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烏丸の「くるくる回転図書館 駅前店」

 
今後、新しい私評は、
  烏丸の「くるくる回転図書館 公園通り分館」
にてアップすることにしました。

ひまじんネットには大変お世話になりましたし、
楽しませていただきました。
その機能も昨今のブログに劣るとは思わないのですが、
残念なことに新しい書き込みがなされると、
古い書き込みのURLが少しずつずれていってしまいます。
最近も、せっかく見知らぬ方がコミック評にリンクを張っていただいたのに、
しばらくしてそれがずれてしまうということが起こってしまいました。

こちらはこのまま置いておきます。
よろしかったら新しいブログでまたお会いしましょう。
 

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2000-10-19 [緊急雑談(?)] 町営住宅 怪現象パニック
2000-10-19 科学と文学について考える 素材その二 『人喰い病』石黒達昌 / 角川春樹事務所(ハルキ文庫)
2000-10-18 科学と文学について考える 素材その一 『パラサイト・イヴ』 瀬名秀明 / 角川ホラー文庫
2000-10-18 マンガ読み取りの基本に還るためのイチオシ 『漫画原論』 四方田犬彦 / 筑摩書房(ちくま学芸文庫)
2000-10-17 [雑学] お試しください,数字遊び
2000-10-17 極私的マンガ評論のイマイチ 『あの頃マンガは思春期だった』 夏目房之介 / 筑摩書房(ちくま文庫)
2000-10-17 1970年代黄金時代少女マンガのよくもあしくもイチオシ 『花の美女姫』 名香智子 / 小学館文庫
2000-10-17 バッドテイスト本のスーパーイチオシ 『大江戸死体考 人斬り浅右衛門の時代』 氏家幹人 / 平凡社新書
2000-10-16 [雑談] 子供向け伝記本にボブ・マーリー,エルトン・ジョン
2000-10-15 [雑談] ゆよーんやよーんゆやゆよん


2000-10-19 [緊急雑談(?)] 町営住宅 怪現象パニック

 一部の新聞でも扱われたようですが,今夜のテレビ朝日系「ニュースステーション」,必見です。

 岐阜県富加町の町営住宅(4階建て,24世帯)で,原因不明の音がしたり,棚が勝手に開いたり皿が割れたりする怪現象が頻発。最近は「夜,階段のところに見知らぬ女の人が座っていた」とか「子供が,誰もいない場所に向かってバイバイと手を振る」「壁際を差して怖がり,泣きやまなかった」という話まであるそうです。
 一度御祓いをしてもらったものの怪現象はやまず,それどころか枕もとに女性が立った,とても住めないと出ていく家族も。さて,どう展開するのか。

 できればこすもぽたりんさまご紹介の『伝染る怖い話』をかたわらに置き,怖い土地を「洗う」とはどういうことか,など考えながら見るとさらに楽しめるのでは,と思われます。

先頭 表紙

さっき『王様のブランチ』の裏番組で見ました(なんちゅう情報じゃ。ヒメが出てないから裏番組という判断)。全然怖くなくてがっかりだよ〜ん。 / こすもぽたりん ( 2000-10-21 14:01 )
「住宅群」というよりは,原っぱの中に4階建ての団地が1棟ぽつんっと建ってる,そんな感じでした。建つ前が林で,30年前にそこで首を吊った女の人がいるらしい。でも,これはマユツバ。ある程度の広さの土地を過去にさかのぼれば,何かあるでしょうし,子供が誰もいないところを指さして言ったのも「ヘンなおじちゃん」(テレビクルーのことじゃないのかなあ)。 / 烏丸 ( 2000-10-20 15:14 )
やや、いつの間にこんな面白げな特集がっ。反クメで親えっちゃんな私があの番組を見なくなって久しいのですが、そんな住宅群が岐阜にあるとわっ。そういえば、西原理恵子が青木光恵に用意してあげたという東京のマンションは、殺人事件があったおかげで家賃半額だったそうで。 / こすもけろりん・花吉捜索中 ( 2000-10-20 14:48 )
妹が嫁いだ先にも「あそこは出るらしい」と有名な地域があって,小高い丘の上に一戸建てがばらばらっと建っているのですが,どう「出る」のか誰も教えてくれません。そのうち,その一戸建て(ごく普通の木造家屋)の壁が,家ごとにオレンジや緑に塗られていて,カラフルというよりは妙にハイテンションになっていたのだけど,あれはなぜだったんだろう……。 / 烏丸 ( 2000-10-20 12:29 )
この町営住宅は,建てられた当時から住民と自治体の間で確執があった,という説もあるそうで(内容不明。こういうのが流言飛語を呼ぶんだよな),だとすると霊的な事件というよりは,集団ヒステリーというカテゴリーのほうが説明しやすいかもしれません。ちなみに,烏丸が育った家は,毎晩のようにパキパキ鳴りまくってました。建材と乾燥の問題だと思います。 / 烏丸 ( 2000-10-20 12:26 )
結局,(当たり前ですが)そうたいした内容ではありませんでしたね。ところで,番組ではやっていませんでしたが,地方自治体が御祓いに支援するというのは,「政教分離」の原則からまずいのだそうです。 / 烏丸 ( 2000-10-20 00:42 )
私は、霊感の強い友人に「あんたはまったく霊を寄せ付けない体質だね」と言われるほど超鈍感なので、こういう話は興味あるのですが、いまいち体感できない。。しかし、下手なお祓いは反対に混乱を招きかねないですね。霊に箔が付くというか。 / エル ( 2000-10-20 00:17 )
見ましたよ〜大槻教授が出て来たら面白かったのに、って番組が違う?(それはタックル) / ティキティキ ( 2000-10-19 23:36 )
えっ!うそ!こっこさん、うちにいらしてそのセンサー働かせてくださいー!お祓いしたのに、利いてないような・・・ / 憑かれているのか@水美 ( 2000-10-19 22:24 )
このニュース、信じちゃいます。こっこは「おばけのいる場所センサー」付きなので、こういうところは気絶しそう。 以前足柄山で意識がなくなりました。。 / 顔も見えるよ。こっこ ( 2000-10-19 21:43 )

2000-10-19 科学と文学について考える 素材その二 『人喰い病』石黒達昌 / 角川春樹事務所(ハルキ文庫)


【遺伝子配列の他の生物種との相同性を塩基1000個単位で検索】

 実は,「科学と文学について考える」なんて途方もない(ちなみにハナから着地まで引っ張る自信はない。すんまそん)ことを持ち出したのは,この文庫本を手にとったためである。

 なにしろカバーの惹句によれば,

「どんな抗生物質も抗ウイルス剤も全く通用せず,数週間から二ヶ月間で確実に死に至る奇病『全身性皮膚潰瘍症』の正体に迫る表題作をはじめ,低体温症の女性とその一族に隠された謎を探る『雪女』など,最新の医学知識と遺伝子工学からつむぎ出された世にも不思議な物語。──鈴木光司『リング』『らせん』,瀬名秀明『パラサイト・イヴ』等の作品に大きな影響を与えた理系小説の旗手がおくる真実のサイエンス・フィクション!」

 なんと「理系小説の旗手」!
 よもやの「真実のサイエンス・フィクション」!!

 作者は東大病院第一外科の医者であり,今はない「海燕」という,もともとは純文系の雑誌から出てきている。
 『平成3年5月2日、後天性免疫不全症候群にて急逝された明寺伸彦博士、並びに、』(これが作品のタイトル。念のため)や『進化』で,図版を含む学術論文のような形式での作品を発表している。つまり,ハネネズミという架空の生物についての,架空の論文である。
 ハラルト・シュテュンプケが架空の生物を紹介し,一時期大きく話題になった作品『鼻行類』の影響下に書かれたものかと思われるが,評価は「びっくり」と「ばかばかしい」の2つに分かれるような気がする。古くからSFに慣れ親しんだ者からすると……やはり「びっくり」か「ばかばかしい」だろうか。少なくとも長編でやることではないような気がする。いや,出展は長編で,のちにボルヘス『幻獣辞典』のようにまとめられるのがちょうどよい具合か。……

 さて,そこで新刊の短編集『人喰い病』(文庫書き下ろし)である。
 収録4作のうち,『雪女』『水蛇』『蜂』については,設定は面白いが,どうも中途半端な印象が強い。安部公房の初期短編のキレを少し悪くした,そんな感じだろうか。とくに『雪女』はうっすら怖くなるところで「ホラーに走るのはやーめた」印象。
 中では表題作『人喰い病』がやはり面白い。『パラサイト・イヴ』に影響を与えた,という惹句もむべなるかな。実在する「人喰いバクテリア」からとったと思われるタイトルは一見煽情的に見えるが,テキストは冷静,『パラサイト』前半の研究室の濃密な,何かが起こりそうな気配,あれである。しかも「オバケ」には一切走らない。ひたすら,主人公の医者が書きつづった過酷な(もちろん架空の)病気の記録,という体裁で押し通す。形態は学術論文やカルテの形態ではなく,しいていえば日記ないし備忘録なのだが,ここには見事なまでの「科学者の姿勢」(それが普遍的な科学者か否かは別として)が感じ取れる。
 そして,その明晰な文体や構成,意外なほどに地味な結末は,『パラサイト』と違って,爆発的には売れないであろうこともまた明確に示している。

 そういえば,本書は小松左京,豊田有恒,光瀬龍,眉村卓,平井和正,山田正紀,堀晃ら「超」の付くベテランと並んで,ハルキ文庫の「SFフェア」の一環として平積みされていた。
 本書は,ホラーで押し通した『パラサイト・イヴ』に比べれば,格段にスペキュレイティブな手応えを感じる。しかし,まだ「医者による実験的な純文学」の範疇を越えず,新時代を興す力には欠けるようにも思われる。
 ……はたしてSFの復権はあるのだろうか。

先頭 表紙

いえいえ,いぢめるつもりなどもうとうございませぬ。この烏丸,シュルレアリスムの詩人たちが大好きなんざます(本当)。……といいつつ,もう十ン年手にしていませんが。 / 烏丸 ( 2000-10-20 00:48 )
あっ・・・つっこみにつっこまれてしもうたんじゃー!烏丸さん、いぢめんといてーや、水美、又、病気が再発してしまいます〜! / 病み上がり@水美 ( 2000-10-19 21:14 )
水美さま,いらっしゃいませ。かつてあんなに好きだったSFを今ではどうしてこう読まなくなったのか,自分でも不思議です。ところで,「超現実」というのは,ブルトンの言うシュルレアリスムのことでよろしいのでしょうか? / 烏丸 ( 2000-10-19 17:30 )
あっ!変換が・・・で金、ではなく、できん,です。どうも すみませんー。 / 水美 ( 2000-10-19 13:06 )
今を生きている人間はSFの中に夢っつーか、物語っつーかそううもんを夢見る事がで金のではないかと思われます。超現実こそが現代人のSFだったりして。 / ブラットベリ・ロマンチスト水美 ( 2000-10-19 13:03 )

2000-10-18 科学と文学について考える 素材その一 『パラサイト・イヴ』 瀬名秀明 / 角川ホラー文庫

【ミトコンドリア10億年の野望】

 表紙の画像データはない。本を誰かに貸すかあげるかしてしまったためである。

「永島利明は大学の薬学部に勤務する気鋭の生化学者で,ミトコンドリアの研究で実績をあげていた。ある日,その妻の聖美が,不可解な交通事故をおこし脳死してしまう。聖美は腎バンクに登録していたため,腎不全患者の中から適合者が検索され,安斉麻理子という14歳の少女が選び出される。利明は聖美の突然の死を受け入れることができず,腎の摘出の時に聖美の肝細胞を採取し,培養することを思いつく。しかし,“Eve 1”と名づけられたその細胞は,しだいに特異な性質を露わにしていった……」

 これは単行本の惹句からだが,この後,柳生一族の,じゃなくてミトコンドリア10億年の野望が次第に明らかに……と物語は動く。しかし,研究室の蛍光灯がじじっと音を立てるのが聞こえそうな緊張感が続くのは実はせいぜいそのあたりまで。1冊の半分弱くらいだろうか。

 DNA解析などの生化学研究が進む中,明らかになってきたアミノ酸結合や生物の進化についてのさまざまなロジックは,これまでのあらゆる世界観,宗教観を覆しかねない。たとえば細胞内のミトコンドリアが実は別の生物が寄生したものであったという事実は,十分に刺激的である。そしてそのミトコンドリアが独自の意識を持つにいたる,という作者の着眼点は面白い。

 一方,SFの世界では,「異質なもの」についてのさまざまなアプローチがなされてきた。たとえば,惑星の海がまるごと知性を持つとどれほど人間の理解を超えてしまうか(スタニスワフ・レム『ソラリスの陽のもとに』)とか,考え方や外見のみならず侵略の意味すらとんとわけのわからないエイリアンとの戦闘(神林長平『戦闘妖精・雪風』)などのハードな思考実験が再三提示されている。

 ところが,『パラサイト・イヴ』では,意識を持ったミトコンドリアについてそのような「異質なもの」扱いは一切せず,絵に描いたようなオバケで押し通す。なにしろこのイヴ嬢の思考や行動たるや,まるっきりどこかの性悪女レベル。ただ惚れた主人公の男を求めて人間の女の姿で追いかけ,後はどたばた大暴れなのだ。
 これが,『パラサイト・イヴ』が「ホラー」であって「SF」と言われない所以だろう。従来のSFなら,いくらなんでもこれはない。ミトコンドリアが意識を持つというなら,どのような化学反応を意識と呼ぶのか。視覚・聴覚などの五感が人間とはまるで異なるわけだから,どんな認識,行動パターンがあり得るのか。当然,そのあたりがキモ,というかセメドコロになるはず。主人公の男を追うのにしても,惚れたはれたでない,なんらかの科学的説明が考案されるべきだったろう。

 しかし,現役の生化学者である作者はそれらを全部パスして,まっしぐらにオバケ屋敷に走っていってしまった。これはいったいどういうことなのだろう。作者がSF的な思考実験について,まるきり知らなかったとは思えない。単なる好み,あるいは映像化しやすい(金もうけしやすい)構成にした,とかいう判断もしたくない。

 最近の科学と文学,いったいどうなっているのやら。
 ちょっといくつか手元の素材をたどってみよう。

先頭 表紙

烏丸は『パラサイト・イヴ』読んで,『動物のお医者さん』の漆原教授がおなかがつかえて出られなくなった実験室を思い出しました。 / 烏丸 ( 2000-10-20 00:53 )
えぇ、その部分が... ではなくて、研究室に付属してた物置みたいな誰も立ち寄らないスペースがあって、そこでうちの助手があんなことやって、そんでもってそこの廊下の...みたいな、なんというか部屋の配置とサイズとかが妙にはまっただけでして。 / もう本を読んだ時の記憶はない マイケル ( 2000-10-19 22:06 )
美奈子さま……そんなわくわくされてしまいますと,ジョウント! と一声,銀河の彼方へ逃げ出したくなってしまいます。なにぶん↓にも書いたとおり文系おばかの烏丸,「科学を考える」のでなく「科学と文学を考える」,しかも「考え」ではなく「素材」の提供,と第1回めから逃げの手は万端。ほかのマンガ評などとまぜながらやっていきますので,内容がともなわない場合は気がつかないふりをしてやってくださいませ。 / 烏丸 ( 2000-10-19 12:43 )
エルさま,烏丸は文系人間なのに,気がつくと理系人間のまっただなかで仕事をするはめにおちいって,たっぷりおばかさんになった気分(気分だけか?)に首までひたっています。もう十数年。 / 烏丸 ( 2000-10-19 12:38 )
マイケルさま,「大学のゼミ室に似ていて」……やはり,夜になるとシャーレの中で培養細胞がぶつぶつとつぶやいたりするんでしょうか。 / 烏丸 ( 2000-10-19 12:35 )
待ってました、こういうシリーズ!わくわく。学生の頃、レムには夢中になったなぁ。全然よみきれてはいなかったと思うけど。今、なぜか手元に英訳版を持ってきています。SolarisとReturn from the Stars(『星からの帰還』)。いずれ翻訳なのに、どうして日本語をもってこなかったのか。荷造りの時、どうにかしていたとしか思えません(苦笑)。 / シドニーの陽のもとに ( 2000-10-19 07:05 )
文系の私には科学的な記述の所はよく分からなかったけど、ちょっぴりお利口さんになったような「気分」に浸らせてくれた本だったなぁ。 / エル ( 2000-10-19 00:40 )
研究室の描写が僕がいた大学のゼミ室に似ていてちと怖かったです。 / マイケル ( 2000-10-18 23:47 )

2000-10-18 マンガ読み取りの基本に還るためのイチオシ 『漫画原論』 四方田犬彦 / 筑摩書房(ちくま学芸文庫)


【『がきデカ』の主人公が「コマわり君」と名付けられているのは,偶然ではない。】

 昨今はどうだか知らないが,たとえばロシアの田舎のお婆さんに初めて映画を見ると,何がなんだかわからない,ということがあるそうだ。たとえばモンタージュという概念が理解できないのだ。
 これと同じように,マンガを読みなれてない世代には,マンガを評価する,しない以前に,マンガが読めない層がいる。ページをどちらにめくるか,コマをどの順に読むか,風船(吹き出し)の文字が何を表すか,それがもうわからない。
 つまり,マンガの文法を知らないのである。

 本書は,何のケレンもないタイトルが表すとおり,決して抱腹絶倒に面白い本というわけではない。どちらかというと,古文,漢文の教科書に近いかもしれない。内容を一言でいえば,マンガを形作る文法について,古今の作品から豊富な例を挙げつつ分類,分析する,ありそうで実はあまりなかったマンガの系統立った表現論である。

 たとえば,手塚治虫作品において,「コマ」はいかなる働きをするか。また,大島弓子作品がそれを逸脱する効果は。
 動きの速さを表すために,石森章太郎はいかなる「スピード線」を用いたか。どおくまんは。永井豪は。逆に,大友克洋がスピード線を可能な限り排したのはどのような効果のためか。
 登場人物の言辞を表象する際に用いられる風船(吹き出し)はどのような役割を担い,どのように進化してきたのか。逆に,一部の作品が,この風船を利用しないことで得られた効果とは。
 登場人物の内面を表象するものとしての鼻の変遷は,目の系譜は,吐息や汗の記号としての効果は。
 などなど。

 こういった基本的な文法の解析に加え,巻末に添えられた,3つのテーマ追求型の分析がまた興味深い。
「シャアウッドはどこへ行ったか ― 漫画に見る〈原っぱ〉と路地」
  子供たちがメンコ遊びをした土の道路や土管にもぐって探検ごっこにふけった原っぱは?
「偉大なる旅行家の猿 ― 『西遊記』はどう描かれてきたか」
  マンガ史に,これほど悟空が何度もたち現れていようとは!
「カタストロフとその後 ― 廃墟としての未来社会の映像の変遷」
  手塚治虫の各作品から漂流教室,北斗の拳,ナウシカ,AKIRAまで。

 以上のように,多くのマンガファンにとって,ごく基本的でありながら,必ずしも明確な意識を持たずに読み流してきたあらゆる描画手法の意味について,本書は根源的な問いを重ね,読み手をして自覚的なマンガ読書にいざなう。

 ただ,1点,難点と思われるのは……さすが「学芸文庫」と銘打たれるだけあって,400ページの文庫本が1,200円。これは,なあ。

先頭 表紙

(まじめな話)新書出版ブーム(「出版」のブームであって,売れたかどうかは?)をうけた形で,光文社,学研,新潮社などからノンフィクション文庫のラインナップの創刊が相次いでますね。ノンフィクション文庫は,いい本が安く手に入ることも少なくないけど,バカ本が圧倒的に多いし(とくに文庫書き下ろし),足が早い(評価が確定する前に品切れになりやすい)ので,いやだなあ。角川あたりもシリーズの用意してますかね。 / 烏丸 ( 2000-10-19 12:48 )
『漫画言論』は今年のうちに角川文庫から1,300円で出るに違いありませんぜ。 / 憶測・30円 ( 2000-10-19 03:03 )
よかったわね『漫画原論』ちゃん。こっそり夜のうちにシークレット価格を付けておいたのよ。 / 烏丸 ( 2000-10-18 19:18 )
これは、なあ、バイト君。1,200円の「約束」でもするかなあ、バイト君。「今夜はゲレンデにドライヤーの熱風をあてるのを我慢します」 / 約束・2円 ( 2000-10-18 14:23 )

2000-10-17 [雑学] お試しください,数字遊び

 ちょっと紅茶を入れて,気分転換いたしましょう。電卓片手に,お験しください。

【その1】

 「999999」を7で割ります。
   999999÷7=142857

 この「142857」を,足していきます。
   142857×1=142857
   142857×2=285714
   142857×3=428571
   142857×4=571428
   142857×5=714285
   142857×6=857142

 おわかりでしょうか?
 いずれも「1→4→2→8→5→7→」のチェーンになっています。

 出典は,数学者でもあった『不思議の国のアリス』の作者,ルイス・キャロル。


【その2】

 何か,お好きな3桁の数字(111〜999のうちどれか)を頭に思い描いてください。
   例:234
 それを2回繰り返した形の,6桁の数字を思い描いてください。
   例:234234

 その6桁の数字が,
   7で割り切れたら,恋愛運がたいへんラッキー
   11で割り切れたら,金運がたいへんラッキー
   13で割り切れたら,健康運がたいへんラッキー

 いかがですか?

 出典は,阿刀田高の新聞小説。

先頭 表紙

えーと,実地に試しそうな方はもう電卓を叩き終わったころかな? では,【その二】のタネあかしです。7×11×13=1001ですから数字3つが2回繰り返した形の6桁の数字は必ず7でも11でも13でも割り切れる,というわけ(たとえば234234は234×1001ですものね)。 / 烏丸 ( 2000-10-19 12:15 )
レオナルド・ダ・ビンチは,解剖や男色について異端審問にかけられるとヤバい,ということから,手記を鏡文字で書き残しました。……って,彼は左利きで,悪魔の左手と称されたくらいなんだから,鏡文字なんて暗号でもなんでもないもの,見りゃあ読めただろうに? ちなみに,烏丸が昔ダ・ビンチについて短文書いたときは,やはり鏡文字で書きました。その当時はまだワープロなんてなかったのでもちろん手書き。慣れればどうってことありません。 / 烏丸 ( 2000-10-18 12:38 )
ルイス・キャロルは,家中に温度計をぶら下げて,室温が均一になるよう気を遣ったそうです。びょーきです。友人や近所の娘(5〜10歳くらい)を誘い込んで,劇の衣装(コスプレだな)やフルヌードで写真を撮りまくっています。やっぱりびょーきです。んで,少女たちが大人になりかかると,お別れの手紙を書いて二度と会わない。てっぱんびょーきです。 / 烏丸 ( 2000-10-18 12:32 )
そういえば、ルイス・キャロルは文字を鏡に映したように逆にすらすら書けたとか・・・本当に鏡の国からきたのかも。 / とむじい ( 2000-10-18 12:26 )
ついでに、おhにゃららさま、「ハハハン、ハ、泣けてくる〜ぅ」は、あややのカラオケ頻出でございやす。 / あやや ( 2000-10-18 06:45 )
すご〜い。試すのに電卓持ってきてしまった私は数学赤点常習犯・・。 / いまだに50点以下の人生あやや ( 2000-10-18 06:44 )
4つの異なる数字からなる4桁の数を考えましょう。この4つの数字を並べ替えてできる、最大の数から最小の数を引き、その答でまた同じ操作を繰り返します。3桁になったら頭に0をつけて繰り返します。すると、最大7回の操作で、どんな数でも6174という数になります。この数をカプリカ数といいます(本当)。 / 狼少年ポタ ( 2000-10-18 01:47 )
おーっ!全部割りきれた。。人生バラ色〜♪でも、すごいですね。発見したのは阿刀田高氏なんでしょうか。私は『だけど数字にゃ、ハハハン、ハ、泣けてくる〜♪』タチなもんで、見当もつかないんですが、そのミチでは朝飯マエのことなんでしょうかねぇ?? / ほにゃららハクション大魔王 ( 2000-10-18 01:10 )

2000-10-17 極私的マンガ評論のイマイチ 『あの頃マンガは思春期だった』 夏目房之介 / 筑摩書房(ちくま文庫)


【一言。ガキの使いじゃあるまいに……】

 かつて,そうですね,20年ばかり前のマンガ評論の単行本というのは,それはもう,つまらんのが多かったのですよ。もちろん全部読んだわけじゃないから例外も多々あるでしょうが,たいていマンガを読んだり考えたりするのにそれほど手助けにならなかったし,楽しくもなかった。ひどいのになると戦前から話をおこし,滅びた大人マンガについて延々と述べ,真ん中あたりでやっと手塚治虫が出てきて,当時盛り上がっていた少女マンガ,萩尾望都や大島弓子あたりにベルバラ加えてやっと1ページで「少女マンガにも新しい潮流が見える」でオシマイ。山岸凉子や山本鈴美香なんて名前も出てこない。しかも,なにしろ文藝の側からマンガを評するわけですから,なぜこんな,と思うような妙な作品を題材にする。すでに『火の鳥』が何冊も出揃っていた時代に,手塚初期の『罪と罰』がどうこうと言われても。

 そんな中,両目をぴしゃんと叩かれたような気分になったのが,駒場祭ポスターや小説『桃尻娘』シリーズ,編み物本,宗教本などで歩く一人カルチャーセンター張ってた橋本治の『花咲く乙女たちのキンピラゴボウ』なるマンガ評論集でした。倉田江美や萩尾望都,大島弓子,大矢ちきらをプロの目から初めてきちんと評価したのがこれで,しかもこれより見事なマンガ評はいまだにあまり目にしません。
 『花咲く……』については,できれば別の機会に詳しく紹介しましょう。

 橋本治の影響下にマンガ評で出てきたのが,夏目房之介です。夏目漱石の孫で,あまり売れそうに見えないギャグマンガを発表したり週刊朝日のデキゴトロジーのページでマンガエッセイのようなものを担当したりしていた人物ですが,『花咲く……』の影響下に発表したマンガ評『消えた魔球』,これが実に面白かった。
 こちらも簡単にすませますが,要するに夏目はプロのマンガ家であることを生かして『巨人の星』や『あしたのジョー』など対象の作品を模写し,それによって作家の描線,コマ割りの分析を行う……画期的なやり方でした。

 さて,そこでちくま文庫の新刊『あの頃マンガは思春期だった』(マガジンハウス『青春マンガ列伝』改題)ですが,少なくともマンガ評に詳しくない方は,あわてて買ったり読んだりする必要はないと思います。

 これは『消えた魔球』に比べれば一種の退行で,妄想癖の強かった少年時代に読んだ作品がどう,性に目覚める頃に強い印象を受けたシーンがこう,イラストレーターしながら同棲を始めたころがああと,自分の青春遍歴とその時期その時期のマンガ作品の思い出を重ね合わせて紹介していくわけです。ところが,それがもう,つまらない。
 学生運動,フーテン,同棲ブームと,世代的には非常に濃い時期だし,マンガがどんどんメジャーになって対象年齢が広がった時期なのに,十分熟成していない世代論と中途半端なマンガ論を組み合わせた印象。個々の作品と時代背景というのは十分語るに足るテーマだと思いますが,それなら年寄りの思い出話みたいじゃなく,ちゃんと正面から語ってほしい。
 ぶっちゃけた話,夏目房之介の同棲から結婚にいたる苦労話やマンション買ったら管理会社がつぶれた話なんか読まされても,ねえ。

 というわけで,同じ夏目房之介ならぜひ『消えた魔球』を,と言いたいけど,これ,新潮文庫版が絶版なんですね。文庫が単行本より先に絶版って,珍しくないかな。ある程度版が大きくないと印刷がつぶれるからかもしれませんが,そんなこと言ってたら,マンガの文庫本のアイデンティティが……。

先頭 表紙

えーっ,そんなーっ。山崎先生ーっ。つるっつるっ。 / 口をあけただけの烏丸 ( 2000-10-19 12:17 )
『花咲く乙女たちのキンピラゴボウ』は品切れだそうです。残念。 / 山崎先生 ( 2000-10-19 04:54 )
あっ,斉藤さんっ。 / ぶぶぶぶぶ ( 2000-10-18 23:21 )
「濃ゆい」話…ううむ、聞きたいですねえ。 / こすもぽたりん ( 2000-10-18 14:20 )
ちょっと厳しすぎますかねえ。でも,この本に取り上げたマンガであの思い出話では,同時代の方々が泣く,てなもんです。もっとこゆい話がなんぼでもあるはず。 / 烏丸 ( 2000-10-18 11:04 )
改めて見てみれば、冒頭の「一言」、きっつい一撃でございますねえ。 / こすもぽたりん ( 2000-10-18 01:49 )
2ちゃんねるで匿名質問相手に朝までていねいにつきあってるの見ると,この本よりぜんぜん読めるのですよ。企画段階での編集との打ち合わせのミス,という気がします。せめてマンガ論:自分の思い出話の比率が2:1か3:1ならまだしも,これ,1:1か,ヘタすりゃ思い出話のほうがメインですものね。 / 烏丸 ( 2000-10-17 19:59 )
確かにこれはイマイチでした。夏目房之介ってば自意識過剰。偉い人の孫だとやっぱそうなっちゃうのかなあ。「あんたがどこの誰と何をしようが関係ない」と思いつつ、漫画評部分だけ拾い読みしました。 / 我輩はぽたである。 ( 2000-10-17 19:08 )

2000-10-17 1970年代黄金時代少女マンガのよくもあしくもイチオシ 『花の美女姫』 名香智子 / 小学館文庫


【おかまバーの華やぐ哀しさ】

 『大江戸死体考』の次がなにゆえ知る人ぞ知る『花の美女姫』なのか。
 理由は単純,前者の著者が氏家幹人なのに対し,後者の主人公が氏家家の者だからである。

 その主人公とは,万葉高に通う「氏家・美女丸・ソンモール(尊猛流)・ド・ロシュフォール」,「氏家・姫丸・カーモール(華猛流)・ド・ロシュフォール」なる双子の兄弟。日仏ハーフの2人は身長は190cmを越え,黄金のロングヘアプラス青い瞳の超美形にして知力,体力,家柄などなどを兼ね備えた……要するに,『エースをねらえ!』のお蝶夫人をさらにとんでもなくしたような連中である。そして,彼らの周辺の取り巻きたちもまた,まばたきで風を起こす程度には絢爛なキャラがそろっている。

 『美女姫』シリーズは,1970年代後半の別冊少女コミックに,数か月に一度,ぽつりぽつりと発表された。この時期の別冊少女コミックといえば萩尾望都,大島弓子,竹宮恵子,倉田江美,樹村みのりら,いわゆる高踏派の台頭期であり,「男も少女マンガを読む」「少女マンガは文学を越えた」などの論調の真っ盛りであり,またその中心的位置に別冊少女コミックはあったのだった(もっとも,編集部サイドはマニアに受けることをにがにがしく見ていたらしく,たまたまその少し後に会った編集部の役職者は「おまえらみたいな読者はいらん」「いるのはベルバラやキャンディキャンディだ」とかなり厳しいモノ言いだった)。

 名香智子の作品はそんな中にあり,およそこの世のものとは思えない美形(という設定)の双子の兄弟に,レースの学生服にレースのハンカチ,大邸宅,過剰なまでのファッショナブルな設定……要するに,少女マンガの王道をちょっと通り越したタカラヅカ的世界を展開したのだった。しかし,なにしろ周囲が萩尾,大島の時代である。自然,作者,読み手ともに一筋縄では片付かないものが残る。
 この作品は目の中に星が飛び交い,背景には花や点描が乱れるいわゆる少女マンガのそれもかなり極端な絵柄で描かれている。内側に素朴でナイーブな少年少女の恋愛物語があり,けばけばしい美形(の設定)たちの荒唐無稽で様式的な会話の舞踏会がそれをくるむ入れ子構造で,結果的に極上の少女マンガとそのパロディが同時進行するような作風を持つにいたる。
 したがって,こんな美形(の設定)なのにここまで,と気の毒に思われるほど酷いギャグもあれば,大胆なまでに悲惨な物語も用意される。とくにソンモール,カーモールがほとんど登場しないSF仕立ての第3巻は陰惨だ。もともと,この『美女姫』シリーズは,主人公の双子を立てながら,実のところ周辺の若者たちを描くサイドストーリーがメインなのだが,その常連でやはり美形扱いのアーリン(アンリ・ド・シャルトル)を主人公に,彼が最後には顔を焼き,片足を失うにいたる救いのなさ。

 つまり,もともとが真っ正直なシリアス少女マンガとそのパロディの重ね着の形で成立した『美女姫』シリーズはその二重構造ゆえサザエさん化することができず,作者のサジ加減一つでどう転ぶかわからないものだったのである。それを安定してないと見るも,常連キャラたちによる一大コスプレ大会と見るも自在。
 そんな堂々たる危なっかしさの振幅が,本シリーズ最大の魅力かもしれない。

先頭 表紙

当時は,昼メシ代を少女マンガに投入し,水飲んで生きておりましたからー。 / 烏丸 ( 2000-10-18 11:40 )
烏丸様ったら、私が10代に熱中したマンガをよーくご存知ですね!はい、ソンモールとカーモール、楽しく読んでいました。別コミは毎回買っていました。萩尾望都、竹宮恵子、大島弓子が「新感覚派」なんて呼ばれていたような。。。 / たら子母 ( 2000-10-17 22:15 )
をを,お玉さまをお持ちとはさすがですね。岸裕子はミルクボーイブルースも大好きだったのです。 / 烏丸 ( 2000-10-17 20:01 )
仰る通りですわね。アチラの玉三郎ちゃまの本もわたくし持っておりましてよ。けれどもアチラは玉三郎ちゃんの真剣さが楽しかったですわ。美女丸様&姫丸様の方が、はちゃめちゃぶりが面知ろうございますヮネ。 / お蝶夫人の従姉妹 ( 2000-10-17 19:14 )
お蝶夫人の従姉妹さま,いらっしゃいまし。この絢爛豪華さに匹敵するのは,岸裕子の玉三郎シリーズくらいでございましょうか。 / 烏丸 ( 2000-10-17 14:41 )
わたくしこの本、持っております!非常に夢夢しい華やかな世界の中にパロディも加味されて、非常に高尚なものですワ。かの子さまに憧れましたもの。ホホホホホホ / お蝶夫人の従姉妹 ( 2000-10-17 08:19 )
下の『大江戸……』だけアップするのはあまりといえばあんまりなので,急遽用意いたしました。内容は後で手を加えてごまかそうっと。 / 烏丸 ( 2000-10-17 02:14 )

2000-10-17 バッドテイスト本のスーパーイチオシ 『大江戸死体考 人斬り浅右衛門の時代』 氏家幹人 / 平凡社新書


【花のお江戸は今日も死体日和】

 法医学や警察・検察関係の書物を好むのは,この烏丸,以前より少々含むところがあって……では,ない。文学や漫画は好もしいが,それらでは得るのが難しい非デコラティブでソリッドな手応え,それが得たい夜には法医学本が最も手ごろなのだ。抽象的な言い方ではあるが,恋愛感情よりは論理,論理より鉱物,鉱物より死体について読むことが癒しになる精神状態もある。
 
 氏家幹人は上野正彦の対談集『死体を語ろう』(角川文庫)にも登場しており,本「くるくる回転図書館」でも紹介済みではある。その,歴史家・氏家幹人の,いわば本領発揮の一冊が本書であるが……。
 しかし,烏丸,修行のいたらなさをしみじみと感じ入る一冊でもあった。これは,だめ。もう,どうにも気持ちが悪い。食事中に読めないとか,そんなレベルでなく(125文字,略)ほどの気持ち悪さであった。

 本書の目的は,江戸期の死体の扱いについてのあらゆる資料にあたり,従来我々が目をそらしてきた当時の思想,風俗,習慣に光を当てることにある。

 以下,少々気色の悪い表記が続くので,気の弱い方はご注意。

 まず,本書は,江戸期の水辺には水死体が決して珍しいものではなかったこと,また自殺者の死体で腐臭あふれる井戸水について語る。そして,処刑された死体の胴について,それを縛りつけ,刀で一刀両断にする様斬(ためしぎり)という風習があったことを紹介する。これを任務としてあたった一族が八代にわたる山田浅右衛門,いわゆる「人斬り浅右衛門」(朝右衛門とも)であること,そして彼らがいかにしてその任務を負うようになったか,その仕事や収入はいかなる具合であったかを詳細に説明する。

 この「詳細に」がクセモノ。
 山田家は浪人であり,浪人であるにもかかわらず諸候から多くの弟子を取り,地方に出張して処刑の任にあたることもある,いわば名誉職でもあった。つまり,様斬をみごとにしてのけ,よく切れる刀を持つことは武士の誉れでありながら,同時に泰平の世においてはそれができない武士が実は多かった,ということであり,まず死体(ときには生きた二つ重ね)を一刀両断に切って落とす技術,さらにどこをどう切ればどうなるかという経験に基づく知識,そして切った胴に手を突っ込んで肋骨のずれ具合などから切れ味をチェックして依頼主に伝え,さらに山田家が裕福だったのは処刑した罪人の死体を一括管理することで,様斬の素材を得るだけでなく,その脳や肝を薬として甕に溜め込んで薬として販売したためであり,この肝を得ることは金と名誉を得るため,処刑の折りにはむらがるようにして肝を取ろうとする輩が集う「ひえもんとり」なる一種の競技があり,しかし刑場では処刑の任にあたる者以外は刃物の携帯は許されないので,手で,しかも肝を手に入れられるのは一人だけなので,ほかの者は大変薬効のあるという踵の上部,アキレス腱のところの脂肪を,しかしそれは持ち運びの効かないものであるから,処刑と同時に走り寄って踵にかぶり付いて……。

 全編,延々とこの調子である。

 生肝を貯蔵するための蔵を用意し処刑者の胴や肝,脳を甕に溜め込み,幽霊の出る噂もあった山田家跡は,都内,K町からH町あたりで,現在は若い女性に人気のイタリア料理店になっているそうだ。気になる方は,ぜひ本書を取り寄せ,確認してはいかが。

先頭 表紙

ほにゃららさま,その通りでございます。光圀公も,時代が時代とはいえ,怖いことをなさったもよう。ちなみに,江戸時代ともなると,泰平の世,武士といえども実際に人を斬る経験は少なく,だからこそ記録に残されたのでしょう。地方の藩では,罪人の処刑が決まっても,処刑の担当者はいないわ,お作法はわからないわ,で大変だったという話すらあるそうです。 / 烏丸 ( 2000-10-17 23:31 )
烏丸様。こちらでございますね。。噂の、光圀君の知られざる過去がセキララに語られている本というのは。。 / ほにゃらら噂のチャンネル ( 2000-10-17 22:26 )
き、機械の烏丸さんの方が20%怖い! / 誰か食べてあげてよアオちゃんの「虫鍋」 ( 2000-10-17 21:09 )
椎茸,食べ放題? カバンの中におみやげのびちびちサンマ。 / アオ烏丸ちゃん ( 2000-10-17 20:03 )
そうなのか、石岡君。いや、むしろ、兄にいじめられる前に「かわうそに言うぞ」と言ってやるのだ。 / 椎茸 ( 2000-10-17 19:11 )
どどどどどうだったかなあ,なにしろ僕は石岡なので記憶がなくて,ここここまったなあああ。 / 石岡かずたりん ( 2000-10-17 14:47 )
K町からH町あたりとは、麹町から平河町あたりなのかい、石岡君? / 御手洗ぽたりん(お便所帰り) ( 2000-10-17 14:02 )
相変わらず死体がお好きでいらっしゃりますなあ。 / こすも十兵衛 ( 2000-10-17 13:44 )
もうー,「み」さんったら,こゆいつっこみ。それだけでなく,日記のほうにまで……。 / 烏丸 ( 2000-10-17 12:01 )
ふふふ。きっとそのお店では、ポークリエット・トマトソース添えなどを皆さん楽しく味わっているのね。 / ( 2000-10-17 04:17 )

2000-10-16 [雑談] 子供向け伝記本にボブ・マーリー,エルトン・ジョン

 週末に散策したとある本屋は,マンガ本のコーナーのすぐ隣が児童向けの本のコーナーで,マンガの棚をチェックしていると,つい勢いでエジソンだのリンカーンだのの伝記のコーナーまで目がすべってしまう。

 そこに,妙にひっかかるものがあって……。「スティング?」

 映画「スティング」のジュブナイルだろうか。ところが,その隣が,やっぱり極太明朝体で「エルトン・ジョン」。

 なんと,明らかに子供向けの伝記本の中に,「スティング」や「エルトン・ジョン」の名前があるのだ。偕成社の「伝記世界の作曲家」というシリーズらしい。調べたところ,
 〈1〉ビバルディ―バロック音楽を代表するイタリアの作曲家
 〈2〉バッハ―バロック音楽を集大成した近代音楽の父
 〈3〉モーツァルト―オーストリアが生んだ古典派の天才作曲家
 〈4〉ベートーベン―古典派音楽を完成したドイツの作曲家
 〈5〉シューベルト―歌曲の王といわれるオーストリアの作曲家
 〈6〉ショパン―ピアノの詩人とよばれるポーランドの作曲家
 〈7〉チャイコフスキー―19世紀ロシアの代表的作曲家
 〈8〉ドビュッシー―印象主義音楽をつくりあげたフランスの作曲家
 〈9〉ドボルザーク―チェコが生んだ偉大な作曲家
 〈10〉グリーグ―ノルウェーを代表する民族音楽の作曲家
と,ここまではいかにもクラシックの代表的作曲家として音楽の教科書にも載ってたでしょ,なのに,この後ニューヨークフィルの
 〈11〉バーンスタイン―「ウエストサイド物語」の作曲者
をはさんで,後は一気に,
 〈12〉ジョン・レノン―永遠に語りつがれるスーパースター
 〈13〉ボブ・マーリー―レゲエを世界に広めた伝説のミュージシャン
 〈14〉エルトン・ジョン―輝き続けるポピュラー音楽のトップスター
 〈15〉スティング―熱帯雨林の保護を訴えるロックスター
なのである。

 やるなあ偕成社。しかも,ポール・マッカートニーでなくジョン・レノンというのも味があるし,その次がボブ・マーリーというのがまたシブい。スティングが出てくるのも,よくわからないが,シブい。ポール・サイモンやバート・バカラックでは,伝記的要素が足りないのだろうか。

 この15冊は1998年の春と1999年の春に分けて発売されており,これで打ち止めなのか,この後も走り続けるのかわからないが,思わず応援したくなってしまった。

先頭 表紙

えっ,1冊2,000円もすんの。シャレで買うにはちょっと考えちゃう値段だなあ。 / 烏丸 ( 2000-10-17 20:05 )
……だんだん,1冊は買ってみないとしょうがないか,という気になってまいりました。しかし,1冊となると誰にするか。ふーむ。 / 烏丸 ( 2000-10-17 02:19 )
中身読んでないのでアレですけど,まずそういうアブない話はカットされているんじゃないでしょうか。いくらなんでも偕成社,そこまでアブない橋は渡りますまい。想像するに,海外の少年少女向け伝記シリーズを丸ごと版権買ったのでは,という気がするのですが。紀伊国屋のデータベースに,「原題」と横文字でありますし。 / 烏丸 ( 2000-10-17 02:17 )
そのチャイコフスキーの伝記には彼が同性愛者だったことは書かれているのでしょうか?ムッシュさんのおっしゃる通り、ドラッグやってたミュージシャンもいますしね。彼らアブナイ人たちを入れたのは、親の関心を集めて売上を伸ばしたいからなのか、それとも偉い人の定義が変わって「商業的に成功した人」つまり、芸術家というより一代で財産を築いた人、という意味で選ばれたんでしょうかね。 / たら子母 ( 2000-10-16 22:32 )
……あっ,今ごろ読んでるおばか烏丸。ムッシュさまの本日のお題がセルジュ・ゲンズブールだったのですね。これは失礼いたしました! / 烏丸 ( 2000-10-16 19:43 )
伝記とはぜんぜん関係ありませんが,義弟(年はあっちが上だけど)のお友達が,男の子が生まれて,やれうれしや,かねてつけたいと思った名前が付けられる,と長男は「シド」クンという名前にしたそうです。漢字は失念。で,烏丸が,「げげーっ,シド・バレット?」と聞いたら,平然と「うんにゃ,シド・ヴィシャス」。 / 子供の名付けは人のことを笑えない 烏丸 ( 2000-10-16 19:09 )
>鳥丸殿!その他予備軍は教育上良くない人が・・・・?ドラッグ!自殺とちょっと重すぎますよね〜! / ムッシュ ( 2000-10-16 18:47 )
これはムッシュ,いらっしゃいませ! ゲンズブールというと,セルジュ・ゲンズブールでございましょうか。これはまた,なんともシブいところを。 / 烏丸 ( 2000-10-16 18:22 )
そうなんですよ,フィー子さま。ポールでなくてジョン,なのは,もう死んでるからか……と思えばエルトンやスティングですから。ジャニス・ジョプリン,ジミ・ヘンドリックス,ブライアン・ジョーンズ,ジム・モリソン,ビル・チェイス,シド・ヴィシャス,イアン・カーティスなどなどたちは,作曲家といえるかどうか……(その前に,伝記として子供向きかどうか? それはさておき)。 / 烏丸 ( 2000-10-16 18:19 )
良い事きちゃった!ありがとうございます!残りの二人もお空に行かれたら出たりして?でもちょっと薄いかな!ゲンズブールはないでしょうね・・・・! / ムッシュ ( 2000-10-16 18:11 )
へえ、ショパンに混ざってボブ・マーリーか。すごいなあ。伝記といえばキュリー夫人やエジソンって世代にはずいぶん新しいような気がしてしまうけど。死ななくても伝記に載ってしまうのですねえ。ほほぅ・・・。 / フィー子 ( 2000-10-16 18:00 )

2000-10-15 [雑談] ゆよーんやよーんゆやゆよん


 文庫化されて手に入りやすくなった渡辺多恵子『ファミリー!』(アメリカのある家族を舞台にした,ほのぼのコメディ。元気の出るアットホーム系としてはオススメ)を取り上げようかどうしようか読み返していて,ふと気になったことがあります。少年サンデー連載中の『からくりサーカス』でも確かそうだったし,『ブラックジャック』にもあったような気がするのだけど……。

 漫画では,サーカスの空中ブランコ乗りって,よく死にますよね。たいてい現在進行形の話でなく,「昔,父が」「かつて,恋人が」とかいう設定なんですが。

 サーカスの空中ブランコって,そんなに死ぬものなんでしょうか。

 もちろん,地上数メートルから十数メートルくらいの高さでくるくるびゅんびゅんやってるのは,地上で道化やってるのに比べれば安全なわけはないだろうけど,でも,少なくとも練習中は下にネットを張ってるし,そもそもが高いところに強く,体の柔軟な人がやっているわけで,よしんば十メートルの高さで手がすべったとしても,素人のようにまっすぐ頭から落ちるということはない,と思うわけですよ(現に,演出でネットに落ちるときは,お尻から落ちるようにコントロールできている)。

 まあ,歴史上,そんな統計データはないだろうから,確かめようはないのだけど,危険に見えるのと,プロの仕事で本当に死ぬことは,違う次元の話なんではないかなと思うわけです。

 もちろん,何十年も昔の,人権が軽んじられていた時代はわかりません。
 そのころは,たとえば鉄道員だって,車掌は走行中に落ちるわ,連結機ではさまれるわ,とけっこう死ぬ職業だったそうだし,それ以降でも,たとえばF1レーサーにいたっては,車体の安全技術が高まる前は,歴史に残る世界チャンピオンでレース中の事故で死んでないやつはいるのか,というぐらいだったし(本当。引退まで生き残れるようになったのはニキ・ラウダやジャッキー・スチュワートのころからでしょうか?)。

 ……ん? こうしてみると,空中サーカスでの事故死多発も,やっぱりありなのかな?

先頭 表紙

ちなみに,賢治かな犀星かな朔太郎かな,と思っているところに「草野心平です」と言われたら,「あ,そうかぁ!」という人も3%くらいはいると思う。 / いちめんのからすまる ( 2000-10-16 17:21 )
そうだよ!!中也だよ!!(←自分に言ってる。)……あー、赤面。 / 美奈子 ( 2000-10-16 16:53 )
「ほとぼり」というのは,ポルトガル語の「ホット」+城の「堀」がなまったもので,真田雪村がキリシタンから得たアイデアをもとに大阪城の外堀の内側につくられたものです。つまり,堀に焼けた石を落として熱湯にし,忍者などが入り込めないようにしたわけです。それが冷めるまで待つことを「ほとぼりがさめる」といったのですが,徳川側は圧倒的な武力を背景に「さめるまで待とうほとぼり」と言っていたのが,のちに「泣くまで待とうほととぎす」に。すみません。全部,ウソです。 / 烏丸 ( 2000-10-16 13:23 )
そうそうそうそうそう! ティムですティムです。「キャンディキャンディ」以外にもいくつか読んだんだけど、あんまり印象に残ってないんですよ〜。「ジョージイ」なんてどんどん好きな人が死んじゃって、読むのが辛かったもーん。ところで「ほとぼり」ってなんなのか教えてくれないと眠れない・・・。 / よちみ ( 2000-10-16 13:12 )
(今すぐにタイトルを直すのは恥ずかしいので,しばらくたってほとぼりがさめてから直しておこう。ところで,ほとぼりって,さめてもほとぼりなのであろうか。それともさめたら何かほかのものに変ずるのであろうか) / 烏丸 ( 2000-10-16 11:46 )
お仕事にならないと困りますね。というわけで,出展は汚れちまった中也くんでありました。ちなみに,あばうとな記憶のまま書いてしまったので,表現,正確ではありませんでした。「サーカス」の一節,正しくは「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」だそうであります。 / 烏丸 ( 2000-10-16 11:39 )
その擬態語は「くらむぽんはかぷかぷわらったよ」の宮沢賢治?室生犀星?それとも朔太郎でしたっけ?……あー思い出せない!一日中気になって仕事にならないかもしれません〜。 / 美奈子 ( 2000-10-16 06:33 )
よちみさま,それは『ティム ティム サ−カス』という作品でしょうか。不勉強にして読んだことはないのですが……。 / 烏丸 ( 2000-10-16 00:12 )
そういえば、いがらしゆみこにもサーカスの漫画ありましたよ。題名忘れた〜。「なんとかサーカス」(←そのままやんけ!)。その中でも空中プランコで人が死んでました。あれはネットを張らずにショーをしたんでした。 / よちみ ( 2000-10-15 23:43 )

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