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烏丸の「くるくる回転図書館 駅前店」

 
今後、新しい私評は、
  烏丸の「くるくる回転図書館 公園通り分館」
にてアップすることにしました。

ひまじんネットには大変お世話になりましたし、
楽しませていただきました。
その機能も昨今のブログに劣るとは思わないのですが、
残念なことに新しい書き込みがなされると、
古い書き込みのURLが少しずつずれていってしまいます。
最近も、せっかく見知らぬ方がコミック評にリンクを張っていただいたのに、
しばらくしてそれがずれてしまうということが起こってしまいました。

こちらはこのまま置いておきます。
よろしかったら新しいブログでまたお会いしましょう。
 

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2000-11-27 烏丸のそれはちょっといやだ その8 『猟奇文学館1 監禁淫楽』 七北数人 編 / ちくま文庫
2000-11-26 烏丸のそれはちょっといやだ その7 『女(わたし)には向かない職業2 なんとかなるわよ』 いしいひさいち / 東京創元社
2000-11-24 烏丸のそれはちょっといやだ その6 『三毛猫ホームズの推理』 赤川次郎 / 光文社文庫
2000-11-24 烏丸のそれはちょっといやだ その5 『グイン・サーガ(75) 大導師アグリッパ』 栗本薫 / ハヤカワ文庫
2000-11-23 烏丸のそれはちょっといやだ その4 『悪魔学大全』 酒井 潔 / 桃源社
2000-11-22 烏丸のそれはちょっといやだ その3 『SpaceAdventure コブラ』 寺沢武一 / 集英社
2000-11-21 烏丸のそれはちょっといやだ その2 『諸怪志異』シリーズ 諸星大二郎 / 双葉社
2000-11-21 烏丸のそれはちょっといやだ その1 『ドロファイター』 村上もとか / マインドカルチャーセンター(MCCコミックス)
2000-11-20 北村薫「日常の謎」について 追捕 『覆面作家の夢の家』 北村 薫 / 角川文庫
2000-11-20 400円文庫特別書下ろし作品をチェック! 『puzzle(パズル)』 恩田 陸 / 祥伝社文庫


2000-11-27 烏丸のそれはちょっといやだ その8 『猟奇文学館1 監禁淫楽』 七北数人 編 / ちくま文庫


【その前に体を拭きましょうね】

 1989年1月,19歳のホステスを足立区内のホテルに連れ込み乱暴したとして逮捕された少年達を追及したところ,アルバイト先から自転車に乗って帰宅する途中だった女子高生(17歳)を別の少年の家に拉致監禁,暴行を加えて殺害し,死体をドラム缶にコンクリート詰めして放置したことが明らかになった。

 2000年1月,新潟県内で1990年11月に行方不明になった少女(当時9歳)が19歳になって保護された。彼女は男性(逮捕時37歳)に無理やり連れ去られ,怖くて逃げられなかった,家の外に出たのは今日が初めてと答えた。

 これらの事件が他の営利誘拐や殺人事件に比べても記憶に生々しいのは,少年犯罪,犯行を知りつつ放置した親の責任,警察の不手際などだけでなく,「監禁」という事件そのものの構図が多くの男達の心の闇の琴線に触れたからではないか。
 誰にも渡したくない,触れさせたくない少女を疾風のようにさらい,無垢なまま閉じこめる。食事も洋服も言葉も性も,すべて閉じた函の中で……。
 そんな「監禁」をめぐる古今の短編を集めたのが本書である。収録作は以下の通り。

 皆川博子「朱の檻」
 連城三紀彦「選ばれた女」
 小池真理子「囚われて」
 宇能鴻一郎「ズロース挽歌」
 式 貴士「おれの人形」
 篠田節子「柔らかい手」
 赤江 瀑「女形の橋」
 谷崎潤一郎「天鵞絨の夢」

 大家からミステリ,ホラー,SFとなかなか強烈なラインナップだ。
 だが,読後感は残念ながら今一つ。理由は明らかで,先に挙げた事件が示すように「監禁したいほど恋しい」ことと現実の「監禁」との間には,無関係と言えるほど距離があるからだ。
 それは愛のようで愛ではない。「監禁」による愛の成就など御伽噺に過ぎず,相手に対する不断の思いやりなしにはただの人形遊びに過ぎない。もし「監禁」を描いて何か新しい感動を与える文学があり得るなら,それは山のようなエログロB級作品の中から僥倖のように立ち上るだろう。だが,本集に納められた作品の多くは,時代柄ただ耽美に走った谷崎は別として,書かれた段階ですでになにかしら人間を描こうとする意識が強すぎ,「監禁」の持つ本質的な暴力や「監禁」される者の恐怖,崩壊が描ききれていないような気がする。
 要するに,現実の事件記事のほうがよほど心に深く陰を残すのだ。

 なお,式貴士について少し説明しておこう。おぞおぞするようなグロテスクな刑罰を描いた『カンタン刑』,グロテスクなエロスとSFの結婚『連想トンネル』『吸魂鬼』などの作品は70年代の末から80年代半ばにかけてソニー・マガジンズおよび角川文庫から発行された。SFといっても未来のメカやネットワークが描かれるわけでなく,しいていえば人魚姫を描いてその食事や主人公とのセックスが描かれる,そんな感じだろうか。
 1991年に亡くなった彼にはもう1つの顔がある。ハードレイプ,凌辱を得意とした官能作家,蘭光生である。二見書房の『女教師・犯す』は当時「本の雑誌」で最も過激なアダルト小説とされたように記憶している。現在駅の売店などで売られる(なじみの本屋では買えない)黒い表紙のフランス書院文庫を館淳一とともに初期のころ支えた作家の1人である。
 本集におさめられた「おれの人形」は,式貴士ならではの超能力を持った主人公による拉致監禁レイプ譚。しかし,式作品の淫靡さ,蘭名義のハードさいずれにも欠け,お文学臭の強い本書の1つの限界を示しているようにも思われる。

 ここは1つ自分で監禁文学の傑作を……家人が(また)実家に帰りそうで,それはちょっといやだ。

先頭 表紙

なお,式=蘭,かつさらに,=間羊太郎らしいのですが,こちらの著者名についてはよく知らないので触れませんでした(現代教養文庫に『ミステリ百科事典』という著作あり)。W大ミステリ研のOBでしたかねえ? ともかく現実の拉致監禁事件,この本の書評,式貴士について,の全部を1回で書くのはちょっと無理でしたね。いずれも舌たらずな結果になって,反省。 / 烏丸 ( 2000-11-27 16:18 )
蘭光生が亡くなっていたとは…。学生時代の友人で現在N○Cに勤めるネズミ男クンは、出会う女性全員に蘭光生を薦めていたことだなあ。 / ( 2000-11-27 14:50 )
「戦争も未来も殺人も」……なるほどおっしゃる通りです。経験者だから優れたものが書けるというわけでもありませんしね。烏丸様による監禁文学傑作の誕生をお待ちしてます! 最初の発表はもちろん「ひまじん」で……!? / ( 2000-11-27 13:18 )
「朱の檻」もこの選集に入れるから妙なので,作品として文句があるわけではありません。篠田,小池は,はっきり「監禁」をテーマにして書きながら,ヌルい。式に関しては,「監禁」と「猟奇」をうたいながら式であって蘭でないのはなぜ,ということで編集,築摩のヌルさを感じます。気持ちはわからないではないけど,もっとキツいものがあるのにお茶を濁した感じがしてしまうのです。 / 烏丸 ( 2000-11-27 12:30 )
それから,3000バイトの壁で書ききれなかった点として,谷崎の耽美のことがあるのですが,大正時代にこのような絢爛たる耽美を書いたことは本当に凄いと思います。内容的にも一種徹底している。表現力は烏丸ごときが言うことではない。ただ,「監禁」テーマのオムニバスにこれをいれるべきだったかというとちょっと違う感じがします。 / 烏丸 ( 2000-11-27 12:25 )
そうかもしれませんが,ベルヌが旅行嫌いだったような具合に,実行にいたらない者の想像力にも期待したいのです。そうでないと経験していない者には戦争も未来も殺人も書けないことになってしまいかねない。もちろん,キングが『ミザリー』を書いたのは,ファンに直接監禁された経験はなくともファンの異常心理を常々感じていたため,とかいった具合に,想像の核は必要でしょうが。 / 烏丸 ( 2000-11-27 12:21 )
こういうのはふつうの神経では書けないですよ。耽美や感傷ではね。烏丸様レベルの読者を納得させるようなのが出るとしたら、被害者からしかないでしょう。 / み ( 2000-11-27 11:46 )
何冊か購入経験有りです。マンガ文庫も数冊・・・あれ?どこにしまったっけ?もしかして、息子たちに見つかったかな?(笑) / akemi ( 2000-11-27 02:42 )
↓&↓↓,1分違い。惜しい!(そうか?) それはともかく,びっくりしていただいて本望ではありますが……「式」はともかく「蘭」をご存知とは……。エルさまさすが。ちなみに,烏丸はフランス書院文庫に書いたことはありません,はい。 / 烏丸 ( 2000-11-27 01:41 )
それにしても筑摩書房も,こんな普通の文学短編集に「猟奇文学館」はないよなあ。売れればよいのか。 / 買うほうも買うほう 烏丸 ( 2000-11-27 01:38 )
なんと、式=蘭!びっくりでございます。。「また」って・・もしや、フランス書院の作者の1人が実は烏丸さまだったとか・・? / エル ( 2000-11-27 01:37 )

2000-11-26 烏丸のそれはちょっといやだ その7 『女(わたし)には向かない職業2 なんとかなるわよ』 いしいひさいち / 東京創元社


【ま,ねかせておいてあげなさい】

 11月30日,つまり今から4日後に発行される予定の新刊である。本屋に積んであったのだからよしとしよう。
 1巻については『ののちゃん』の書評内でケロロ軍曹の手で必要にして十分な紹介がなされている。野暮を承知で繰り返すなら,朝日新聞朝刊掲載『ののちゃん』のクラス担任でおなじみ藤原瞳先生が推理小説の新人賞を受賞し,豪放な女流作家として活躍するというもので,タイトルはイギリスの女流作家P・D・ジェイムズの『女(おんな)には向かない職業』(ハヤカワ書房)のパロディである。

 第1巻では「27の瞳」と称して瞳が学校の先生をしながら市民講座で推理小説を学び,新人賞に入選するまでの話がプロローグとして挿入されているが,今回はなんと17歳でソフトボール部に所属する(可憐だ)瞳のノンシャランな日々を描く「17の瞳」(中学時代はアルゼンチンの山奥にいたとは),地元の小学校に赴任する「でもしかの瞳」,『ののちゃん』と同時期の「27の瞳」,そしてミステリ作家としてデビュー後の「34の瞳」という構成になっている。肝心の瞳のノンシャランさ,作家業界の内幕暴露色は残念ながら第1巻に比べるとやや弱いかもしれない。
 ……それにしても,なぜ2巻になってこういう構成なのか。釈然としないので初出一覧を見て,驚いた。小説現代(講談社),朝日新聞,オール讀物(文藝春秋),週刊文春(同),小学四年生(小学館),パロル(パロル舎),小説宝石(光文社),おそい・はやい・ひくい・たかい(ジャパンマシニスト社),おりがみ(清興建設),創元推理(東京創元社)。どんな雑誌かまるでわからないのまで混じっているが,ともかくこれだけバラバラな発表先に4コママンガを書きまくり,集めてみれば大河ドラマとまでは言わないまでも,全体を通してスジの通る一人の作家の人生が描かれているわけである。

 どうもこのいしいひさいち,底が読めない。やくみつる(=はた山ハッチ)らのスポーツ4コマの先鞭を切ったのは当人だし,秋月りすのOL4コマに対しては『ノンキャリウーマン』,植田まさし『コボちゃん』等に対しては『ののちゃん』があり,業田良家『自虐の詩』が4コマで大河ドラマを!? と言えば,しれっとこういうことをしてみせる(もちろん,『女には向かない職業』と『自虐の詩』を同次元で語るのは双方のファンにとって無理があるとは思うのだが)。
 4コマでどうしてこんなことができるのか,と思っているうちにいつの間にか単行本も100冊を越え,とどまるところを知らない。ドーナツブックスの4コマだけでもすでに4483作品。貧相な自画像の下に,どれほどの余力が残されているのか。ときどき,いしいひさいちの本当の姿を知らないまま,釈迦の掌の上を飛んでいる猿のような気分にさえなってしまう。いしい家の金庫には25年前に描かれた全シリーズの最終回がしまわれているとか,著者の死後全作品をグラウンドに並べてヘリコプターから見たら新たな4コマ作品が浮かび上がるとか……それはちょっといやだ。

 なお,東京創元社からはほぼ同時に『大問題2000』も発売されている。これは自自公,セクハラ知事,日の丸・君が代,地域振興券,ブッチホン,フリューゲルス,脳死移植,臨界事故,てるくはのる……といった1999年の出来事を峯正澄の文と合わせて振り返る「いしい版・現代用語の糞知識」である。峯正澄の文はともかく,必携であること言うまでもない。

先頭 表紙

この「17の瞳」部分は,いったい何に連載されているのやらっ。まだ連載中なら,買わねばっ。 / 烏丸 ( 2000-11-26 01:24 )
いやあ、17歳の瞳ちゃんは萌えでしたな。あの図書館で本を読む際の姿勢などたまらん魅力でした。近日刊と言われている「となりのののちゃん」も楽しみですなあ。 / こすもぽたりん ( 2000-11-26 01:20 )

2000-11-24 烏丸のそれはちょっといやだ その6 『三毛猫ホームズの推理』 赤川次郎 / 光文社文庫


【犯人……見た……】

 グイン・サーガの75冊というのも凄いが,こちらの赤川次郎も凄い。すでに著書の数300冊以上,三毛猫ホームズシリーズだけでも30冊以上あるという話だ。普段の烏丸なら紀伊国屋BookWebに駆け込んでちゃっちゃっと正確な数字を調べるところだが,正直言ってこの場合,300が500,30が50でも大勢に影響なさそうなのでそのまま話を進めよう。

 赤川次郎のデビューは1976年,女子大生・永井夕子とくたびれた中年警部・宇野のコンビの活躍する短編『幽霊列車』(第15回オール読物推理小説新人賞受賞)だったが,実質的な出世作はカッパノベルスから発売された長編『三毛猫ホームズの推理』である。

 「お嬢さん」とあだ名される主人公・片山は警視庁捜査一課に勤めながら血を見ただけで貧血を起こすほど気が弱く,おまけに女性恐怖症。そんな彼がこともあろうに女子大生殺害事件を担当して女子大寮に張り込むことになってしまった……。
 驚いたことに,本作には,本格推理とまで言わないものの,ちゃんとした推理小説としての,しかもかなりトリッキーなトリックが用意されている。片山と女子大生・雪子とのドラマは意外やシリアスだし,妹・晴美の言動もヘヴィだ。何より,前半にはいくつか伏線があり,最後にはそれが解きほぐされる。三毛猫ホームズの関与も,のちのようにこじれた糸を全部無造作にほぐす神の手でなく,多少は偶然っぽく描かれているし,晴美に恋する食いしん坊の石津刑事が登場してドタバタ色が強まるのは第2作の『三毛猫ホームズの追跡』から。
 ……要するに本作は赤川次郎作品としては「人間を描けている」とまでは言わないものの,立派なミステリ長編としての骨格を保持しているのである。セリフ,改行も,最近の作品に比べればずっと,もう全然少ない。

 で,あるからして,赤川作品としては,よろしくないわけである。

 産業の理想の形態は,市場を囲い込み,占有してしまうことである。独禁法が存在するのは,私的独占(トラスト・コンツェルン)や不当な取引制限(各種のカルテル)が行われると,一部の企業に有利に過ぎるからだ。つまり,小説の世界でいえば,他の小説家の小説を一切読まさず,自分の新作が出たら必ず買わせることができるなら,それに勝る売り方はない。
 赤川次郎の作品は,見事にそれを実現している。論より証拠,『三毛猫ホームズの推理』が(つまらない,本文スカスカという赤川評に反して)そこそこ読めたため,うっかり『三毛猫ホームズの追跡』『三毛猫ホームズの怪談』……と20冊ばかり続けて読んでしまった烏丸は,気がつけば立派な依存症状態,どうしてもほかの作家の文章が読めなくて困ったものである。なにしろ,ほかの作家ときたら,普通の文体だし,漢字が多く,改行が少なく,内容が詰まっていて,数ページ読むのに普通の労力が。しかたないので,今度は『幽霊列車』『幽霊候補生』『幽霊愛好会』……幽霊シリーズが片付いたら,次は……。

 赤川やめますか,それとも読書家やめますか,とAC公告機構の声が耳元で鳴り響き,血液から赤川を抜くために山にこもり,片方の眉毛を剃り落として阿刀田高からゆっくりとリハビリを始め,なんとか澁澤龍彦まで戻ったのはその年の暮れのことだった。
 しかし,安心はできない。回復したように見えて,ときどきフラッシュバックして改行の少ない普通の文章に向かうとまるきり意味がつかめなくなることもあり……それはちょっといやだ。

先頭 表紙

テレビ版の『探偵物語』のほうの原作は小鷹信光なんだそうですね。幻冬舎文庫から2冊出ていて,読もうかどうか思案中です。 / 烏丸 ( 2000-11-27 00:31 )
おいら、TV版『探偵物語』(工藤ちゃんのやつ)のLD全巻持ってます。貸し出し可。 / バニー服部 ( 2000-11-26 11:47 )
をを,あややさま,『探偵物語』といえば角川映画の……。実はいまだビデオを愛蔵しております(ビデオはβ)。松田雄作がたいへんかっこよい。薬師丸の歌も切ない。 / みーはー 烏丸 ( 2000-11-25 11:40 )
エルさま,三毛猫ホームズを小学校の時にですか……最初の『推理』は,女子大生のうにゃむにゃが背景にあるんですが……まあ,あとはとくにアダルトではなかったとは思いますけど。赤川次郎ってジュブナイルというか,女学生向けの作品もあるのですが,そうすると,そちらの実際の読者は幼稚園児とか。……。 / 烏丸 ( 2000-11-25 11:30 )
初めて読んだ赤川次郎は、「探偵物語」でした。高校のとき、「赤川次郎って本当にひとりなのか?」って論議が巻き起こりました(あまりにもペースがはやいため) / 中・高ずっと図書委員あやや ( 2000-11-25 07:57 )
三毛猫ホームズ、懐かしいです。小学生の時に、とりつかれたように読んでいた理由が今、分かりました。。! / エル ( 2000-11-25 00:07 )

2000-11-24 烏丸のそれはちょっといやだ その5 『グイン・サーガ(75) 大導師アグリッパ』 栗本薫 / ハヤカワ文庫


【ヤオイ,ヤオイとはしゃいで】

 ケロロ軍曹の「第666野戦重砲マンガ小隊」でも期せずして盛り上がったが,実はごく最近,親しい者の集う掲示板でも栗本薫(中島梓)周辺のどたばたについての報告があったばかりだった。

 栗本薫はヒロイックファンタジーの長編「グイン・サーガ」シリーズを発表し続けており(一昨年には32冊書いたそうだ),それなりに売れているようなのだが,最近は作風が「お耽美」「やおい」に傾き,しかも本人が同人誌として「グイン・サーガやおい小説」を個人販売し,一部のファンを呆然とさせいるというのである。
 最新刊のあとがきでは,作者本人がニフティの会議室やどこかのHPについて「書かれたものはともかく著者の人間性についてまでバリザンボウをあびせてよいのか,オフで栗本薫の前で同じことが言えるのか。匿名だからと何でも言っていいという態度は許せない」とケンカを売っているらしい(と聞いて,あとがきだけ見るために最新刊買ってくる烏丸の野次馬根性もどうかとは思うが)。

 知人が教えてくれた彼女の個人サイトは全文太字指定,しかも左右めいっぱいに表示されて実に読みづらいのだが,ざっとスクロールしてみたところ「自分はまだまだ老大家ではなく若者のつもりで,だから攻撃的に書いていくぞ」というような部分に少しだけ笑ってしまった。自分が老大家として若者から攻撃されるのは許せないわけである。
 読者が身勝手なのはある程度しようがないと思うし,マスに作品を販売するなら匿名か否かを問わず多少の個人攻撃を受ける覚悟も必要なのではないか。お耽美というのがどれほど高尚な趣味か知らないが,「レズビアンのアダルトビデオが好きだ」と公言する男の世間ウケがよいとも思えないし。

 栗本薫は,デビュー当時のシリアスなミステリやSFはそれなりに楽しみに読んだものだが(というより,本格ミステリが壊滅的に枯れた時期だったので,それっぽいものならなんでもよかったのだ),どんどん趣味と違うほうに行ってしまい最近は全く手にしていない。デビュー長編ミステリ『ぼくらの時代』の主人公の組むロックバンド名が「ポーの一族」という無神経さには少し引けてしまった。また,主人公が作家名と同じ薫クンというのも,『赤頭巾ちゃん気をつけて』の庄司薫の老後の貯えを削ってしまったわけで,結果的にひどいことをしたものだ。
 当初は心理ミステリだった伊集院大介モノも後半は催眠術使いまくり,明智探偵と怪人20面相との戦いみたいになってしまった。
 
 問題は,少女マンガについて,評論の権威がほかにあまりいないということである。評論家は数いても,誰か一人,といったときにこの人を思い出すメディアの担当者はいまだ少なくないのではないか。しかし,この人のマンガについての物言いがかなり偏っているのは明らかで(橋本治に比べれば内容がないも同然),栗本薫がある世代や層を代表するような書き方されても困ってしまうのだけれど,今後とも大物マンガ家の再版とかいうことになるとこの人が担ぎ出されることになるんだろうなあ。
 それはちょっといやだ。

 なお,本気の同性愛の人はやおいを許せるのかという疑問もあるが,真実を追求したい気持ちはちーともわかないのであった。
 別の知人によると,グイン・サーガはタイトルで大体どの国がその巻のメインなのかがわかり,パロのクリスタル公がらみ,モンゴールのイシュトヴァーンがらみのタイトルの場合はお耽美ないしほもネタなので×。ボーダーライン上のは中身をパラパラとめくってから買うとのことである。なるほど。

先頭 表紙

恩田陸『Puzzle』は……なんというか,風景画をジグソーパズルにした,としか言いようのない構図で,くどく文句を言うのも妙,といった感じざんす。ま,書評も書いたし,そのうちポア。 / 烏丸 ( 2000-11-24 17:51 )
ちなみに烏丸,やおいを読み描きしたい方,に対してはニュートラルで「そういうシュミはわからん」でオシマイ。性に関しては,相手がいやがらなければいーんじゃない,な感じ。ましてや作品として見たり読んだりは別に,と思うのですが,その一方で銀行の水着ポスターがクレーム受けたり,神戸のA少年事件の中学校の校長センセがストリップに行ったと騒ぎになったりというのもさてどうなのか。その前に街中で売春がまかり通っているのをなんとかしろよぉ。 / 烏丸 ( 2000-11-24 17:44 )
栗本薫の「グインサーガやおい本」、やっぱり・・という感じです。なんかこの作者ならやりかねない感じでした。しかしもう75巻目ですか。もう彼女の本を買わなくなり幾久しく・・。 / エル ( 2000-11-24 15:26 )
初めてグインサーガを読んだときに登場人物の美辞麗句&今日のいでたちを延々と書き連ねてらっしゃってて、この作家さんはあたしゃだめかも、と思ってそれきり読んでません。パロのクリスタル公大活躍だった巻だったような気がする・・・。まだ一桁台の巻で加藤直之氏の挿し絵が好きで手に取ったのでした。なつかしいっす。 / よこ ( 2000-11-24 14:52 )
もうつっこめないくなってしまったのでこちらに。恩田陸『Puzzle』読みました。恩田陸でなく権田陸ならば、逆から読んだときに「くりだんご」だったのに、というのが唯一の感想でございました。 / こすもぽたりん ( 2000-11-24 14:17 )
いやー,竹宮恵子以来,そちらの方面にはとんとうといもので。 / 烏丸 ( 2000-11-24 12:44 )
あー、びっくりした。全巻揃いでお持ちでいらっしゃるのかと思いました。 / こすもぽたりん ( 2000-11-24 12:28 )

2000-11-23 烏丸のそれはちょっといやだ その4 『悪魔学大全』 酒井 潔 / 桃源社


【我国魔道研究の先達】

 こすもぽたりん氏の『トンデモ美少年の世界』書評中に「昭和50年代に復刊されたらしいが、澁澤龍彦が解説を書いているおかげでめちゃくちゃ高いらしい」と紹介された問題の1冊,それが『悪魔学大全』である。
 なぜそんな本が烏丸の本棚にあったかは聞かないでほしい……実はどこで手に入れたか覚えていないのだ。

 ともかく物凄い本であることは確かだ。本書は昭和4年発行の『愛の魔術』第六部と昭和6年の『降霊魔術』全章,さらに著者の個人雑誌「談奇」から4篇を加えてまとめたものである。つまりざっと70年前に書かれたものだ。その博覧強記ぶりには恐れ入るばかり。しかもこのような本を書いているだけで警察にマークされた時代である。

 目次に目を通してみよう。
  淫魔
  黒弥撒
  Sabbat(悪魔の夜宴)
  魔術に対する処刑
  奢覇都 黒弥撒 淫鬼魔
  降霊魔術
  妖幻夜譚
  天狗雑考
  草木 動物 金石の魔法
  護符呪法
  占星術
  聖天秘話
  錬金術
  論考集(沙翁劇に現れた魔薬毒薬の研究・人造人間第一世ドロズの自動人形・ラヴァル元帥嬰児の血を持って淫惨なる悪魔の弥撒を修する事・南方先生訪問記)

 黒弥撒は黒ミサ,奢覇都はサバト,ラヴァル元帥とはジル・ド・レー候,南方先生は言うまでもなく南方熊楠である。
 解説で澁澤龍彦も書いているが「天狗雑考」が含まれているのがなんとも言えない。第一章「淫魔」を見ても,インキュブス(女性のベッドに現れ夜な夜な悪さをする悪魔)だけでなく,もちろんその例も多々紹介されているが,中国の『聊斎志異』から読み下し文を延々と引用したりと,それは素晴らしい素材の厚み,衒学の極みといった感触である。ただ,著者が猟奇的ディレッタンティズムに満足しているところを澁澤は「あえて酷なことを言えば,この書物の時代的限界があったのであろう」と書いている。まったく,あのディレッタント澁澤にそう言われてはかたなしだ。

 少し詳しく内容を見てみよう。
 たとえば基督に対して普通のミサがあるように,悪魔に対しては黒ミサを行う。通常のミサの裏返しだから,若く美しい女が聖壇に全裸で横たわり,その腹の上に聖餐杯を置き,胸に十字架を置き,その上で子供の喉を掻き切ってほとばしる血潮を聖餐杯にそそぎ悪魔の名を唱える。後は黒司祭が壇上の女性と×××……無茶苦茶である。
 こういったいかにも悪魔学な内容が(実際はもっとずっと詳細に)紹介される一方,古今東西の様々な妖術についても紹介される。たとえば,

  駱駝の血を呑んだ人は狂人になり,ランプの火にその血を注ぐと,其の場に居合せた全部の人の頭が,皆駱駝の頭に見える。

  水晶は,太陽の光線を取って,物を焼く事が出来る。其の粉末を蜜と共に呑めば,乳がよく出る様になる。

 他の章では,聖天(ガネーシャ。オウム真理教が冠った象の帽子でも知られている)の像を作る際に注意すべきことが細かく紹介されている。

  四,鼻はフクフクと大きく作ること。貧相に作ってはならぬ。
  七,牙は短いのがよろしい。長いと物にかかるおそれがある。

ご親切なことだ。

 さすが,唐沢俊一が「めちゃくちゃ高い」と書いただけあるまことに重厚な書物ではあるが,新妻千秋とチリ鍋をつつき合うために稀覯本を売っ払うのもまた一興。さっそく古本屋サイトで本書の実売価格を調べてみた。何万円,いや何十万か……わくわく。

  4,000円

 ……それはちょっといやだ。

先頭 表紙

唐沢本に載っていたオカルト古書店ですね。今ではそんな専門店でないと入手できないのでしょうか。25年前に文学部のエキセントリックな女の子と一緒に歩いていてたまたま手に入れたのは早稲田のありきたりの古書店でしたが……シマッタ,覚エテイルジャン。 / 烏丸 ( 2000-11-27 00:36 )
神保町を探したけどなかった。やはりこの手の本は中野の「大予言」に行くしかないですかのお。 / こすもぽたりん ( 2000-11-26 11:48 )
この本のもう1つのポイントは,著者が亡くなったのは昭和27年(1952年)。つまり,2002年には没後50年で,著作権的にはフリー。引用し放題ということですね。ホラー作家,RPGゲームシナリオライター,その他もろもろ,必携かも。 / 烏丸 ( 2000-11-24 11:41 )
しかも,古本屋さんでの売り値ということは,持ち込んだときの引き取り値は当然もっとずっと安いわけで……。フグ鍋と引き換えにしようなんて烏丸が悪かった。もう一生大切にするからね,『悪魔学大全』ちゃん。 / 烏丸 ( 2000-11-24 11:39 )
悪魔学のスゴイ本が、サンキュッパ+20円・・・。 / エル ( 2000-11-23 20:29 )
それはそうと、4,000円なら買っちゃおうっと。何に使うかは追々考えるとして。 / 久々登場、黒ぽたりん ( 2000-11-23 11:16 )
にょ〜(©でじこ)、こ、これではサイバラ命名「フグDJオヤジ」のいる築地『天竹』にも行けないにょ〜。フグ断念、アンディ・フグ追悼だにょ〜。 / 無念 ぽたりん ( 2000-11-23 11:15 )
なんだか表題を読むと自動的にクリックしてしまう・・。はっ?これもなにかの魔術・・?? / あやや ( 2000-11-23 07:52 )

2000-11-22 烏丸のそれはちょっといやだ その3 『SpaceAdventure コブラ』 寺沢武一 / 集英社


【今日は最高潮なのさ 惑星でも砕いてみせるぜ──────っ】

 相棒のアーマロイド・レディと高速宇宙船タートル号で宇宙をかけめぐる正統派の海賊,コブラ。彼は鋼の肉体と不屈の精神力で「不死身の男」と呼ばれている。しかし残虐非道な海賊ギルドとの闘いに明け暮れ,銀河パトロールに追われる日々にいやけがさした彼は,3年前,顔を変え,記憶を消してしがない貿易会社のサラリーマンに身をやつしていた。ふとしたきっかけで記憶を取り戻したコブラは,レディとともに再び危険な世界に旅立っていく。左腕のサイコ・ガンとともに──。

 『SpaceAdventure コブラ』,驚いたことにこれは寺沢武一のデビュー作だ。
 第1話には,すでに彼の作品のあらゆる特長が表れている。バタくさいSFスピリッツ,キザでお調子者だが陽気なタフガイとグラマラスな美女,命をかけた闘いと冒険。
 コブラと浅からぬ因縁を持つ,特殊偏向ガラスのボディーがあらゆる光線銃を素通りさせる暗殺者,クリスタル・ボーイの存在感も素晴らしい。そして,物語は宇宙の破滅と誕生をからめて大きく動いていく。コブラはアーマゲドンを防げるのか……。

 異論もあるだろうが,『SpaceAdventure コブラ』こそ和製スペースオペラの最高傑作と烏丸は考える。のちに同じ作者から『Blackknight バット』『鴉天狗カブト』『MidnightEye ゴクウ』『武 TAKERU』などの作品が発表されるが,コブラを上回るヒーローはいない。

 しかし,問題はある。
 作中の女性がみんなお尻丸出しで風邪をひくのではないかと心配,ということではない。寺沢武一は1980年代よりMacintoshを利用したマンガ制作に着手,デジタルマンガ制作スタイルを確立してオールカラーコンピュータグラフィックスコミックスを制作するにいたった。『武 TAKERU』はその最初の作品だが,これは彼の全作品の中でもっとも出来が悪い。
 コンピュータグラフィックスは図形を切ったり貼ったりゆがめたり伸ばしたり色を変えたり特殊効果を加えたりするのにはとても便利だが,マンガに必要なセンスの中には白いケント紙にフリーハンドで向かって初めて発揮されるものもあるのである。慣れの問題もあったのだろうが,『武 TAKERU』は多くのコマでキャラクターの顔が真中に置かれ,似たような画像効果が繰り返され,全体がのっぺりした悪い意味でのMacマンガになってしまった。
 そして,「コブラ」も最近はオールカラースタイルで発表されるようになってしまったのだ。レオナルドがモナリザを主人公にマンガを描いたからといって,別に傑作マンガができるわけではない。絢爛たるカラーエフェクトより大切なものが初期のモノクロコブラにはあったように思うのだが。
 ちなみに,それは,彼の主人公・コブラが大切にしたものと同じものだ。

 結局,今や当初単行本1冊300円代で購入できた程度のボリュームの作品が,Jump comics deluxeという名のもとに雑誌サイズの豪華版オールカラーで1,456円。しかも今のところ,新作より従来の単行本で発表済みの作品をオールカラーに書き換えたもののほうが多いのだ(書店店頭ではビニールパックされていて,内容を確認できない場合が多い)。
 オールカラー版はすでに9巻,今後いったい何冊お付き合いするハメになるのか。大好きな作品だっただけに,それはちょっといやだ

先頭 表紙

でしょでしょ? カラーイラストと「マンガ」は違うと思うわけです。 / 烏丸 ( 2000-11-24 11:42 )
同感です。僕もかってのコブラは好きだったんです。ホント残念に思ってます。 / TAKE ( 2000-11-23 02:40 )
なるほど,寸前で落馬,と。実のところはキスシーンすらほとんどない健全SFなんですが,なにしろ女性のファッションが添付画像のような……ですから。しかし,幼稚園のときに,もう単行本あったのね……。 / 遠い目 烏丸 ( 2000-11-22 16:05 )
「コブラ」・・・私が幼稚園生だった頃、伯父の部屋にあったヤツを下心丸出しで読もうとしたまさにその時、母親に「読んじゃダメ」と素早く取りあげられてしまったホロ苦い思い出が・・・。・・・いや、ただそれだけなんすけど。すいません。 / 2ダブ ( 2000-11-22 15:58 )

2000-11-21 烏丸のそれはちょっといやだ その2 『諸怪志異』シリーズ 諸星大二郎 / 双葉社


【魑魅魍魎を遍く探ね回り】

 「アクションレボリューション」なる言葉をご存知だろうか。「行動革命」,直訳するとまことに物々しいが,なんということはない,双葉社の週刊誌「漫画アクション」のこの秋のイメチェンのことである。

 漫画アクションは1967年創刊の老舗青年誌で,『ルパン三世』『同棲時代』『子連れ狼』『嗚呼!!花の応援団』『がんばれ!!タブチくん!!』『じゃりン子チエ』『気分はもう戦争』など一斉を風靡したヒット作も少なくない。
 しかし,最近は部数的に低迷していたのか,9月5日号で「アクションは真のヤング誌になります」と誌面刷新をはたした。どう変わったかといえば,エロ路線に走ったのである。

 そのため,
  『ほっといてちょうだい』いしいひさいち
  『トトの世界』さそうあきら
  『キャラ者』江口寿史
  『鎌倉ものがたり』西岸良平
  『元祖Dr.タイフーン』かざま鋭ニ
  『CURA』六田登
  『ガダラの豚』阿萬和俊
などの連載マンガは休載をやむなくされ,目玉商品の
  『クレヨンしんちゃん』臼井義人
も他誌に移った。

 休載された作品で追いかけていたものはとくにないのだが,困ってしまうのが諸星大二郎の『諸怪志異』シリーズである。

 『諸怪志異』は中国・宋時代を舞台に,道士の五行先生とその弟子の燕見鬼(阿鬼)を中心として,さまざまな怪異を描いた作品群。
 『聊斎志異』(蒲松齢が収集した中国の妖怪談義)などに見られる中国の怪異譚というのは,日本のそれがはかなくセンシティブなのに比べ,土俗的,土着的というか,妖怪幽霊ともに色濃くずっしりと重みがある。諸星大二郎の黒々とした描線は(もちろん意図的だろうが)その重みによく合い,非常に魅力的だ。この絵柄を中国の読者が見たらどう見えるのかはそれはそれで興味深いが……。

 本シリーズは1巻めの「異界録」が1989年5月,2巻め「壺中天」が1991年2月,3巻め「鬼市」が1999年10月。非常にゆったりしたペースで漫画アクション誌上に発表され,単行本化されてきたわけだが,漫画アクションがエロ路線に走った今,掲載の先行きは不明だ。一部にエロティックなシーンがないわけではなかったが,エロを売り物にする雑誌のカラーとは違うように思う。

 このままお話がうやむやになってしまったら,それはちょっと(かなり)いやだ。

先頭 表紙

9月5日号で一気にエロ雑誌になったわけでなく,順次の入れ替え作業のようです。作家の方の他誌での仕事量とか,担当編集者の意地とか,裏ではいろいろあるのでしょう。 / 烏丸 ( 2000-11-24 11:44 )
アクション誌の路線変更はビックリですが、エロマンガに混じってなぜか「馬なり1ハロン劇場」と「軍鶏」が残っているのがフシギ。 / TAKE ( 2000-11-23 02:30 )
そしてそして、のはらしんのすけ&アクション仮面の唄う『とべとべおねいさん』の行方は… / しつこい… ( 2000-11-23 00:17 )
あ、「アクション幼稚園」はどうなってしまうのだろう… / ミミ子クン、春日部の危機だ! ( 2000-11-23 00:15 )
ということは、「アクション仮面」は「まんがタウン仮面」になっちまうのかなあ… / 春日部博士 ( 2000-11-22 20:34 )
なお,本文,どう表記するか迷ったのですが,『トトの世界』だけでなく『Dr.タイフーン』『CURE』などのストーリーものは,休載というよりはいきなり最終回,といった趣のようです。ただ,実際にそれぞれの終わり方を確認しているわけではないので,正確なところはよくわかりません。 / 烏丸 ( 2000-11-22 15:00 )
よこさま,いらっしゃいませ。さそうあきら『トトの世界』は7/11日号(6月27日発売)で連載終了,9月に単行本の4巻が発売されており,それで終わっているもようです。 / 烏丸 ( 2000-11-22 14:56 )
さそうあきら作品を密かに愛するワタクシ、少なからず動揺いたしました。「トトの世界」はどこにいっちゃったんでしょう(涙) / よこ ( 2000-11-22 14:38 )
最近まで,表紙も江口だったもよう。「クレヨンしんちゃん」臼井儀人,「かりあげクン」植田まさし,「鎌倉ものがたり」西岸良平はそろって双葉社の「まんがタウン」という月刊誌にお引っ越しです。 / 烏丸 ( 2000-11-22 14:28 )
へぇ〜、江口寿史とか書いてたんだ。白いワニは去ったんですかね(古い?)。『クレヨンしんちゃん』は何処へ? / こすもぽたりん ( 2000-11-22 14:04 )

2000-11-21 烏丸のそれはちょっといやだ その1 『ドロファイター』 村上もとか / マインドカルチャーセンター(MCCコミックス)


【泥の中から金を,生活を築いていくレースを……】

 村上もとかといえば,F1を舞台にした『赤いペガサス』,山男の苦闘を描いた『岳人列伝』,剣道を歌い上げた『六三四の剣』など,骨太なストーリー,力強いデッサン,細緻な描線で知られる小学館系の大家である。個々の作品の設定だけ見るとB級といえばB級なのだが,これだけ堂々と描かれてしまうと黙るしかない。要するに大デュマやバルザックをB級とは誰も言わない,その領域である。
 一時,バイクマンガ『風を抜け!』やボクシングマンガ『ヘヴィ』で少々タッチが衰え,『六三四の剣』で燃え尽きたかと心配されたものだが,なんのその,昭和史を描いた長編『龍-RON-』,タイの犯罪を描いた『水に犬』,検事を主人公にした『検事犬神』など,地味な題材を取材を重ねてじっくり描き,最近さらに凄みが増したような次第である。

 添付画像の『ドロファイター』は『赤いペガサス』の直後(1979年〜),少年サンデーに連載された作品。主人公は身長6フィート9インチ(2メートル6センチ)の日系アメリカ人ノブ・トクガワとその妹サキ。賞金目当てにアメリカ各地を戦線する金も学もない無名レーサーが不屈のガッツとタフな肉体を武器にスプリントからドラッグレース,ストックカー,そしてインディとだんだん大きな舞台で活躍していく文字通りのアメリカン・ドリームを描いたものだ。
 ヨーロッパを舞台に精密機械のような天才F1ドライバーを描いた『赤いペガサス』がレッド・ツェッペリンなら,アメリカのパワーレースを描いた『ドロファイター』はグランド・ファンク・レイルロード,といった感じだったろうか(ジミー・ペイジが精密機械? というつっこみはこの際なし)。

 村上もとかという人は単行本の再版に無頓着なのか,この『ドロファイター』は1981年に単行本が完結して以来ずっと再版されず,古本市場でも割合高額だった。元気は出るがドタバタしたB級アクション,に,大枚はたくべきかどうか迷っているうちに買い逃す,そんなことが何度かあった。それが今回,マインドカルチャーセンターなる聞いたことのない出版社からめでたく再版され始めたわけである。喜びいさんで1冊めを買ったのはよいのだが……実は,1999年12月に第1巻が出て以来,1年近く音沙汰がない。すでに一度単行本となったマンガの再版に,それほど手間がかかるとは思えない。あまり間があくのは営業的に不利なはず。いったいどうなっているのか。

 このまま沙汰止みになってしまうのは……それはちょっといやだ。

先頭 表紙

『ドロファイター』が連載されていたころは,ぴりぴりした『赤いペガサス』に比べてなんとなくギャグっぽくてタルいように思っていたのですが,時間が経つとこちらの余裕も好もしく思えるようになりました。当時単行本を買っておけばなんてことなかったのに……。 / 烏丸 ( 2000-11-24 11:46 )
遅いつっこみになってしまいましたが、このマンガ結構好きだったんですよ。ジャンプ誌の「虎のレーサー」でデビューした村上もとか氏、「赤いペガサス」のモナコGPあたりから作風が変わったんですけど、そのあたりからこの「ドロファイター」で氏のスタイルのベースが出来たような気がします。 / TAKE ( 2000-11-23 02:24 )
あ,そういうわけではないです。この新企画では怖くてやれん,というだけ。サイバラは黒ネズミ,白ウサギ,白ネコ,緑カエル……十分ですね。 / 烏丸 ( 2000-11-21 20:13 )
え、無敵のサイバラはデンキネズミにも喧嘩売ってるんですかい? / こすもぽたりん ( 2000-11-21 19:49 )
サイバラ@ロッキンオン的なのは多分タイトルだけかと……。「その3」までは用意しているけど,その後どうしましょう。黒ネズミや白ウサギ,黄色ネズミにケンカ売る気はないしなぁ。あんな勇気ないっす。 / 烏丸 ( 2000-11-21 15:56 )
あ、間違えた。↓は新企画だっちゅうの〜。 / 三菱銀行東長崎支店の、誰だっけ?? ( 2000-11-21 15:12 )
お、サイバラ@ロッキンオン的雰囲気な新規格ですな。 / こすもぽたりん ( 2000-11-21 15:11 )

2000-11-20 北村薫「日常の謎」について 追捕 『覆面作家の夢の家』 北村 薫 / 角川文庫


【天津風雲の通路ふきとぢよ】

 こすもぽたりん氏に過分なお褒めをいただいた「北村薫『日常の謎』について」の考察ではあるが,「神田マスカメ書店」へのつっこみにも書いた通り,あの一連の書評には実は意図的に触れていない大きな穴があった。それを埋めておきたい。

 大きな穴とは何か。自明である。
 誠実な読み手,書き手がハシカのように一度は虚構と現実の壁に悩むのなら,〈私〉と同じ大学,同じ学部に学んだ現実の作者・北村薫もまた,そのジレンマに悩んだはずだということである。

 すなわち,「円紫師匠と私」シリーズを覆う〈私〉のジレンマについてなど,あの長いスロープに通った北村薫はとうに気がついていたはずだ。
 だから,1作め『空飛ぶ馬』は〈私〉が「聡明な少女」でいられるぎりぎりの大学2年生で始まり,2作め『夜の蝉』では〈私〉がそこに永遠には安住できないことが示唆される。3作め『秋の花』で実際に「そんなにもろいもの」として作中に生き,死に,苦しむのは〈私〉でなく後輩の女子高生達であり,残された理恵をしっかりと抱きとめたのが誰だったかを見れば,作者にとっても〈私〉が重い手応えのない虚構の側にいることなど明らかだったのである。

 しかし,作者は「円紫師匠と私」シリーズを止めることができなかった。〈私〉という,おそらく作者にとって理想の乙女の姿をもうしばしこの世にとどめたいと思ったのか,それとも作者本人の芥川についての未完の卒論に未練があったのか,実際のところはわからない。ただ,4作めの素材として芥川の『六の宮の姫君』論が選ばれたのは,〈私〉を現実の世界に引き寄せるべきかどうか悩む作者の逡巡が感じられ,野次馬にすれば興味深い(いっそその逡巡をそのまま〈私〉に渡してしまえばよかったのだ。就職をあのように安直に決めさせたのはやはり甘すぎる)。
 しかし,円紫が〈私〉をどろどろした現実に引きずり込むという展開があり得ない以上,このシリーズはもうそっと蓋をしておくしかないのだろう。これを揺するには,たとえば円紫と〈私〉が不倫関係に陥るとか,〈私〉か円紫が殺人を犯すとか,そういった極端な手以外にないようにさえ思われる。

 だからこそ『覆面作家』シリーズは書かれたのだ,と考えたい。

 詳細を明かすのは興趣をそぐが,天国的美貌の持ち主で,大邸宅の内においては清楚なお嬢様,一歩外に出れば外弁慶アクションバリバリの新妻千秋こと覆面作家のフクちゃんは,〈私〉と同じ年齢でありながら,この手のシリーズ探偵コメディとしては珍しく少しずつ現実の世界に足を踏み出し,珍しくたった3巻(『覆面作家の夢の家』)できっぱりと幕をおろす。
 第1巻『覆面作家は二人いる』では子供の成長についての重い言葉が語られ,第2巻『覆面作家の愛の歌』の最後では〈私〉ならあり得ない,思いがけない展開が待っている。宮部みゆきや有栖川有栖が解説に「本格原理主義者」と連呼するほどには「謎」の面白くないこのシリーズ,やはり「謎解き」よりは「物語」として書かれる必然性があったと見るのが妥当だろう。

 〈私〉というストーリーの中でがんじがらめになった「陰」があって,そこから生まれた「光」。それが『覆面作家』なのではないか。フクちゃんの説明されない二重人格は,新妻千秋と〈私〉の交錯であると見るのも面白い。また,フクちゃんの強さ,明るさ,幸福は,本来〈私〉が得るはずだったものかもしれないとも思う。

 フクちゃん,そして〈私〉に祝福を。

先頭 表紙

ちなみに烏丸は,水族館好きで,わりあい最近も池袋のサンシャイン水族館に赴くなど,あの暗く,ぬったりした空間は嫌いではないのでございます。 / 烏丸 ( 2000-11-24 11:51 )
天気予報が雨50%だったので,結局,お隣の葛西臨海水族館に行ってきました。そう,ユースケがフクちゃんに投げ飛ばされた水族館です。しかし,誘拐犯がお金を奪取するには最低の場所ですね。クロマグロは回遊できるように水槽が広くて場所特定できないし,そもそも出入り口は幅の狭いエスカレーター一対だけ。フクちゃんが走って逃げられたということは,ほかに警察官,誰一人いなかったのか。 / 烏丸 ( 2000-11-24 11:49 )
家族税の納付でございますか。本来は勤労感謝の日でございますのにねえ。お疲れ様でございます。「みっひー」は連れて行かれないのでしょうか? / 明日はエアコンの掃除をせむ ( 2000-11-23 00:19 )
さっき気がついたのですが,この(©でじこ)のマルCマーク,Netscape Navigator4.04ではマルCにならないんですね。で,どうかというと,(C)と表示されている。わかっちゃいるけどフォントがないのよ,みたいな感じなんですかね。ファニーなやつだぜ。 / 明日は黒ネズミの巣に行くかも 烏丸 ( 2000-11-22 20:20 )
生まれてこの方、一度しか行ったことがないので知らないにょ〜(©でじこ)。エクスピアリとかいう駅前商店街もできたとか。 / こすもぽたりん ( 2000-11-21 19:50 )
ところで,『覆面作家の謎の写真』(だったかな)にあったのですが,TDLにはポリシーとして黒ネズミが同時に一箇所しか現れない,というのは本当でしょうか。だとすると,めったに行かないのに握手できた烏丸はらっきー。 / 烏丸 ( 2000-11-21 16:00 )
いやいや、フクちゃんファンが増えてなによりでございます。 / 岡部不可介 ( 2000-11-21 15:13 )
しかしこの『覆面作家』シリーズを食わず嫌いで片付けていたのは烏丸人生の不覚でありました。感謝感謝。 / 烏丸 ( 2000-11-21 00:52 )
し、しまった。高岡正子さんが大飯喰らい犬嫌いの役立たずオバケの飼主にされてしもうた。 / こすもドロンパ ( 2000-11-20 20:24 )
正ちゃんといわれるとすぐオバQと反応してしまう高度成長期育ち。 / バケラッタ 烏丸 ( 2000-11-20 19:51 )
そして正ちゃんの吟誦に拍手喝采を!! / こすもぽたりん ( 2000-11-20 18:47 )
このところ,ぽたりんさまご推薦の本の落ち穂拾いで糊口をしのぐ毎日。なにか新機軸を開拓せねば……。 / 烏丸 ( 2000-11-20 14:16 )

2000-11-20 400円文庫特別書下ろし作品をチェック! 『puzzle(パズル)』 恩田 陸 / 祥伝社文庫


【中編小説のよしあし】

 「光文社知恵の森文庫」「ハルキ・ホラー文庫」「学研M文庫」「新潮OH!文庫」「日経ビジネス人文庫」など,出版不況を反映してか,このところ文庫本の新規参入やお色直しが目につく。各社の台所を覗いたわけではないが,雑誌や新刊書籍が売れないので,廉価な文庫で勝負をかけざるを得ないといったところだろうか。
 本好きとしては望むところ……ではない。文庫の新刊ラッシュは書下ろし作品の比率が高まり,ハズレをつかまされる可能性が高まる。また,新刊ラッシュは絶版ラッシュと表裏一体で,魅力的な1冊と回り逢う機会を永遠に失うことにもなりかねない。もっとも,本との出会いは一期一会,そんなことを気にしていたら本など読んでいられないのだが。

 さて,今回注目したのは「祥伝社文庫15周年記念特別書下ろし 400円文庫」なる中編小説のラインナップ。全21冊を「鬼」「無人島」といったテーマ競作,「恋愛&心理サスペンス」「SF奇想&ホラー」「ミステリー&ハードボイルド」「歴史&時代小説」と分類して提供するあたりがなかなか中間小説に手馴れた同社らしい。
 まずは雑誌の書評(確か週刊文春)で好評だった『0番目の男』(山之口洋),『puzzle』(恩田陸)から読んでみることにした。
 前者はクローン人間をテーマにしたSFで,内容は……大昔の小松左京の短編を読み返したほうがいいかな。目的が読者を不安にすることなのか感動させることなのか文明について何か指摘することなのか,よくわからないのだ。とりあえず置いて,「無人島」をテーマにしたミステリ作品『puzzle』のほうをもう少し詳しく紹介することにしよう。作者の恩田陸は,最近NHKで少年ドラマシリーズテイストで話題になった『六番目の小夜子』の作者である。

 『puzzle』の舞台はコンクリートの堤防に囲まれた,今は廃墟マニアが訪れるばかりの無人島。名前は変えてあるが,長崎の端島(軍艦島)のことだろう。海底炭坑とともに発展したこの島には,昭和30年代の最盛期にはわずか7ヘクタールの土地にコンクリートによる高層建築が積み重ねられ,約5000人が生活していた(横山博人の映画『純』は電車内で痴漢を働く主人公の精神的荒廃を出身地のこの島に投影して見事だった)。
 その島で,学校の体育館で餓死した死体,高層アパートの屋上に墜落したとしか思えない全身打撲死体,映画館の座席に腰掛けていた感電死体が発見される。3人とも身元を示す持ち物はなく,遺品は「さまよえるオランダ人」「スタンリー・キューブリックの新作発表」「元号制定」「料理のレシピ」「地形図の作られ方」といった,脈絡のないコピーだけ。島を訪れた2人の検事が暴く真相とは……。

 一見バラバラな謎だが,ジグソーパズルのように最後には全体像が明らかになる。しかし……逆に言えば,ジグソーパズルと同じで,なぜこのようにバラバラにしなければならなかったかとなるとよくわからない。
 よくできたパズルだが,もう少しなんとかなったのではと思われ,それが惜しい。

 もう1点抑えておきたいのは,『puzzle』は縦35文字×横13行だということ。手元の文庫本何冊かを調べてみたところ,44文字×18行,40文字×17行,なかには43文字×20行というものもあった。『puzzle』を1ページあたり400字詰め原稿用紙に換算すると1.14枚。詰まった文庫本なら2.15枚だから,文字量は半分強ということになる。『puzzle』は150ページ程度だが,実際の読み応えはずっと薄いので,400円文庫を購入する場合はそのあたりも要注意だ。つまり,400円は決して安いわけではないのである。

先頭 表紙

をを,今表紙を見ると,10001ヒット。ご愛顧感謝なのであります。 / 烏丸 ( 2000-11-20 02:18 )

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