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烏丸の「くるくる回転図書館 駅前店」

 
今後、新しい私評は、
  烏丸の「くるくる回転図書館 公園通り分館」
にてアップすることにしました。

ひまじんネットには大変お世話になりましたし、
楽しませていただきました。
その機能も昨今のブログに劣るとは思わないのですが、
残念なことに新しい書き込みがなされると、
古い書き込みのURLが少しずつずれていってしまいます。
最近も、せっかく見知らぬ方がコミック評にリンクを張っていただいたのに、
しばらくしてそれがずれてしまうということが起こってしまいました。

こちらはこのまま置いておきます。
よろしかったら新しいブログでまたお会いしましょう。
 

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2000-10-29 [雑談] マキシシングルとは?
2000-10-29 [補遺] 『日本の危機』(櫻井よしこ)にみる人権派の功罪
2000-10-28 本の中の強い女,弱い女 その四 『日本の危機』 櫻井よしこ / 新潮文庫
2000-10-27 本の中の強い女,弱い女 その三 『見守ってやって下さい』 内田春菊 / 河出書房新社(河出文庫)
2000-10-27 [雑談] つっこみアフターフォロー(含,ちょっと怖い話)
2000-10-26 本の中の強い女,弱い女 その二 『一絃の琴』宮尾登美子 / 講談社
2000-10-26 新シリーズ 本の中の強い女,弱い女 その一 『たったひとつの冴えたやりかた』 ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア / ハヤカワ文庫
2000-10-25 今日はビゼーの誕生日 『風車小屋だより』 ドーデ,大久保和郎 訳 / 旺文社文庫
2000-10-24 科学と文学について考える 素材その十(最終回) 『すべてがFになる』 森 博嗣 / 講談社
2000-10-24 科学と文学について考える 素材その九 『地球環』 堀 晃 / 角川春樹事務所(ハルキ文庫)


2000-10-29 [雑談] マキシシングルとは?

 なんだか重い本が続いています(このあとも!)。ご覧になるみなさまも鬱陶しいことでしょうが,実は読んで書くほうもしんどいのです。おまけに外は雨。そこで,ちょっと気分転換に音楽,というか音楽CDの話。

 実力派ファンク,バラードからビジュアル,フォーク系まで,なかなかバラエティに富んでにぎやかな昨今のJ-POP周辺ですが(烏丸的には70年代ロックを引き継いだような音の椎名林檎でしょうか。でも,あれは四六時中繰り返して聞くものではないなぁ),新譜紹介やヒットチャートでときどき目にする「マキシシングル」とはいったい何なのでしょう?

 メディア的には8cmシングルに収まらない長さのものを12cmで発売するもの,でよいと思うのですが,それだと「ミニアルバム」との違いがわかりません。
 かつて,ニューオーダーとかフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドなど,ニューウェーブ系のバンドがどかどかリミックスバージョンを12インチシングルで出していた,そういう扱いのものだというのはわかるんですが,「マキシシングル」と「ミニアルバム」にちゃんとした区別があるのかどうか。

 気になるのでいろいろあたってみました。たまたま目にした小室哲哉によるインタビューでは,彼もマキシシングルの意味を知らないことがわかりました。「マキシシングルっていうのは,デカいようなシングルですか?」なんて言ってる。

 ……シングルとアルバムの違いは,オリコンや日本レコード協会の規定によるものらしいのですね。

 オリコンでは,データをまとめる際に,「リミックスなどを除いたオリジナル曲の数が4曲までのもの」をシングル,5曲以上だとアルバムとしているのだそうです。だから,オリジナルな曲が3,4曲入っていると,お徳でしょ,という意味合いで「マキシシングル」といって売り出す。また,その場合はシングルヒットチャートの対象となる。
 一方,日本レコード協会では3曲以内で1,600円以下のものを「シングル」と呼び,それ以外をアルバムとしているらしいのですね。不統一な話ではありますが,実際のところ,レコード会社はオリコンの規定に従って呼んでいる例が多いもようです。

 ところで,洋楽で,たとえばマイク・オールドフィールドの古いアルバムなんかは,アルバム全体で1曲(がPart1と2に分かれている)なんて例もありました。これはシングルヒットチャートにあがったのでしょうか。また,最近は「エンハンスドマキシシングル」なんて言葉まで……まったくもう,何が何やら。

先頭 表紙

よーし,では「SDYGSREマキシシングル」はオリジナル曲もたくさん入っていることだし,「アルバム」と呼ぶことにしよう……もとの木阿弥。 / 烏丸 ( 2000-10-30 20:46 )
略してSDYGSREマキシングル・・これじゃ略の役を果たしていないか。。 / エル ( 2000-10-30 18:57 )
エルさま,目標はもちろん「スーパーデリシャス遊星ゴールデンスペシャルリザーブゴージャスエンハンスドマキシングル」ですね。 / 烏丸 ( 2000-10-30 18:03 )
そのうち「スーパーエンハンスドマキシングル」なんてモノが出来たりして。。(笑) / エル ( 2000-10-29 23:58 )

2000-10-29 [補遺] 『日本の危機』(櫻井よしこ)にみる人権派の功罪

 書評(とは言えんなあ)をアップした後,読み返してみても,まったくのところ総括的な印象しか書けておらず,本書のリアルで厳しい姿勢はとても伝わりそうもない。しかし,本書の説得力は,執拗な取材(あるいは取材拒否を受けたいきさつ)と数字の裏付けがそれを支えているのであって,すなわち本を読まないとその手応えは伝わらないということになってしまう。

 ともかく,次のような方は本書を手に取り,一読することをお奨めしたい。
一,税金や年金資金の使われ方に疑問を感じている方。
  (逆にこれまで一度も疑問を感じたことのない方。)
ニ,郵政の仕事や農協についてこれまでとくに気にしたことのない方。
三,21世紀に向けて,子供の教育に不安を感じる方。

 ここでは三つめ,子供の教育について,本書からいくつか話題をピックアップしてみよう。

 ちょっと大げさな言い方だが,現在の日本では,「人権」という名の無敵モードの怪物が教育の現場をのし歩いている。弱者(少年,非差別者など)の人権を憂慮するあまり,他者の権利まで蝕む例が少なくない。たとえば,殺人を犯した少年の人権を守らんと裁判に人権派の弁護士が何十人も集い,加害者の名前や写真を公にすることに過剰反応するあまり,結果として被害者の人権が無視される。

 極端に人権教育に突き進んだある県では,学校教育全体が「人権」という切り口で仕切られ,過剰に平等や権利を押しつける。その柱は「差別・選別をしない」ことにあり,軍隊を思わせる「起立・礼」「前へならえ・気をつけ・休め」はなし,差別になるからと運動会のリレーも行わない。学力についても結果としての平等を守るため,どんどん低い水準に足並みそろえ,進路指導でセンター試験を受けるなと言われることもある。さりとて県内外の私学や国公立付属校を志望すると,教師にどなられるだけでなく,生徒仲間でも苛められる。

 また,行きすぎた少年法の遵守,体罰への拒絶反応は,たとえばこんな事件を呼ぶ。
 ある高層マンションのおどり場を中学生がたまり場にし,喫煙,放尿のし放題。付近の住民が学校に通報し,教師4名が駆けつけたところ,過去にも喫煙と万引きの経歴があった野球部の部員がいたことから野球部顧問の教師が彼を拳で一発殴る。その場は当人,親が謝罪するものちに問題化し,教師は異動させられる。少年は罪を問われるどころか教師を「飛ばした」とヒーロー扱いされ,卒業していく。
 つまり,社会では許されない行為が学校では許され,結果的に無法地帯となっている。しかも,その責務は親や社会ではなく,常に教師や校長が負う。
 多くの中学校にはすでに教師が生徒を見下ろす「教壇」はなく,授業中の私語を注意する力が教師にはない。注意すると逆に「子供には授業を聞く権利がある」と抗議されるのだ。授業を聞く権利を放棄し,さらに他の生徒の権利を侵害していることは放任されるのである。

 今の学校では,たとえば授業中に生徒を指名し,当人が答えられないと,親から電話で「わからない問題で当てないでくれ」と抗議される。学級通信に「誰それは○○でよく頑張った」と書くと,「載らない子の気持ちを考えてやめてほしい」と注意される。その場で反論しても,すぐに教育委員会,さらに議会などに通報されて大騒ぎになるので,いずれ抵抗は無駄である。

 しかし……そんな子供たちも,いつか外の砂漠に出て,自分で水を探さなければならないと思うのだが。それともこの国では,子供が死ぬまで親が何もかも面倒みてやれるとでもいうのだろうか?

先頭 表紙

ちなみに『日本の危機』について言えば,「ここがこんなに危機!」という部分はかなり納得ですが,たとえば税制などについて「こうすればよいのでは」の部分はそれほど力は感じませんでした。そう簡単に対策が出るなら国として苦労はないよなー,という気がします。 / 烏丸 ( 2000-10-30 01:53 )
peachさま,櫻井よしこ氏の説得力は非常に強いもので,(男だから,女だからということとは関係なく)確かに烏丸も鵜呑みにしてしまいそうなところは多々あります。ですが,1つ1つの数字や現象についてちゃんと自分の手で確認していないことを鵜呑みにするのは,それはまた別の意味で問題です。「わーい,全部信じちゃう」というのは,必ずしも櫻井よしこ氏が喜ぶ読み方ではないでしょう。 / 烏丸 ( 2000-10-30 01:52 )
エルさま,お見事です。ちなみに,実際にそれに近い若者も,知っています。 / 烏丸 ( 2000-10-30 01:46 )
成長して自分で水を探せない大人になった時は「小さい時に大人がきちんと教えてくれなかった」又は「私はアダルトチルドレン」という免罪符をかざすのですね。 / エル ( 2000-10-29 23:54 )
烏丸様、櫻井さんの本に書いて有る事を私は殆ど鵜呑みにしてしまう位、信頼している方なのですが、男性から見て読まれてその内容の信頼性度は如何でしょうか?櫻井さん自身にもお会いして、お声も掛けて頂いた事が有るのですが、個人的にも素敵な方なんですよぉ〜。 / ふぁん@peach ( 2000-10-29 19:58 )
政治,経済の問題も心配ですが,教育はそれ以上に深刻です。「今どきの若いものは」というのはギリシア哲学の時代にも言われていた永遠のテーマかもしれませんが,それにしても妙な教育,教科書がはびこっているようで,次代が心配です。 / 烏丸 ( 2000-10-29 14:11 )
烏丸様再びお邪魔致しますが、この本には現在の日本のチョッとについて詳しく書かれている様子なのですね。(気になる所も有りそう)残念ながらまだ目にした事が有りませんが、読んでみたいです! / peach ( 2000-10-29 02:42 )

2000-10-28 本の中の強い女,弱い女 その四 『日本の危機』 櫻井よしこ / 新潮文庫


【豊かな隷属国・ニッポン】

 1995年のオウム・地下鉄サリン事件で最も活躍した女性といえば,坂本弁護士一家拉致事件以来ずっと,生命の危険をおしてオウム真理教を追求し続けたジャーナリスト,江川紹子の名を挙げて異論のないところだろう。
 そしてもう1人強く印象に残ったのが,当時日本テレビで報道キャスターを担当していた櫻井よしこだった。
 地下鉄サリン事件当夜,正体不明の犯人たちの足取りを最も正確に推測し,さらに霞ヶ関を狙った犯行の目的を断言したのは同局の「きょうの出来事」だった。さらに,その後しばらく,信者の青山吉伸元弁護士が報道番組の取材に応じたのだが,身勝手かつ非論理的な応酬に全国の視聴者がいらだつ中,最も常識的,最も効果的に質問を浴びせたのもまた彼女だったように思う。オウム真理教側がその後窓口をロシアから帰国した上祐史浩外報部長(当時)に切り替えたのは,その番組で青山が絶句したからでは,と一部のウォッチャーの間では有名だった。

 櫻井よしこはベトナム生まれ,ハワイ州立大学歴史学部卒。クリスチャン・サイエンス・モニター紙東京支局員,日本テレビニュースキャスターを経て,現在フリー・ジャーナリスト。彼女が週刊新潮に連載したレポートをまとめたのが本書『日本の危機』だ。

 目次を見てみよう。誰も止められない国民医療費の巨大化/年金資金を食い潰す官僚の無責任/国民の知らない地方自治体「大借金」の惨状/族議員に壟断された郵政民営化の潰滅/税制の歪みが日本人を不幸にしている/教育荒廃の元凶は親と日教組にあり/農協は農民の診方か敵か/国民の声を聞かない官僚の法律づくり/スピード裁判なぜできない/政治への無関心があなたの利益を損なう……。
 ほか,大手メディアの罪悪,人権派の弊害,少子化と母性喪失問題,女性問題,対中国外交の弱腰など,21にわたる問題が提起され,その口調は辛口と言う言葉では物足りないほど苛烈で厳しい。しかし,厳しく指摘されるだけのことをこの国はしてきており,その柱はさらに傾く一方なのである。

 カエルと水を鍋に入れ少しずつ温度をあげていくと,危機に気がついたときにはカエルはもう動けず死んでいくという話をご存知だろうか。この国はすでにかなり煮立ちつつある鍋の中で,安閑と泰平を満喫しているかのようだ。その無知を傲慢を,櫻井は厳しく叩く。責められるのは保身と利権に走る官僚,メディア,政治家,法人だけではない。知らぬまま放任する国民もまた責任を放棄していることでは同様である。

「子供じみているうえに卑怯である。」(族議員に壟断された郵政民営化の潰滅)
「少なくとも自らの誤りを認め,より広い視点でとらえた全体像を示してみよ。」(朝日新聞「人権報道」に疑義あり)
など,本書における追究の口調は厳しく,著者に対する各省庁,メディアからの反論も厳しいと聞く。
 もちろん,すべて櫻井側が正しいと考えるのは無理だろう。いくらスタッフに恵まれても,一個の人間がこれだけの領域を網羅し,すべてにおいて全体像と各論と改善案を正確に把握するのは困難に違いない。しかし,疑惑の数字,つじつまの合わない事実がこの国にあふれていることは事実であり,これに応えるのは省庁,メディアのみならず全国民の義務だろう。
 そして国民が応えるべき相手は櫻井ではない。国民である。

先頭 表紙

それはなぜかと考えれば,おそらく,テレビや日常生活で言葉が消費,浪費されず,いったん削られて,力のあるものだけがその人に残るからか,なんて思います。だから,ゴーマン美智子さんのように文法的修辞的に美しいケースだけでなく,もの売りが聞きかじりで覚えた「センエン,ヤスイヨ」の類いもその音と意味のタイトな切実さにおいて美しいのです。 / 烏丸 ( 2000-10-30 11:52 )
櫻井よしこさんの日本語を聞いていると,海外で生まれ育った方や,永年住んでいる方の日本語が,一種純粋培養というか,非常に美しいものであることを思います。女子マラソン初期の名選手,ゴーマン美智子さんのテレビ解説は,ビデオに録らなかったのを悔やむくらい美しい言葉遣いでした。 / 烏丸 ( 2000-10-30 11:49 )
烏丸様の仰る通りです!柔らかいけれど、血液製剤の問題の時にも阿部英元帝京大副学長との遣り取りも素晴らしかったですよね。。。 / 憧れてしまう@peach ( 2000-10-29 20:02 )
peachさま,いらっしゃいませ。櫻井よしこさんは,「ですわ」口調で相手をぐいぐい締め上げていきます。彼女のように攻めの厳しいジャーナリストがたくさんいればよいのに,と思います。 / 烏丸 ( 2000-10-29 14:09 )
烏丸様、お邪魔致します。櫻井よしこさんの今日の出来事が違う方になってしまってからと言うもの、出版された本は殆ど読んでいると想います?彼女の正確で的確な辛口であったり、優しい表現に憧れています。。。今読んでいるのは「論戦1999」なのですが、頷きながら、、、です。個人的にも大好きな方です! / 憧れの才女@peach ( 2000-10-29 02:37 )
このカエルの話を48時間以内に読んだ記憶があるのですが、途中に酒が入っているので、どの本だか思いだせず…かなり健忘症が進んでいる模様で、多少薄ら寒い心持ちでやんす。 / こすもぽたりん ( 2000-10-29 00:43 )
櫻井おねーさま萌えっ,みたいな文章書きたかったのに,何度もページめくってるうちに影響受けちゃって,これじゃあへたくそでうるさいだけの街宣カーみたい。 / 烏丸 ( 2000-10-28 22:06 )

2000-10-27 本の中の強い女,弱い女 その三 『見守ってやって下さい』 内田春菊 / 河出書房新社(河出文庫)


【セミヌードな心】

 内田春菊,最初のエッセイ集です。
 数ページごとにイラストが載っていることもあって,通勤の片道で読めてしまいます。内容も,日常生活や仕事のあれこれを背伸びせずにつづったもので,他愛ないといえば他愛ない……。

 問題は,引っ込み思案な少女が書いたようで,そのくせ肌の下の血管が透けて見えてしまう,この文体です。さらけ出しているはずないのに,かなりすっぴん。媚びてるふうでないのに,若さが悩ましい。
 少し,文体というものについて考えてしまいました。

 かつて,1970年代後半から1980年ごろにかけて,若手女流作家が続けて現れ,ちょっとしたブームになったことがあります。
  『海を感じる時』(中沢けい)
  『もう頬づえはつかない』(見延典子)
  『葬儀の日』(松浦理英子)
  『ダイアモンドは傷つかない』(三石由起子)
  『1980アイコ十六歳』(堀田あけみ) などなど

 その当時感じたことですが……女性の文体には,勝てない。

 表現の力において,本来勝ち負けに性別は関係ないはず。にもかかわらず厳然と違いはあって,女性が女性であることを剥き出しにしたとき,男は絶対に勝てないのです。
 これは何故だろう,ときどき考えるのですが,そもそも論理的な命題ではないのでいくら考えても正解が出てくるはずもありません。

 ただ,『見守ってやって下さい』を読んで,電車の中で読むにはちょっとつらいえっちなイラストや,ひらがなの多い,シャワーのお湯をはじくような文体にふれて,ちょっと気がついたことがあります。
 これ,セミヌードだ。
 若い女の子がセミヌードになったら,男は勝てない。オールヌードなら,勝負にもちこめるんです。こちらも脱ぐか,逃げるかすればよい。でも,相手がセミヌードだと,逃げも脱ぐもかなわず,おじさんはもじもじと座って,白旗,振るしかないのです。

 もうひとつわからないのは,文体はナチュラルとして,どうして若い女性である作者が,男が動揺するようなえっちなイラストを描けてしまうのかということです。若い男が妄想を紙に写しても,普通はもっとヘタクソ。
 なぜ彼女は,男たちの妄想,つまりこの世にいない架空の女の子を正確にトレースできてしまうのでしょう。男性体験が豊富とか,そういった下世話な理由づけでは無理です。木の葉や枝にそっくりな虫が,自分の姿を外から見らないはずなのにそういう姿になった,それと同じくらい説明がつかないことなのです。

 けれど,内田春菊は,そのうち自分をカミングアウトしてしまい,『私たちは繁殖している』や『ファザーファッカー』の仕事でオールヌードになってしまいました。評価は得ているようだけれど,まぶたの線を最後まできちんと描いてしまう内田春菊,それはもう僕のマターではありません。

先頭 表紙

おお、失礼。いつの時代の本か知らなくて。無知ですみません。 / ゜))))彡 ( 2000-10-28 21:46 )
ゝ゜))))彡さん,こんにちは。このエッセイが書かれたのは16,7年くらい前だから,若い女の子,でかまわないんじゃないでしょうか? てゆか,今だって十分若いといってよいと思いますが。 / 烏丸 ( 2000-10-28 12:24 )
激動の女性、春菊。α、β、γの次の子供はシータか・・。 / あやや ( 2000-10-28 08:17 )
初めまして。内田春菊さん……若い女の子じゃないですよね……比喩????? / ゝ゜))))彡 ( 2000-10-28 02:12 )
たら子母さま,打ち明けてしまえば,実はこの烏丸,女子でなければ遺産は相続しないという祖父の目をごまかすために十歳まで少女として……ウソです,そんなマンガのようなことは何もなく,遺産にも縁はありません。単に子供のころ近所にマーガレットやフレンドの好きな従姉が住んでいて,いつも読ませてもらっているうちに当たり前になってしまっただけです。 / 烏丸 ( 2000-10-28 01:02 )
烏丸様、打ち明けてしまえば、私最初は烏丸様は女性であると思い込んでました。だって少女漫画にあんなにお詳しいんですもの。 / たら子母 ( 2000-10-28 00:32 )
で,本文中のイラストをスキャンして,とも思ったのだけれど,使用目的が「引用」の範疇をはずれるような気がして……。 / 烏丸 ( 2000-10-27 19:16 )
それにしても,春菊の本とは思えないこの表紙。装丁者がタズラさまのファンだったのか。2輪。 / 烏丸 ( 2000-10-27 19:13 )

2000-10-27 [雑談] つっこみアフターフォロー(含,ちょっと怖い話)

 ここしばらくの「くるくる」内のつっこみのアフターフォローです。

 まず,偕成社の「伝記世界の作曲家」シリーズ。
 昨日,帰りにちょっと大きめの書店に寄ることができたので見てきました。本文の文字も大きくて,そうですね,本の造りとしては小学校高学年向きといった感じなんですが……ちゃんとエルトン・ジョンの伝記には同性愛やドラッグについて普通の音楽雑誌の記事程度にはちゃんと書いてありました。立ち読みで数冊ざざざっと眺めただけですので,チャイコフスキーの場合,同性愛志向(嗜好か?)について書かれているかどうかは確認できませんでしたが,心の通わぬかなりとんでもない結婚だったことは十分うかがわせるなまぐさい内容になっていました。
 写真などもそれなりに豊富で,好きなミュージシャンの資料として持っていて悪い本ではないとは思うのですが,なぜにそれをわざわざ子供向け,それも明かに小学生向けとして販売しているのか,偕成社の本意は謎です。
 もっとも,たとえば烏丸がアウシュビッツの強制収容所について知ったのは小学校のときで,それは子供向けの本ながら山のような髪の毛や裸で追いやられる女性の写真,石鹸の話などが載っていました。「小学生だから無難にこのくらい」と考えることのほうが「子供だまし」なのかもしれません。

 続いて,岐阜県富加町,町営住宅の怪現象の件,もうあちこちのテレビ番組などでも取り上げられ,新鮮味はなくなってしまいましたが,その後もれ聞いた話では,入居時に4階建ての1階にお年寄りが振り分けられ,それで住民と町役場の間でいざこざがあった,という話です。それでなんとなくこの町営住宅に不満を抱えていた上のほうの階の住民が,建材の伸縮による音(昼と夜の温度差や乾燥の具合で家屋が鳴るのはごく普通のこと)に過剰反応し,ストレスから「何かいる!?」という気持ちが高まった,ということかな,と思われます。……もし霊の仕業でないなら。

 その話題の際にちょっと触れた,妹が嫁いだ家の近所の話。用事で電話をかけたので,ついでにもう少し詳しく聞いてみました。
 その場所というのは,小高い丘の緑の中に,ぽつんぽつんと一戸建ての家が建っているという具合なんですが,そこが「出る」と言われるのも当然,その丘は古いお墓だったのだそうです。それをバブルの盛りのころに,不動産業者が十分な御祓いもしないまま,がががっと荒っぽく造成してしまったというのですね(映画「ポルターガイスト」のまんま!)。しかも,生木が生えているのをきちんと掘り起こしたりしなかったため,建てつけも非常に悪い。おまけに,そういう安造りのわりに,なにしろバブルの盛りなので,非常に高い価格帯で売られ,無理をして買った若い夫婦など,文字通り夜逃げした家が何軒もあり,夜ともなると陰陰滅滅として,余計にいけない。今でもいくつかの家で「出る」そうです。
 妹夫婦はその土地も購入の候補にしていたそうで,今はほっと胸をなでおろしているとのことでした。
 実は,その近辺のほかの,いわゆる「心霊スポット」についても聞いたのですが,それはまたいずれ。

先頭 表紙

しかも階級書き間違えるしー。とほほ。 / 烏丸 ( 2000-10-28 01:55 )
烏丸Zは真面目で心優しいのですな。烏丸Gは… / こすも・F・ぽたりん ( 2000-10-27 19:26 )
おまけに多重人格で,烏丸Aが書いた怖い話を読んで,烏丸Bは怖くてトイレにも行けないのであります。 / 一緒についていく 烏丸C ( 2000-10-27 17:50 )
ところで烏丸様はもしやサディズムでマゾヒズムで露出狂とか・・・? / エル ( 2000-10-27 16:43 )
おおお、烏丸様、詳しい解説ありがとうございます!!これなら新たに日記をかかれた方が良かったのでは。。突っ込みにしておくのは勿体無い。しかし芸術家っていうのは永遠の少年少女で精細かつ無頓着じゃなきゃやっていけない職業でありますね。。確かに一般人でカミングアウトする人まれですね。一見,同性愛先進国のように見える米国も、ちょっと田舎街いけば同性愛者は人間扱いされなかったりしますし。それが、こそに「芸術」の文字が引っ付くと途端に才能へ早変わり。 / エル ( 2000-10-27 16:43 )
と,あだこだ書きましたが,烏丸,同性愛のシュミはまったくないので実はよくわかっておりません(性倒錯のほうは……このうちいくつかは,今どき倒錯ですらないやん)。きっと芸術家ではないんでしょう。 / 本フェチ? 烏丸 ( 2000-10-27 16:05 )
また,芸術家は少年少女のまま常人よりゆっくりと年をとる,という考えがありますから,60歳でやっとフロイトの言う口唇期を抜けて肛○期,ということもあるでしょう(じゃあ,男○期になったらどうなっちゃうの? とも思いますが,その前に寿命で死んでしまうのでしょう)。 / 本文より疲れた…… 烏丸 ( 2000-10-27 16:01 )
そもそも芸術家が作品のインスピレーションを得ようとする行為はある面非常に受動的で,性的には男性原理より女性的姿勢(今どきは逆かも(笑))になりやすいかもしれません。また,芸術的行為は既成概念に対するアンチテーゼをつむぐ行為でもあるわけで,その意味でサディズム・マゾヒズム・露出狂・窃視・肛○性交・フェティシズムなどの性倒錯に走ることは理にかないます。 / 烏丸 ( 2000-10-27 16:00 )
いくつか理由が考えられますが,音楽家に限らず芸術家は全般に私生活に無頓着で,また周囲もその私生活を知ろうとする結果,性癖などがオープンに話題になりやすい。しかもオープンになっても,普通のサラリーマンやアイドルタレントと違って,デメリットとなりにくい(隠す必要があまりない)。……つまり,実はそこらの普通の人にも同性愛者は多いのに,把握できてないだけかもしれません。 / 烏丸 ( 2000-10-27 15:58 )
音楽家の人達は同性愛嗜好(なんとも曖昧な書き方・・)の方が多いみたいですね。私も昔読んだ本に「○○○は同性愛者というより、肛○性交嗜好者だった」と書かれていてぶっ飛んだおぼえがあります。クラシックでは作曲家だけじゃなく指揮者も多いですね。 / エル ( 2000-10-27 14:17 )
「スティング」は昨日の本屋にはありませんでしたが,このシリーズ,子供向けかどうかに関係なく1人のミュージシャンを体系づけて紹介する本として読むとそれなりに面白そうです。「メル・コリンズ」とか「アラン・ホールズワース」とか,全貌のよくわからん人でこういうのがあればよいのですが……。 / 烏丸 ( 2000-10-27 11:54 )
偕成社の伝記、近所の図書館に全巻揃っていたので、とりあえず「スティング」を借りました。彼がセックス・ピストルズにも影響も受けたこと、脚注にもパンクについて説明がありました。おもしろいので別の巻も借りてみようかと。 / けろりん ( 2000-10-27 02:27 )

2000-10-26 本の中の強い女,弱い女 その二 『一絃の琴』宮尾登美子 / 講談社


【無明の夢やさめぬらむ】

 『一絃の琴』は,高知出身の作家宮尾登美子が,地元に伝わる一絃琴を題材に幕末から昭和にかけて女二代の人生を克明に描き上げた小説。上梓まで17年,書き直すこと5回と言うだけあって,全編,か細くも凛とした絃の音漲る稀有な作品。作者は本作で直木賞受賞。

 一絃琴は須磨琴とも呼ばれ,在原行平(業平の兄)が須磨の浦に流された折,浜に流れ着いた舟板に冠の緒を張って葦の端を指に巻いてかき鳴らしたのが端緒とされる。ただし須磨琴は合奏が主で,土佐に伝わる一絃琴とは奏法が異なる。
 その後,一絃琴は京都をはじめ各地で盛んに演奏されるが,やがて衰退し,明治になって伊予上野村の千足神社の祠官の子に生まれ,正親町中納言家の一絃琴取締役を務めた真鍋豊平が一念発起し寂びれた一絃琴再興のため全国を行脚。郷士門田宇平が京から戻って土佐に伝えた。

 『一絃の琴』の主人公は,この豊平門下の門田宇平に学んだ沢村苗。士族の娘に生まれた苗は,年に一度沢村家を訪ねる旅絵師に琴を与えられ,のちに門田宇平に習い,さらに宇平門下の松島勇伯を師と仰ぐ。身勝手の許されない時代と女という性の故,二十有余年琴から離れるも,のちに土佐の名士市橋公一郎の後妻として市橋塾を開き,最盛期四百人とも言われる子女を集めて一絃琴を教え広める。しかし,公一郎の死とともに市橋塾は閉ざされ,苗は養女稲子の育成に没頭する。
 後半は,有り余る美貌と才能,家柄を誇り,市橋塾を継ぐ者と目された岳田蘭子が,その驕慢さゆえ苗に否定され,長い年月の果てに高知へ戻り,一絃琴を再興して人間国宝に指定され,死ぬまでを描く。

 宮尾登美子は実在した一絃琴の担い手として苗と蘭子の二人をねばり強く描き上げる。どこまでも堪える苗(吽)と華やぐ蘭子(阿),この二人の対照的な性格,一絃琴への姿勢,強さ。幕末,明治という時代の中で圧殺され圧殺されてもなお息吹く苗の個,それに対し,あらゆるものを手にしながらただ一度の敗北に狂おしく身悶えする蘭子。作者の筆は底意地が悪いほどに二人の人生を踏み躙り,斬り刻み,ただ一絃の響きのみが蕭然と漂う。
 行平,豊平,宇平,有伯,旅の絵師らに綿々と伝わる琴の音の寂寥感。それを代表するものとして,架空の登場人物,仲崎雅美と共に時の向こうに消えてしまった有伯直伝の「漁火」が心を打つ……。もっとも「漁火」は存外に華やかな曲だというが。

 『一絃の琴』は最近NHKで苗(田中美里),蘭子(吹石一恵)ほかでドラマ化された。ドラマでは,有伯の死やその娘の扱い,苗の婚家など,あれこれ原作と異なるところも少なくない。
 また,一絃琴はこの烏丸とも因縁浅からず,この正月に亡くなった家人の父親は真鍋豊平の生家と同じ伊予上野にあって一絃琴の制作で知られ,家人もまた母親より一絃琴を学んでときに廬管を両の指に嵌めて弦をかき鳴らす。琴は『一絃の琴』冒頭で旅の絵師亀岡がこしらえた通り素朴な木の造り,今週末には真鍋豊平没後100年を記念する演奏会が催される。

 伊予上野に往く風眇々,返す風蕭々。

先頭 表紙

わーははは,烏丸の書くものをマに受けてはいけません。演出,演出。で,本物の家人のキャラといえば……〓仝★!(#◇▲%&……回線ガ切断サレマシタ……ツーツーツー……。 / 烏丸 ( 2000-10-27 11:57 )
……かくも典雅な麗人とご一緒でいらっしゃるとは。返す返すも、過日の暴言、平にご容赦下さいまし。 / 恥じ入るばかりの蛮人 ( 2000-10-27 06:26 )
エルさま,ストーリーはかなり変わっていました。苗の師匠の有伯は女がらみで殺傷沙汰,しかも苗の弟子の仲崎雅美は有伯の娘という扱い。さらに後半,蘭子は「塾の後継ぎにしてもらえない」役だけという扱いで,物語は苗が塾をやめ,一人で思うさま琴を弾く,というところで終わってしまうのです。でも,テレビドラマ化するとしたら,妥当なセンだったでしょうか。 / 烏丸 ( 2000-10-26 21:00 )
田中美里で今思い出しました、NHKのドラマ。確か、たまたま途中一回だけ見て「なんやこれ!」と言ってその後見てなかったのでした。うーん全部見とけば良かったです。原作との違いを突っ込むチャンスを逃してしまいました。 / エル ( 2000-10-26 19:09 )
この本読んだ後でNHKのドラマ見ると,いかに時代劇にウソが多いか考えさせられてしまいました。少なくとも,嫁に出たものが連れもなしにすたすた実家に帰ったり,使用人が座敷で主人に反論するなんて,あるはずない。逆にいえばそういう時代に嫁いだ身でなんらかの実績をのちの世に残した,というのは相当凄いことに違いありません。 / 烏丸 ( 2000-10-26 15:55 )
動乱の幕末から昭和を生き抜いた女性の人生を軌跡を見ると、ぐうたらな身が引き締まる思いです。もう一度この本読み返してみたいです。 / エル ( 2000-10-26 13:31 )

2000-10-26 新シリーズ 本の中の強い女,弱い女 その一 『たったひとつの冴えたやりかた』 ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア / ハヤカワ文庫


【太陽のまっただなかに】

 企画段階できちんとベスト10を決めておられるケロロ軍曹と違って,ディスプレイに向かって書き始めた今にいたってもメモ1枚用意していないこの烏丸。しかも新シリーズのテーマたるや本の中の女たち!! そんな人生の大テーマなのに,手ぶらで大丈夫か!?
 答え:確率的に登場人物の半分は女性なんだから,なんとかなるでしょ。

 では,はじまりはじまり……。


 銀色の髪,フランス人形のように愛らしい姿で小象に乗る,写真の少女の名はアリス。
 幼ないころ,高名な探検家の父と同じく著名な作家である母に連れられ,世界中を旅行する。飛行機や銃に荒らされる前のアフリカで野生のマウンテン・ゴリラを実際に見た最初の白人女性となり,カルカッタでは飢えた人々の間を歩き,まだ平和だったベトナムの森で子馬に乗って駆け回る。知的でエレガントで底なしにタフな母親から自立する闘いに疲れて12歳で自殺を試み,10代の末には自分を社交界にデビューさせるために企てられたニューヨークでのパーティと英国国王謁見の予定を含む世界一周旅行を台無しにするためだけに3日前に出会った男の子と駆け落ちして結婚,すぐに離婚。
 20代前半,グラフィック・アーティストとして雑誌に寄稿する一方,アナーキストと称して左翼運動に没頭。ヨーロッパで戦線が拡大した1942年には米陸軍に入隊,女性として初めて空軍情報学校を卒業,写真解析士官としてペンタゴンで働く。1945年,ドイツにわたり,のちにアポロ計画にかかわる有能な科学者たちを合衆国に連れ帰るプロジェクトに参加。そのプロジェクトの立案者で指揮官だったハンティントン・D・シェルドン大佐と結婚。CIAの発足とともに夫婦で冷戦時代のスパイ活動に深く巻き込まれる。
 いったん辞職願いを書いて夫のもとから姿をくらますが,40代後半になって基礎科学を学びたいと大学に入り直し,実験心理学に挑戦。大学を最優秀の成績で卒業,博士号を取得,心理学の講師となる。健康上の理由で講師を辞してのち,1968年,男名で作家デビュー。実験的,野心的,サイケデリックかつ骨太い作風の短編,長編で主な賞をたて続けに受賞。
 1977年,実は女であったことが暴露され,同時にそれまでの人生を明らかにして世界中のファンを驚愕させる。
 1987年,弁護士に後事を託す電話をかけ,病気で寝たきりとなった夫を射殺,同じベッドの上で自らの頭を打ちぬく。

 ……以上は,連作短編集『たったひとつの冴えたやりかた』収録作品のあらすじではなく,その作者,J・ティプトリー・ジュニア(アリス・シェルドン夫人)その人の生涯の概略である。

 『たったひとつの冴えたやりかた』は,作者の最後の作品集で,従来の実験的な作風とは異なり,穏やかでノスタルジーあふれる連作スペース・オペラとなっている。
 大宇宙にあこがれる少女コーティー・キャスが,16歳の誕生祝いに両親から贈られたスペース・クーペをこっそり遠距離用に改造して,遠い星々をめざす冒険の旅に出る。そして彼女は偶然,希望通り未知の生物と接近遭遇する。しかし……。

 失明し,アルツハイマーに苦しむ老いた夫と,心臓疾患の悪化した自分。かねてから夫婦の間に自殺の取り決めがあったとされる彼女が,本作の明るい少女と暗い結末にこめたものは何だったのだろう。

先頭 表紙

石川喬司というのは,星,小松らが出てきたころから,作家としてよりはSFや海外ミステリの評論,普及に努めた人で,『SFの時代』という評論集が最近文庫になったようですが,それ以外の著書(小説)は入手がかなり難しいだろうと思います。それにしても美奈子さま,こゆいSFをたくさんお読みですね。烏丸が一番熱心にSFを読んだのはかなり昔のことだったので,ゼラズニィやティプトリーは「最近の作家」なんです……。 / 烏丸 ( 2000-10-27 12:03 )
石川喬司という方は寡聞にて存じ上げませんでした。手に入ったらぜひ読んでみます。(後日、関係ない書評の時などにつっこんでしまってもよろしいでしょうか?) / ( 2000-10-27 06:14 )
ちなみにSFを読み始めるきっかけになったのは、今は亡きロジャー・ゼラズニィの真世界シリーズ(サイン&メッセージ入り本持ってます。イェーイ!)。 / 唯一自慢できる蔵書です。 ( 2000-10-27 06:11 )
有名どころではやはりフィリップ・ディック(彼がペーパーバックライターの地位にずっと甘んじなければならなかったのは信じ難いが、それゆえのあの作品群か)。ややマイナーではフレッド・ホイル(天文学者としては有名でしょうか?)。個人的にはスティーブ・エリクソンも立派なSF者だと思いますが(それを言うならまずピンチョンでしょ!とつっこまれそうですね。でも彼は難しすぎ〜!(泣))。 / 手元になくてかなり忘れてますが(汗) ( 2000-10-27 06:09 )
ちなみに,単なる本の虫だった烏丸の人生(目標職業?)を決定的にしたのは,SF作家・競馬評論家,石川喬司の『魔法使いの夏』という短編集でした。 / 烏丸 ( 2000-10-27 02:23 )
うーむ,美奈子さま,お詳しい。イチオシの作家は,レムやホーガン以外ではおりますか? / 烏丸 ( 2000-10-27 02:21 )
彼女がカミングアウトした時は衝撃が走りましたな。それにしても、こういう最期だったとは。こうしてみると『愛はさだめ、さだめは死』のタイトルも実に含蓄深いものがあります。合掌。 / ( 2000-10-26 21:09 )
無茶苦茶な人生を送る無頼派おっさん作家が渋いハードボイルド小説を書くようなもんなのでしょうか・・?私にも理解出来ませんわ。。 / エル ( 2000-10-26 19:01 )
エルさま,こんな山あり山ありの人生送っておいて,その上空想小説書こうという発想,烏丸にはよくわかりません。SFのご先祖さま,ジュール・ヴェルヌ(『海底2万マイル』『八十日間世界一周』『月世界旅行』『十五少年漂流記』など)は船にも乗れない旅行嫌いだったそうで,こちらのほうがよっぽど気持ちがよくわかる。 / 烏丸 ( 2000-10-26 16:02 )
しかしまあ、なんちゅー破天荒な人生なのでしょう。作者の女性。。まさに事実は小説より奇なり。 / エル ( 2000-10-26 13:26 )
それはそうと,『たったひとつの……』の表紙や本文イラストは,軍曹オススメ,『観用少女(プランツ・ドール)』の川原由美子でございますね。 / 烏丸 ( 2000-10-26 12:01 )
お、お恥ずかしい。単に決めているというだけでありまして、その内容がどうかというとこれがまた、お恥ずかしいと申しますか、なんというか、しどろもどろなのでありますっ。 / ケロロ軍曹 ( 2000-10-26 11:34 )

2000-10-25 今日はビゼーの誕生日 『風車小屋だより』 ドーデ,大久保和郎 訳 / 旺文社文庫


【とりとめもなく……】

 今日,10月25日はワルツ王,ヨハン・シュトラウス(1825年),そしてジョルジュ・ビゼー(1838年)の誕生日。

 ビゼー作曲,クリュイタンス指揮,パリ音楽院管弦楽団の組曲『アルルの女』『カルメン』はとてもよい。カラヤンに比べてゆったりとしてつやがあり,ストコフスキーより明確。
 とくにあれだけ幅とねばりのあるクラリネットとフルート(アンリ・ルボン?)の音色は,あまり記憶にない。低いところから,こう,ひたひたと,しかし着実に満たしていくような。
 高校時代だったろうか,毎週のように縁戚の家を訪ね,応接間にこもって『アルルの女』を繰り返しかけながら,本棚のポーやユゴー,メルヴィルにふけったことを思い出す。

 シュトラウスやビゼーは,音楽の教科書や入門用名曲集に再三取り上げられた分,損をした感じがしないでもない。ツウをきどる会話では出てこないか,せいぜい『美しきパースの娘』について知ったかぶりする程度。『カルメン』(メリメ)や『アルルの女』(ドーデ)の原作まで追う者が,今,どれほどいるだろう。

 そういうわけで,今朝は,ドーデ『風車小屋だより』なんて懐かしいものを持ち出してみた。添付画像は,あの,草色の厚紙の箱に入っていたころの旺文社文庫で,これもまた懐かしい。フランシス・ジャムの『三人の少女』は当時旺文社文庫でしか読めなくて……とか言っても感傷にすぎないのはわかっているのだが。

 今ふうにいえば『カルメン』が青年将校によるストーカー殺人事件なら,『アルルの女』はストーカーにすらなれないウブな青年の物語。
 二十歳になる明るい百姓の青年ジャンが,闘技場でたった一度会ったことのあるビロードのレースずくめのアルル女に夢中になる。彼の家族は反対しつつも披露宴を催すが女は現れず,ほかの男の情婦であることが明らかになる。ジャンは陽気にふるまうが,ある朝,母親の制止をふりきって飛び降り自殺してしまう。

 その前のページの,『星』という短編が,これまたうっとりするほど美しい。
 羊飼いが番をする山の上にお嬢さんが食糧を持って現れる。ところが雷雨による増水で帰ることができなくなり,二人は並んで星を見ながら星についての言い伝えを語り合う。そのうち,お嬢さんは羊飼いにもたれるように眠ってしまう。それだけ。

 村祭り,プロヴァンスの教会,山羊,羊,星。星。

先頭 表紙

資生堂といえば,春ごろのCMがシルヴィ・バルタン「アイドルをさがせ」のリメイクをBGMにしていましたが,その時点ではCD化されてなかったようです。ちょっとよいかと思ったのに。 / 烏丸 ( 2000-10-26 13:14 )
最近の、資生堂のコマーシャル思い出しちゃった。あれ、妙に色っぽかった。 / 口車大王 ( 2000-10-26 12:33 )
旺文社文庫は,注釈がそのページの中に載っているので,シェークスピアとか古典のお勉強には大変便利なのです。『海潮音』も旺文社文庫版がオススメ(っても,今さら手に入れるのは大変ですが)。 / 烏丸 ( 2000-10-26 02:25 )
シルヴィ・バルタンがモーツァルトの40番歌ったときも,確かちゃんとクレジットが……というより,そもそも曲名が"CARO MOZART"になってますね。 / 烏丸 ( 2000-10-26 02:23 )
↓大ではなく、あっ です・・・ / 水美 ( 2000-10-26 02:06 )
大!これです!これです。中学生の頃、図書室にあったのは!!こでで、シェークスピアとか、「博物誌」とか読みました。あの頃でもこのシリーズ、年期がはいってて、大人になってから、どこのだったんだろう?と悩んでいました。謎が説けた!娘の中学って蔵書がお粗末。のぞいてがっくり。あれでは本好きな子供は育たん! / 水美 ( 2000-10-26 02:04 )
「キッスは目にして」は、さすがにクレジットが入ってましたね〜!(そりゃそうだ)ビゼーを歌うときはフランス語に苦しみました・・。そんな私はフランス語選択・・。 / どーやって卒業したんだあやや ( 2000-10-26 00:31 )
そうそう,ダ・パンプ。著作権法的にはもちろん死後50(+5)年どころではないのでフリーなんですが,あんなメインに使って作曲料もらっちゃいけません。使うのなら,ちゃんとクレジット入れてほしい。でも,チェックのためにシングル盤買うのもばからしいし……。 / 烏丸 ( 2000-10-25 16:02 )
あまり関係ないですが、ダパンプだかラパンツだかいう人たちが、思いっきり『アルルの女』をパクった曲を歌ってましたですねえ。CMで堂々と流すな、と。 / こすもぽたりん ( 2000-10-25 15:22 )
懐かしいものを出してきましたねえ。旺文社文庫なんて、もう若い人は知らないだろうなあ。 / mishika ( 2000-10-25 14:18 )

2000-10-24 科学と文学について考える 素材その十(最終回) 『すべてがFになる』 森 博嗣 / 講談社


【「日」でも「秒」でもなく「時」で管理。なにそれ?】

 とくにいくつという予定はなかったが,そろそろ(おそらく読み手の皆様も)飽きてきたことだし,その十とキリもよいので「科学と文学」シリーズは今回で打ち止めとしよう。ふと気がつくと『パラサイト・イヴ』に始まり,『すべてがFになる』で終わる……どよどよどよん。

 本書『すべてがFになる』については,すでにこすもぽたりん氏の「神田マスカメ書店」に詳解されている。ここではコンピュータの扱いについてのみ,いくつか指摘しておきたい。

「いえ……,UNIXを介してFTPしてますから,フロッピィは使いません。大丈夫だと思いますけど……」
 いきなり,これだ。これは研究室のMacにコンピュータウイルスが,という状況で出てきたセリフだ。その前ページに
「あとはネットワークからソフトを持ってくるときだね,気をつけなくちゃいけないのは」
とあるからコンピュータウイルスがネットワークを介しても波及するという知識はあるようだが,「UNIXを介してFTP」なら大丈夫というのでは,何もわかっていないとしか思えない。

 本作に登場する某大手ソフトハウスは,離れ小島に入り口が1つしかない研究所を設け(消防法違反),有能な開発者50人をそこに閉じこめてソフトを開発させている(プログラマやオタクの生活を理解しているとは思えない設定。電気街もコンビニもないところではPCオタクの3分の2は棲息できない)。その研究所は「レッドマジック」という独自OSによって完全管理されており,レッドマジックの現バージョンは4,それを7,8年使っている。
 研究所の奥にはそのレッドマジックを開発した天才工学者が7年間幽閉されており(誰に?),彼女に食事や本や機材を渡す出入り口はすべてビデオに撮られ(なんで?),その記録が全部データとして残されている(どうして?)。もちろん,それも彼女の作ったレッドマジックとその制御下にあるロボットが管理している。

 ある日突然,レッドマジックがシステムダウンし,同時に殺人事件が起こり,電話もかけられなくなってしまうのだが,そこでスタッフが言うにことかいて,
「レッドマジックはセキュリティが完璧なんだ。どんな人為的な工作にも対処できる。…(中略)…あらゆるソフト的な破壊工作に対応している」
 複数のスタッフがいぢったOSのセキュリティが7,8年経って「完璧」なんてあるかぁ!

 そもそも,その技術者連中たるや,電話回線とPCやMacがそこにあり,パソコン通信サービスのIDを持っているにも関わらず,警察に連絡もできない。で,これまでレッドマジックがやっていた管理を徹夜でUNIXに差し換えるという。それが可能なら先にDOSのTERMでも使え。

 そもそも,幽閉者が作ったシステムに,幽閉者をチェックさせているのだ。そのへんをこれ以上つっこむとネタバレになってしまうので詳細は省くが,これだけは言っておきたい。本書の背表紙には我孫子武丸が
「ずっと8ビットだったミステリの世界もこれでようやく32ビットになった」
と賛辞を送っているが……どう考えても16ビットだと思うぞ。

 本書は,理系人間の書いた,理系人間待望のミステリ! とよく言われる。しかし,理系,文系以前に,もう少し考えてほしい点が少なくない。某所で上記のようなことを指摘したところ,熱狂的ファンから総攻撃を受けた。ある理系大学生がメールでいわく,
「僕はコンピュータには詳しくないが,そのあたりは全然,気になりませんでした」
 ……今どきの理系の論理はそんなものなの?

先頭 表紙

Z80ですかぁ。最近のようにPCやOSが肥大化し,インタフェースやデバイスがブラックボックス化してしまうと,HTMLのソース程度ならともかく,I/Oを叩くとかそういうのはいったいどこで入門するのやらと思います。だから,そういう授業は貴重なのでは。(って,アセンブラ組めない……以下同文) / 烏丸 ( 2000-10-26 13:12 )
大学で『アセンブラ』という実験のお題目がありました。Z80のアセンブラの実験。アセンブラの実験っていったい何? と思ったら、アセンブラで水門を操作するプログラムを組んで、水を堰き止めるというもの。工学基礎実験だったかな。毎週山のようにレポートを書かされて、たった2単位。しかも、必修。 / こすもぽたりん ( 2000-10-26 12:38 )
ディスアセンブルという言葉も,もう死語ですねえ(って,アセンブラ組めないお前が言うな。 > 烏丸) / 烏丸 ( 2000-10-25 17:56 )
ソースなんかいじったことないんでしょうねえ。ソースといえばペヤングくらいの認識で(こんなこと書く私も私ですが)。ソースといえば、最近の若いエンジニアはソースを読むという発想自体がない、と弊社のチーフ・エンジニアが嘆いておりました。 / こすもぽたりん ( 2000-10-25 15:27 )
書くつもりがあろうがなかろうが,これだけの長さで書けば,人間が「色に出にけり」ということがありますね。この作者,アプリケーションユーザーかもしれませんが,OSいぢったことはないですね。ソースを修正してコンパイルしたらエラーではじかれたのがよほどショックだったのだろう。でも,多分それはOSのせいじゃなくて,単に型の宣言をし忘れたせい。……こんなもんかな。 / 烏丸 ( 2000-10-25 12:39 )
百歩譲ってパズルだっていうのならそれはそれでいいんです。よくわからないのは,これ,パズルとして成立しているんですか? 幽閉したのも,その幽閉の条件を設定したのも,幽閉から出たのも……。これでは,命題が不成立だと思うんですよ。島田掃除(ママ)のアレでいうなら「なぜピエロの格好で踊ったのか」という謎の答えが「ピエロの格好で踊りたかったからー」になってませんかねえ? 読み違えているんだろうか。 / 烏丸 ( 2000-10-25 12:20 )
森本人が「人間を書けないのでなく,書かなかったのだ」と反論したのを目にしました。でも,少なくとも『F』はオタクを書こうとして書けなかったのは間違いない。無駄な(勘違いに基づく)エピソードが多いですからね。 / 烏丸 ( 2000-10-25 12:12 )
いえいえ美奈子さま,「科学」「SF」なんて言葉のせいか,今回のシリーズにはなんとなくつっこみも少なく,寂しく思っていたところです。どんどんつっこんでやってくださいまし。ちなみにこの烏丸,「〜シリーズ」なんて枠組みはもうけても,実は何も考えてなくて,その日その日に思いついた本を取り上げているだけです。また気がむけばSFも出てくることと思います。 / 烏丸 ( 2000-10-25 12:09 )
「どう考えても16ビットだと思うぞ。」という烏丸さんのツッコミは、本書を最後まで読むとさらに味わい深いです。 / こすもぽたりん ( 2000-10-25 09:57 )
萌絵ちゃん萌え萌え系掲示板などでは、「森は人物が描けない」などという批判をすると「森作品は全て、高度なパズルなのだから、人物など描く必要はないのではないか」という答えが返ってくるようです。だったら、小説などという形を取らずに、最初からクイズにすればいいのにと思います。 / こすもぽたりん ( 2000-10-25 09:41 )
あー、今日は何だかIEのつっこみ機能の具合が悪くて、烏丸様のページにもう1時間近く居座ってしまっているわ(汗)。 / あちこち汚してしまってすみません。 ( 2000-10-25 08:16 )
んー、私もPC初心者タコですが、それでもこの作品の設定はなんかとてつもなく妙〜な気がしますね。我孫子氏の賛辞は、ミステリ界へのエールだったのでは。でも「……どう考えても16ビットだと思うぞ」という烏丸様のツッコミには笑いました。 / 美奈子 ( 2000-10-25 08:02 )
いやーん、もっと続けてほしいですぅ。あるいはシリーズ第二段ということで後日にでも、烏丸様がお好きだったSFの話など交えつつ、ぜひ。 / 補助頭脳、欲しい! ( 2000-10-25 07:54 )

2000-10-24 科学と文学について考える 素材その九 『地球環』 堀 晃 / 角川春樹事務所(ハルキ文庫)


【あなたの補助頭脳をチェックしておきたいんです】

 紡績会社社員でもある堀晃は作家としては寡作だが,わが国のハードSFの第一人者と称されることが多い。彼の『太陽風交点』は,おそらく国内で書かれたハードSFとしては最も高い評価を得た短編の1つで,1981年,第1回日本SF大賞を受賞した。
 それが,悲劇の始まりだった。

 SFというのは,マイナーな文化である。
 『日本沈没』のようにベストセラーが現れ,映画の原作として話題になることがあっても,筒井康隆のようにテレビCMにまで登場し,不気味に嗤う作家がいても,その根本にあるのは,SFファンの中から作家が登場し,SFファンのために作品を書き,それをSFファンが評価するという仕組みである。そして,この国のSF文化は,星新一,小松左京,筒井康隆,石川喬司ら,第一世代を頂点とする一種の内燃機関を構成し,新人は極力SF作家の集いにはせ参じ,ベテランからの評価を得ようとする。悪くいえば家元制度のように閉じた社会であり,別の閉じた世界を構成する純文学,大衆文学の文壇とは激しく反目し合う。その結果どういうことになるかといえば,先に述べた大物作家の誰一人として芥川賞,直木賞は受賞していないし(半村良が直木賞を受賞したのは,SFでなく中間小説),SF界側は大江健三郎の『空の怪物アグイー』を一切評価しない。

 そして,そのマイナーな文化をビジネスとして体裁づけ,長年にわたって新人作家のデビューや生計の一角を支えていたのが「SFマガジン」「ハヤカワ文庫」の早川書房である(東京創元社の創元推理文庫のSF作品はいずれも海外作品の翻訳で,国内のSF作品は収録されない)。
 そのハヤカワが,日本SF大賞受賞作『太陽風交点』文庫化の既得権でもめ,作者堀晃と徳間書店を相手に訴訟を起こしたことが,第一世代のSF作家の大半を怒らせ,彼らのハヤカワ文庫収録作品はそれ以降増刷されなくなった。もちろん,以後「SFマガジン」に第一世代の新作が発表されることもなかった(光瀬龍など,一部を除く)。
 「SFマガジン」は独自に若手を育て,大原まり子,神林長平らで生き長らえるが,ファンと作家が密着し,閉じた世界で互いを育んできたSF界にとってこの分断はあまりにも大きかったといえるだろう。

 早川書房はそれ以前から,原稿料が安い,育ててやったという顔をする,など,必ずしもSF作家から好もしく思われてはいなかった。そんな早川書房を「奢っている」「愚かな」と責めるのは簡単だが,藪の外にいる者に実際のところはよくわからない。いずれにしても,日本SFはそれ以降あっけなく求心性と継続性を見失い,失速していく。
 もっとも,1980年以降というと,海外SFも魅力を発揮できなくなるころで,単に当時はSF黄金時代の終焉,あるいはSFが映画やゲームに拡散していく時期だっただけなのかもしれない。

 さて,その堀晃の短編集が,本当に久しぶりに文庫になった。本『地球環』にはその短編うち,「情報サイボーグ」シリーズが収録されている。
 堀晃の作品は,宇宙や情報工学についての根源的な理論や世界観をベースにするため(科学雑誌などでもてはやされる,いわゆる流行の話題はあまり用いない),年月を経ても作品がそう古びない。SFは苦手,科学は苦手,という方も,ぜひ手にとって本作に目を通してみていただきたい。
 ここには,SFがまだ力を持っていた最後の時代の,上質な知的エンターテイメントがある。

先頭 表紙

本当に。ナボコフとかディックとか、ちくまや早川(おっと)にひきとられてホッとした人も多かったのでは。 / み@サンリオ20冊くらい持ってる ( 2000-10-26 21:03 )
サンリオ文庫はですね,なーんにも考えてない担当者が,海外のSFとか実験的小説とか言われる作家,作品を,よしあしもなーんにもチェックしないで(てゆか,ほかの出版社が相手にしないようなクズばかり)「独占翻訳権」をとってとってとりまくって,それでパンクしたとそれはもうもっぱらの。そのぶん,ほかからは出ないような貴重品もいくつかあったわけですが。 / 烏丸 ( 2000-10-26 11:59 )
サンリオ文庫がつぶれちゃったのと同じ(笑)? / ( 2000-10-26 06:07 )
きゃー。アホなこと書いたばかりに、奥さまにまでお気づかいいただいてしまってすみません!お許しくださいませ。(反省コザルのポーズ) / でも今度は麗しの奥さまに興味しんしん。 ( 2000-10-26 06:05 )
「2号の件につきましては,受付で整理券を……」と書こうとしたのですが,家人から,もう少しオシャレなジョークを,と教育的指導が入りました。勉強しなおします。とほ。 / 烏丸 ( 2000-10-26 00:30 )
そういうことやってるから(『人喰い病』の石黒達昌も海燕出身),海燕,つぶれちゃったんですね。 / 烏丸 ( 2000-10-26 00:23 )
シーナ・ワールドは「海燕:小説新潮:SFマガジン」で「5:3:1」の割合ですか。ふうむ……。 / ( 2000-10-25 17:58 )
おおー、素晴らしい! 拝読した後、紀伊国屋ノースシドニー店までダッシュしちゃいましたよ(本当)。でも『みるなの木』はなかった、残念。(代わりに『地下生活者/遠灘鮫腹海岸』を買いました。)……うう、烏丸様にツボをつかれまくっている私。およめにしてほしい(爆)! でも麗しの奥方がいらっしゃるのでしたね、残念残念。あっ、奥様もここご覧になっていらっしゃるのかな? ごめんなさい上に書いてあるの全部ウソです、単なる悪ふざけです、お許し下さい(ペコリ)。 / 2号の座に甘んじますわ(殴殺) ( 2000-10-25 17:55 )
よくぞ聞いてくれました!(笑) 椎名SFと文芸雑誌については『みるなの木』を例にちょこっと書いています。そちらもご参照くださいな。 / 烏丸 ( 2000-10-25 12:45 )
「明確な境界線なんてない」のご意見に賛成です。たとえば椎名誠って、出版業界(?)ではどういう扱いなんでしょう? 『武装島田倉庫』に続く連作はもろにSFですよね。言葉の感覚がすごくて興奮しながら読んだ記憶があります。 / 美奈子 ( 2000-10-25 12:31 )
ほほう、なるほど。アンチ筒井の朝日論説委員ですか。丁寧なご説明、ありがとうございます。いろいろないきさつがあるのですねぇ。 / 美奈子 ( 2000-10-25 12:25 )
SF作家のほうは,「ヘンなものは皆取り込んでしまえ」という気概があったのか,シュルレアリスム,ファンタジー,ホラー,ミステリと分類されそうなものも全部書いていました。……と,こんなふうに書くといかにも烏丸がSFのほうに肩入れしているように見えるかもしれませんが,烏丸的にはおもしろければ派閥は何でもよし,小説でもマンガでも映画でもなんでもおっけー,です。 / 烏丸 ( 2000-10-25 12:07 )
筒井康隆なんて,デビュー当時からSFというよりは前衛的な小説で,ああいうことをできない純文学のほうに問題があった。純文学とミステリはわりあい仲がよいようで,『虚無への供物』の中井英夫は純文学からそんなに嫌われていません。中井英夫にはSF作家が書いたとしか思えない『銃器店へ』という短編集もありました。などなど。 / 烏丸 ( 2000-10-25 12:06 )
SFと文学,SFとミステリの明確な境界線なんてものは,多分ありません。どっちの派閥に属するかの問題と,編集者がSFにアレルギーがあるかどうかの問題だったんじゃないか,と思います(少女マンガでも,「SF」というだけで描かしてもらえなかったとか,そういう話が昔は多かったようです)。 / 烏丸 ( 2000-10-25 12:06 )
美奈子さま,大江健三郎を例にしたのは,当時,朝日新聞の論説委員がアンチ筒井康隆で,その1年の出版を振り返って,という記事の中で「SFでは大江にこれこれがあった,それ以外に見るべきものは何もなかった」とSFを口にしながら星,小松,筒井らをてっぱん無視した,という故事(だよなあ,今となっては)にならったものです。 / 烏丸 ( 2000-10-25 12:04 )
あっ、しまった。下で?マークを入れるのを忘れてしまい、何だか知ったような書き方になってしまいましたが、私、森博嗣の作品は読んでおりませんです。失礼しました。『空の怪物アグイー』はSFだったのですか(未読にて知らず)。けっこう初期の作品だったと記憶してますが。アグイーというキャラ自体は他の作品にも登場していましたっけ。『治療塔』も、大江がSFを!ということで話題になりましたが作品自体への反響は今いちだったようですね。やっぱり『万延元年のフットボール』のドロドロには負けてますか。 / 美奈子 ( 2000-10-25 07:47 )
ふむふむなるほど、こういう経緯があったのですね。しかし私、SFと文学の境目ってよくわからないです。ミステリ作家が「UNIXでFTP」と書く時代になってきたし、両者を隔てる定義だてって今後ますます難しくなるのでは。 / 美奈子 ( 2000-10-25 07:34 )
この『太陽風交点』事件,当時は朝日新聞の社会面さえにぎわしたというのに,いまや誰も覚えていないし,インターネットで検索しても1か所でしか発見できませんでした……よく見たら,堀晃当人のこさえたホームページ。いかにSFが市民権を失ってしまったか,よーくわかります。この『地球環』にしても,そういう「往時を懐かしむ」という気持ちのない方には,はたしてどんなものやら。 / 烏丸 ( 2000-10-24 14:32 )
むむむむ、SFを最後まで読み通したことのない私ですが、これは興味深い。久々に挑戦してみますですか。 / こすもぽたりん ( 2000-10-24 14:17 )

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