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烏丸の「くるくる回転図書館 駅前店」

 
今後、新しい私評は、
  烏丸の「くるくる回転図書館 公園通り分館」
にてアップすることにしました。

ひまじんネットには大変お世話になりましたし、
楽しませていただきました。
その機能も昨今のブログに劣るとは思わないのですが、
残念なことに新しい書き込みがなされると、
古い書き込みのURLが少しずつずれていってしまいます。
最近も、せっかく見知らぬ方がコミック評にリンクを張っていただいたのに、
しばらくしてそれがずれてしまうということが起こってしまいました。

こちらはこのまま置いておきます。
よろしかったら新しいブログでまたお会いしましょう。
 

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2000-10-23 科学と文学について考える 素材その七 『空想科学読本 第二版』 柳田理科雄 / メディアファクトリー
2000-10-22 科学と文学について考える 素材その六 『生物学個人授業』 岡田節人,南伸坊 / 新潮文庫
2000-10-21 科学と文学について考える 素材その五 『アワビがねじれてサザエになった やっぱりふしぎな生物学』 奥井一満 / 光文社知恵の森文庫
2000-10-20 科学と文学について考える 素材その四 『デジタルな神様』 渡部浩弐 / 幻冬社文庫
2000-10-20 科学と文学について考える 素材その三 『意識の進化とDNA』 柳澤桂子 / 集英社文庫
2000-10-19 [緊急雑談(?)] 町営住宅 怪現象パニック
2000-10-19 科学と文学について考える 素材その二 『人喰い病』石黒達昌 / 角川春樹事務所(ハルキ文庫)
2000-10-18 科学と文学について考える 素材その一 『パラサイト・イヴ』 瀬名秀明 / 角川ホラー文庫
2000-10-18 マンガ読み取りの基本に還るためのイチオシ 『漫画原論』 四方田犬彦 / 筑摩書房(ちくま学芸文庫)
2000-10-17 [雑学] お試しください,数字遊び


2000-10-23 科学と文学について考える 素材その七 『空想科学読本 第二版』 柳田理科雄 / メディアファクトリー


【柳田理科雄は本名】

 この手の書籍の嚆矢は『ウルトラマン研究序説』(中経出版)ではなかったろうか。これは科学特捜隊の組織・技術戦略や怪獣出現による経済効果を若手学者25人がまじめに(本当)分析したものである。1991年12月の発行で,1992年12月に発行されてベストセラーになった『磯野家の謎』(飛鳥新社)にも先んじる。

 『空想科学読本』もテレビ番組の重箱の隅をつっつく書籍の1冊で,怪獣が何万度という高熱の炎を吐き,正義のヒーローが一瞬にして巨大化して翼もないまま空を飛び,さらに巨大なロボットに人間が乗り込んで敵ロボットと格闘する,そういった「空想科学上の常識」に現実的な科学の面からアプローチを試みたものだ。
 その結果得られた結論は,物悲しくも爆笑ものだ。ウルトラマンはその体重を維持するために横に5倍は厚みのある肥満体でなければならないのに,空を飛ぶためにはヒラメのように平べったい形にならざるを得ず,しかも設定通りの速さで飛んだら衝撃波でずたずたになる。兜甲児はマジンガーZで船酔いし,敵とぶつかった瞬間慣性の法則で圧死する。ウルトラセブンの巨大化には最低9時間半かかり,逆に松坂慶子の肺にひそむ宇宙細菌ダリーと闘うためにミクロ化した場合は脳細胞も58億分の1の2.4個になり,記憶の大半が失われ,微生物として一生を終える。サンダーバードのジェットモグラは遠心力で非情な棺桶と化し,タケコプターをつけたドラえもんの頭はひびが入り,みかんをむいたようにめくれ返ってちぎれ飛ぶ。

 もちろん,こういった「空想科学」のウソを暴く遊びは,「巨人の星」の大リーグボールへのつっこみなど,マンガ誌の投稿欄などに古くから見られたものだ。しかし,OUTなどアニメ専門誌上での「宇宙戦艦ヤマト」に対するおちょくりを契機に,やがて様式を持った「遊び」と化し,現在ではそこそこヒットしたアニメやマンガ作品には必ず「つっこみ本」が後を追う。アマチュアによるファンジンやインターネット上のホームページでも同様のつっこみは花盛りだ。つまり,空想科学作品は,シリアスに書かれると同時にお笑いの題材となるという二重構造を背負い込むことになる。

 その結果,科学を背景にした作品は非常につらい立場に追い込まれた。
 およそ人間が人間として描かれていないミステリや,科学をまるっきり無視したホラーがベストセラーになる一方で,科学を匂わせる作品に限ってお笑いに足をひっぱられるのだ。もちろん,悪いことばかりではない。たとえばアニメ「ポケットモンスター」は,「その世界にはポケットモンスターが棲息する」という一点を除くと非常に理にかなった世界観を展開し,それが作品の魅力の1つともなっている。しかし,SFに新人が現れにくい原因の1つに,これらのつっこみ精神があるのもおそらく間違いない。

 だが,気にすることはない。第一に,ミステリやホラーはあの程度で立派に容認されているではないか。第ニに,本書の著者もそうだが,つっこみの背景にあるのは空想科学への底なし沼的愛だ。現に,本書のあらゆるつっこみは「ウルトラマン」などの空想科学番組に対する執着と,小学館などから発売された設定資料集を正しいと前提とした上でのものだ。
 といっても,昨今の怪獣映画がつっこみを恐れて大人向けドラマとしても破天荒な子供騙しとしても中途半端になってしまう気持ちはわからないでもない。ここは1つ,「どうせ昔のことだから」で押し切れる「大魔神」リメイクで気勢をあげてみるのはいかがなものであろうか。

先頭 表紙

しかも,大学の学部もちゃんと「理科I類」だったそうで。ツジツマ合って,ご立派でございます。 / 烏丸 ( 2000-10-24 01:36 )
にょ〜! 逆だったにょ!(©でじこ) カウントダウンすると「タ〜イムボッカーン!」に繋がってしまうにょ。ところで、柳田理科雄が本名だったとわ! / こすもぽたりん ( 2000-10-23 19:01 )
キャプテンウルトラは,ウルトラマンとウルトラセブンが円谷プロ制作だったのに対し,同じ時間枠のタケダアワーでありながら東映の企画制作で,そのためどうも話題からはずされてしまうことが多いようです(実際,特撮はちゃちぃしカタキ役のバンデル星人もしょぼい)。たとえば,主題歌もまま忘れさられており,「ワン、ツー、スリー、フォー、」ではなく,「スリー,ツー,ワン,ゼロ!」なのであります。だって,シュピーゲル号は3分割,主人公もキャプテンウルトラ,ジョー,ハックの3人(人?)なんですから。 / ハックのデザインのチョコ懐かし 烏丸 ( 2000-10-23 17:26 )
ゼットンいますか。ウルトラホークについては帰って読み返してみます。ウルトラホークと聞いただけで、なにやら涙腺が緩みます。キャプテンウルトラは「シュピーゲル、シュピーゲル、シュピーゲル、ワン、ツー、スリー、フォー、そーれゆーけキャプテ〜ンウル〜トラ〜♪」ですね。小林捻持ですねっ! / こすもぽたりん ( 2000-10-23 17:07 )
本文,大ウソ書いてました。『サザエさんの秘密』より『磯野家の謎』が先です。失礼いたしました。 / 烏丸 ( 2000-10-23 16:07 )
玉乗りゼットン,おりますおります。ところで,旧版がどっかへ行ってしまいました(泣)。旧版でもやはり「合体という思想をビジュアル化した先駆は『ウルトラセブン』」のウルトラホーク1号となっておりましたでしょうか。その直前に放送されていた「キャプテンウルトラ」のシュピーゲル号がすっかり失念されている……。 / 烏丸 ( 2000-10-23 15:40 )
↓「いすの」は「いるの」の間違い。どん兵衛食べながら書いてたら間違いちった。今ごろお昼なんですよん。 / こすもぽたりん ( 2000-10-23 15:32 )
おお、旧版を書こうとしていたところでした。新版でも、玉乗りのように地球に乗っかるゼットンはいすのですかい? / こすもぽたりん ( 2000-10-23 15:30 )
と学会の「とんでも本」シリーズが「フィクションは相手にしない」と明記しているのは,このあたりよくわかったうえでのことと思われます。 / 烏丸 ( 2000-10-23 12:22 )

2000-10-22 科学と文学について考える 素材その六 『生物学個人授業』 岡田節人,南伸坊 / 新潮文庫


【生命は絶えたことがない】

 「科学」そのものでなく「最近の科学と文学」のみだらな関係を覗き見したいという野望はすでに大幅に崩れつつあるが,それは烏丸の力不足97%,残りの3%はサイエンス・フィクション(SF)から何を紹介するかでまとまりがつなかいためである。今さら一昔前のハードSFなんか持ち出しても,何書いてよいのか正直よくわからん。
 SFについては後でなんとかするとして,今回もまた生物学関係。

 『生物学個人授業』は生物学者・岡田節人の講義をイラストレーター・南伸坊が自分なりにテキストにまとめ,イラストカットも担当した,というもの。
 テキストをまとめたのが南伸坊であることがポイント。つまり彼は,講義を聞き,理解の及んだ領域について自分なりの解釈に付加情報を加えて本にしているわけだ。ケロロ軍曹の「第666野戦重砲マンガ小隊」で報告された清水義範と西原理恵子の『おもしろくても理科』『もっとおもしろくても理科』とは構造的に全然違う。なにしろ『おもしろくても……』は学者でもない小説家が科学についてわかったようなことを書き並べ,その姿勢の怪しさをサイバラがナマスにする。面白くならないわけがないのである。
 で,それと構造的に違う本書がどうかといえば,こちらはもう,つまらない。講師はまじめに生物学を説き,聞き手は一生懸命それを再生産するのだから,笑いどころはない。笑いをとるための本じゃないのだから当たり前だけど。

 それでも(ってのは失礼だな),さすが専門家,たとえば『ジュラシック・パーク』ではDNAの再生の説明にずいぶんページをさきながら,DNAを被う染色体についてはまるっきりシカトを決め込んでいるとのご指摘。染色体を作るというのは今の生物学でも全く未開の領域で,ウソをつくにもタネがなかったということらしい。なるほど。
 そもそも,地球上のあらゆる生物は,もともとはたった一種類の単核生物から始まっている。では,現在,地球上に生物は何種類いるのか(答:8000万種類)。また,一番種類が多いのはどんな生物で(答:昆虫,とくに甲虫),またどうやってそういう種類を数えるのか。トキなんぞ貴重度が相当低い(絶滅しても辛抱すべき)という理屈はなかなか刺激的だ。
 あるいは,発生というお話。DNAがコピーされるだけなら,卵がオタマジャクシになり,オタマジャクシがカエルになる説明ができない。細胞がさまざまに分化するから発生は起こるのだが,その分化とは仮の姿であり,すべての細胞はそれぞれの細胞になる可能性を保有していると岡田は説く。
 では,最初は1個しかなかった細胞がいかにして成体にまで育つのか。遺伝子は個々の細胞を特徴づけるだけでなく,全体を統括してボディプランを担当する力も持っている。つまり,遺伝子を変えてもハエの頭を持ったカエルは作れないが,それでも,カエルやネズミが頭を作るために動員される遺伝子(ホメオティック遺伝子)は,ハエが頭を作るときに動員される遺伝子と似ている,ということである。このあたり,ホメオボックスについての話は面妖ながら非常に興味深い。

 しかし……指おって虫の種類を数えても,ホメオボックスに感動しても,文学への階段はいまだ遠い。やはり,文学たるもの,夢が破れるところから始めなくてはならんのか。というわけで,次に取り上げるのはとても哀しく,非道い本である。

先頭 表紙

2000-10-21 科学と文学について考える 素材その五 『アワビがねじれてサザエになった やっぱりふしぎな生物学』 奥井一満 / 光文社知恵の森文庫


【意思と遺伝】

 以前,『タコはいかにしてタコになったか わからないことだらけの生物学』という本を紹介したことがあるが,同じ著者によるシリーズ3冊めである。安易な文明論にはこぶしを握り,一方で正直に自らの仮説の限界を告白する。その正直さは好もしいが,さすがに3冊めともなると書きたいことが尽きてきたのか,今回は全ページの下約3分の1が空白かイラストで,あっという間に読めてしまった。さすがにこれは上げ底と言うべきか。

 それでも,昆虫など,生物の擬態というのは何故そうなっているのかさっぱりわからん,というようなことがたくさん載っていて,かつての昆虫採集少年としてはなかなか楽しい。
 たとえば,カゲロウの仲間にカマキリモドキというのがいて,前足のあたりだけカマキリそっくりなのだそうである。これが,何故そうなっっているのか,さっぱりわからない(カマキリのマネ,ということが遺伝子レベルでありうるのか。また,大きなメリットがあるのなら近いカゲロウの種がこぞってそうなりそうなものだがそうでもない)。
 アワビのような貝がやがて巻き貝になった,ということはわかっても,ホネガイの外のトゲトゲや,ナガニシのようなながーい殻,エビスガイのピラミッド型など,個々の特徴は説明できない。
 ウミウシや一部の昆虫がカラフルな模様を持っているのは,なぜか。自分でその姿が見えるわけはないのに。
 光る生物は,どうやって光る仕組みを得たのか? ホタルの場合は異性と呼び合うために用いられているが,なぜ昆虫の中でホタルだけがその機能を得たのか? それどころか,ほかの種のホタルの光りパターンを真似て,その種が近寄ってきたところを食べてしまうホタルもいるとのこと。そんなノウハウはどうやって獲得され,どうやって遺伝されるのか?
 などなど。

 そのほか,雑学として初めて知ったのは,高速道路のナトリウムランプ。これは,普通の灯かりだと虫が集まり,落ちた虫を引くとスリップしてしまう。だから,虫を寄せないナトリウムランプが開発されたのだそうだ(昆虫の可視波長の範囲がヒトに比べて紫寄りにずれており,赤寄りの長波長は見えないことによる)。

 ところで,いくら正直は美徳と言っても,こう「わからない」を連発されると物足りない思いもつのる。次はもう少し「仮説」を教えてくれる本を取り上げてみることにしたい。

先頭 表紙

ちなみに,奥井一満氏の光文社知恵の森文庫シリーズでは,1冊目の『ミミズは切られて痛がるか―生き物の気持ちになった生物学』がなんといってもオススメです。奥井センセが,右や左に,怒る怒る。 / 烏丸 ( 2000-10-23 18:18 )
水美さま,イチオシの本がございましたら,ぜひとも日記で詳しくご紹介くださいまし。ちなみにソロー(岩波文庫)は我が家のどこかにあったと思うのですが,どうも記憶が……。 / 烏丸 ( 2000-10-21 23:07 )
あっ!変換が・・・疑問画、ではなく、疑問が・・・です。たらーーー / ミスの多いミセス@水美 ( 2000-10-21 19:04 )
烏丸様、僭越ながら、私が読んだ本もご覧になって下さいますか?それは、『人工生命』朝日出版社刊 です。パソコンにはまって、プログラミングに興味を持ったとき読みました。それが、ソローの『森の生活』で、ソローが自然の形態についてもった疑問画、この本の中で解き明かされているのです。あー、不思議なつながり!と涙がちょちょぎれました。ソローも良いですよね。あほな頭で考えたことですから、烏丸様には笑われそうですけど・・・・お許しを! / 本がだいすき@水美 ( 2000-10-21 19:01 )

2000-10-20 科学と文学について考える 素材その四 『デジタルな神様』 渡部浩弐 / 幻冬社文庫


【……僕は,誰かにならなければいけない。できるだけ早く。】

 芥川賞でも直木賞でもなんでもよいから,現代を舞台とする小説,数十冊にざっと目を通してみて,はたしてそのどのくらいが「テレビ」を,「少年ジャンプ」(などのマンガ誌)を,「ファミコン」(以来のいわゆるゲーム機)を正しく扱っているだろうか。テレビドラマの中の普通の家庭を描いた映像でも同様。たまにゲーム機が出てきても,背中を向けた子供が黙ってプレイする姿は「子供が親と疎遠である」ことを示すための記号でしかない。
 だが,カラーテレビの普及率,マンガ誌の部数,そしてゲーム機の販売台数を考えれば,これらが描かれない現代風俗は実は二葉亭四迷や夏目漱石以来の近代文学を縮小再生産する「時代劇」にすぎないのではないか。
 最近はテレビやゲームだけでなく,「インターネット」や「電子メール」,「携帯電話」なども加えてよいかもしれない。しかし,これらを日常の中に描き上げた作品は,小説誌から相手にされないか,せいぜいキワモノ,イロモノ扱いされるのが落ちだろう。

 ……と,極端なことを書いたが,もちろん若者の登場する作品の全部が全部「テレビ」「マンガ」「ゲーム機」「インターネット」を描く必要がある,というわけではない。星新一のように,作品が古びるのを防ぐため,できる限り時事的な話題,最新の風俗を排す,という考え方だってある。
 しかし「現在」や「人間」をつきつめて考えていくのに遺伝子やネットワークを素通りするのは,もはや作家の怠慢といえるのではないだろうか。

 さて,星新一といえばショートショートの神様だが,同じショートショート作家でも,渡部浩弐は逆に最新の技術的な情報,ゲームなどを積極的に取り込み,テーマとしている。そして,近未来を舞台に,それら(とくにネットワークとヴァーチャルリアリティ)が社会に及ぼす薄ら寒い何かを,短い落とし話として提供してくれるのである。とくに『デジタルな神様』は,オウム事件,脳死問題,電車内での携帯電話によるトラブルなどを予見した作品集として知られている。

 予見。それは素晴らしいことだ。しかし,オウム事件が実際に起こってしまった後,電車内で携帯電話の呼び出し音に顔をしかめる現在,その作品集はいかなる力を持ちうるのか。たとえば,ポケベルに奔走する少女たちを描く作品があったとして,その作品の現時点での価値とは? あるいは,誰かがオウム・サリン事件を完璧に予見して,事件の3年前に架空の教団による事件を描き上げたとして,それは本当に優れた作品だったろうか?

 結局のところ,作品の力は,時事的な情報,技術,風俗の織り込みや予見ではなく,それが読み手に何を伝えるか,読み手の何を変えるか,という,ごく当たり前のところでしか語りえない。
 渡部浩弐は,まれに見る「才」あふれるショートショート作家である。ダレることもなく一定の水準を維持し,しかも常により新しい情報の取り込みに余念がない(添付画像は最新文庫『2000年のゲームキッズ』より)。作品の「落ち」の多くはフレドリック・ブラウン風のパシっとしたアイデアに満ち,ときどきはブラッドベリのように甘酸っぱい。

 しかし,炭酸の効いた清涼飲料水以上の効果をあげるには,それでもまだ何かが足りない。それは発表の場が「週刊ファミ通」で,対象年齢が若いこととは関係ないだろう。書き手と読み手の間に,中毒ぎりぎりのバッドトリップが必要なことだって,この世にはあるのだ。多分。

先頭 表紙

こうなると、やたらと気になりますね。 / こすもぽたりん ( 2000-10-24 01:46 )
うーむ,困りましたね。もうちょっと読んでみますが,我が家もなぜかサイバラは散逸していて。 / 烏丸 ( 2000-10-24 01:41 )
今日は『麻雀で食え』『サイバラ式』『怒涛の虫』『恨ミシュラン』『アジアパー伝』と当たってみましたが、見つかりませんでした。雑誌だったのでしょうか。 / こすもぽたりん ( 2000-10-24 01:15 )
『おもしろくても理科』とか,かなり広角的に探してはいるんですが。 / 烏丸 ( 2000-10-23 17:27 )
【花吉のこすもぽたりん】ないですよね〜。どこで見たのかなあ。もしかして単行本ぢゃないとか。それとも金角のアジア漫遊期? いやいや、カラーページだったような記憶が。シミーかなあ。 / こすもぽたりん ( 2000-10-23 17:09 )
それより,花吉の「こすもぽたりん」が,見つからない。これは,私もなんとなく見たような記憶があるので,もう気になって気になって。毎晩,サイバラをばらばらめくって見ていますが,うーむ。花吉が出てくるのは,『鳥頭紀行全部』の前半と,『恨ミシュラン』の後半……ほかには? また,群との対談で,育ちのよい編集者が親戚から「あんな作家とつきあうな」と言われたのは,花吉のことなのかどうか。 / 烏丸 ( 2000-10-23 15:47 )
いやー,どうも見つからないんですが,「最近の本ではなくて」,「つのだじろう,楳図かずお,杉浦日向子の百物語関係の本ではなかった」といったあたりまでは調査済み。全く個人的な記憶欠落の話ですけど……。てゆか,手塚の「百物語」を勘違いして覚えていた,というだけなんでしょうが。 / 烏丸 ( 2000-10-23 15:44 )
なるほど。文庫版の『新説百物語』の冒頭には百物語の解説がありますが、それは烏丸さんが恋焦がれる百物語の解説とは違うわけですね。うーむ、裏をかいて『新耳袋』ということはありませんかい? / こすもぽたりん ( 2000-10-23 15:34 )
ところで,もう「つっこみ」がきかない↓↓町営住宅の怪現象の件ですが,昨夜のフジテレビ系列スーパーナイトでもやってましたね。ニュースステーションよりややあおり気味で「カン!」という音も何度か録れていました。烏丸思うに,コンクリートの収縮などで音がするところまでは事実なんでしょう。そこから「なにかいる」という気持ちが強まり,普通なら気の迷いですむところが集団ヒステリー化した,というあたりでしょうか。30年前に自殺者がいたなんて,ちょっと気のきいた霊能業者なら,裏で調査しますからね。あと,興味深いのは「24軒中14軒が異変を訴えた!」という,残りの10軒の反応です。おしかけ霊能者が「何も感じない」と言ったのも面白い。何しにきたのやら。 / 烏丸 ( 2000-10-23 13:55 )
いや,その本はその話題が出たときにはすでに確認すみで,違うのですよー。 / 烏丸 ( 2000-10-23 01:55 )
全然関係ない話で恐縮ですが、例の百物語の謎は、つのだじろうの『新説百物語』のようです。 / こすもぽたりん ( 2000-10-23 00:43 )
ほほほ,危ない危ない。それにしても,「中毒ぎりぎりのバッドとリップ」,なかなかキャラが立つ。パラレルワールドでマザーグース推理でもやらせるかにゃ。 / 烏丸 ( 2000-10-21 22:23 )
しまった、「バッドとリップ」で揚げ足ツッコミをすべく考えていたのに、今日見たらちゃんとバッドトリップに直っちゃってた。残念。山梨王の新キャラですかい、とボケる予定だったのに。 / こすもボケりん ( 2000-10-21 14:02 )

2000-10-20 科学と文学について考える 素材その三 『意識の進化とDNA』 柳澤桂子 / 集英社文庫


【精神は死をも超越できるということですね】

 遺伝子工学と文学,とくれば『ジュラシック・パーク』『ロスト・ワールド』のマイケル・クライトンを思い浮かべる方が少なくないだろう。なにしろ恐竜の血を吸った昆虫が押し込められた琥珀から血球成分を取り出し,その中のDNAを抽出,破損した塩基配列は現代の爬虫類のDNAから補って修復,恐竜を蘇らせるという設定である。実際,シベリアの冷凍マンモスからDNAを抽出し,遺伝子の一部を解析する実験は成功しているそうだ。
 しかし,『ジュラシック・パーク』『ロスト・ワールド』はそれ以外の部分では能天気なハリウッドアクション大作にすぎず,遺伝子工学はドラマの素材にすぎない。
 ここでは,同じDNAを扱っていても,より生命の本質に迫った,その分かなりヘンな本をご紹介しよう。

 著者の柳澤桂子は生化学者,『「いのち」とはなにか―生命科学への招待』『二重らせんの私―生命科学者の生まれるまで』『遺伝子医療への警鐘』などの著書がある。
 今回ご紹介する『意識の進化とDNA』,例によって本のカバーの惹句から紹介しよう。

「ついに私は『本来の自己』とは,三十六億年の歴史を背負ったDNAであると考えるに至った」(はじめに) 分子レベルで研究が進む生命科学の中で,“私”とは誰なのか? 愛や感動,神とは何なのか? DNAの仕組みと精神のかかわりを,ある男女の出会いと語らいを通して,いきいきと解き明かす。長く闘病生活を続ける女性科学者が見つめた,「いのち」がわかる一冊。

 どこがヘンなのか。
 まず,これが小説だということだ。二流,いや,三流と言ったほうがよいかもしれない,ヘタクソで,つまらない小説である。NHK教育の「おねえさん,こんなところに花が」「その花の仕組みをみんなで見てみよう」というやり取りを演劇,ドラマと言ってよいか。それと似たレベル。
 物語は生命科学者(M大学講師)・岩倉隆と哲学科の大学生でかけだしのピアニスト・相沢葉子がコンサートで知り合い,毎週待ち合わせては隆が葉子に生化学を説明するという形で進行する。
 男が山頭火の俳句を口ずさめば「漂白の俳人ですね」,モーツァルトのCDかければ「二十三番ですね」,壁の絵を見れば「シャガールですね」と女が対応するお文化なやり取りは全く人間臭に欠け,人気のない森林や男の部屋で暗くなるまで逢瀬を繰り返しながら手も握らず,あげくに海外で別々に勉強する道を選んで互いにたたえ合ったりする。とくに,若い女を部屋にまで呼び込みながら,室生犀星,立原道造,三好達治,さらには般若心経の翻訳を朗々と読み上げる隆くん,大丈夫か。

 内容についても,前半,人類の起源から自我意識の誕生,脳の情報伝達の仕組みなどについて説かれた部分や,DNAの4つの塩基が組み合わさって遺伝情報が,といったあたりは,小説仕立てにした甲斐もあって読みやすく,文系人間にも理解できた気分にひたりやすい。しかし,ソリッドな各論の期待される後半,意識,芸術と科学,神・愛,人生の意味がテーマとなるにいたっては……ユング,グロフ,マズロー,ケン・ウィルバーと,話題にされる名前も検証不能な「とんでも」境界領域で,さすがに身構えてしまう。

 結局,かつて宇宙飛行士の多くが宗教の世界に行ってしまったように(立花隆『宇宙からの帰還』),作者はDNAに神様を見てしまったということだろうか。
 とても軽々しく賛否を言えるような本ではないが,とりあえずお奨めはしない。

先頭 表紙

ところで,遺伝子について学術的に論じた数百冊の本の中で,著者や訳者が女性というケースはほんの数人しかないのですが,その中で著名なのがこの柳澤桂子氏ともう一人が中村桂子氏。同じ桂子さんなのは……全く偶然なんでしょうがちょっと不思議(ついでにいうと,「DNA」をタイトルの一部に使った本の何冊かがアダルトものだったり,レディスコミックだったりするのもなんとなくおかしい)。 / 烏丸 ( 2000-10-23 15:14 )
逆に言うと,親しい相手にこれ読ませて,『意識の進化とDNA』ごっこ,というのはアリかもしれません。なにかにつけては本を開き,誌とかお経とか読み上げて,「立原道造です」「心が洗われるようですね」 ……先に笑ったほうが負け,ということで。 / 烏丸 ( 2000-10-20 16:45 )
烏丸さま、了解いたしました。ごていねいにどうもです。そこまでお調べいただく必要はございません、お気を遣わせてしまってすみません。 / 般若心経唱えられたら即、帰るってば ( 2000-10-20 16:35 )
美奈子さま,ここでの般若心経というのは,サンスクリットから現代日本語への直訳のことです。訳者の名前も出ていたと思いますが今,本が手元にないので……。 / 烏丸 ( 2000-10-20 12:21 )
エルさま,ごく一部はカルト,というか自分が教祖さまになってしまう例もあるようですが,普通は彼らが子供のころから接していたキリスト教,それに宇宙飛行士をやめてから布教に走ったり,牧師になろうとしたり,ともかく首までどっぷりひたってしまうわけです。 / 烏丸 ( 2000-10-20 12:19 )
ほぅ、小説だったのですか……。表紙だけではわかりませんね。それにしても般若心経の翻訳ですか。何語ですかね?もとはサンスクリットでしょうから日本語も翻訳ということになりますわね。 / しょうもないつっこみですみません ( 2000-10-20 07:01 )
宇宙飛行士の多くが入信する宗教って、所謂カルトのようなものなのでしょうか?科学の徒である彼らが、進化論を否定するようなキリスト教に入信するのですか? / エル ( 2000-10-20 01:51 )
ほかの本はけっこうリアルな話,細かい話があって(国が遺伝子を管理してよいか,とか,遺伝子操作の是非とか)けっこう勉強になるし,面白いんですが,これはなんだか妙にサトリ色の強い本でございました。 / 烏丸 ( 2000-10-20 00:50 )
柳澤桂子!この方、DNAおたくなのですね。以前はCGで、DNAムービー作ったりして。 / 水美 ( 2000-10-20 00:48 )

2000-10-19 [緊急雑談(?)] 町営住宅 怪現象パニック

 一部の新聞でも扱われたようですが,今夜のテレビ朝日系「ニュースステーション」,必見です。

 岐阜県富加町の町営住宅(4階建て,24世帯)で,原因不明の音がしたり,棚が勝手に開いたり皿が割れたりする怪現象が頻発。最近は「夜,階段のところに見知らぬ女の人が座っていた」とか「子供が,誰もいない場所に向かってバイバイと手を振る」「壁際を差して怖がり,泣きやまなかった」という話まであるそうです。
 一度御祓いをしてもらったものの怪現象はやまず,それどころか枕もとに女性が立った,とても住めないと出ていく家族も。さて,どう展開するのか。

 できればこすもぽたりんさまご紹介の『伝染る怖い話』をかたわらに置き,怖い土地を「洗う」とはどういうことか,など考えながら見るとさらに楽しめるのでは,と思われます。

先頭 表紙

さっき『王様のブランチ』の裏番組で見ました(なんちゅう情報じゃ。ヒメが出てないから裏番組という判断)。全然怖くなくてがっかりだよ〜ん。 / こすもぽたりん ( 2000-10-21 14:01 )
「住宅群」というよりは,原っぱの中に4階建ての団地が1棟ぽつんっと建ってる,そんな感じでした。建つ前が林で,30年前にそこで首を吊った女の人がいるらしい。でも,これはマユツバ。ある程度の広さの土地を過去にさかのぼれば,何かあるでしょうし,子供が誰もいないところを指さして言ったのも「ヘンなおじちゃん」(テレビクルーのことじゃないのかなあ)。 / 烏丸 ( 2000-10-20 15:14 )
やや、いつの間にこんな面白げな特集がっ。反クメで親えっちゃんな私があの番組を見なくなって久しいのですが、そんな住宅群が岐阜にあるとわっ。そういえば、西原理恵子が青木光恵に用意してあげたという東京のマンションは、殺人事件があったおかげで家賃半額だったそうで。 / こすもけろりん・花吉捜索中 ( 2000-10-20 14:48 )
妹が嫁いだ先にも「あそこは出るらしい」と有名な地域があって,小高い丘の上に一戸建てがばらばらっと建っているのですが,どう「出る」のか誰も教えてくれません。そのうち,その一戸建て(ごく普通の木造家屋)の壁が,家ごとにオレンジや緑に塗られていて,カラフルというよりは妙にハイテンションになっていたのだけど,あれはなぜだったんだろう……。 / 烏丸 ( 2000-10-20 12:29 )
この町営住宅は,建てられた当時から住民と自治体の間で確執があった,という説もあるそうで(内容不明。こういうのが流言飛語を呼ぶんだよな),だとすると霊的な事件というよりは,集団ヒステリーというカテゴリーのほうが説明しやすいかもしれません。ちなみに,烏丸が育った家は,毎晩のようにパキパキ鳴りまくってました。建材と乾燥の問題だと思います。 / 烏丸 ( 2000-10-20 12:26 )
結局,(当たり前ですが)そうたいした内容ではありませんでしたね。ところで,番組ではやっていませんでしたが,地方自治体が御祓いに支援するというのは,「政教分離」の原則からまずいのだそうです。 / 烏丸 ( 2000-10-20 00:42 )
私は、霊感の強い友人に「あんたはまったく霊を寄せ付けない体質だね」と言われるほど超鈍感なので、こういう話は興味あるのですが、いまいち体感できない。。しかし、下手なお祓いは反対に混乱を招きかねないですね。霊に箔が付くというか。 / エル ( 2000-10-20 00:17 )
見ましたよ〜大槻教授が出て来たら面白かったのに、って番組が違う?(それはタックル) / ティキティキ ( 2000-10-19 23:36 )
えっ!うそ!こっこさん、うちにいらしてそのセンサー働かせてくださいー!お祓いしたのに、利いてないような・・・ / 憑かれているのか@水美 ( 2000-10-19 22:24 )
このニュース、信じちゃいます。こっこは「おばけのいる場所センサー」付きなので、こういうところは気絶しそう。 以前足柄山で意識がなくなりました。。 / 顔も見えるよ。こっこ ( 2000-10-19 21:43 )

2000-10-19 科学と文学について考える 素材その二 『人喰い病』石黒達昌 / 角川春樹事務所(ハルキ文庫)


【遺伝子配列の他の生物種との相同性を塩基1000個単位で検索】

 実は,「科学と文学について考える」なんて途方もない(ちなみにハナから着地まで引っ張る自信はない。すんまそん)ことを持ち出したのは,この文庫本を手にとったためである。

 なにしろカバーの惹句によれば,

「どんな抗生物質も抗ウイルス剤も全く通用せず,数週間から二ヶ月間で確実に死に至る奇病『全身性皮膚潰瘍症』の正体に迫る表題作をはじめ,低体温症の女性とその一族に隠された謎を探る『雪女』など,最新の医学知識と遺伝子工学からつむぎ出された世にも不思議な物語。──鈴木光司『リング』『らせん』,瀬名秀明『パラサイト・イヴ』等の作品に大きな影響を与えた理系小説の旗手がおくる真実のサイエンス・フィクション!」

 なんと「理系小説の旗手」!
 よもやの「真実のサイエンス・フィクション」!!

 作者は東大病院第一外科の医者であり,今はない「海燕」という,もともとは純文系の雑誌から出てきている。
 『平成3年5月2日、後天性免疫不全症候群にて急逝された明寺伸彦博士、並びに、』(これが作品のタイトル。念のため)や『進化』で,図版を含む学術論文のような形式での作品を発表している。つまり,ハネネズミという架空の生物についての,架空の論文である。
 ハラルト・シュテュンプケが架空の生物を紹介し,一時期大きく話題になった作品『鼻行類』の影響下に書かれたものかと思われるが,評価は「びっくり」と「ばかばかしい」の2つに分かれるような気がする。古くからSFに慣れ親しんだ者からすると……やはり「びっくり」か「ばかばかしい」だろうか。少なくとも長編でやることではないような気がする。いや,出展は長編で,のちにボルヘス『幻獣辞典』のようにまとめられるのがちょうどよい具合か。……

 さて,そこで新刊の短編集『人喰い病』(文庫書き下ろし)である。
 収録4作のうち,『雪女』『水蛇』『蜂』については,設定は面白いが,どうも中途半端な印象が強い。安部公房の初期短編のキレを少し悪くした,そんな感じだろうか。とくに『雪女』はうっすら怖くなるところで「ホラーに走るのはやーめた」印象。
 中では表題作『人喰い病』がやはり面白い。『パラサイト・イヴ』に影響を与えた,という惹句もむべなるかな。実在する「人喰いバクテリア」からとったと思われるタイトルは一見煽情的に見えるが,テキストは冷静,『パラサイト』前半の研究室の濃密な,何かが起こりそうな気配,あれである。しかも「オバケ」には一切走らない。ひたすら,主人公の医者が書きつづった過酷な(もちろん架空の)病気の記録,という体裁で押し通す。形態は学術論文やカルテの形態ではなく,しいていえば日記ないし備忘録なのだが,ここには見事なまでの「科学者の姿勢」(それが普遍的な科学者か否かは別として)が感じ取れる。
 そして,その明晰な文体や構成,意外なほどに地味な結末は,『パラサイト』と違って,爆発的には売れないであろうこともまた明確に示している。

 そういえば,本書は小松左京,豊田有恒,光瀬龍,眉村卓,平井和正,山田正紀,堀晃ら「超」の付くベテランと並んで,ハルキ文庫の「SFフェア」の一環として平積みされていた。
 本書は,ホラーで押し通した『パラサイト・イヴ』に比べれば,格段にスペキュレイティブな手応えを感じる。しかし,まだ「医者による実験的な純文学」の範疇を越えず,新時代を興す力には欠けるようにも思われる。
 ……はたしてSFの復権はあるのだろうか。

先頭 表紙

いえいえ,いぢめるつもりなどもうとうございませぬ。この烏丸,シュルレアリスムの詩人たちが大好きなんざます(本当)。……といいつつ,もう十ン年手にしていませんが。 / 烏丸 ( 2000-10-20 00:48 )
あっ・・・つっこみにつっこまれてしもうたんじゃー!烏丸さん、いぢめんといてーや、水美、又、病気が再発してしまいます〜! / 病み上がり@水美 ( 2000-10-19 21:14 )
水美さま,いらっしゃいませ。かつてあんなに好きだったSFを今ではどうしてこう読まなくなったのか,自分でも不思議です。ところで,「超現実」というのは,ブルトンの言うシュルレアリスムのことでよろしいのでしょうか? / 烏丸 ( 2000-10-19 17:30 )
あっ!変換が・・・で金、ではなく、できん,です。どうも すみませんー。 / 水美 ( 2000-10-19 13:06 )
今を生きている人間はSFの中に夢っつーか、物語っつーかそううもんを夢見る事がで金のではないかと思われます。超現実こそが現代人のSFだったりして。 / ブラットベリ・ロマンチスト水美 ( 2000-10-19 13:03 )

2000-10-18 科学と文学について考える 素材その一 『パラサイト・イヴ』 瀬名秀明 / 角川ホラー文庫

【ミトコンドリア10億年の野望】

 表紙の画像データはない。本を誰かに貸すかあげるかしてしまったためである。

「永島利明は大学の薬学部に勤務する気鋭の生化学者で,ミトコンドリアの研究で実績をあげていた。ある日,その妻の聖美が,不可解な交通事故をおこし脳死してしまう。聖美は腎バンクに登録していたため,腎不全患者の中から適合者が検索され,安斉麻理子という14歳の少女が選び出される。利明は聖美の突然の死を受け入れることができず,腎の摘出の時に聖美の肝細胞を採取し,培養することを思いつく。しかし,“Eve 1”と名づけられたその細胞は,しだいに特異な性質を露わにしていった……」

 これは単行本の惹句からだが,この後,柳生一族の,じゃなくてミトコンドリア10億年の野望が次第に明らかに……と物語は動く。しかし,研究室の蛍光灯がじじっと音を立てるのが聞こえそうな緊張感が続くのは実はせいぜいそのあたりまで。1冊の半分弱くらいだろうか。

 DNA解析などの生化学研究が進む中,明らかになってきたアミノ酸結合や生物の進化についてのさまざまなロジックは,これまでのあらゆる世界観,宗教観を覆しかねない。たとえば細胞内のミトコンドリアが実は別の生物が寄生したものであったという事実は,十分に刺激的である。そしてそのミトコンドリアが独自の意識を持つにいたる,という作者の着眼点は面白い。

 一方,SFの世界では,「異質なもの」についてのさまざまなアプローチがなされてきた。たとえば,惑星の海がまるごと知性を持つとどれほど人間の理解を超えてしまうか(スタニスワフ・レム『ソラリスの陽のもとに』)とか,考え方や外見のみならず侵略の意味すらとんとわけのわからないエイリアンとの戦闘(神林長平『戦闘妖精・雪風』)などのハードな思考実験が再三提示されている。

 ところが,『パラサイト・イヴ』では,意識を持ったミトコンドリアについてそのような「異質なもの」扱いは一切せず,絵に描いたようなオバケで押し通す。なにしろこのイヴ嬢の思考や行動たるや,まるっきりどこかの性悪女レベル。ただ惚れた主人公の男を求めて人間の女の姿で追いかけ,後はどたばた大暴れなのだ。
 これが,『パラサイト・イヴ』が「ホラー」であって「SF」と言われない所以だろう。従来のSFなら,いくらなんでもこれはない。ミトコンドリアが意識を持つというなら,どのような化学反応を意識と呼ぶのか。視覚・聴覚などの五感が人間とはまるで異なるわけだから,どんな認識,行動パターンがあり得るのか。当然,そのあたりがキモ,というかセメドコロになるはず。主人公の男を追うのにしても,惚れたはれたでない,なんらかの科学的説明が考案されるべきだったろう。

 しかし,現役の生化学者である作者はそれらを全部パスして,まっしぐらにオバケ屋敷に走っていってしまった。これはいったいどういうことなのだろう。作者がSF的な思考実験について,まるきり知らなかったとは思えない。単なる好み,あるいは映像化しやすい(金もうけしやすい)構成にした,とかいう判断もしたくない。

 最近の科学と文学,いったいどうなっているのやら。
 ちょっといくつか手元の素材をたどってみよう。

先頭 表紙

烏丸は『パラサイト・イヴ』読んで,『動物のお医者さん』の漆原教授がおなかがつかえて出られなくなった実験室を思い出しました。 / 烏丸 ( 2000-10-20 00:53 )
えぇ、その部分が... ではなくて、研究室に付属してた物置みたいな誰も立ち寄らないスペースがあって、そこでうちの助手があんなことやって、そんでもってそこの廊下の...みたいな、なんというか部屋の配置とサイズとかが妙にはまっただけでして。 / もう本を読んだ時の記憶はない マイケル ( 2000-10-19 22:06 )
美奈子さま……そんなわくわくされてしまいますと,ジョウント! と一声,銀河の彼方へ逃げ出したくなってしまいます。なにぶん↓にも書いたとおり文系おばかの烏丸,「科学を考える」のでなく「科学と文学を考える」,しかも「考え」ではなく「素材」の提供,と第1回めから逃げの手は万端。ほかのマンガ評などとまぜながらやっていきますので,内容がともなわない場合は気がつかないふりをしてやってくださいませ。 / 烏丸 ( 2000-10-19 12:43 )
エルさま,烏丸は文系人間なのに,気がつくと理系人間のまっただなかで仕事をするはめにおちいって,たっぷりおばかさんになった気分(気分だけか?)に首までひたっています。もう十数年。 / 烏丸 ( 2000-10-19 12:38 )
マイケルさま,「大学のゼミ室に似ていて」……やはり,夜になるとシャーレの中で培養細胞がぶつぶつとつぶやいたりするんでしょうか。 / 烏丸 ( 2000-10-19 12:35 )
待ってました、こういうシリーズ!わくわく。学生の頃、レムには夢中になったなぁ。全然よみきれてはいなかったと思うけど。今、なぜか手元に英訳版を持ってきています。SolarisとReturn from the Stars(『星からの帰還』)。いずれ翻訳なのに、どうして日本語をもってこなかったのか。荷造りの時、どうにかしていたとしか思えません(苦笑)。 / シドニーの陽のもとに ( 2000-10-19 07:05 )
文系の私には科学的な記述の所はよく分からなかったけど、ちょっぴりお利口さんになったような「気分」に浸らせてくれた本だったなぁ。 / エル ( 2000-10-19 00:40 )
研究室の描写が僕がいた大学のゼミ室に似ていてちと怖かったです。 / マイケル ( 2000-10-18 23:47 )

2000-10-18 マンガ読み取りの基本に還るためのイチオシ 『漫画原論』 四方田犬彦 / 筑摩書房(ちくま学芸文庫)


【『がきデカ』の主人公が「コマわり君」と名付けられているのは,偶然ではない。】

 昨今はどうだか知らないが,たとえばロシアの田舎のお婆さんに初めて映画を見ると,何がなんだかわからない,ということがあるそうだ。たとえばモンタージュという概念が理解できないのだ。
 これと同じように,マンガを読みなれてない世代には,マンガを評価する,しない以前に,マンガが読めない層がいる。ページをどちらにめくるか,コマをどの順に読むか,風船(吹き出し)の文字が何を表すか,それがもうわからない。
 つまり,マンガの文法を知らないのである。

 本書は,何のケレンもないタイトルが表すとおり,決して抱腹絶倒に面白い本というわけではない。どちらかというと,古文,漢文の教科書に近いかもしれない。内容を一言でいえば,マンガを形作る文法について,古今の作品から豊富な例を挙げつつ分類,分析する,ありそうで実はあまりなかったマンガの系統立った表現論である。

 たとえば,手塚治虫作品において,「コマ」はいかなる働きをするか。また,大島弓子作品がそれを逸脱する効果は。
 動きの速さを表すために,石森章太郎はいかなる「スピード線」を用いたか。どおくまんは。永井豪は。逆に,大友克洋がスピード線を可能な限り排したのはどのような効果のためか。
 登場人物の言辞を表象する際に用いられる風船(吹き出し)はどのような役割を担い,どのように進化してきたのか。逆に,一部の作品が,この風船を利用しないことで得られた効果とは。
 登場人物の内面を表象するものとしての鼻の変遷は,目の系譜は,吐息や汗の記号としての効果は。
 などなど。

 こういった基本的な文法の解析に加え,巻末に添えられた,3つのテーマ追求型の分析がまた興味深い。
「シャアウッドはどこへ行ったか ― 漫画に見る〈原っぱ〉と路地」
  子供たちがメンコ遊びをした土の道路や土管にもぐって探検ごっこにふけった原っぱは?
「偉大なる旅行家の猿 ― 『西遊記』はどう描かれてきたか」
  マンガ史に,これほど悟空が何度もたち現れていようとは!
「カタストロフとその後 ― 廃墟としての未来社会の映像の変遷」
  手塚治虫の各作品から漂流教室,北斗の拳,ナウシカ,AKIRAまで。

 以上のように,多くのマンガファンにとって,ごく基本的でありながら,必ずしも明確な意識を持たずに読み流してきたあらゆる描画手法の意味について,本書は根源的な問いを重ね,読み手をして自覚的なマンガ読書にいざなう。

 ただ,1点,難点と思われるのは……さすが「学芸文庫」と銘打たれるだけあって,400ページの文庫本が1,200円。これは,なあ。

先頭 表紙

(まじめな話)新書出版ブーム(「出版」のブームであって,売れたかどうかは?)をうけた形で,光文社,学研,新潮社などからノンフィクション文庫のラインナップの創刊が相次いでますね。ノンフィクション文庫は,いい本が安く手に入ることも少なくないけど,バカ本が圧倒的に多いし(とくに文庫書き下ろし),足が早い(評価が確定する前に品切れになりやすい)ので,いやだなあ。角川あたりもシリーズの用意してますかね。 / 烏丸 ( 2000-10-19 12:48 )
『漫画言論』は今年のうちに角川文庫から1,300円で出るに違いありませんぜ。 / 憶測・30円 ( 2000-10-19 03:03 )
よかったわね『漫画原論』ちゃん。こっそり夜のうちにシークレット価格を付けておいたのよ。 / 烏丸 ( 2000-10-18 19:18 )
これは、なあ、バイト君。1,200円の「約束」でもするかなあ、バイト君。「今夜はゲレンデにドライヤーの熱風をあてるのを我慢します」 / 約束・2円 ( 2000-10-18 14:23 )

2000-10-17 [雑学] お試しください,数字遊び

 ちょっと紅茶を入れて,気分転換いたしましょう。電卓片手に,お験しください。

【その1】

 「999999」を7で割ります。
   999999÷7=142857

 この「142857」を,足していきます。
   142857×1=142857
   142857×2=285714
   142857×3=428571
   142857×4=571428
   142857×5=714285
   142857×6=857142

 おわかりでしょうか?
 いずれも「1→4→2→8→5→7→」のチェーンになっています。

 出典は,数学者でもあった『不思議の国のアリス』の作者,ルイス・キャロル。


【その2】

 何か,お好きな3桁の数字(111〜999のうちどれか)を頭に思い描いてください。
   例:234
 それを2回繰り返した形の,6桁の数字を思い描いてください。
   例:234234

 その6桁の数字が,
   7で割り切れたら,恋愛運がたいへんラッキー
   11で割り切れたら,金運がたいへんラッキー
   13で割り切れたら,健康運がたいへんラッキー

 いかがですか?

 出典は,阿刀田高の新聞小説。

先頭 表紙

えーと,実地に試しそうな方はもう電卓を叩き終わったころかな? では,【その二】のタネあかしです。7×11×13=1001ですから数字3つが2回繰り返した形の6桁の数字は必ず7でも11でも13でも割り切れる,というわけ(たとえば234234は234×1001ですものね)。 / 烏丸 ( 2000-10-19 12:15 )
レオナルド・ダ・ビンチは,解剖や男色について異端審問にかけられるとヤバい,ということから,手記を鏡文字で書き残しました。……って,彼は左利きで,悪魔の左手と称されたくらいなんだから,鏡文字なんて暗号でもなんでもないもの,見りゃあ読めただろうに? ちなみに,烏丸が昔ダ・ビンチについて短文書いたときは,やはり鏡文字で書きました。その当時はまだワープロなんてなかったのでもちろん手書き。慣れればどうってことありません。 / 烏丸 ( 2000-10-18 12:38 )
ルイス・キャロルは,家中に温度計をぶら下げて,室温が均一になるよう気を遣ったそうです。びょーきです。友人や近所の娘(5〜10歳くらい)を誘い込んで,劇の衣装(コスプレだな)やフルヌードで写真を撮りまくっています。やっぱりびょーきです。んで,少女たちが大人になりかかると,お別れの手紙を書いて二度と会わない。てっぱんびょーきです。 / 烏丸 ( 2000-10-18 12:32 )
そういえば、ルイス・キャロルは文字を鏡に映したように逆にすらすら書けたとか・・・本当に鏡の国からきたのかも。 / とむじい ( 2000-10-18 12:26 )
ついでに、おhにゃららさま、「ハハハン、ハ、泣けてくる〜ぅ」は、あややのカラオケ頻出でございやす。 / あやや ( 2000-10-18 06:45 )
すご〜い。試すのに電卓持ってきてしまった私は数学赤点常習犯・・。 / いまだに50点以下の人生あやや ( 2000-10-18 06:44 )
4つの異なる数字からなる4桁の数を考えましょう。この4つの数字を並べ替えてできる、最大の数から最小の数を引き、その答でまた同じ操作を繰り返します。3桁になったら頭に0をつけて繰り返します。すると、最大7回の操作で、どんな数でも6174という数になります。この数をカプリカ数といいます(本当)。 / 狼少年ポタ ( 2000-10-18 01:47 )
おーっ!全部割りきれた。。人生バラ色〜♪でも、すごいですね。発見したのは阿刀田高氏なんでしょうか。私は『だけど数字にゃ、ハハハン、ハ、泣けてくる〜♪』タチなもんで、見当もつかないんですが、そのミチでは朝飯マエのことなんでしょうかねぇ?? / ほにゃららハクション大魔王 ( 2000-10-18 01:10 )

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