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烏丸の「くるくる回転図書館 駅前店」

 
今後、新しい私評は、
  烏丸の「くるくる回転図書館 公園通り分館」
にてアップすることにしました。

ひまじんネットには大変お世話になりましたし、
楽しませていただきました。
その機能も昨今のブログに劣るとは思わないのですが、
残念なことに新しい書き込みがなされると、
古い書き込みのURLが少しずつずれていってしまいます。
最近も、せっかく見知らぬ方がコミック評にリンクを張っていただいたのに、
しばらくしてそれがずれてしまうということが起こってしまいました。

こちらはこのまま置いておきます。
よろしかったら新しいブログでまたお会いしましょう。
 

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2000-12-15 『猟奇文学館2 人獣怪婚』 七北数人 編 / ちくま文庫
2000-12-14 [雑談] 日本語入力時の単語登録テクニックあれこれ そのニ
2000-12-14 [雑談] 日本語入力時の単語登録テクニックあれこれ その一
2000-12-13 少年・少女の科学ゴコロをくすぐる 『まんがサイエンスVII 「見る」科学』 あさりよしとお / 学習研究社(NORAコミックス)
2000-12-12 『体にいい寄生虫 ダイエットから花粉症まで』 藤田紘一郎 / 講談社文庫
2000-12-11 これ読みながらウドン,スパゲッティが食えるか!? 『ただいま寄生中』 あさりよしとお / 白泉社(Jets Comics)
2000-12-10 なぜにこれほどツマラナンのか… 『おたんこナース』 佐々木倫子 / 小学館
2000-12-09 「ヒカ碁」でブレークした小畑健の好編 『魔神冒険譚ランプ・ランプ』 小畑 健 / 集英社(ジャンプ・コミックス)
2000-12-07 読まずに曲がるな 『白いメリーさん』 中島らも / 講談社文庫
2000-12-07 人,人として 『白眼子』 山岸凉子 / 潮出版社


2000-12-15 『猟奇文学館2 人獣怪婚』 七北数人 編 / ちくま文庫


【美女と野獣,つうとよひょう】

 少し前にご紹介した『猟奇文学館1 監禁淫楽』の続巻である。
 今回は「人獣」,つまり人間と人間以外のものが結ばれる話で,リアルな「獣姦」となるとさすがに少々エグいが,言ってみれば鶴の恩返しや雪女,羽衣伝説などの民話,昔話がジャンルとしてはこれにあたる。陰陽師・安倍晴明が父と狐の間に生まれた子である,などというのも広義には含まれるかもしれない。
 前巻のテーマ「監禁」は全く対人間的というか,いわば現世のテーマであり,ある意味よほど作家が頑張らないと現実のほうが迫力に満ちた内容となりかねない。というより,前巻に感じたひ弱さは現実の事件をどれだけ凌駕できるかという点でやや心もとなかったことに由来する。
 しかし,今回のテーマは現世的な「獣姦」をテーマにした場合を除けばいわゆるファンタジーの領域であり,作家の自由な発想にゆだねられる。というわけで,客観的・数値的な作品の評価(そんなものがあるとしてのことだが)は別にして,読み手としては素直に楽しめるものが多かったように思う。

 今回の収録作品は,ほんの数ページの掌編も含め,次の12点。

  阿刀田高「透明魚」
  赤江 瀑「幻鯨」
  眉村 卓「わがパキーネ」
  岩川 隆「鱗の休暇」
  村田 基「白い少女」
  香山 滋「美女と赤蟻」
  宇能鴻一郎「心中狸」
  澁澤龍彦「獏園」
  中 勘助「ゆめ」
  椿 實「鶴」
  勝目 梓「青い鳥のエレジー」
  皆川博子「獣舎のスキャット」

 軽い変化球から蟻のたかる毒団子,SFから中間小説,散文詩風まで,種々雑多な品揃えだが,楳図かずお初期の怪奇マンガを彷彿とさせる「鱗の休暇」,ゴジラの原作者・香山滋による秘境趣味あふれる「美女と赤蟻」,馬鹿馬鹿しくも物悲しい「心中狸」など読みどころは少なくない。

 特筆したいのは村田基。あまり知られているとはいえないSFホラー作家だが,「白い少女」が収録されたヤハカワ文庫『恐怖の日常』は,絶版ながら古本屋でぜひとも探してほしい傑作揃い。ことに「反乱」という作品など,全身の毛穴から蟲が沸いて出るような異様な皮膚感覚ホラーで圧巻である。この最後の1ページ分ときたら……思い出しても身の毛がよだつ。
 次いでは,かなり直接的な「獣姦」を描いたある短編だが,それがどれかは言わぬが薔薇の刺か。内容(BGM?)に一部うなずけない点はあるものの,作品を被う生理的なキショク悪さはなんとも言えない。短編集を文庫化する際に他の作品と差し返られたのも「あまりに不健康かなァと自粛」したとのことで,そのくらいの作品の1つ2つ収録しないと「猟奇文学館」の肩書きが泣くというものである。
 ……それにしても,人間ほど気持ちの悪い生き物はいないのかもしれない。妙なバラエティなど意識せず,はっきりエログロに絞って作品を選べばよいのに。それが出来ないのも,筑摩書房ならではか。

 ところで,今回の収録作のうち,「ゆめ」と「鶴」には人間のお相手(?)として鶴が出てくるのだが,実は前巻『監禁淫楽』収録の赤江瀑「女形の橋」も将軍お抱えの若太夫が鶴の新作能を舞うために鶴の里を訪ね歩き,やがて禁忌に触れてしまう,というものだった。「猟奇文学館」2巻,合わせて20編中3編が鶴にかかわるというのは,編者・七北数人の性向をおもんばかるに余りあり,純文学へのくどいこだわりともども,少しいやな匂いだ。

先頭 表紙

ははあ、カラス神父さまが「気色悪い」ということは、『大猟奇』の比ではないということですな。剣呑、剣呑。 / こすもぽたりん ( 2000-12-16 10:22 )
いや,まったく,その1ページの内容をここに書きたいが,それはネタバラシになるのでとてもできなくて。ああ,しかしキショク悪い。 / 烏丸 ( 2000-12-16 02:47 )
カラス神父様をして「身の毛がよだつ」のであれば、私なんぞは失神ものでしょうなあ。手を出さんとこう。眠れなくなりそう、いや、精神的外傷になりそうだし。 / こすもぽたりん ( 2000-12-16 01:08 )

2000-12-14 [雑談] 日本語入力時の単語登録テクニックあれこれ そのニ

 
 さくさくっと続けましょう。

◎「ん」や「んん」を活用する

 よく使うのに辞書に入ってない言葉は,そのまま登録するのが普通です。たとえば烏丸の辞書には「いえ」で「Internet Explorer」,「う」で「Windows98」,「やまぎし」で「山岸凉子」,「かい」で「花郁悠紀子」がそれぞれ出るよう登録してあります。これらは仕事や趣味で入力する機会が多いからですね。最近は「うめず」に「楳図かずお」を登録したりもしました。「そんし」で「尊師」,「じょうゆう」で「上祐」は,話題も一段落した今となっては辞書から削除してもよいかもしれません。

 しかし,ここ数日の間は何度も入力することになりそうだが,その後はそれほどでもない,という言葉の場合,きちんと登録してしまうと後で探して消すのが面倒。
 そんなときのために,烏丸は「ん」を利用しています。たとえば,J-Popについてのちょっとした文章を書いていて,「椎名林檎」と「宇多田ヒカル」の名前を何度も使うことになりそうなとき……「椎名林檎」はまだ「しいな」変換「りんご」変換で出てくるのでよいのですが,「宇多田ヒカル」を入力するのは(やってみるとわかりますが)かなり大変です。そんなとき,「宇多田ヒカル」をとりあえず「ん」の読みで登録しておけばよいわけです。文章を書き終わったら,辞書管理ツールを開いて消すもよし,しばらくおいておくのもよいでしょう。

 さらに,烏丸の場合,「んん」にTo Doとでも言うか,要するに予定にあたるメモを登録することがあります。たとえば,「『頭文字D』のコミック第20巻が12月の26日に発売されるようだ,忘れずに買わなくては!」というとき,「んん」に「頭文字D 12/26」と登録しておけばよいわけです。そのうちに「んん」に山ほど予定が溜まりますから,「しょうがないなぁ,この週末,一気に辞書を片づけるか!」というファイトも沸くというものです。

◎住所,電話番号
 
 自分の住所や電話番号を,それぞれ「じゅうしょ」「でんわばんごう」などで登録しておくと便利です。
 「じゅ1」に住所,「じゅ2」に社名+部署名,「じゅ3」に電話番号とFAX番号,「じゅ4」にメールアドレスを登録しておくと,業務で定型の手紙をよく書く場合などもう頭を使う必要もありません。
 なお,ネット上のIDやパスワードなどを登録しておく手もありますが,そのパソコンをほかの人が使う可能性があるとたいへん危険です。とくにネットショッピングやトレーディングに関するものなど,重要なIDやパスワードは決して登録しないようにしましょう(当たり前ですが)。

◎HTMLタグを登録しておく

 ひまじんネットではテキストの中に一部のHTMLタグを埋め込むことができます。詳しくは掲示板の「ひまじんネットで使えるタグの使い方講座」をご覧ください。
 そこで紹介されているタグのうち,よく使うものを辞書登録しておくと便利です。たとえば烏丸はハイパーリンクを指定するタグ「<a href=""></a>」を「@あ」,少し文字を小さくするタグ「<font size="-1"></font>」を「@FS」で登録しています(WindowsのMS-IMEの場合は品詞を「顔文字」にして登録すること)。

 このほかにも,便利なテクニックはいろいろあると思います。単に辞書になかった知人の名前などを登録するだけでなく,工夫をこらして日本語入力を楽しく便利にしたいものです。

先頭 表紙

ふにゃふにゃ、そーかそーか、ひたすら納得でございますう。 / いつもむだばっかり涙 ( 2000-12-14 10:49 )
いや〜素晴らしいノウハウを公開していただきありがとうございます。以前、タグを登録しようとした時に、どうやっても最初の「<」だけ全角になってしまい「クーッ使えない!」と思っていたのですが、さっそく顔文字登録で試してみます。(ホントMSにはどうにかしてほしい) / ワード関連キレまくり事件多数経験者 ( 2000-12-14 07:09 )

2000-12-14 [雑談] 日本語入力時の単語登録テクニックあれこれ その一


 WindowsであれMac OSであれLinuxであれ,日本語を入力するときに便利なよう,単語を辞書登録している方は少なくないと思います。その場合,こんなふうにすると便利かも,というテクニック(いくつかは烏丸のオリジナルですが,多くは仲間内でよく使われているもの)をご紹介してみましょう。

◎URLやメールアドレスに@マークを付けて登録

 よく話題に出るサイト(ページ)のURLや,自分・知人のメールアドレスを単語登録しておくと便利です。ただし,そのままの名前で登録すると,普通の文章を入力しているときにもURLやメールアドレスが変換されてしまい,うざったいですよね。そこで,読みの最初に「@」を付けて登録してみましょう。
 たとえば,「http://www.himajin.net/」や「karasumaru@himajin.net」(こんなメールアドレスはありません,念のため)を登録するのに,それぞれ「@ひま」「@からす」と登録しておくわけです。
 これなら,よほどのことがなければ普通の文章入力時に紛れ込んで変換されることはありませんし,逆に知人宛てのメールにひまじんネットのURLやメールアドレスを書き込むときなどとても便利。
 後は,メールをよくやり取りする相手のアドレスなどをどんどん「@みわこ」とか「@かおり」とか登録していけばよいわけです。

◎半角英数は「顔文字」登録がお勧め

 これはWindowsのMS-IME97/98/2000の悪しき仕様なのですが,半角英数文字の言葉を普通に「名詞」で登録すると,変換候補に半角・全角,大文字・小文字がごちゃまぜに出てきて,とても面妖なことになります。
 上の例でいうと,「@ひま」変換で,なんと
  http://www.himajin.net/
  HTTP://WWW.HIMAJIN.NET/
  Http://Www.Himajin.Net/
  Http://www.himajin.net/
  http://www.himajin.net/
  HTTP://WWW.HIMAJIN.NET/
  Http://Www.Himajin.Net/
  Http://www.himajin.net/
の8つの変換候補が現れるのです。2つめ以降になんの意味があるのだ! と腹立たしい気持ちになりますが,これは「名詞」「形容動詞」「人名」などで登録しても変わりませんし,また「IMEのプロパティ」を探してもこの変換候補を減らす設定は見当たりません。
 唯一,これを避ける方法として,品詞として「顔文字」を選択するというのがあります。その場合は変換候補に半角英数文字のものしか現れません。
 なんにしてもマイクロソフトのタコぉ! と叫びたくなるような,まっタコ大きなお世話です。

◎ものさし

 「一二三四五六七八九〇一二三四五六七八九◎」を「ものさし」という読みで登録しておきましょう。
 メールや掲示板などの書き込み時に,「だいたい横○文字以内におさめたいな」とか,「このテキストは全部でおよそ何文字あるのだろう」とかいうとき,空いた行で「ものさし」変換「ものさし」変換とすると
一二三四五六七八九〇一二三四五六七八九◎一二三四五六七八九〇一二三四五六七八九◎
と画面に表示され,これで漢字なら横40文字(半角英数なら80文字)ということになります。これをものさし代わりに,行の左右をはかればよいわけですね。
 なお,半角の数字はフォントによって表示が詰まることが多いので,全角で登録(この場合,漢数字)するのがポイントです。「〇」と「◎」を混ぜているのは,10,20……と数えやすいように,という小技。

(そのニにつづく)

先頭 表紙

昨夜アップした本文では「ものさし」の登録例が少しわかりにくくなっていましたので,少しだけ修正いたしました。 / 烏丸 ( 2000-12-14 12:02 )
すごい!@しか使っていなかった私には、半角英数の顔文字登録やものさしなんて、目からウロコでございます。さっそくやろうっと。(ここで昨日、PC本体が浸水していたらこうはいかない・・) / あやや ( 2000-12-14 01:14 )

2000-12-13 少年・少女の科学ゴコロをくすぐる 『まんがサイエンスVII 「見る」科学』 あさりよしとお / 学習研究社(NORAコミックス)


【あれは完全にアミロペクチンだよね】

 浮いたり沈んだり,波はあるが,トータルすればそれなりによい人生だと思ってきた。封切りの「キングコング対ゴジラ」や「ウルトラマン」本放送を見られたのはよかった。萩尾望都や大島弓子をリアルタイムに読んで高揚した。ビートルズの解散には間に合ったし,箱根アフロディーテには行けなかったが武道館ではピンク・フロイドを見られた。などなど,あれこれ心に残る幸福のタネもある。
 それでも,小学校5年,6年のときに学研の「科学」であさりよしとおの連載を(あさりよしとおがどんな作家か知らずに)読む,今の子供たちは少しだけ,うらやましいような気がする。

 本シリーズは,『宇宙家族カールビンソン』などの作品で知られるマンガ家・あさりよしとおが,おたっきー度合いをやや抑え,子供たちの身近な謎から最新の科学技術や研究の成果をレクチャーするというもの。
 『まんがサイエンスVII 「見る」科学』はその最新刊,ちょっと目次を覗いてみよう。

 今回はまず,「『見る』科学」を小特集として,8本が並んでいる。

 「テレビ一本『線』勝負」 ……なぜテレビを写真に撮ると,画面に黒いシマが映るのか。
 「ビデオななめ回転のひみつ」 ……意外と知られていないビデオのヘッドの信号記録方法。
 「大きくはっきり見るために −顕微鏡−」 ……なぜ光学顕微鏡では1500倍程度にしかならないのか。一方,電子顕微鏡の仕組みは。
 「よく見えるのはどっちの望遠鏡?」 ……反射望遠鏡vs.屈折顕微鏡。
 「『すばる』世界一の望遠鏡」 ……ハワイ島マウナケア山の山頂にある世界最高性能の望遠鏡「すばる」。口径8.2メートル。ちなみに,もしも直径100メートルのレンズがあったら! たちまち自分の重みで割れちゃうんだって。
 「−双眼鏡− ひみつのプリズム」 ……双眼鏡が望遠鏡と違って上下さかさまに見えないのはなぜ?
 「レンズ付フィルムってAFカメラ?」 ……レンズ付フィルム(いわゆる使い捨てカメラ)でピント合わせしなくてすむのはなぜ?
 「電子の目でピントをチェック AFのしくみ」 ……それじゃあ,カメラのオートフォーカスってどうやってるの?

 そして,読み切り5本。

 「飛んでる地球! −公転−」 ……人工衛星もスペースシャトルもない時代に,どうやって地球が公転してることがわかったのだろう?
 「ハイ(肺),大きく息をすって!」 ……肺胞を全部広げた面積は,大人が息を吸ったときでなんと1000平方メートル。ハイホー♪
 「おもちとごはん どこがちがう?」 ……普通のお米(うるち米)をついてもお餅にならないのはなぜ? お餅を温めると柔らかくなるのはなぜ? このテーマはまったく初耳で,いい勉強になった。
 「細胞内探検ツアー」 ……染色体をほぐすと,1.7メートルのDNA。そんな細胞がヒトの体には何十兆もあるのだ。
 「光る標識!?」 ……道路標識が車のライトに光るのはなぜ?

 といった具合。ああ,いいねぇ。
 カラーグラビアにある,走査型電子顕微鏡で見たハマダラ蚊,オオモンシロチョウの幼虫,ヤケヒョウヒダニ,ヤマアリの画像がまたリアルで素晴らしい。電子顕微鏡というと通常なんとかの結晶だの分子だのの「物質」に走りがちだけれど,微小な生物をこう見るというのはけっこうカルチャーショック。

*既刊の『まんがサイエンス』についてはこちらもご参照ください。

先頭 表紙

学研の「科学」の科学は,科学的思考というよりは豆知識的というか,文系寄りですし。ところで,カビの生えた政経とのことですが,お餅にカビが生えるのは乾いているように見えてたっぷり水分を吸収しているそうですから(本書「おもちとごはん どこがちがう?」より)まあよろしいんじゃないですか?(え? OBがウェットなだけ? そうかも) / 烏丸 ( 2000-12-13 20:00 )
高分子吸収体や液晶、カニの殻の回なんかはとっつきやすくて、難しいとは全然思いませんでした。しかし科学に惹かれつつも私が結局選んだのは文系、よりによってカビの生えた政経・・・。 / 2ダブ ( 2000-12-13 19:36 )
連載当初は絵柄も地味で,最近のものに比べると「どの程度おたっきーにやっちゃっていいのか,おそるおそる」な感じもありました。小学校当時,難しさについてはどんな印象をお持ちだったでしょうか? / 烏丸 ( 2000-12-13 16:23 )
小学5年、6年の時に読んで以来、単行本は全巻初版で買ってます。私が読んでた当時はあやめちゃんとまなぶくんがまだ登場しておりませんでしたから、連載始まって1年目か2年目だったでしょうか・・・。時が流れるのは早い、と思うこのごろです。 / 2ダブ ( 2000-12-13 14:11 )

2000-12-12 『体にいい寄生虫 ダイエットから花粉症まで』 藤田紘一郎 / 講談社文庫


【ジストマ六文銭クラッシュ!! ……それはもういいの】

 あさりよしとお『ただいま寄生中』はファニーな1冊ではあったが,最新の知識に基づいて描かれているという印象は薄い。そこにあるのはウネウネ,ニョロニョロ,気色が悪くて有害という昔からの寄生虫観である。
 それはやむを得ないことだ。藤田紘一郎先生が『笑うカイチュウ』で世間を騒がせたのは1996年。先生は従来忌み嫌われてきた寄生虫には「老舗の寄生虫」と「成り上がりの寄生虫」があり,前者はさほど悪さをせず,宿主の体内で穏やかな一生を終えようとするということを指摘,しかもそれらの寄生虫は,宿主に他の寄生虫が侵入しないよう,スギ花粉やダニなどと結合しないIgE抗体を大量に産出する。つまり,花粉症やアトピーが急増したのは,行きすぎた清潔・潔癖意識から寄生虫を駆除しすぎたせいではないかというのだ。
 本『体にいい寄生虫』ではさらに進んで,だからといって花粉症の予防のために寄生虫に感染すればよいというほどことは簡単ではないことを説く。いくら穏やかといっても安全が保証されるわけではないし,また寄生虫の分泌・排泄液から,ヒトの体内にIgE抗体を産出する特殊な糖蛋白を抽出したものの,この「抗アレルギー剤」にはウイルスに感染しやすくなる,ガンなどになりやすい,などの副作用があるのだという。

 藤田先生はまた,寄生虫を腹の中で飼うことが,ダイエットに結びつく可能性を示唆する。
 しかし,同じサナダ虫に感染しても,日本人は欧米人(短期間で10kg単位で痩せることも)ほどには効かないらしい。感染する虫の種類に違いがあるのか,日本人の腸が長いせいか,今のところ原因は不明だそうだが。
 それにしても,サナダ虫1つ見ても,その一生の複雑さには驚く。サナダ虫は決してそのヒトの体内で卵から成長するわけではない。ヒトの体内で成虫が産んだ卵は便と一緒に排出され,水中で孵化,幼虫(コラシジウム)が水中を遊泳するのをミジンコ類(第一中間宿主)が飲み込み,そのミジンコをサケ,マスなど(第ニ中間宿主)が食べ,その刺身をヒトが食べて,はじめてヒト(終宿主)にたどり着くのである。

 そうそう,本書にはこれまでの藤田先生の著書の文庫版に比べて,大きな違いが1つある。それは,さまざまな寄生虫の写真,先のサナダ虫の生活環などの図版,サナダ虫の幼虫をいざ飲まんとする藤田先生の近影,虫のコブだらけになった有鉤嚢虫症の患者の背中(うう)など,図版・写真が豊富に用意されていることだ。気色が悪いといえば悪いが,いくつかの寄生虫の写真は生命の神秘を感じさて美しい。

 それにしても,本書や『タコはいかにしてタコになったか』などを読んでいつも不思議に思うのは「進化」の問題だ。
 ヒツジを終宿主とする(ヒツジの体内に入らないと成虫になれない)槍形吸虫の一種は,第一中間宿主がカタツムリ,第ニ中間宿主がアリなのだが,そのアリの体内で,この寄生虫の幼虫は驚いたことにアリの体内で神経節にたどり着き,アリの行動を支配するそうなのである。これに感染したアリは,アリ社会の掟を無視し,集団から離れて背の高い草のてっぺんまで登ってじっとヒツジに食われるのを待つのだそうだ。
 いくら原始的な生物の進化が速いといっても,自然淘汰や適者生存でこんな複数の生物の体内をたどる複雑なプロセスが説明できるだろうか。また,こんなことが現実にあるのなら,そのうちヒトの脳に住みついてその行動をコントロールする寄生虫が現れるということも……。

先頭 表紙

2000-12-11 これ読みながらウドン,スパゲッティが食えるか!? 『ただいま寄生中』 あさりよしとお / 白泉社(Jets Comics)


【行けっ ジストマ六文銭クラッシュ!!】

 199x年,人類は危機に瀕していた。寄生虫たちがある高校を実験場として人類征服の新兵器を開発しようとしていたのだ。寄生虫たちは人間にとりつき,その脳を支配する。そして政府に入り込んで国を動かし,すべての教育機関を動員して虫を植え付けようとしていた。そんな悪の寄生虫軍団に,健康な宿主との共存を主張して立ち向かった者がいた。さなだ虫を筆頭に回虫・蟯虫・十二指腸虫・アニサキス・日本住血吸虫・肝吸虫・肺吸虫・トリパノソーマ……総勢11匹のさなだ虫&真田十勇士だった。
 彼らは幸村いづみ16歳・高校2年生の中に入り込み,いざというときはワームスーツ用の線虫が彼女の体を被い,正義のスーパーヒロインに変身するのである。

 ……ここまでまとめるだけで,どっぷり疲れてしまった。夜食に……ウ,ウドンだけは嫌だ。

 ケロロ軍曹ご紹介による安永航一郎『超感覚ANALマン』は,「ふとしたことからこのANAL粒子を肛門に入れてしまった菊川肛司は、肛門からぐるっと反転して、全身粘膜の超感覚ANALマンに変身し、悪と戦う羽目に陥る」という設定である。安永の心の中には月刊コミックコンプ1992年1〜12月号の1年で打ちきられた本作に対する熱いオマージュがあったに違いない。なにしろ清楚な少女の腹の中の大量の寄生虫が出入りするのは……。

 あとがきによると,本作は1991年のエロ大規制に逆らい,少年誌の限界に挑む!! という志のもとに描かれたそうだが,規制に対するに寄生とはこれいかに。結局ちっともエロにはならなかった。
 わにゃわにゃとコマいっぱいに寄生虫があふれる描画に「これはアシスタントが大変だねえ」とか思っていたのだが,寄生虫のペン入れにはアシスタントは1コマたりとも手伝ってくれなかったそうである。また,アンケートはほとんど最下位。連載は単行本1冊分で,敵との深刻な戦いが始まったところで終わってしまう。「有刺顎口虫攻撃(別名 雷魚を喰うとコブができる攻撃)」「ジストマ六文銭クラッシュ」など,11種の寄生虫による得意技をそれぞれ用意していたのではと思われるが,残念ながらそれらの設定はほとんど生かされずに終わってしまう。
 しかし,『ただいま寄生虫』から『超感覚ANALマン』に受け継がれたアナル感覚バッドテイストヒーローものはいつの日にか必ずや我が国のコミック文化の大きな幹の1本に……ならん,ならん。

先頭 表紙

あっ……。今たまたま気がついたんだけど,この書き込みで,タズラさまの「あさがお日記」を抜いて,はえあるひまじん書き込み数トップに。……よりによってこの書き込みで……。烏丸って。烏丸って……。 / 烏丸 ( 2000-12-11 20:06 )
添付画像は,表紙カバーでは主人公がメガネっ娘であることがわからないので,カバー折り返しのところです。 / 烏丸 ( 2000-12-11 02:20 )

2000-12-10 なぜにこれほどツマラナンのか… 『おたんこナース』 佐々木倫子 / 小学館


【どんな死がよいのかは医療者も含め誰も決めることはできません。】

 お奨めしたい本はほかにいくらもあるというのに,わざわざ嫌なものを持ち出すこともないのだが,「立場を明らかにしておきたい」とでも言うか,一度きちんと書いておきたい。
 佐々木倫子『おたんこナース』は不愉快だ。

 以前も書いたかと思うが,佐々木倫子『おたんこナース』は500万部を越える大ヒットで,最近は一回り小さいサイズの単行本も発行された。
 最近の佐々木作品についてよく言われることに「綿密すぎる取材」があり,本作巻末にも77人の取材協力者,20に及ぶ取材協力団体,5人のカメラマン名が列挙されている。電話で相談した程度の者も含まれるかもしれないが,それにしても破格の数字ではある。
 マンガというものが視覚に訴えるメディアである以上,ある程度資料や取材が必要なことは言うまでもない。ことに現代の病院を舞台とする本作で治療器具や看護の手順についての嘘,間違いがあってはという意識はごく自然で,そのため努力を惜しまないのは評価すべき点ではあるだろう。しかし……。

 『おたんこナース』ははたして佐々木倫子の作品と言えるのだろうか。
 本作はナース経験者で何冊ものベストセラーを出している小林光恵が「原案・取材」として名を連ねている。そのエッセイ集は看護婦の心理,医療と患者の実情についての実によい書物ではある。そしてそれを知った上で『おたんこナース』に目を通したとき,これは小林光恵の作品のイメージが強い。もちろん絵柄は佐々木のものであり,主人公の新人看護婦・似鳥の素っ頓狂なキャラクターなど,随所に佐々木らしさはある。しかし,佐々木が自由に描いてこうか? と思われる面が少なくないのもまた確かなのだ。

 たとえば添付画像,最終巻の表紙は,似鳥が新人看護婦としての1年を終え,同時に頼りになった主任が個人的な事情で退職する最終話の内容を示したものだが,別れにあたって涙ぐみ手を振る,この構図の凡庸さときたらどうだろう。まるでバレリーナのシューズに画鋲が投げ込まれた時代のマンガの最終回を見るようだ。

 一方,初期の『代名詞の迷宮』収録の「山田の猫」を振り返ってみよう。この作品では,若手の日本画講師の家に奇天烈なファッションの少女・鏑木真理子が妻になりたいと押しかけてくるが,それは彼の恩師の末娘で,彼が母親に連れ添われて恩師のところに見合いに赴くと,そこには真理子を含む恩師の娘4人が並び(他の3人も名を騙り,モデルや生徒として彼の周辺に出入りしていた),その中から気に入ったのを選べと言われる。彼が「猫の仔みたいに」と言う通りまるで人身売買であり,この作者は人権や性についていったいどう考えているのかと首を傾げざるを得ない。
 しかし,「山田の猫」はエキセントリックな末娘・真理子ともども実に魅力的だ。破天荒な設定だからこそそこには発想の翼,描写の自由が感じられるからである。

 それに比べると,現状チェックに凝り固まった『おたんこナース』はのびやかさに欠け,作者が描画マシンであるかのような思いを打ち消せない。もちろん,原作付きは駄目,資料チェックは不要とか言うことではない。原作や取材がより高いクオリティを生む例もある。しかし,必要以上の取材,調査へのこだわりは,役に立たないから,現実に史実に即してないから,とマンガを切り捨ててきた側の精神であり,あらゆるマンガ,物語の敵ではないのか。

 ちなみに最終巻の「あとがき」の著者は小林光恵であった。『おたんこナース』が誰の本であったか如実に示しているような気がする。

先頭 表紙

くーっ,白旗。 > あややさま / 烏丸 ( 2000-12-11 02:08 )
↓あややん、ナイス。 / こすもぽたりん ( 2000-12-10 12:08 )
↓いかん、あれは青木みつえだった・・・。(;▽;) / あやや ( 2000-12-10 07:43 )
専門知識にかこまれている病院が舞台だからこそ、そういうことになっちゃったのかしら・・?私はスピリッツでしか読んでいないので「あとがき」は知りませんでしたが、みつえちゃんって本人の自画像よりサイバラ画のロボット顔のほうがイメージが強くなってしまっている今日この頃・・・。 / あやや ( 2000-12-10 07:42 )

2000-12-09 「ヒカ碁」でブレークした小畑健の好編 『魔神冒険譚ランプ・ランプ』 小畑 健 / 集英社(ジャンプ・コミックス)


【オレは誰のいいなりにもならねんら──っ!!】

 小畑健のデビューは,10年ほど前,少年ジャンプ誌上に土方茂名義で連載した『CYBORGじいちゃんG』。農夫にして天才科学者の改造時次郎が農作業用サイボーグに自らを改造してアナーキーに大暴れ,というギャグマンガで,そこそこ人気を博したものの単行本4巻で打ち切り。CYBORGばあちゃんQのヤングモードがギャグマンガとしては異様なまでに美麗だった。
 同時期の少年ジャンプには,たとえばこせきこうじ『県立海空高校野球部員山下たろーくん』,にわのまこと『The Momotaroh』が載っており,同じようにアクションとギャグをメインにした作品でありながら,決して絵が巧いとは思えないこせきやにわののほうがずっと少年ジャンプらしいパワーがあって不思議に思ったものだ。ちなみに,土方はデビュー直前はにわのの元でアシスタントをしていたらしい。

 『魔神冒険譚(アラビアン)ランプ・ランプ』はその土方が小畑健とペンネームを変え,原作に泉藤進をつけて連載したもの。といっても泉藤進原作の作品はこれしか見当たらず,何者かはわからない。
 魔神と人間が平和に共存していた世界は,邪悪の化身ドグラマグラが現れて以来崩れ去った。いまや魔神たちは人々を蔑み苦しめるだけの存在。そのドグラマグラと対立していた魔神ランプが100年ぶりによみがえり,封印を解いたトトやその姉ライラの願いに応えてドグラマグラと闘う。ドグラマグラの正体は。そして,アラビアンゲートの謎とは。

 本作の小畑健は,ともかく描線が美しい。キャラクターが巧い。無造作に選んだページがそのままポスターの原画になりそうな,そんなクオリティである。また,敵・味方のキャラクターはそこそこ個性豊か,武器や闘い方もアイデアにあふれる。人間の娘ライラは可憐,敵側の千眼魔神(女にしか見えないが男言葉)はセミヌードで色っぽい。それぞれの敵と戦う過程,ひ弱な人間たちの見せる勇気……などなど,見所は少なくなく,単行本3巻はバランスよく今も読み返しに耐え,とくに最後の宿敵ドグラマグラとの闘いは圧巻。

 ところが,それではダメ。メジャーになれない。その理由が,うまく説明できない。
 鳥山明『DRAGON BALL』も,実のところストーリーが破綻し,キャラクターのインフレーションが起こったところから人気が爆発したように見えた(アニメ化の影響もあるだろうが)。『アストロ球団』や『リングにかけろ』などと同じように少年ジャンプの伝統「友情・努力・勝利」にちゃんとのっとっているように見えるのに,『ランプ・ランプ』にはいったい何が足りなかったのか。
 あるとしたら絵柄やストーリーが几帳面にまとまりすぎていること。少年ジャンプでブレークするには,なんらかの「破綻せんばかりの過剰さ」が必要だったのかもしれない。ふと,少年サンデーに連載されていたらどうだったのか,などと思ったりもする。
 
 小畑健はその後
  『力人伝説』(原作:宮崎まさる)
  『人形草紙あやつり左近』(原作:写楽麿)
と原作付きで描き続け,
  『ヒカルの碁』(原作:ほったゆみ/梅澤由香理)
にいたってようやくメジャーの仲間入りを果たした。『ランプ・ランプ』と何が違うのか,今読み比べても……やっぱりよくわからない。

先頭 表紙

2000-12-07 読まずに曲がるな 『白いメリーさん』 中島らも / 講談社文庫


【ライブ・イン・エレベーター】

 きょうび,作家,ものかき,ぎょーさんおるけど,ダンディーっちゅう言葉が最も似合う現役作家は誰やろなぁ。
 そこでぽんっと頭に浮かんだのが,中島らもはんの顔。

 どえっ,て? そりゃ似合わんわなあ。なんせ,「なにわのアホぢから」「アル中」「とほほオヤジ」「ぼーっ」「かねてっちゃん」,天下の大朝日であの『明るい悩み相談室』を延々連載した,あのなんやよーわからんおっちゃんや。
 しやけどな,あんた,ただのアホに『愛をひっかけるための釘』なんて本のタイトル,付けられまっか。そこらのアル中が『僕に踏まれた町と僕が踏まれた町』やなんて照れんと言えまっか。『永遠(とわ)も半ばを過ぎて』も『人体模型の夜』もそこらのオヤジのセンスとちゃう。ぼーっとしとるんと『水に似た感情』は別もんや。

 ええか。笑われるんとお笑いは,別もんや。お笑いちゅうのんは,自分,捨てること。腹ん中の,にがーて重いもんを口から全部吐き出して,きーろいすっぱいもんも全部吐いて,ほんで残ったもんで勝負するんがお笑いや。ははあ,そうゆーの,おーとまてずむ言わはるんでっか。ま,そんなもんやね。アル中で肝臓がぱんぱんになったのを,センセイわて子宮外妊娠や,責任とってえなっちゅうて神妙な顔する,そのくらいでけてやっと入り口。奥が深いねん。深すぎて,ときどき抜けんようなって往生するけどな。
 そやから,中島らもの『白いメリーさん』に入ってる話は,都市伝説がすうっと身近に寄ってくる「白いメリーさん」もエイプリルフールの人殺し版「日の出通り商店街いきいきデー」もへび女の出てくる「クロウリング・キング・スネーク」も,1コ1コがしみじみコワい。笑いをとれるらもはんが書いたんやからね。いみてーしょんごーるどの山口百恵の表情ナシともうおんなし,シガラミやら気取りやらからブチィッとキレてへんと出てこんコワさやね。それをわてはダンディー,ちゅうてるわけや。ダテやないで。おっとちょっとサブかったな。

 あーあー,それにしても,このエレベーター,どないなってんのやろ。もう3日も4日も昇るばっかりでもみないなあ。なにしてんのん,あんた。暑いんか,上着なんぞ脱いで。ありゃりゃ,す,すかーとまで。むぐぐ。うぷう。あかんあかん,わし,そーゆーの苦手やねん。そーゆーのより,人に本のなかみ説教するほうが好きなんや。
 もう聞きとない? 泣いていやがってもあかんて。まだまだぎょーさん,書評のネタだけはあるさかいになあ。

先頭 表紙

そういえば,山岸凉子の『天人唐草』って,このメリーさん(白い人)のバリエーションですね。こちらは完全にいっちゃった人という設定ですが。 / 烏丸 ( 2000-12-12 16:52 )
ところで,この作品では「横浜のメリーさん」は都市伝説扱いなのですが,横浜の白い人は実在だったようです。烏丸は,メリーさんは残念ながら遭っていませんが,新宿の自転車で新聞を配るタイガーマスクは何度か見かけました。 / 烏丸 ( 2000-12-12 16:50 )
このところ演劇やエッセイ仕事が多いらも師ですが,エッセイは同じネタの使いまわしが増えてきました。もう少しこういう「おぞぞ」短編も書いてほしいと思うわけです。 / 烏丸 ( 2000-12-11 02:12 )
なんともはや、「ほんざす」空体から「そざま返り」をして裏返ったような感じの本でしたなあ。 / えくおとさず ( 2000-12-10 12:06 )
さてさて、著作権で疲れちゃったので、メリーさんでも買いに行こうかなっと。なぜかこれは買ってなかったのですわ。 / こすもぽたりん ( 2000-12-08 18:28 )
ティキティキさま,お話の核はその横浜のメリーさんや人面魚などがいかに都市伝説となっていくか,というところなんですが,らも師はそこから思いもかけない怖い話に転がしていくのであります。 / 烏丸 ( 2000-12-08 02:01 )
白いメリーさんって横浜のメリーさんの事かな?ずいぶん前に見掛けて衝撃を受けた事を今でも鮮烈に覚えてますが。。。 / 違うかな?ティキティキ ( 2000-12-08 01:29 )

2000-12-07 人,人として 『白眼子』 山岸凉子 / 潮出版社


【よかった光子の役に立ったんだ】

 山岸凉子の作品には,はずれがない。デビュー当時の短中編はともかく,ここ20年以上,大きくがっかりしたという記憶はない。絵柄が甘い,ストーリーが甘い,とちりちり感じることはあっても,何度か読み返すうちにすきまだらけのようで実は細部にまで気をつかったプロットのすさまじさに殴られたような気分になることさえある。
 逆にいえば,そのぶん予想を上回る大傑作という手応えはめったに得られず,最近の長編『ツタンカーメン』『青青の時代』などのように,頭ではそれなりと思いつつ,食い足りない思いにかられることもなくはない。

 が,しかし。
 この『白眼子』にはもうまいった。『青青の時代』第4巻からたった3か月の発行に,その連載中あるいは終了後に散発された気楽なスケッチ風短編集かと勝手に思い込んでいただけ,その落差に驚き,展開に驚き,電車の中でドアにもたれたまま後半には不覚にも目頭が熱くなってしまった。

 主人公・光子は昭和21年10月に北海道小樽の市場で置き去りにされる。4歳か5歳のときである。雪に濡れ,寒さに震える彼女は通りがかった盲目の霊能者・白眼子とその姉・加代に引き取られる。加代は「美人だが酷薄そうな唇の女」,便所に行けずに阻喪をした光子をぶつなど世辞にも穏やかなタイプではない。このあたりのページから伝わる「寒さ」「冷たさ」加減は尋常でない。
 一方の光子も,マンガの主人公にしては可憐な容貌とはいえず,三白眼でおでこが広く,眉間から尖った顎にかけて3つのホクロが斜めに並んでいる。光子は頬のこけた和服の青年霊能者,白眼子のもとに運命観相を求めて訪れる客の案内をすることになる。物語はそれからおよそ25年,光子の視点で描かれる。

 「人生万事塞翁が馬」という言葉がある。人生の禍福,幸不幸は変転して定まりがない,といったような意味で,似たような言葉に「禍福は糾える縄の如し」もある。「児孫のために美田を買わず」「損して得とれ」などはそのバリエーションといえるかもしれない。では,私たちには何ができるのか。どう生きればよいのか。
 無口で何を考えているのかよくわからない白眼子は自らの力について「光子は知らないほうがいいよ。これは両の眼の力と引き換えなのだから」,「どうやら人の幸・不幸はみな等しく同じ量らしいんだよ」と静かに語る。そこに,光子を訪ねてきた若い娘があり……。

 本書は創価学会系の潮出版からの出版物であり,表紙もご覧のようにいかにもの宗教臭が漂う。霊能者を描く本作は,もちろん超常的な,霊的な世界観に基づいて書かれてはいるが(凡百の怪談譚よりよほど怖いシーンもある),作者・山岸凉子がそれをどれだけ信じているのかは実のところわからない。
 また,本書の白眼子という人物が実在の人物なのかそうでないのか,少し調べただけではわからなかった。山岸凉子は実在の人物や既存の作品から想を得ることが少なくないので,本作にもモデルとなった人生があったのかもしれない。

 しかし,それらのことが一切気にならないほどに,たった150ページあまりの本作は淡々と,しかしゆるぎなく光子の人生を描く。某局の大河ドラマの肩書きが虚しいほど,ここには豊かで大きな河が流れている。
 どうか,表紙のお地蔵さまに引くことなく,手に取って読んでみていただきたい。

先頭 表紙


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