-16 02:47 )
カラス神父様をして「身の毛がよだつ」のであれば、私なんぞは失神ものでしょうなあ。手を出さんとこう。眠れなくなりそう、いや、精神的外傷になりそうだし。 / こすもぽたりん ( 2000-12-16 01:08 )

2000-12-14 [雑談] 日本語入力時の単語登録テクニックあれこれ そのニ

 
 さくさくっと続けましょう。

◎「ん」や「んん」を活用する

 よく使うのに辞書に入ってない言葉は,そのまま登録するのが普通です。たとえば烏丸の辞書には「いえ」で「Internet Explorer」,「う」で「Windows98」,「やまぎし」で「山岸凉子」,「かい」で「花郁悠紀子」がそれぞれ出るよう登録してあります。これらは仕事や趣味で入力する機会が多いからですね。最近は「うめず」に「楳図かずお」を登録したりもしました。「そんし」で「尊師」,「じょうゆう」で「上祐」は,話題も一段落した今となっては辞書から削除してもよいかもしれません。

 しかし,ここ数日の間は何度も入力することになりそうだが,その後はそれほどでもない,という言葉の場合,きちんと登録してしまうと後で探して消すのが面倒。
 そんなときのために,烏丸は「ん」を利用しています。たとえば,J-Popについてのちょっとした文章を書いていて,「椎名林檎」と「宇多田ヒカル」の名前を何度も使うことになりそうなとき……「椎名林檎」はまだ「しいな」変換「りんご」変換で出てくるのでよいのですが,「宇多田ヒカル」を入力するのは(やってみるとわかりますが)かなり大変です。そんなとき,「宇多田ヒカル」をとりあえず「ん」の読みで登録しておけばよいわけです。文章を書き終わったら,辞書管理ツールを開いて消すもよし,しばらくおいておくのもよいでしょう。

 さらに,烏丸の場合,「んん」にTo Doとでも言うか,要するに予定にあたるメモを登録することがあります。たとえば,「『頭文字D』のコミック第20巻が12月の26日に発売されるようだ,忘れずに買わなくては!」というとき,「んん」に「頭文字D 12/26」と登録しておけばよいわけです。そのうちに「んん」に山ほど予定が溜まりますから,「しょうがないなぁ,この週末,一気に辞書を片づけるか!」というファイトも沸くというものです。

◎住所,電話番号
 
 自分の住所や電話番号を,それぞれ「じゅうしょ」「でんわばんごう」などで登録しておくと便利です。
 「じゅ1」に住所,「じゅ2」に社名+部署名,「じゅ3」に電話番号とFAX番号,「じゅ4」にメールアドレスを登録しておくと,業務で定型の手紙をよく書く場合などもう頭を使う必要もありません。
 なお,ネット上のIDやパスワードなどを登録しておく手もありますが,そのパソコンをほかの人が使う可能性があるとたいへん危険です。とくにネットショッピングやトレーディングに関するものなど,重要なIDやパスワードは決して登録しないようにしましょう(当たり前ですが)。

◎HTMLタグを登録しておく

 ひまじんネットではテキストの中に一部のHTMLタグを埋め込むことができます。詳しくは掲示板の「ひまじんネットで使えるタグの使い方講座」をご覧ください。
 そこで紹介されているタグのうち,よく使うものを辞書登録しておくと便利です。たとえば烏丸はハイパーリンクを指定するタグ「<a href=""></a>」を「@あ」,少し文字を小さくするタグ「<font size="-1"></font>」を「@FS」で登録しています(WindowsのMS-IMEの場合は品詞を「顔文字」にして登録すること)。

 このほかにも,便利なテクニックはいろいろあると思います。単に辞書になかった知人の名前などを登録するだけでなく,工夫をこらして日本語入力を楽しく便利にしたいものです。

先頭 表紙

ふにゃふにゃ、そーかそーか、ひたすら納得でございますう。 / いつもむだばっかり涙 ( 2000-12-14 10:49 )
いや〜素晴らしいノウハウを公開していただきありがとうございます。以前、タグを登録しようとした時に、どうやっても最初の「<」だけ全角になってしまい「クーッ使えない!」と思っていたのですが、さっそく顔文字登録で試してみます。(ホントMSにはどうにかしてほしい) / ワード関連キレまくり事件多数経験者 ( 2000-12-14 07:09 )

2000-12-14 [雑談] 日本語入力時の単語登録テクニックあれこれ その一


 WindowsであれMac OSであれLinuxであれ,日本語を入力するときに便利なよう,単語を辞書登録している方は少なくないと思います。その場合,こんなふうにすると便利かも,というテクニック(いくつかは烏丸のオリジナルですが,多くは仲間内でよく使われているもの)をご紹介してみましょう。

◎URLやメールアドレスに@マークを付けて登録

 よく話題に出るサイト(ページ)のURLや,自分・知人のメールアドレスを単語登録しておくと便利です。ただし,そのままの名前で登録すると,普通の文章を入力しているときにもURLやメールアドレスが変換されてしまい,うざったいですよね。そこで,読みの最初に「@」を付けて登録してみましょう。
 たとえば,「http://www.himajin.net/」や「karasumaru@himajin.net」(こんなメールアドレスはありません,念のため)を登録するのに,それぞれ「@ひま」「@からす」と登録しておくわけです。
 これなら,よほどのことがなければ普通の文章入力時に紛れ込んで変換されることはありませんし,逆に知人宛てのメールにひまじんネットのURLやメールアドレスを書き込むときなどとても便利。
 後は,メールをよくやり取りする相手のアドレスなどをどんどん「@みわこ」とか「@かおり」とか登録していけばよいわけです。

◎半角英数は「顔文字」登録がお勧め

 これはWindowsのMS-IME97/98/2000の悪しき仕様なのですが,半角英数文字の言葉を普通に「名詞」で登録すると,変換候補に半角・全角,大文字・小文字がごちゃまぜに出てきて,とても面妖なことになります。
 上の例でいうと,「@ひま」変換で,なんと
  http://www.himajin.net/
  HTTP://WWW.HIMAJIN.NET/
  Http://Www.Himajin.Net/
  Http://www.himajin.net/
  http://www.himajin.net/
  HTTP://WWW.HIMAJIN.NET/
  Http://Www.Himajin.Net/
  Http://www.himajin.net/
の8つの変換候補が現れるのです。2つめ以降になんの意味があるのだ! と腹立たしい気持ちになりますが,これは「名詞」「形容動詞」「人名」などで登録しても変わりませんし,また「IMEのプロパティ」を探してもこの変換候補を減らす設定は見当たりません。
 唯一,これを避ける方法として,品詞として「顔文字」を選択するというのがあります。その場合は変換候補に半角英数文字のものしか現れません。
 なんにしてもマイクロソフトのタコぉ! と叫びたくなるような,まっタコ大きなお世話です。

◎ものさし

 「一二三四五六七八九〇一二三四五六七八九◎」を「ものさし」という読みで登録しておきましょう。
 メールや掲示板などの書き込み時に,「だいたい横○文字以内におさめたいな」とか,「このテキストは全部でおよそ何文字あるのだろう」とかいうとき,空いた行で「ものさし」変換「ものさし」変換とすると
一二三四五六七八九〇一二三四五六七八九◎一二三四五六七八九〇一二三四五六七八九◎
と画面に表示され,これで漢字なら横40文字(半角英数なら80文字)ということになります。これをものさし代わりに,行の左右をはかればよいわけですね。
 なお,半角の数字はフォントによって表示が詰まることが多いので,全角で登録(この場合,漢数字)するのがポイントです。「〇」と「◎」を混ぜているのは,10,20……と数えやすいように,という小技。

(そのニにつづく)

先頭 表紙

昨夜アップした本文では「ものさし」の登録例が少しわかりにくくなっていましたので,少しだけ修正いたしました。 / 烏丸 ( 2000-12-14 12:02 )
すごい!@しか使っていなかった私には、半角英数の顔文字登録やものさしなんて、目からウロコでございます。さっそくやろうっと。(ここで昨日、PC本体が浸水していたらこうはいかない・・) / あやや ( 2000-12-14 01:14 )

2000-12-13 少年・少女の科学ゴコロをくすぐる 『まんがサイエンスVII 「見る」科学』 あさりよしとお / 学習研究社(NORAコミックス)


【あれは完全にアミロペクチンだよね】

 浮いたり沈んだり,波はあるが,トータルすればそれなりによい人生だと思ってきた。封切りの「キングコング対ゴジラ」や「ウルトラマン」本放送を見られたのはよかった。萩尾望都や大島弓子をリアルタイムに読んで高揚した。ビートルズの解散には間に合ったし,箱根アフロディーテには行けなかったが武道館ではピンク・フロイドを見られた。などなど,あれこれ心に残る幸福のタネもある。
 それでも,小学校5年,6年のときに学研の「科学」であさりよしとおの連載を(あさりよしとおがどんな作家か知らずに)読む,今の子供たちは少しだけ,うらやましいような気がする。

 本シリーズは,『宇宙家族カールビンソン』などの作品で知られるマンガ家・あさりよしとおが,おたっきー度合いをやや抑え,子供たちの身近な謎から最新の科学技術や研究の成果をレクチャーするというもの。
 『まんがサイエンスVII 「見る」科学』はその最新刊,ちょっと目次を覗いてみよう。

 今回はまず,「『見る』科学」を小特集として,8本が並んでいる。

 「テレビ一本『線』勝負」 ……なぜテレビを写真に撮ると,画面に黒いシマが映るのか。
 「ビデオななめ回転のひみつ」 ……意外と知られていないビデオのヘッドの信号記録方法。
 「大きくはっきり見るために −顕微鏡−」 ……なぜ光学顕微鏡では1500倍程度にしかならないのか。一方,電子顕微鏡の仕組みは。
 「よく見えるのはどっちの望遠鏡?」 ……反射望遠鏡vs.屈折顕微鏡。
 「『すばる』世界一の望遠鏡」 ……ハワイ島マウナケア山の山頂にある世界最高性能の望遠鏡「すばる」。口径8.2メートル。ちなみに,もしも直径100メートルのレンズがあったら! たちまち自分の重みで割れちゃうんだって。
 「−双眼鏡− ひみつのプリズム」 ……双眼鏡が望遠鏡と違って上下さかさまに見えないのはなぜ?
 「レンズ付フィルムってAFカメラ?」 ……レンズ付フィルム(いわゆる使い捨てカメラ)でピント合わせしなくてすむのはなぜ?
 「電子の目でピントをチェック AFのしくみ」 ……それじゃあ,カメラのオートフォーカスってどうやってるの?

 そして,読み切り5本。

 「飛んでる地球! −公転−」 ……人工衛星もスペースシャトルもない時代に,どうやって地球が公転してることがわかったのだろう?
 「ハイ(肺),大きく息をすって!」 ……肺胞を全部広げた面積は,大人が息を吸ったときでなんと1000平方メートル。ハイホー♪
 「おもちとごはん どこがちがう?」 ……普通のお米(うるち米)をついてもお餅にならないのはなぜ? お餅を温めると柔らかくなるのはなぜ? このテーマはまったく初耳で,いい勉強になった。
 「細胞内探検ツアー」 ……染色体をほぐすと,1.7メートルのDNA。そんな細胞がヒトの体には何十兆もあるのだ。
 「光る標識!?」 ……道路標識が車のライトに光るのはなぜ?

 といった具合。ああ,いいねぇ。
 カラーグラビアにある,走査型電子顕微鏡で見たハマダラ蚊,オオモンシロチョウの幼虫,ヤケヒョウヒダニ,ヤマアリの画像がまたリアルで素晴らしい。電子顕微鏡というと通常なんとかの結晶だの分子だのの「物質」に走りがちだけれど,微小な生物をこう見るというのはけっこうカルチャーショック。

*既刊の『まんがサイエンス』についてはこちらもご参照ください。

先頭 表紙

学研の「科学」の科学は,科学的思考というよりは豆知識的というか,文系寄りですし。ところで,カビの生えた政経とのことですが,お餅にカビが生えるのは乾いているように見えてたっぷり水分を吸収しているそうですから(本書「おもちとごはん どこがちがう?」より)まあよろしいんじゃないですか?(え? OBがウェットなだけ? そうかも) / 烏丸 ( 2000-12-13 20:00 )
高分子吸収体や液晶、カニの殻の回なんかはとっつきやすくて、難しいとは全然思いませんでした。しかし科学に惹かれつつも私が結局選んだのは文系、よりによってカビの生えた政経・・・。 / 2ダブ ( 2000-12-13 19:36 )
連載当初は絵柄も地味で,最近のものに比べると「どの程度おたっきーにやっちゃっていいのか,おそるおそる」な感じもありました。小学校当時,難しさについてはどんな印象をお持ちだったでしょうか? / 烏丸 ( 2000-12-13 16:23 )
小学5年、6年の時に読んで以来、単行本は全巻初版で買ってます。私が読んでた当時はあやめちゃんとまなぶくんがまだ登場しておりませんでしたから、連載始まって1年目か2年目だったでしょうか・・・。時が流れるのは早い、と思うこのごろです。 / 2ダブ ( 2000-12-13 14:11 )

[次の10件を表示] (総目次)