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烏丸の「くるくる回転図書館 駅前店」

 
今後、新しい私評は、
  烏丸の「くるくる回転図書館 公園通り分館」
にてアップすることにしました。

ひまじんネットには大変お世話になりましたし、
楽しませていただきました。
その機能も昨今のブログに劣るとは思わないのですが、
残念なことに新しい書き込みがなされると、
古い書き込みのURLが少しずつずれていってしまいます。
最近も、せっかく見知らぬ方がコミック評にリンクを張っていただいたのに、
しばらくしてそれがずれてしまうということが起こってしまいました。

こちらはこのまま置いておきます。
よろしかったら新しいブログでまたお会いしましょう。
 

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2001-04-16 [続報] マスコミのインターネット報道
2001-04-15 最近読んだ本 その三 『新・本格推理01 モルグ街の住人たち』『絹の変容』『オウムガイの謎』
2001-04-15 最近読んだ本 その二 『エラン』『バカのための読書術』『辺境警備』ほか
2001-04-15 最近読んだ本 その一 『九マイルは遠すぎる』『ストーカーの心理』『春の高瀬舟 御宿かわせみ24』『私たちは繁殖しているピンク』
2001-04-14 マスコミの誤報について 最終回 報道という名のバラエティショウ
2001-04-13 マスコミの誤報について その六 蓼喰うバグも好き好き
2001-04-12 マスコミの誤報について その五 舶来パソコン好み
2001-04-11 マスコミの誤報について その四 朝日新聞一面を飾ったハードウェアたち
2001-04-09 マスコミの誤報について その三 専門家という情報源
2001-04-08 マスコミの誤報について その二 報道の本質について少し考えてみる


2001-04-16 [続報] マスコミのインターネット報道

 
 先のマスコミの誤報についての一連の書き込みの中で,朝日新聞のインターネット報道に漂う悪意について簡単に取り上げたが,14日朝刊にその典型的な例を見かけたので簡単に紹介したい。

 まず,1面にいきなり「くらし ネット常時接続の落とし穴」。常時インターネット接続された自分のパソコンを経由して,誰かが米国海軍のネットワークに侵入しようとしていた,というものである。
 常時接続の無防備なシステムが不正アクセスの温床になるというこの記事の指摘そのものは間違いではない。しかし,「攻撃先に被害が出た場合は損害賠償を請求される可能性もある」という一種の脅し(まぁでもそのくらいの認識はあったほうがよいが)や「記者も不正侵入された……見覚えのない検索ソフトが走っていた。……その後パソコンの動作は次第に緩慢になり,壊れてしまった」という意味不明な一節(侵入してきたソフトが「検索ソフト」であると識別できて,壊れてしまう(何が?)まで放っておくとは?)など,インターネット初心者に対し「インターネットは怖そう」としり込みさせかねない書き方ではないか。

 政治面(4面),自民党総裁選についての記事で,「小泉氏,ネット使い対話も」。
 インターネットが浮動票と結びついているという認識に基づいた記事で,とくに異論なし。

 経済面(11面),「『パソコン拝借』新商売 何万台もつなげばスパコン級」。インターネットを用いて何万台というパソコンに分散処理をさせ新薬開発などに利用する,という内容。「スパコン」という略語が不快だが,内容に異論なし。
(ちなみに,朝日新聞の科学欄担当者は「分散処理」というキーワードが大好きらしい。なぜこんなに似たような内容の記事を何度も,というほど紹介されている。)

 同じく経済面(12面),「携帯メール一発OK ジャストシステムがソフト開発」,見ての通りの内容で異論なし。ただ,「こんな超ムカツク変換なくしました」という写真キャプションは少々悪ノリ。

 さて,問題の社会面(39面),「ネット掲示板 日生,管理者に削除要求 東京地裁に仮処分申請『社員を中傷』」。
 匿名掲示板「2ちゃんねる」の内容に対し,日本生命が記載の削除を求める仮処分を東京地裁に申請した,というもので,管理者のひろゆき氏の対応が注目されている一件だが,記事は「匿名性が強いネット上の書き込みには……一定の規制を求める声が出ているが,表現の自由との関係もあって,書かれた側がとれる有効な対抗手段は現在少ない」と,ニュートラルから微妙に日生寄りである。
 ところが,まったく偶然,社会面(37面)の特集は,自民党のメディア規制に対するアンチ記事で,「『有害番組」法規制狙う自民 『子ども』旗印に攻勢」「矢面の民法連懸念『ヒトラーのよう』」「文科相,PTAに『広告主不買の勧め』」と法規制に対するアレルギー剥き出しだ(さらに偶然だが,25面の天野祐吉の連載コラム「CM天気図」も自民党の報道番組検証委員会に対する揶揄がメインとなっている)。
 つまり,これらからうかがえる朝日新聞の表現の自由についてのスタンスはこうだ,「新聞やテレビ局に対する法規制は止めるべきだが,インターネット上の匿名発言は法で取り仕切れ」……。ちょっと手前勝手が過ぎないか。

 なんてね,しゃっちょこばって書いているが,この日の朝日新聞朝刊の最大ヒットは社会面(39面)トップの「『日本の顔』何点? 自民総裁選,専門家が採点」だろう。
 4候補の採点表に並ぶ「専門家」のトップ,誰かと思えば漫画家のやくみつる(=はた山ハッチ)氏だ。専門家? なんの?

先頭 表紙

三茶さま,いらっしゃいませ。謙虚さが必要,というご指摘なら異論はありませんが,検証や批評に対してそれを持ち出すのはどうでしょうか。ちなみに烏丸はあらゆる宗教と宗教家のセリフがうさんくさくて苦手,石をもっての殴り合いのほうがまだしもです。 / 烏丸 ( 2001-05-06 01:53 )
「汝、過ちを犯したことなき者のみ、石もてこの女を打て」でしょう。 / 三茶 ( 2001-05-03 00:26 )
いえ,主義主張というのは多かれ少なかれそんなものであって,狂っているとかいないとか,そういう問題ではないと思います。問題なのは,スポーツ新聞やTVワイドショーはエンターテイメントであって,大手新聞はかっちりフェアな報道である,という受け手のほうの認識ではないでしょうか。教科書認定関連については,苦笑いするしかありません。 / 烏丸 ( 2001-04-17 11:16 )
烏丸さん、はじめまして。朝日新聞の見事な狂いっぷり(w はある意味、すごいと思います。最近でいうと教科書検定問題ですか。あそこまでいくともはや「赤旗」みたいな機関誌と変わらないレベルですな・・・。いや恐ろしい。 / ZephyrFalcon ( 2001-04-16 20:09 )
誤報ともコンピュータともぜんぜん関係ないけど,河島英五が死んでしまったなあ。 / 烏丸 ( 2001-04-16 15:52 )
最後の「専門家」というのは,つまり,「各界の専門家に,首相候補4人のアピールを(ファッションなど)その分野から採点してもらう」という意味なのはわかっちゃいるのですが,タイトルだけ見ると。 / 烏丸 ( 2001-04-16 11:44 )

2001-04-15 最近読んだ本 その三 『新・本格推理01 モルグ街の住人たち』『絹の変容』『オウムガイの謎』


『新・本格推理01 モルグ街の住人たち』 監修 鮎川哲也,編集長 二階堂黎人 / 光文社文庫
 編集長が『本格推理1 新しい挑戦者たち』以来の鮎川哲也から二階堂黎人に変わって第1冊目。掲載された作品はいずれもまぁまぁの出来で,たとえば20世紀初頭のロシア革命を背景にした「暗号名『マトリョーシュカ』 ─ウリャーノフ暗殺指令─」など,アマチュアの手による本格ミステリとしてはこれ以上望むべくもない労作。しかし,応募原稿の枚数の上限が増えたことにもよるのか,全体に「労作」志向が強いこともまた確かで,小粒でぴりり,という手応えはなかった。
 それ以上にうんざりするのは,二階堂黎人の解説というか,お説教。ミステリを読みたいのであって,新興宗教のお勉強会に参加したいわけではないのだが。

『絹の変容』 篠田節子 / 集英社文庫
 寄生虫の本を何冊か紹介したら,どうやらそういうモノが好きと思われたらしい(好きなわけではない,と思うよ……多分),「この本は知ってた?」と知人が勧めてくれたのが本書である。レーザーディスクのように輝く絹織物,それは蚕の野種によるものだった……。バイオテクノロジー,アレルギーなど,当節風味を加味したパニックものだが,急いで書いたのか,なんだかさまざまな要素があわただしく駆け足でかき混ぜられた印象。この虫がなぜ怖いかも,ちょっとあれこれありすぎる。
 烏丸は大昔,貰い受けた蚕を育てたことがあるが,わしわしと桑をはむその底知れぬ食欲,成長,そして繭から出て飛ぶこともできずただまぐわって卵を産んで死んでいく虫の一生……本書の虫は危険,かつグロテスクだが,本当の恐怖とは,それが危険なのだからではなく,それが存在するからなのではないか。
 などとぶつぶつ言いつつも,なかなか面白い1冊であった。感謝。

『オウムガイの謎』 小畠郁夫・加藤 秀 / ちくまプリマーブックス
 オウムガイの本がそうそうあるとも思えないのに,ピーター・D・ウォード『オウムガイの謎』と同じタイトル。これは筑摩書房でなく,後から出した河出書房新社が悪い(しかも,同じ小畠郁夫監訳。なにやってんだか)。
 筑摩書房版は中・高校生向けに日本でのオウムガイの飼育の苦労をまとめたもの。ウォードの説と噛み合わない部分もあって興味深いが,青少年向けということを抜きにしても,ドキュメンタリーとしては圧倒的にウォード版のが上。

 ところで,オウムガイは鳥羽水族館(三重)での飼育が有名だが,池袋のサンシャイン国際水族館では先月来シーラカンスの標本が公開されている。これは,『寄生虫館物語 可愛く奇妙な虫たちの暮らし』の亀谷了先生が解剖に立ち合い,エラで手に裂傷を負いながらも新種の寄生虫を発見した標本が,よみうりランド海水水族館の閉館にともなってサンシャイン国際水族館に譲渡されたもの。
 家庭サービスかねて,明日はそのシーラカンスを見にいく予定。サンシャイン国際水族館は入り口のところに4.8メートルのリュウグウノツカイの標本もあって,それと再会できるのもまた楽しみ楽しみ。

先頭 表紙

まだまだいっぱいあったのだけど,時間切れ。またの機会に……。 / 烏丸 ( 2001-04-15 03:28 )

2001-04-15 最近読んだ本 その二 『エラン』『バカのための読書術』『辺境警備』ほか


『エラン』全2巻 新谷かおる / メディアファクトリー
 1989年,つまりバブルがはじける直前に連載された,「貿易」を題材にした作品である。「夢の独立国家をつくるため,少年少女が設立した世界最小の貿易商社」という設定が窮屈すぎたせいか,本格的に話が転がりだす前に終わってしまうが,新谷らしい大手商社との知恵合戦は見もの。
 以前,『砂の薔薇』の解説に宮嶋茂樹が登用されたという話を紹介したが,この『エラン』2巻の木原浩勝(怪異蒐集家)の解説がまた秀逸。その切れ味にはさっと鳥肌が立った。新谷という作家,一見,豪快な勝ち負けテーマの少年マンガに見えるが,実のところは掘り下げ可能な,複合的な作風なのだろう。とりあえず『クレオパトラD.C.』は必読。

『バカのための読書術』 小谷野 敦 / ちくま新書
 難しい本をどう読むか,どう選ぶか,といったテーマについてまとめた本である。とりあえず,この本に「バカ」にされる領域にいたるまでが大変だ。普通は,この本を読んでも,何を言われているかわからないだろう。
 本邦初「読んではいけない本」ブックガイドには爆笑。小林秀雄のほとんどすべて,とか,バタイユ,ブランショなんて確かに読みたがる時期があったよな,と顔が赤らむ(ただし,ここで「読んではいけない」とされているバタイユの『エロティシズム』は,中国人の処刑(広場で阿片をかがせてからよってたかって足をもぎ,胸をそぐ)の写真がそのまま掲載されていて,立ち読みする価値はあると思う)。『黒死館殺人事件』『ドグラ・マグラ』『虚無への供物』も「読んではいけない」そうだ。まぁ,先に読んでおくべき本は多いかな。
 とりあえず,読書家を自認する人は読んでみるとよいだろう。ただし,これを読んだバカの一部が,自分をバカと思わなかった場合は問題だ。こじれたバカは無敵。

『辺境警備』 紫堂恭子 / 角川書店あすかコミックス
 先の『バカのための読書術』で大島弓子,山岸凉子と並んでお奨めされていたので買って読んでみた。悪くはないが,これに「しびれる」には少し年をとりすぎたか,あるいは逆にまだ若すぎるようだ。

『なんでもツルカメ(上・下)』 犬丸りん / 幻冬舎文庫
 いわずとしれたおじゃる丸の作者のデビュー当時の作品。しかし,烏丸の好みはおじゃる丸よりむしろこの『なんでもツルカメ』のりんちゃんだ。連載当時のことがあれこれ思い起こされて懐かしい。

『写真美術館へようこそ』 飯沢耕太郎 / 講談社現代新書
 中断している「本の中の名画たち」のための資料,あるいは紹介する本の候補として選んだもの。悪い本ではないが,内容をだらだら紹介する以外に,取り上げる切り口見つからず。

『活字でみるオルセー美術館 近代美の回廊をゆく』 小島英熙 / 丸善ライブラリー
 同上。

『フローラ逍遥』 澁澤龍彦 / 平凡社ライブラリー
 同上,なのだけれど,ただもううっとり。著者晩年の作業,古今東西の花の図版75点を取り上げ,それぞれに典雅な文章を付したもの。
(つづく)

先頭 表紙

ふと,本文読み返して……中国人の処刑は『エロスの涙』ですね。なにをお馬鹿。 / 烏丸 ( 2001-04-19 12:15 )
あ,そういう意味なら納得ですが,逆に心配もないように思います。あれは明らかに写真の歴史における大物,大事件の羅列であって,自分がその域にすぐ達するようには思えません。絵を始めようという人が世界美術全集を見ても大丈夫,みたいなもんでは。 / 烏丸 ( 2001-04-19 12:14 )
どもども。大変なこととかどうとかというより、これから写真始めよっかな〜とい人が読むには作品がハイエンド。入門というより中堅向けかという印象がありまする / Hikaru ( 2001-04-18 13:25 )
Hikaruさま,いらっしゃいませ。……烏丸は歴史の教科書的に「ふんふんなるほど」と読んでしまいました。書かれていることがどんなに大変なことなのかわかっていないものと思われますが……。 / 烏丸 ( 2001-04-18 12:38 )
アカウントなくても、つっこみ書けるかな?「写真美術館へようこそ」は入門書と銘打ってますが、それにはちと強烈かも / Hikaru ( 2001-04-18 10:35 )
そうそう,『エラン』の解説を書いたという木原浩勝氏は,かの『新耳袋』の編者の1人であります。 / 烏丸 ( 2001-04-17 11:11 )
けろりんさま,とてもよい作品だとは思ったのですよ。ほかの作品も少しずつ読んでいくつもりですので,紹介していただけると幸い……。 / 烏丸 ( 2001-04-16 19:54 )
紫堂恭子はそのうち私も紹介しようかな〜なんて思っていたんですが。それなら「グランローヴァ物語」の方をいつか取り上げるかなぁ。 / けろりん ( 2001-04-16 17:05 )

2001-04-15 最近読んだ本 その一 『九マイルは遠すぎる』『ストーカーの心理』『春の高瀬舟 御宿かわせみ24』『私たちは繁殖しているピンク』


 新聞報道について寄り道したりしているうちに,取り上げるタイミングを逃した本がたまってしまった。いずれ機会をあらためてきちんと紹介したい本(およびイナズマ落としでゴミ箱に投げ捨てた本)を除いて,ざざざっと駆け足で紹介しておこう。

『九マイルは遠すぎる』 ハリイ・ケメルマン,永井 淳・深町真理子 訳 / ハヤカワ文庫
 ふと耳にした「九マイルもの道を歩くのは容易じゃない,まして雨の中となるとなおさらだ」という言葉から推論を展開し,なんと前夜起きた殺人事件の真相を暴き出す……という表題作でかねて有名な短編集なのだが,どういうわけか読もうと思い立つと書店店頭にない,そのうち失念する,ということの繰り返しでこの十数年すれ違いが続いていた。
 場末の小さな書店でようやくお目にかかれたのだが……。なァんだ,その短文だけじゃなくていろいろ推論の材料があったのね。おまけにその材料たるや,極東の島国の読み手にはまずわからないであろうシロモノ。
 まぁ,これは長年の期待が勝手に膨れ上がったせいだろう,アシモフ『黒後家蜘蛛の会』にも匹敵する佳編ぞろいではある。

『ストーカーの心理』 荒木創造 / 講談社+α新書
 腹帯の惹句(添付画像参照)が,「ストーカー自身が告白した赤裸々な深層心理!!」。……当人が自覚しているなら,すでにそれは深層心理とは言わないのでは?
 それはともかく,男性ストーカー2人,女性ストーカー2人との対話を詳細に紹介した本書,岩下久美子『人はなぜストーカーになるのか』,福島章『ストーカーの心理学』に比べるとストーカー心理の分類,抽出が荒っぽく,しかもどうも被害者よりストーカー寄りというか,どこかその言動を容認している気配があって少々ひっかかる。
 この3冊の中では『ストーカーの心理学』が一番お奨め。

『春の高瀬舟 御宿かわせみ24』 平岩弓枝 / 文春文庫
 神林東吾がうっかり外にこしらえてしまった(らしい)隠し子・麻太郎と再会し,その事件で母・琴江を亡くした麻太郎は後継ぎを得られない兄・神林通之進の養子となる……四方八方まるくおさまってご都合主義としても少々やりすぎではないか。あのご都合主義の権化,島耕作ですら隠し子ナンシーに自分が父であると告白しなかったというのに。
 とかいいながらはらはらお付き合いしてこれで24冊目,あと何冊読めるのやら。

『私たちは繁殖しているピンク』 内田春菊 / 角川文庫
 子育ては百人百色,細かいことにこだわらない親にはあれこれ参考になったりリフレッシュになったり。こだわる人は……お好きなように。
 食後すぐに濃いコーヒーや緑茶を飲むのは鉄分が破壊されてよくないのだそうだ。麦茶,ほうじ茶,番茶ならOKとのこと。なるほどね。
(つづく)

先頭 表紙

2001-04-14 マスコミの誤報について 最終回 報道という名のバラエティショウ

 
 このほか,コンピュータを扱った報道を見渡すと,実際,明らかな誤報,首を傾げざるを得ない記事が少なくない。というより,専門家が直接ペンを執った文章は別にして,ある程度突っ込んだ内容を記者がまとめた記事を見た場合,かなりの確立で奇妙な誤解や微妙なズレ,さらにいえばほのかな毒を感じることが少なくない(とくに,朝日新聞の「ネット」に対する悪意はかなり露骨だ)。

 気になるのは,コンピュータを扱った記事の場合,比較的オープンな業界ゆえ事件の結果がしばらくして明らかになることが多く,そのために読み手から記事の内容チェックがしやすいのではないか,ということである。
 そして,もし大手新聞社の記者の水準がコンピュータ関連記事にうかがえる程度のものしかないとしたら,それ以外の,記事の是非が明らかになりにくいジャンルの記事の内容の水準は果たしてどうなのか。たとえば,経済,金融,政治,外交……。

 衰えたといえども大部数を誇る新聞の影響力はいまだ大きい。駆け出しの記者でも取材相手に「公器」として恫喝まがいのことを口にできるほどその権力は小さくない。ワイドショーや週刊誌とは次元の異なる,何かきちんとしたもの,確かなスジによる情報,といったものを想像する読み手もいまだ少なくないに違いない。
 しかし,本当にワイドショーや週刊誌,スポーツ新聞とは違うのだろうか?

 とりあえず,我々読み手は,インターネットという複合的な情報源を得た。従来は時間的にも金銭的にも容易でなかった複数の新聞の記事,通信社のナマの情報,場合によっては事件の当事者のナマの声に触れることすら可能になった。

 2つの新聞の記事を読んで,もしその内容に違いがあるなら,どちらかは(あるいは両方とも)事実と異なっている可能性があるということだ。逆に,内容が全く同じなら,どこかからの,同じニュースソースからの(なんらかの意図のこもった)情報を引き写しただけかもしれない。

 見抜くのは読み手側の義務なのである。

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 ……と書いて〆られるとなかなかカッコよかったのだが,知人から,昨日の書き込みの,顧客データをプリントアウトした銀行についてのご指摘をいただいた。
 曰く,「プリントアウトは結果的にムダにはなったが,保険金と同じく万一に備えたリスクヘッジであり,ムダになるよう努力し,その努力がうまくいったということではないか。そもそも派手にプリントアウトを積み上げても預金全額から見ればたいしたコストではない。銀行の取り組み姿勢のパフォーマンスだったのではないか」(要約,烏丸)
 うーん,磁気ディスク等への保存で十分なところを,紙に印字しないとアピールにならないという構造自体が前近代的な印象だったのだが,こうして指摘をいただくとどうも反論できない。

 というわけで,新潮社から函入り著作集全35巻を発行する折には,昨日の書き込みの最後の段落は削除することにしたい……って,こらっ。

(本シリーズ,これでオシマイ)

先頭 表紙

ふみふみ。さま,いらっしゃいませ。難しいのではなくて,烏丸の書き方がヘタなだけなんですよ。 / 烏丸 ( 2001-04-15 03:27 )
すっごい難しい内容かな?ナンテ思いながら、読んでて、最後の一行があって、ホッとしてます〜♪^^ / ふみふみ。@はじめまして〜♪ ( 2001-04-14 08:16 )

2001-04-13 マスコミの誤報について その六 蓼喰うバグも好き好き

 
 以下,朝日新聞のコンピュータ関連報道をざっと駆け足で見ていこう。

 1987年9月,「日本IBM,一般家庭向けパソコンから撤退 日電などに押され」。
 何かといえば,あの,IBM5550の家庭向けとして森進一まで使って発売された,上にバカが付くほど価格が高くて,遅くて,ソフトがなくて,販売チャネルもないためさっぱり売れなくて,倉庫に余りに余って,数度にわたって社員に押し付けたがそれでも処理しきれなかった16ビット機「JX」の撤退記事である。撤退もなにも,コンシューマ市場では参入できてない次元だったと思うが。
 ……過去,ほとんどのパソコン,家電製品の製造終了を記事にしなかった朝日新聞,なにもよりによってそんなものの撤退記事を載せることもあるまいに,やはりIBMの名前に「ゆゆしきことらしい」と反応してしまうのだろうか。しかも記事をよく読むと,「家庭向けの中でも教育用としては,上位機種を中心に販売を続ける意向」,なんだ撤退ですらない。在庫を処理したいので,もう一度だけ記事にしてくれないかと頼まれでもしたのかしらん。
(仕事でしばらく5550を使っていた烏丸,JX発売当時,個人で購入しないかとIBMの営業マンに持ちかけられたが,今思うと断ってまことに惜しいことをした。インターネットを探しても,個人でJXを購入した経験談などほとんどないのである。)

 1996年12月,科学欄のJPEG技術を紹介する記事。
 「JPEGは,画像の細かい部分が少しぐらい変化しても人間の目が気づかないことを利用する。画像に離散コサイン変換(DCT)という細工をし、大きな構造と細かい構造に分解し、画像の全体にあまり関係がない細かい構造は捨てる。」
 ふむふむ,なるほど。問題はその続き。
 「顔の画像なら,顔の輪郭や髪形などの情報は間違いなく残し,細かいニキビや髪の毛一本ずつの情報は,思い切って減らす。」
 思い切っても,離散コサイン変換ではニキビは減らないと思うが。傍には牛の図があって,DCT変換をすると地面の情報,空の情報が「粗い」,牛の情報,雲の情報,牧草の情報が「細かい」。……いや,あの,その。
 画像変換についての知識のない文系の記者が,専門家に説明を仰いだ際に説明のための比喩を真に受けた,といったあたりか。
 ちなみに,なぜすでに技術として(よい意味で)枯れたJPEGを取り上げたかいえば,NTT情報通信研究所の所長安田浩氏がエミー賞の科学技術賞を受賞したため。記事にするのはともかく,1996年にもなって「画像圧縮に熱い視線」の記事タイトルはいかがなものか。

 これは比較的最近の記事。1999年10月の夕刊,社会面トップ。
 「ソフト『一太郎10』成人の日はいつ? 祝日改正知らず」,つまりジャストシステムが祝日の改正を知らないで,2000年の成人の日を15日にしたままだった……そりゃ,障害といえば障害だが,ワープロソフトのカレンダー出力機能なんていったい誰が使うんだか。コンピュータの「2000年問題」関連の話題を探していた記者の目にたまたまとまったのだろうが,オマケソフトに社会面のトップ費やして「ユーザーの1人は『欠陥があるのに,修正はおろか問題点を知らせもしないのは不親切』」ではさすがにジャストシステムがお気の毒。

 そんなことより,2000年問題に怯えて「データが読めなくなるといけないから」と数万枚の紙に預金データをプリントアウトしたどこかの銀行のおまぬーを指摘するほうがまだ有意義だったと思うのだけれど。2000年になってコンピュータが壊れたら,プリントアウトからデータを入力し直すつもりだったんでしょうか。
(つづく)

先頭 表紙

2001-04-12 マスコミの誤報について その五 舶来パソコン好み

 
 朝日新聞のコンピュータ報道の大きな特徴の1つは,まず,そのくどいまでの略語好きである。
 スーパーコンピュータは「スパコン」,インターネットは「ネット」,最近では米Microsoft社を「マ社」「マ社」と連呼した記事が印象に残る。
 スパコンという言葉からは大らかな愚かしさしか感じないし,インターネットはインターネットであってネットではない(第一,ローカルエリアネットワークやパソコン通信ネットワーク等との違いをどうするつもりだ)。「マ社」にいたっては……ただもう気持ちが悪い(*1)。
 略語の多用は一定のスペースに情報をおさめるため,という理屈はわからないでもないが,それならそれぞれの対象について標準的な略語を調査するべきではないか。

 もう1つの特徴に,舶来パソコン好き,ということがある。企業でいえばIBM,機種でいえばMacintoshの話題がお好みのようだ。
 その最たるものが,1992年後半から1993年にかけての,IBM PC/AT互換機万歳記事である。
 たとえば1993年1月の「10万円切るパソコン 米社,春にも日本で発売」,この「米社」というのはデルコンピュータ社のことだが,要するにアメリカで4番目のコンピュータ会社が日本で少し旧いスペックのパソコンを投げ売りするぞという報道が一面扱いである。前年秋にコンパックが12万円パソコンを出した際にも一面で報道された。
 しかし,これらの廉価機は,実際にはほとんど売れなかった。当時国内でPC/AT互換機を購入していたのはまだマニアと呼ばれる層で,売れ線は20万円以上,いや30万円台のハイスペック機だったのである。

 もっとも,これらの報道は,国内メーカーのパソコンの低価格化とPC/AT互換機化については大きな影響を及ぼしたといえるだろう。それがその後のWindows95ブーム,インターネットブームに結びついたことを思えば,ユーザーにとって非常に有意義な記事だった,という見方もできる。
 気になるのは,これらの記事を担当した人物が,のちに,コンパックやデルの廉価パソコンが売れそうもないのに一面で報じたことについて「国内メーカーの奮起をうながすためだった」と述べていることだ。これは明らかに経済報道に「恣意」を込めたということであって,大部数の新聞の一面でそれが許されることなのかどうか,少々疑問が残る。
 また,世界標準ともいえるPC/AT化が進んだ,ということは,裏返せばそれまで各メーカーが競い合っていた日本独自の仕様を壊滅的に滅ぼしたということでもある。チップや基板の大半をアジア諸国から安く輸入し,筐体におさめて販売する,それが現在の国内大手パソコンメーカーのビジネスであり,そのため日本語入力に適したキーボードの開発などはほぼ完全に放棄された。国内の技術者たちの意欲も高いとは思えない。

 PC/AT化,Windows,インターネットの普及は世界規模の趨勢であり,朝日新聞がどう書こうがその流れは変わらなかったかもしれない。しかし,少なくとも大部数を背景に歴史に竿をさすのなら,パーソナルコンピュータについて十分な調査を重ねたうえで記事を起こすのが当然だろう。
 残念ながら,先に紹介した誤報以外でも,朝日新聞のコンピュータ関連記事には,とても十分な調査に基づいたとは思えない記事が少なくないのである。

*1……これほど略語が好きなくせに,少し前まで「CD-ROM」という用語が出てくると必ず(読み出し専用メモリ)とかいうカッコ書きが付いていたりした。語源的には間違いではないが,CD-ROMはいまや配布メディアであってメモリではない。

(つづく)

先頭 表紙

2001-04-11 マスコミの誤報について その四 朝日新聞一面を飾ったハードウェアたち

 
 一昨日の「くるくる」を読んだ知人から,昨年の『正論』に,朝日新聞紙上の考古学上の誤報をレポートした記事があったようだ,との連絡あり。あいにく手元に資料がないのでその件はまたの機会に譲るとして,当初の予定通り朝日新聞の一面を飾ったパーソナルコンピュータ関連の記事を追ってみよう。

 1990年5月の「高校生コンピューター・ウイルス事件」以外に,朝日新聞がパーソナルコンピュータについて一面で報道した記事にはどのようなものがあったか。

 たとえば,1993年1月に「プリンター内蔵のノート型パソコン,2月発売」という記事がある。
 日本アイ・ビー・エムのThinkPadとキヤノンのバブルジェットプリンタを1つの筐体におさめたというものだが……どう読んでも,これを一面に置いた理由がわからない。バランスを考慮しながら機能を絞って携帯性を保持するのがノート型パソコンのレゾンデートルのはずなのに,それにプリンタを合体させて一昔前のポータブルワープロのような大仰なものにするのは流れに逆行することではないのか。出先でプリントアウトしたいなら,当時それなりにヒットしていた携帯用バブルジェットプリンタと組み合わせれば十分だろう。
 というわけでこのIBM ThinkPad 550BJは朝日渾身の提灯記事(?)の甲斐なく,登場と同時にあっさり歴史の彼方に消えてしまった。

 ハードウェアそのもの以上に「朝日新聞が一面で取り上げた」ことが話題になったのが,1988年2月の「機種の枠なくすパソコン,今月発売 IBM・日電と互換」という記事である。
 見出しだけ見れば当時全盛のPC-9801とIBM PC/AT,東西の膨大なアプリケーションをすべて使える素晴らしい規格に見える。しかし,実際のところは,PC/ATの基盤にPC-9801の差分を加えたような構成のハードウェアにそれぞれのBIOSをファームで載せた,というシロモノである。技術的には面白いが,エプソンの98互換機と違って,機構上,どうしても同じ性能のPC-9801,PC/AT単体より安くは作れない。記事中では「BIOSさえ用意すれば,東芝J3100,富士通FMR,日立B16,さらにIBM PC/ATの日本語仕様のAXなどのソフトも使えるようになる」と夢とロマンを掻き立てるが,よく考えるまでもなくいずれもPC/ATライクなMS-DOSマシン,それぞれのアプリケーションがほかの機種で動作しない悪習は問題としても,たとえばさまざまな機種用の「一太郎」を持って困っているユーザーがどれほどいただろう。この標準機とやらが売れないのは当然だった(*1)。実際,多数のメーカーの参入を期待した日本パソコンソフトウエア協会の野望むなしく,それまで聞いたこともなかったトムキャットコンピュータ社だけの参入,販売チャンネルもヨドバシカメラのみという惨状であった(*2)。
 ただし,この標準機はWindows3.0登場以前のハードウェアの違いを吸収しようとする技術的な試みの1つとして,それなりに評価すべきものではある……ただし,ビジネスとしてはかなり無謀な企てであり,一般紙の一面で紹介するのが妥当かと言われれば(誤報ではないものの)「無茶な」としか言いようがなかったものではあるが。

*1……本体3万円,5千円のアダプタを買えばPS,ドリキャス,64のゲームがいずれも遊べる,というゲーム機ならそれなりに売れそうに思えるかもしれないが,残念ながらMS-DOS用のアプリケーションは,そういった共有ハードが必要なほどにはバラエティがなかった。

*2……真偽は知らないが,40台しか売れなかった,との噂があった。

(つづく)

先頭 表紙

しかし,オンキヨーは公式サイトでも「オンキヨー」と「オンキョー」を混在させるなど,昔から,「キヤノン」に比べればまことに呑気なのです。 / 烏丸 ( 2001-04-13 02:09 )
ONKYOを「オンキヨー」と書くのも、案外知られてないもかも。 / clouds@最近まで知らなかった ( 2001-04-13 01:55 )
キヤノンといえば,今日発売のモーニングで,せっかくカラープリンタをプレゼントとして提供しているのに,会社名を「キャノン」とされていて気の毒でした。キャノンは「キヤノン」,富士写真フィルムは「富士写真フイルム」なんですよね。 / 烏丸 ( 2001-04-12 12:42 )
エプソンを除くと,98互換機の多くは,OS,BIOSまではサポートできても,I/O,いわゆる「ハードを直接叩く」プログラムにまでは対応しきれず,互換といいつつ動作しないアプリケーションが少なくなかった……あらあら,いやだわ,こんな論調。まるで烏丸がパソコンマニアみたいな。 / 烏丸 ( 2001-04-11 13:06 )
確かに一面の報道とすればムチャですね(笑) そういえばEPSON製の98エミュレーターを使って、DOS/V機で98のソフトを動かそうとジタバタした記憶がありました。 / TAKE ( 2001-04-11 08:38 )

2001-04-09 マスコミの誤報について その三 専門家という情報源

 
 もうずいぶん前のことだが,考古学の研究を専門とする知人が
「考古学については,新聞の派手な記事なんかあてにしてはダメだよ。どこの新聞も自分たちが親しい一部のセンセイの言うことばかり取り上げて,実証できてないようなことまで平気で載せてしまうのだから」
と苦い顔をしていたことを思い出す。どの新聞がどの大学のどの研究室の,ということまで詳しく説明していただいたのだが,申し訳ないことに詳細までは記憶がない。知人の懸念は,最近の旧石器発掘捏造事件でも明らかになった。
 もちろんこの事件の「犯人」はマスコミではない。また,以前から一部で指摘されていたと言われる旧石器の発見に対する疑問を取り上げていないことを責めるのも無理というものだろう。しかし,論文にすらまとめられていない発見を再三持ち上げるマスコミの煽りが,事件の当事者をますますのっぴきならない立場にまで押し上げていったであろうこともまた否めない。

 この事件は,マスコミ報道についてさまざまな教訓を示しているように思われる。その1つ,「専門家の言うことは正しいのか」という点について少し考えてみよう。

 『誤報 ─新聞報道の死角─』には,1990年5月の「高校生コンピューター・ウイルス事件」が取り上げられている。
 その年の4月,S社製のパソコン用のゲームソフトにコンピュータウイルスが発見され,話題になったのだが,この報道は,香川県丸亀市に住む高校生がパソコン通信を通じて大手コンピュータメーカーの社員を名乗る人物からコンピュータウイルスの開発を持ちかけられ,金銭と引き換えにそれを渡した,というものだ。とくに朝日新聞がスクープとして1面トップに掲載したが,記事を読んだだけでうさんくささに首をかしげるような奇妙な記事だった。

 まず,従業員4万人の大手コンピュータメーカー(暗にF社を示している)の社員が名刺を出して高校生にコンピュータウイルスの開発を依頼した……この時点でもう眉唾モノである。悪巧みをするのにわざわざ名刺を出すのは妙な話だし,そもそもコンピュータメーカーの技術力をかんがみれば,地方の高校生にウイルス開発を依頼することからして説明がつかない。ウイルス開発に40人がかり,というのも「わかっていない」印象である。
 さらに,その事実を突き止めたというのが,大阪のコンピュータ連盟の会長ということになっていたが……この人物がどういう位置付けにあるかは,パーソナルコンピュータ業界に詳しい者数人に尋ねればすぐにわかったはずなのである。

 この人物の悪口が本稿の目的ではないのでこれ以上詳しくは触れないが,結局,この報道は以前から虚言癖のあった高校生の言葉を新聞社が真に受けたための失態として決着を見る。果たしてそうだろうか。
 『誤報 ─新聞報道の死角─』は誤報の原因として記者のあせりや判断ミスをあれこれ挙げているが,そんな立派なものではない。先の人物からの情報を真に受けた段階ですでに敗北が決まっていたのだ。おそらく「コンピュータ」「連盟」「会長」といった彼の肩書きに目をくらまされたのだろうが,この人物の情報に基づいて記事を作成するのは,小泉純一郎の出馬の意思を確認するのに小泉今日子に電話するくらい頓珍漢なのである。

 そんな剣呑なことをしてしまうほど朝日新聞はパーソナルコンピュータ業界に疎いのだろうか。どうも,少々疎いようなのである。

(つづく)

先頭 表紙

カエルさま,堅い本をきっかけに堅い話が続いて,少々肩こり気味の烏丸でございます。反動が出ないように気をひきしめねば。ねばねば。 / 烏丸 ( 2001-04-11 02:04 )
小泉・・のくだりで、飲んでたコーヒー噴出しそうになりました・・もう烏丸さまったら(笑)それはそうと、自分の担当する業界の知識があまりない新聞記者って結構いますからね。(どういう基準で各部署に配置されるんだろ?)いかにも「らしい」単語に惑わされてしまうってありますね。 / カエル ( 2001-04-10 16:45 )

2001-04-08 マスコミの誤報について その二 報道の本質について少し考えてみる

 
 『誤報 ─新聞報道の死角─』(後藤文康)については,しかし,著者が大手新聞OBであるだけに,どこか誤報についての反省も対策案も業界の囲いのうちにあり,その点で限界というかそらぞらしい一面は否めない。

 第一に反省,対策といっても,たいがい精神論に過ぎないということ。また,誤報についての「おわび」「訂正」がなされたらそれで済むのか,ということがある。やらせが明らかになって謝罪した,といって,せいぜい担当者の首のすげかえ,マスコミ各社の中での順列に影響する程度で,「おわび」される側のダメージに見合うものとはとても思えない。そもそも,大手新聞は「おわび」を掲載するのに想像を絶するほどの抵抗を示すが,毎度の訂正記事の目立たなさはこれまた想像を絶するほどである。ほんとに謝意があるなら号外ぐらい出しなさい。それがスジというものだ。

 また,そもそも犯罪報道とは何か,という問題もある。
 「松戸OL殺人事件」で,冤罪とされた時点で各社はこぞって謝意を明らかにして世論におもねたが,では冤罪でなかった(有罪と確定した)なら,何を書いてもよかったのか。少なくとも松本サリン事件の河野さんについては,オウム真理教が加担していることが明らかにならなければ「おわび」「訂正」が載ることはなかったろう(この点は著者も明記している)。だいたい,マスコミは,いかなる権利があって犯罪の容疑者,被害者についてあのように鬼の首をとったように書き立てるのだろうか。国民の知る権利は,関係者の人権よりも重いのだろうか。

 念のため書いておくが,別にマスコミ報道の存続そのものを否定しているわけではない。しかし,マスコミ各社の報道行為は,国民の知る権利に答えること,再犯を防ぐこと,など,さまざまなプラスの面があることは確かながら,一方で関係者の人権,プライバシーを踏みにじることで成立するビジネスであるとの自覚は持ってほしいということだ。
 実際,マスコミ各社は,ロス疑惑事件についていかなる反省をしただろうか? 裁判で負けがこんだことへの反省はあったかもしれないが,たとえばテレビ局としては,得られた視聴率(広告収入)との収支決算はおおいに黒字であり,「ロス疑惑よもう一度」と願うプロデューサーは少なくないのではないか(事実,少なくないのだが)。

 ちなみに,テレビ局内部では「報道」とエンターテイメントたる「ワイドショー」は別ものという認識はあるようだ。しかし,それなら「ワイドショー」はオープニングで「本番組は報道ではない」と明言すべきと思うし,そもそも,「報道」と「ワイドショー」が違うというのも内部の人間の勝手な思い込みであって,視聴者から見ればテレビ局のチャンネルが同じなら同一の情報ソースにしか見えないという点は忘れられていないだろうか。

 つまり,いかに国民の権利を守るため等々の奇麗事を並べようと,マスコミ報道のある一面は情報話題ころがしによる利益追求である。これは,そういう報道とそうでない報道があるということでなく,あらゆる報道にその面がある,という意味である。

 1970年代,毎日新聞が小・中学生の教育問題を取り上げ,「乱塾時代」と命名して大々的にキャンペーンを行った。その結果起こったのは「よそが塾に行かせているのなら」という,さらなる塾通いの加熱,公立学校の空洞化であった。
 しかし,当たり前だが,毎日新聞がこの件について「おわび」「訂正」を掲載したという話は聞かない。

(つづく)

先頭 表紙

誤報ではないのですが,スポーツと朝日という点でここ数年気になっているのが,スポーツ欄の写真がつまらないこと。プロ野球でいえば決勝ホームランを打ったバッターの,その打席でなくベンチ前でナインに迎えられているシーン,サッカーなら試合が終わってうずくまるシーン,水泳では競技が終わって電光掲示板を見上げるシーンとか。要するにスポーツの躍動感の感じられない写真がやたら多いような。 / 烏丸 ( 2001-04-11 13:02 )
スポーツ・ファン的には、朝日新聞といえば昨年のフィリップ・トルシエ日本代表監督解任のフライング報道が記憶に新しい所です。もう少しで記事が現実を歪曲してしまうところでした。 / TAKE ( 2001-04-11 08:29 )
cesarioさま,烏丸個人は「書くことは犯すこと」と感じることはほとんどありません。ではどう感じているかといえば,「書くことは掃除洗濯整理整頓」。 / 烏丸 ( 2001-04-09 00:25 )
たらママさま,「所詮はそういうことで」と認識しておられる方はよろしいのですが,実のところマスコミ側にしても読者,視聴者側にしても,それは少数派なのでは,と思われます。とくにワイドショーや女性週刊誌にたいしては眉にツバしても,大手新聞が載せたらまるまま信用,という方は少なくないのではないでしょうか。 / 烏丸 ( 2001-04-09 00:25 )
「書くことは犯すこと」ですね。 / cesario ( 2001-04-08 06:12 )
マスコミという業種は所詮はそういうことで成り立っているのでは・・・。報道であっても事実というより企画(こういうストーリーがやりたい)ではないでしょうか。 / たらママ ( 2001-04-08 01:49 )

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