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烏丸の「くるくる回転図書館 駅前店」

 
今後、新しい私評は、
  烏丸の「くるくる回転図書館 公園通り分館」
にてアップすることにしました。

ひまじんネットには大変お世話になりましたし、
楽しませていただきました。
その機能も昨今のブログに劣るとは思わないのですが、
残念なことに新しい書き込みがなされると、
古い書き込みのURLが少しずつずれていってしまいます。
最近も、せっかく見知らぬ方がコミック評にリンクを張っていただいたのに、
しばらくしてそれがずれてしまうということが起こってしまいました。

こちらはこのまま置いておきます。
よろしかったら新しいブログでまたお会いしましょう。
 

目次 (総目次)   [次の10件を表示]   表紙

2000-12-09 「ヒカ碁」でブレークした小畑健の好編 『魔神冒険譚ランプ・ランプ』 小畑 健 / 集英社(ジャンプ・コミックス)
2000-12-07 読まずに曲がるな 『白いメリーさん』 中島らも / 講談社文庫
2000-12-07 人,人として 『白眼子』 山岸凉子 / 潮出版社
2000-12-06 [雑談] 西池袋〜目白の迷宮
2000-12-04 トホホな犯人,警察もトホホ 『事件のカンヅメ』 村野 薫 / 新潮OH!文庫
2000-12-04 マンガを語る試み 『マンガと「戦争」』 夏目房之介 / 講談社現代新書
2000-12-03 安楽椅子探偵短編集のイチオシ 『ママは何でも知っている』 ジェイムズ・ヤッフェ,小尾芙佐 訳 / ハヤカワ・ポケット・ミステリ・ブックス
2000-12-01 光あるところに影がある 『史上最強のオタク座談会 封印』 岡田斗司夫・田中公平・山本 弘 / 音楽専科社
2000-11-30 妻は夫の奴隷か!?(←ちょっと大げさ) 『ミミズクとオリーブ』 芦原すなお / 東京創元社(創元推理文庫)
2000-11-29 作家が選んだ第2位 『サム・ホーソーンの事件簿I』 エドワード・D・ホック / 東京創元社(創元推理文庫)


2000-12-09 「ヒカ碁」でブレークした小畑健の好編 『魔神冒険譚ランプ・ランプ』 小畑 健 / 集英社(ジャンプ・コミックス)


【オレは誰のいいなりにもならねんら──っ!!】

 小畑健のデビューは,10年ほど前,少年ジャンプ誌上に土方茂名義で連載した『CYBORGじいちゃんG』。農夫にして天才科学者の改造時次郎が農作業用サイボーグに自らを改造してアナーキーに大暴れ,というギャグマンガで,そこそこ人気を博したものの単行本4巻で打ち切り。CYBORGばあちゃんQのヤングモードがギャグマンガとしては異様なまでに美麗だった。
 同時期の少年ジャンプには,たとえばこせきこうじ『県立海空高校野球部員山下たろーくん』,にわのまこと『The Momotaroh』が載っており,同じようにアクションとギャグをメインにした作品でありながら,決して絵が巧いとは思えないこせきやにわののほうがずっと少年ジャンプらしいパワーがあって不思議に思ったものだ。ちなみに,土方はデビュー直前はにわのの元でアシスタントをしていたらしい。

 『魔神冒険譚(アラビアン)ランプ・ランプ』はその土方が小畑健とペンネームを変え,原作に泉藤進をつけて連載したもの。といっても泉藤進原作の作品はこれしか見当たらず,何者かはわからない。
 魔神と人間が平和に共存していた世界は,邪悪の化身ドグラマグラが現れて以来崩れ去った。いまや魔神たちは人々を蔑み苦しめるだけの存在。そのドグラマグラと対立していた魔神ランプが100年ぶりによみがえり,封印を解いたトトやその姉ライラの願いに応えてドグラマグラと闘う。ドグラマグラの正体は。そして,アラビアンゲートの謎とは。

 本作の小畑健は,ともかく描線が美しい。キャラクターが巧い。無造作に選んだページがそのままポスターの原画になりそうな,そんなクオリティである。また,敵・味方のキャラクターはそこそこ個性豊か,武器や闘い方もアイデアにあふれる。人間の娘ライラは可憐,敵側の千眼魔神(女にしか見えないが男言葉)はセミヌードで色っぽい。それぞれの敵と戦う過程,ひ弱な人間たちの見せる勇気……などなど,見所は少なくなく,単行本3巻はバランスよく今も読み返しに耐え,とくに最後の宿敵ドグラマグラとの闘いは圧巻。

 ところが,それではダメ。メジャーになれない。その理由が,うまく説明できない。
 鳥山明『DRAGON BALL』も,実のところストーリーが破綻し,キャラクターのインフレーションが起こったところから人気が爆発したように見えた(アニメ化の影響もあるだろうが)。『アストロ球団』や『リングにかけろ』などと同じように少年ジャンプの伝統「友情・努力・勝利」にちゃんとのっとっているように見えるのに,『ランプ・ランプ』にはいったい何が足りなかったのか。
 あるとしたら絵柄やストーリーが几帳面にまとまりすぎていること。少年ジャンプでブレークするには,なんらかの「破綻せんばかりの過剰さ」が必要だったのかもしれない。ふと,少年サンデーに連載されていたらどうだったのか,などと思ったりもする。
 
 小畑健はその後
  『力人伝説』(原作:宮崎まさる)
  『人形草紙あやつり左近』(原作:写楽麿)
と原作付きで描き続け,
  『ヒカルの碁』(原作:ほったゆみ/梅澤由香理)
にいたってようやくメジャーの仲間入りを果たした。『ランプ・ランプ』と何が違うのか,今読み比べても……やっぱりよくわからない。

先頭 表紙

2000-12-07 読まずに曲がるな 『白いメリーさん』 中島らも / 講談社文庫


【ライブ・イン・エレベーター】

 きょうび,作家,ものかき,ぎょーさんおるけど,ダンディーっちゅう言葉が最も似合う現役作家は誰やろなぁ。
 そこでぽんっと頭に浮かんだのが,中島らもはんの顔。

 どえっ,て? そりゃ似合わんわなあ。なんせ,「なにわのアホぢから」「アル中」「とほほオヤジ」「ぼーっ」「かねてっちゃん」,天下の大朝日であの『明るい悩み相談室』を延々連載した,あのなんやよーわからんおっちゃんや。
 しやけどな,あんた,ただのアホに『愛をひっかけるための釘』なんて本のタイトル,付けられまっか。そこらのアル中が『僕に踏まれた町と僕が踏まれた町』やなんて照れんと言えまっか。『永遠(とわ)も半ばを過ぎて』も『人体模型の夜』もそこらのオヤジのセンスとちゃう。ぼーっとしとるんと『水に似た感情』は別もんや。

 ええか。笑われるんとお笑いは,別もんや。お笑いちゅうのんは,自分,捨てること。腹ん中の,にがーて重いもんを口から全部吐き出して,きーろいすっぱいもんも全部吐いて,ほんで残ったもんで勝負するんがお笑いや。ははあ,そうゆーの,おーとまてずむ言わはるんでっか。ま,そんなもんやね。アル中で肝臓がぱんぱんになったのを,センセイわて子宮外妊娠や,責任とってえなっちゅうて神妙な顔する,そのくらいでけてやっと入り口。奥が深いねん。深すぎて,ときどき抜けんようなって往生するけどな。
 そやから,中島らもの『白いメリーさん』に入ってる話は,都市伝説がすうっと身近に寄ってくる「白いメリーさん」もエイプリルフールの人殺し版「日の出通り商店街いきいきデー」もへび女の出てくる「クロウリング・キング・スネーク」も,1コ1コがしみじみコワい。笑いをとれるらもはんが書いたんやからね。いみてーしょんごーるどの山口百恵の表情ナシともうおんなし,シガラミやら気取りやらからブチィッとキレてへんと出てこんコワさやね。それをわてはダンディー,ちゅうてるわけや。ダテやないで。おっとちょっとサブかったな。

 あーあー,それにしても,このエレベーター,どないなってんのやろ。もう3日も4日も昇るばっかりでもみないなあ。なにしてんのん,あんた。暑いんか,上着なんぞ脱いで。ありゃりゃ,す,すかーとまで。むぐぐ。うぷう。あかんあかん,わし,そーゆーの苦手やねん。そーゆーのより,人に本のなかみ説教するほうが好きなんや。
 もう聞きとない? 泣いていやがってもあかんて。まだまだぎょーさん,書評のネタだけはあるさかいになあ。

先頭 表紙

そういえば,山岸凉子の『天人唐草』って,このメリーさん(白い人)のバリエーションですね。こちらは完全にいっちゃった人という設定ですが。 / 烏丸 ( 2000-12-12 16:52 )
ところで,この作品では「横浜のメリーさん」は都市伝説扱いなのですが,横浜の白い人は実在だったようです。烏丸は,メリーさんは残念ながら遭っていませんが,新宿の自転車で新聞を配るタイガーマスクは何度か見かけました。 / 烏丸 ( 2000-12-12 16:50 )
このところ演劇やエッセイ仕事が多いらも師ですが,エッセイは同じネタの使いまわしが増えてきました。もう少しこういう「おぞぞ」短編も書いてほしいと思うわけです。 / 烏丸 ( 2000-12-11 02:12 )
なんともはや、「ほんざす」空体から「そざま返り」をして裏返ったような感じの本でしたなあ。 / えくおとさず ( 2000-12-10 12:06 )
さてさて、著作権で疲れちゃったので、メリーさんでも買いに行こうかなっと。なぜかこれは買ってなかったのですわ。 / こすもぽたりん ( 2000-12-08 18:28 )
ティキティキさま,お話の核はその横浜のメリーさんや人面魚などがいかに都市伝説となっていくか,というところなんですが,らも師はそこから思いもかけない怖い話に転がしていくのであります。 / 烏丸 ( 2000-12-08 02:01 )
白いメリーさんって横浜のメリーさんの事かな?ずいぶん前に見掛けて衝撃を受けた事を今でも鮮烈に覚えてますが。。。 / 違うかな?ティキティキ ( 2000-12-08 01:29 )

2000-12-07 人,人として 『白眼子』 山岸凉子 / 潮出版社


【よかった光子の役に立ったんだ】

 山岸凉子の作品には,はずれがない。デビュー当時の短中編はともかく,ここ20年以上,大きくがっかりしたという記憶はない。絵柄が甘い,ストーリーが甘い,とちりちり感じることはあっても,何度か読み返すうちにすきまだらけのようで実は細部にまで気をつかったプロットのすさまじさに殴られたような気分になることさえある。
 逆にいえば,そのぶん予想を上回る大傑作という手応えはめったに得られず,最近の長編『ツタンカーメン』『青青の時代』などのように,頭ではそれなりと思いつつ,食い足りない思いにかられることもなくはない。

 が,しかし。
 この『白眼子』にはもうまいった。『青青の時代』第4巻からたった3か月の発行に,その連載中あるいは終了後に散発された気楽なスケッチ風短編集かと勝手に思い込んでいただけ,その落差に驚き,展開に驚き,電車の中でドアにもたれたまま後半には不覚にも目頭が熱くなってしまった。

 主人公・光子は昭和21年10月に北海道小樽の市場で置き去りにされる。4歳か5歳のときである。雪に濡れ,寒さに震える彼女は通りがかった盲目の霊能者・白眼子とその姉・加代に引き取られる。加代は「美人だが酷薄そうな唇の女」,便所に行けずに阻喪をした光子をぶつなど世辞にも穏やかなタイプではない。このあたりのページから伝わる「寒さ」「冷たさ」加減は尋常でない。
 一方の光子も,マンガの主人公にしては可憐な容貌とはいえず,三白眼でおでこが広く,眉間から尖った顎にかけて3つのホクロが斜めに並んでいる。光子は頬のこけた和服の青年霊能者,白眼子のもとに運命観相を求めて訪れる客の案内をすることになる。物語はそれからおよそ25年,光子の視点で描かれる。

 「人生万事塞翁が馬」という言葉がある。人生の禍福,幸不幸は変転して定まりがない,といったような意味で,似たような言葉に「禍福は糾える縄の如し」もある。「児孫のために美田を買わず」「損して得とれ」などはそのバリエーションといえるかもしれない。では,私たちには何ができるのか。どう生きればよいのか。
 無口で何を考えているのかよくわからない白眼子は自らの力について「光子は知らないほうがいいよ。これは両の眼の力と引き換えなのだから」,「どうやら人の幸・不幸はみな等しく同じ量らしいんだよ」と静かに語る。そこに,光子を訪ねてきた若い娘があり……。

 本書は創価学会系の潮出版からの出版物であり,表紙もご覧のようにいかにもの宗教臭が漂う。霊能者を描く本作は,もちろん超常的な,霊的な世界観に基づいて書かれてはいるが(凡百の怪談譚よりよほど怖いシーンもある),作者・山岸凉子がそれをどれだけ信じているのかは実のところわからない。
 また,本書の白眼子という人物が実在の人物なのかそうでないのか,少し調べただけではわからなかった。山岸凉子は実在の人物や既存の作品から想を得ることが少なくないので,本作にもモデルとなった人生があったのかもしれない。

 しかし,それらのことが一切気にならないほどに,たった150ページあまりの本作は淡々と,しかしゆるぎなく光子の人生を描く。某局の大河ドラマの肩書きが虚しいほど,ここには豊かで大きな河が流れている。
 どうか,表紙のお地蔵さまに引くことなく,手に取って読んでみていただきたい。

先頭 表紙

2000-12-06 [雑談] 西池袋〜目白の迷宮

 
 こすもぽたりん氏の「神田マスカメ書店」にならって,都内の道について少し書いてみよう。

 終戦直後の混乱期に起きた大量毒殺事件・帝銀事件。その犯人と目され,死刑囚として39年を獄中で過ごし,無実を訴えながら死んだ画家・平沢貞通。彼がもし本当に犯人で,犯行時刻に帝銀椎名町支店に到達するためには……彼は池袋駅で下車,西口(現在,東武デパート,東京芸術劇場,メトロポリタンホテル等のあるほう)に出て立教大学の手前を左に曲がり,大学の裏の小道をまっすぐに西武池袋線椎名町駅方面に向かったはずである。
 その道の途中の小さなアパートに,烏丸は住んでいた。そのころ,その部屋の鍵はいつも開いていた。誰がいつ来てもくつろげるように。
 椎名町駅に近い帝銀跡地は不動産屋のモデルハウスになっていたが,今でもそうかどうか。

 平沢が急いだという小道の途中でさらに左に曲がり,西武池袋線をまたぎ越えて進めば下落合,中井方面に出ることができる。少なくとも地図の上ではそのように見える。
 しかし,この,西池袋から目白にまたがる地域は,おそろしく道が複雑に絡み,うねり,まるで迷路のようなのだ。下落合は西だから,と,なんとなく太陽を目指して歩いて,ふと気がつくと太陽が背後にあって愕然としたりする。あるいは,ようやく西武池袋線の踏み切りをまたいでほっとすると,その道はほんの十メートルも行かないうちにUの字を描き,また線路に戻る。

 目白の名の由来は天台宗三世の慈覚大師が開いた目白不動尊だという。山手線の駅名に目白,目黒とあるのでこの2つの不動尊の名は親しいが,実は都内には「江戸五色不動(府内五色不動)」,すなわち目青,目赤,目白,目黒,目黄の5つの不動尊がある。
 東京に5つの不動尊があるということを推理小説の中で紹介したのが中井英夫『虚無への供物』。言うまでもなく日本探偵小説史上にそびえたつ小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』,夢野久作の『ドグラ・マグラ』と並ぶ三大奇書,三大反推理小説(アンチ・ミステリ)の巨峰の1つである。
 『虚無への供物』によると,青,赤,白,黒,黄の五色はその順に東・西・南・北・中央を表すそうで,作品中には嬉しいことに西池袋の道が迷路のようだと言うことも記されている。もちろん「巨峰」と言われるほどの作品である,この程度のネタばらしをしたところでびくともしない。

 西池袋から目白に抜ける数少ない真っ直ぐな細い道の途中には「すいどーばた美術学院」があり,キャンバスを手にしたきゅっと唇の美しい女性が道を行き交う。なおも南に進むと左手には石塀と古木に囲まれた煉瓦造りの壮麗な徳川黎明会(尾張徳川家の資料散逸を防ぐために設けられた財団)の本部が見えてくる。
 金井美恵子がエッセイ集『夜になっても遊びつづけろ』の中でこのあたりでよくすれ違うと記した「奇妙な格好(たとえば三センチ角の赤と白の格子のシャツ,七センチ幅の緑とブルーの横じま等)が板についた小柄な青年」,この「年齢不詳といった印象で優しい顔立」をしている青年が実は楳図かずおである。

先頭 表紙

魔界都市お江戸でございますねえ。それにしても,『虚無への供物』読んだときは,五不動はてっきり正五角形に位置するものと思い込んでいたのですが,やはり一度ちゃんと読み直さねばならないか……ちなみに烏丸が読んだのは25年前。それ以来,「すごいすごい」と人には勧めながら……。 / 烏丸 ( 2000-12-07 20:08 )
をを、キャロットタワーの裏!! 確かに地図に目青不動と書いてありますね。やっと目青の位置がわかった〜。地図には目黄不動とまでは書いてありませんでしたが、永久寺も場所を確認。なんと、浄閑寺の隣にあったとは…。「生きては苦界、死しては浄閑寺」と言われた投げ込み寺ですね。吉原で死んだ女郎の遺体は、浄閑寺に投げ込まれたそうで。小塚原回向院も近いですなあ。ここには首切地蔵、吉展ちゃん地蔵、吉田松陰の墓などがありやす。 / お散歩ぽたりん ( 2000-12-07 18:24 )
とか言ってると,「白顔」鈴木その子さんが亡くなったそうですね。たいへんヘビーな人生だったそうな。 / 烏丸 ( 2000-12-07 12:25 )
あややさま,んまい。山田くーん,ざぶとん1枚。ちなみに今夜書いている書評は「目白」ならぬ「白眼子」というタイトルの作品です。 / 烏丸 ( 2000-12-07 01:01 )
ななママさま,いらっしゃいませ。お子様の写真,拝見いたしました。烏丸も2児の親ですが,それぞれのアルバムには超音波診断写真をはさんでおります。当人には「おまえをスイカ畑で拾ったときに,赤外線フイルムで畑を撮影したもの」などあれこれ申しておりますが。 / 烏丸 ( 2000-12-07 00:59 )
やややっ。TAKEさま,そうですか,すいどーばたで。烏丸,その道にもあこがれましたが,絵心がなかったもので。 / 烏丸 ( 2000-12-07 00:55 )
ぼくさま,ぽたりん氏の著作権についての見事なまとめはもうご覧になりました? ありゃー,ボリューム対比でいうと大変なまとめです。 / 烏丸 ( 2000-12-07 00:53 )
目赤とか目黄とか、全然知りませんでした。うちはコンや夫が夜勤で、私の深夜ネットが予想される為、翌朝は私も目赤不動の予定・・。 / あやや ( 2000-12-07 00:11 )
目白在住の者です。とってもお勉強になりました。目白はやっぱり目黒と関係有りだったんだぁー。 / ななママ ( 2000-12-06 21:16 )
こんにちは! 僕もかつて「すいどーばた美術学院」で美大受験のための勉強をしてました。徳川黎明会の建物とかも覚えてます。懐かしい!! / TAKE ( 2000-12-06 19:29 )
ううう・・・歌詞掲載の件では色々とアドバイスありがとうございます(^^;) / ぼくさま ( 2000-12-06 16:40 )
↓実は前もって本文用に場所を調べてはあったのだけど,あまりにちくはぐなので,つっこみで指摘されたら書くことにしていたのでありました。 / 烏丸 ( 2000-12-06 15:24 )
そうなんです。場所がヘンなんです。青は天台宗数学院(世田谷区太子堂4丁目),赤は天台宗南谷寺(文京区本駒込1丁目),白は真言宗豊山派金乗院(豊島区高田2丁目),黒は天台宗滝泉寺(目黒区下目黒3丁目),黄は天台宗永久寺(台東区三輪2丁目)と「ちょと待て,どこが東西南北中央やねん」ですが,どうも火事だのなんだので江戸期から現在まで移転しまくってるもよう。 / 烏丸 ( 2000-12-06 15:22 )
なあるほど、『虚無への供物』に書いてあったんだ〜。15年前に読んだきりだ〜。しかし、青赤白黒黄の五色が東西南北中央を指すのに、実際のお不動さんはまったくちぐはぐな場所にありますねい。目黄不動はどこにあるんだろう?? / こすもぽたりん ( 2000-12-06 14:53 )

2000-12-04 トホホな犯人,警察もトホホ 『事件のカンヅメ』 村野 薫 / 新潮OH!文庫


【貴弘 嫌疑晴れた帰れ 美和子】

 少し前にも触れたが,最近,文庫のお色直しや新規参入が続いている。中でも「光文社知恵の森文庫」と「新潮OH!文庫」は個人的に肌が合うようだ。もっとも「知恵の森文庫」は光文社文庫の一部の装丁を変えたもので,なにしろカッパブックスを抱える会社だけに備蓄が豊富。一方の「新潮OH!文庫」は『恐るべきさぬきうどん 麺地創造の巻』『オタク学入門』『漫画の時間』など,なかなか新味が感じられてよろしい。

 本日ご紹介する『事件のカンヅメ』は新聞の三面を沸かした犯罪を振り返るというもので,決して突出したクオリティではないが週刊誌的に気楽に読めて楽しい。「思わずトホホな犯罪テンコ盛り」というサブタイトルからはB級事件物かと思われるが,扱われるのは誘拐,放火,脱獄,銃乱射,ハイジャック,毒殺などその折り折りに朝刊一面を飾ったに違いないシリアスな事件で,しかし犯人の動向をこまめに見ると情けない,そんな内容である。細部の真偽は不明だし資料性も高いとは言えないが,出張途上の時間つぶし等には最適だろう。

 まずは「カネは天下の拾い物」と題し,拾得者成金になるにはというお話。埼玉県だけでも現金を落としたり置き忘れたりといった遺失届けがなんと約19億円(95年),JR東日本で約14億円(92年)。しかし公道上に落ちているお金の場合どんなに早く見つけても実際に拾わない限り拾得者としての権利は生じないそうだ。ともかく拾うべし。

 新聞社会面の尋ね人欄,「準 連絡待つ 姉・兄」とかいうアレだが,実はそれを利用して脅迫者とのやり取りが行われることもあるらしい(横浜銀行の顧客リスト流出事件,小学生誘拐監禁事件,かい人21面相事件など)。また,求人欄を利用して保険金殺人や誘拐の対象を漁ることもあるようなので油断できない。
 なお,グリコや森永から金を強奪しようとした稀代の知能犯「かい人21面相」は,その11年前の大阪ニセ夜間金庫事件,デパート脅迫事件と同一犯ではないかと取り沙汰されたそうな。

 また放火について,理容店を営む男が休日のサウナの帰りがけに放火する「火曜日の放火魔」,あるいはジャイアンツファンによる「巨人軍敗戦日の放火魔」など,情けない例も紹介されている。

 ところで本書でも16件のうち「政治や思想的動機で実行されたのは最初の『よど号』事件だけ」と指摘されているように情けない犯人の多いわが国のハイジャック事件だが,99年7月の全日空機ハイジャック事件についてはこの烏丸,少々納得のいかないことがある。
 この事件の直後のテレビニュースで,アナウンサーは「機長の機転」と言った(本当)。
 犯人がスチュワーデスを脅してコックピットに押し入ろうとした際,操縦桿を握っていたのは副操縦士で,機長はノックの音に様子がおかしいと覗き穴から状況を覗き,自らドアを開けた……ということを報道するのに,なぜ「ドアが開けられたのは機長の機転であったことがわかりました」となるのだ?
・(飛び道具でも爆弾でもない)セラミック包丁を持った犯人をコックピットに進んで招き入れ
・結果的に操縦桿を握らせ
・推定200メートルという低空飛行で500人の乗客の命を危険にさらした
のは,まさしくその機長ではないか。刺されて亡くなったことは気の毒としても,どこにも英雄的な要素はない。
 これがなぜ,その後のテレビ報道や雑誌グラビアでは「516人を守った機長」一色になってしまうのか。

先頭 表紙

この本にも載っていた,銀座で1億円拾った(1980年)大貫さんが亡くなったそうです。享年62歳。 / 烏丸 ( 2000-12-06 12:21 )
「飛雄馬 パーフェクトかたついた帰れ 一徹」 ← 『巨人の星』連載終了直後の少年マガジン別冊に載っていた(本当)。 / 烏丸 ( 2000-12-05 13:07 )
「家人 本売った帰れ 烏丸」 / こすもぽたりん ( 2000-12-05 01:37 )
あっ、一度目に読んだ時は見逃していた! 尋ね人欄に美和子が! / こすもぽたりん ( 2000-12-05 01:35 )

2000-12-04 マンガを語る試み 『マンガと「戦争」』 夏目房之介 / 講談社現代新書


【ゴルゴの内面や自意識は意味をなさず,そのぶんだけ悲劇は軽くなる】

 著者・夏目房之介は夏目漱石の孫だが,それとは全然関係なく,他者のマンガ作品を語るのに自らのペンでキャラクターやコマを模写し,その上でその描線やコマ割り,動き,記号,セリフ等にいかなる意味がこめられているかを分析するという説得力溢れる手法,いわばマンガに対するアグレッシブな批評法を確立したマンガ評論家である。とくに『消えた魔球 熱血スポーツ漫画はいかにして燃えつきたか』は戦後スポーツマンガを容赦なくエグる,マンガ界の死海文書ともいえる名著。もちろん,アグレッシブな批評だから正しい,などという論拠はなく,好みが噛み合わない点だって多々あるだろうが,夏目がマンガを読み,語ることの領域を広げてくれたことは間違いない事実だろう。
 ただし,本書『マンガと「戦争」』では,ストーリーやセリフに重点が置かれたためか,引用は模写ではなく単なるコピーである。

 本書で夏目は,手塚治虫,ちばてつや,水木しげるから宇宙戦艦ヤマト,大友克洋,ナウシカ,エヴァンゲリオンにいたる,戦後のマンガやアニメが,戦争をどうとらえ,どう描いてきたかを分析する。
 手塚的未来破局SFにおけるユートピア思想がデビルマンによって覆され,さらにAKIRAによって皮膚の境界線を喪失していき,戦争が個人のトラウマの中に埋没するエヴァにいたる……といった歴史観から,『沈黙の艦隊』の海江田艦長のアップが連載初期の三白眼のキツネ目の「欧米人には日本人の表情って,こんな風に不気味に見えるんじゃないか」から,国連会場で米大統領と向き合う場面では「体格も表情も米大統領と遜色ない」,いわば世界や米国に対して理念として堂々と対峙したい日本人の理想像に変わっていく(これは鋭い),といった各論まで。
 ただ,確かに随所に鋭角的な洞察,論理展開はあるのだが,強いていうなら,あまりに論旨が明快すぎて「個々の作品世界をそんなシンプルにまとめて大丈夫か」と心配な面はある。また,戦争という切り口に限っても,取り上げられた作品が少なく(たとえば少女マンガは1作も触れていないし,『はだしのゲン』を含め被害者サイドに視点をしぼった索引はほとんど扱われていない),単行本としてはせめてこの十倍のページは必要なようにも思われる。早い話がテーマのあまりの重さに対し,中身が十分厚いとは言えないのだ。引用のカットが多いこともあって,1時間もあれば目を通せる……というのは,やはり短すぎだろう。終戦後55年が1時間。5時間,10時間ならOKかといえば,そんな問題ではないが。

 それでも,自分の言い著したいことのために作品を引き合いに出すマンガ批評,あるいは「今日は遠足に行きました。とても楽しかったです。」レベルの感想文が多い中,夏目房之介の作者憑依型(?)批評のリアリティは捨てがたい。
 マンガについてあれこれ考えたい,表現したい向きには,とりあえずお奨め。

 ところで,夏目センセイもおっしゃっておられるが,大手出版社はマンガで儲けている割りにはマンガの資料整備に冷たい。単行本収録作品に初出が明記されてないなど論外,どこか,大枚はたいて年度別日本戦後マンガ全史ハードカバー全55巻をまとめてくれないものか。夏目センセイやオタキングらを動員して,1巻2,000円,1セット110,000円なら買うぞ。きっと。えー,家人さえ了解してくれれば。多分。

先頭 表紙

ふと思うに,マンガ評論家としては夏目房之介のライバルにあたる(そんな意識はないかもしれませんが)関川夏央が『「坊っちゃん」の時代』で描き上げた漱石があのように情けない酒乱のオヤジであるのは,ちょっとだけ笑えるような気もします。 / 烏丸 ( 2000-12-05 13:15 )
『あの頃マンガは…』は料理でいえば「不味い!」。こちらはせいぜい「量が少ない」ですから格段にマシです。もうちょっと塩加減をなんとかしてほしかったところもありますが。 / 烏丸 ( 2000-12-05 00:57 )
『あの頃マンガは思春期だった』で、「偉人の孫ってのもタイヘンなのねえ」と思って以来避けていましたが、これは面白そうですな。『日本戦後マンガ全史』の方も、11万なら買うでしょう。 / こすもぽたりん ( 2000-12-05 00:46 )

2000-12-03 安楽椅子探偵短編集のイチオシ 『ママは何でも知っている』 ジェイムズ・ヤッフェ,小尾芙佐 訳 / ハヤカワ・ポケット・ミステリ・ブックス


【あんた方のおつむも少ししめあげるんだね】

 先だって酷評した芦原すなおの『ミミズクとオリーブ』だが,これが何を狙ったものかといえばそれはもう間違いなくヤッフェの「ブロンクスのママ」シリーズだろう。

 毎週金曜日の夜,ママの家を息子のデイビッドとその妻シャーリイが訪ねてくる。デイビッドは殺人課に務める刑事,美味しいチキンを食べながら彼が話題にする事件を,ママはいとも簡単にくつがえしてしまう。
「3人の中に彼女を殺した者がいるのは間違いないのに,誰が犯人か決め手がないんだ」
「まったくあんたたちときたら,鼻の先も見えないんだから」
 ロシアからアメリカに渡ってきたユダヤ系移民の娘で,ブロンクスに育ち,貧しい生活の中で誰にも欺かれないよう目を配り続けてきたママにとって警察の調査など児戯にも等しいのである。

 「ブロンクスのママ」がエラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン(EQMM)に登場したのは1952年。知名度が今ひとつなのは,アメリカでは短編集の形でまとめられておらず,このようにまとめてママの推理が読めるのは日本だけなのだそうだ。逆に日本での本書の人気はなかなかたいしたもので,早川書房の『ミステリ・ハンドブック』(1991年)でのミステリ短編ランキング第10位,光文社『EQ』130号のオールタイム・ベストでも第9位,光文社『文庫の雑誌 本格推理12』アンケートでもルルーやフィルポッツと並んで作家名の8番目に名が挙がる。

 収録作品はいずれも短く,基本的には先に書いたようにママのところに息子夫婦が集い,手料理を美味しく食べながら事件の話題が提出され,明らかと思われる容疑者にママが疑義をはさんで2,3質問をし,その答えにママが事件の真相を確信する,という具合。従兄弟や近所のつきあいなど,ママがこれまでの人生で出会った人々の他愛ない行為が事件を解くヒントになるあたり,クリスティのミス・マープルものも思わせる。
 ママは誠実で情に厚いが,息子をいつまでも子供扱いしたり,嫁と競い合ったりと,それなりに煩わしい面もきちんと描かれる。登場する殺人事件はいずれも金や愛情のもつれによる市井のトラブルで,凶悪な連続殺人鬼などは登場しない。しかし,事件にいたる犯人や容疑者の事情,ママの謎解きの説得力は行数を費やしてないわりには重厚で,ことに老人がかかわる事件,子供がかかわる事件についてのママの反応はシリアス。『ミミズクとオリーブ』などこれに比べればピースが2つか3つしかないジグソーパズルにしか見えないほどだ。
 書かれたのが半世紀も前だけにタッチが古いのは否めないが,ミステリ好きな方にはチェスタトンの『ブラウン神父の童心』,アシモフの『黒後家蜘蛛の会』などとともにぜひ読んでいただきたいと思う。

 ……なんてエラそうに書いてはいるが,この烏丸,実は本作をずっと「ハヤカワミステリ文庫」収録作品と思い込み,「こんなにあちこちで絶賛されているのに,なぜ本屋で見かけないのだろう。古いから品切れなのかしら」などと長年困ったちゃんなことを言っていたのであった。縦長版形のハヤカワ・ポケット・ミステリのほうだったのね。

先頭 表紙

2000-12-01 光あるところに影がある 『史上最強のオタク座談会 封印』 岡田斗司夫・田中公平・山本 弘 / 音楽専科社


【トトロの森のエコ・ジジイ(笑)】

 やはりオタクたる者,無難に嫌われない安易な道よりは己の信じるイバラの道を歩むのが正しい「若さゆえの過ち」である。本書はオタキング・岡田斗司夫,正しい音楽家・田中公平,と学会会長・山本弘による鼎談であり,『オタク学入門』から一歩進んだオタク学応用編と言えよう。
 もともとは音楽専科社の「hm3」(hm3は「Hyper Multimedia Music Magazine」の略,実のところ季刊の声優雑誌である)に掲載された対談で,「あまりにやばい」と削られた部分までかなり忠実に再現したものである。確かに相当やばい。アニメ雑誌ではまず掲載は不可能だったろう。

 内容は
  宇宙戦艦ヤマト徹底大研究
  起動戦士ガンダム徹底大研究
  宮崎アニメ徹底大研究
  付録ノストラダムス大いに笑う
に分かれ,基本的にはヤマト以来のアニメ制作にまつわる「ウォッチャー」及び「現場者」としてあれこれ語り合うというもの。
 ともかく,危ない裏話にはことかかない。あるところで「××××は」などと匿名にしてあるので,「そうか,さすがにこれは匿名扱いなのか」と思いつつ読み進むと,ほかの章の内容を重ね合わせればしっかり名前や仕事がまるわかりになったりする。大丈夫か。

 たとえば,オタキングが宇宙戦艦ヤマトのスタッフルームへ遊びに言って「ヤマトの設定見せて!」と言ったら,全員顔を見合わせるという。ものすごいデカいキャビネットを開いたら,180センチぐらい紙が積んであって,しかもそのドアに「1」と書いてあるというのだ。スタッフとの打ち合わせや大学教授を招いてのブレイン・ストーミングを全部テープ起こししているらしい。内容はアイデアの宝庫で,これから発表されるSF作品はすべてその中にあるのではと思われるほどだが,量が多すぎてもう誰も活用できない。

 あるいは,

田中 ●本●之さんがね,あの人幽体離脱できてん,昔。で,ある声優さんに「昨日,君の部屋へ行ってきたよ」って行って,(中略)「ベッドの上に赤いタオルがあったでしょ」「ええ〜っ!?」ってゾッとしたって話があったよ。
山本 それ,窓からのぞいたんちゃいます(笑)?  

 もしくは,実はドラえもんの声優とのび太君の声優は無茶苦茶仲が悪く,狭いアフレコ室ではしとはしに座っているらしい。ほかの声優が気を遣って大変そうだ。

 さらに,

田中 『ガオガイガー』の1話が(セルが)1万2000枚なんですよ。バカでしょ?
山本 バカですね(笑)。
田中 何を考えてんねん。初めにそんなやったら,あとはどないすんねん!?言うて。

岡田 筒井康隆ヘンですよ。やっぱちょっと神経症的なところがあって。話してる時にこやかなんですけどね。家帰ったら「あれはああいう意味やったに違いない…!」と思って電話かけてくるんですよ。「君はこういう意味で言うたね!?」「言うてまへん…」(笑)!

岡田 (ガンダムの富野はモビルスーツに)性器つけるんですよ。女性器か男性器かどっちか。で,メカの話する時も,すぐそういう下ネタに走るんですよ,打ち合わせが。
(中略)
山本 じゃあやっぱり,シャアがララァをバイブ調教したって話もホントやないかなー(笑)?

 ……などなど,ああもう! きりがない!

 ガンダムや宮崎駿の悪口は許さない,というファンは読まないほうがよいかもしれない。……いや,むしろ読んでほしい。
 オタクの道は批評の道。妄執はオタクのわざではないのである。

先頭 表紙

と思っていたら,続巻,続々巻が出てしまいましたねえ。やはり音楽専科社では文庫系の出版社と付き合いがないのか。今オタク系といえば「光文社知恵の森文庫」か「新潮OH!文庫」なんですが。 / 烏丸 ( 2000-12-05 00:59 )
文庫になったら買おっと。 / こすもぽたりん ( 2000-12-05 00:44 )
いやいやー,この対談を読むと,「ヘンな人」でないとアニメやっちゃいかんのか〜な気分のハンペンでございます。 / 烏丸 ( 2000-12-02 22:49 )
声優通に聞いたところによると、「大山さんは変わった人だからねえ…」ということでした。 / こすもぽたりん ( 2000-12-02 22:00 )
あ、惜しい、今見たら11112ヒットざました。 / こすもぽたりん ( 2000-12-02 21:59 )
「のび太のくせにナマイキだぞ!」を間違って大山さんが読んだりしてほしかった・・。 / あやや ( 2000-12-02 05:06 )
「だめだなあのび太くんは」「ドラえもんなんか,きらいだあ」……周囲の緊張を想像すると,けっこうすごいものがあります。シナリオ担当者ははらはらしているのか,楽しんでいるのか。 / 烏丸 ( 2000-12-02 02:10 )
大山のぶよと小原乃梨子は仲が悪いのかあ、と思いつつ観た今日の「ドラえもん」は一味違いましたです。 / こすもぽたりん ( 2000-12-01 19:41 )
中堅課長が3人そろって,会社の役員,部長の悪口をまとめたようなもんですからねえ。……しかし,本当はここにも載せられないもっとやばい話がいっぱいあるに違いない。 / 烏丸 ( 2000-12-01 18:06 )
唐沢俊一が「なぜオレを呼ばない」と怒り、読み進むにつれ「呼ばれなくてよかった…」と思ったという本ですな。 / こすもぽたりん ( 2000-12-01 17:54 )

2000-11-30 妻は夫の奴隷か!?(←ちょっと大げさ) 『ミミズクとオリーブ』 芦原すなお / 東京創元社(創元推理文庫)


【中年夫婦デンデケデケデケ】

 創元推理文庫だからといってゆめゆめ推理小説だと考えてはいけない。せいぜい亜・推理小説,セミ・ミステリとみなすべきだろう。ちなみに「亜」は「あるものの次に位置する」,「semi」は「半分」といった意味であって,実際のミステリ度はさらに低い。

 内容は作家たる語り手の妻が縫い物,洗濯,料理の合間に難事件を説く,という趣向の短編集。ミステリでいうところの安楽椅子探偵モノなのだが,いずれも勘で言い当てているだけで,とても推理といえるようなものではない。というより,これが創元推理文庫では,プロ目指して日夜犯罪やトリックに思いをめぐらせている作家のタマゴ諸氏が気の毒でならない。
 語り手の家の庭のオリーブの木も,そこに訪れるミミズクもただの飾りであって(ギリシア神話の知恵の女神アテナがフクロウを愛好したことによるにせよ),推理の展開にとくに関連はない。さらに随所に登場する「焼いたマテ貝の入った『分葱和え』,南瓜のきんとん。讃岐名物の『醤油豆』。焼いたカマスのすり身と味噌をこね合わせた『さつま』,黒砂糖と醤油で煮つけた豆腐と揚げの煮物。カラ付きの小海老と拍子木に切った大根の煮しめ。新ジャガと小ぶりの目板ガレイ(ぼくらの郷里ではこれをメダカと呼ぶ)の唐揚げ」といった田舎料理の数々も事件とはなんら関係ない。
 だからこれは,讃岐の高校生たちの恋と青春を描いた『青春デンデケデケデケ』の作者によるほのぼの夫婦小説であって,それ以外のものを期待してはならない。

 ということで読み終えたら本棚のコヤシにするか♪本を売るならBOOK・OFFに「お代はいらねえ」と叩き捨てればよいのだが,なぜわざわざ取り上げるかといえば加納朋子の解説が不愉快,というか不可解だったからである。

 加納朋子についてはこすもぽたりん氏が『ななつのこ』を紹介しているが,いわゆる「日常の謎」系の若手ミステリ作家の類である。それは別によい。彼女が解説で本『ミミズクとオリーブ』をベタボメしているのも,まあしかたない。探偵役の妻を「私なんかよりずっと心が広くて優しくて感受性も豊か」と言うのも(なんで「私」が出てくるのかひっかからんでもないが),ほっとけばよいだろう。
 しかし,そこから「確かに女性が男性を知っているほどには,男性は女性を知らない,という気もします。ということはすなわち,人間をもっとも知っているのは女,ということになるのでしょうか」と導くのはいくらなんでも牽強付会が過ぎるというものだ。
 本書の妻は本の中の架空の存在で(当たり前だ),その妻の言動を描いた芦原すなおは男性だ。勘違いを差っ引けば,この一節は「女である私は人間をよく知っている」としか読めないのである。
 ちなみに男であれ女であれ,「人間をよく知っている」などと平気で口にする輩は信用できない。傲慢か馬鹿か,あるいはその両方だからである。

 さらにいえば,この黙々と夫にかしずき,掃除や洗濯,料理や縫い物ばかり受け持たされる妻,そして主婦をそう描いてしまう作者が,烏丸には不快でならない。語り手の友人が手土産に持ってきたオコゼ4匹を,唐揚げにしてビール,薄造りにしてポン酢と浅葱をそえて日本酒,さらに鍋になったところでようやく妻が座って晩餐に参加する……ここに描かれているのは,まるで男に尽くす召し使いのような主婦の姿であり,そんな姿を無条件にほめちぎる加納朋子もどうかしているのではないか。
 妻は夫の母親ではない。

 と,日記には書いておこう。

先頭 表紙

もちろん,亜・推理小説といえば泡坂妻夫『亜愛一郎の狼狽』。 / これまたベタ 烏丸 ( 2000-12-01 18:03 )
セミ・ミステリといえば、やはり北村薫『夜の…』 / ベタですんまそん(©おさる) ( 2000-12-01 17:55 )
たら子母さま,烏丸は男尊女卑な本やエロい本も喜んで読みはしますが,この本や加納朋子の解説が嫌なのはそういう点について全く無自覚なことです。わかった上で夫婦の役割分担するのは別によいと思うのですが,どうも芦原すなおは「女は家にすっこもっているものだ」みたいな考え方をかけらも疑ってないようで,それが神経にさわるのです。 / 烏丸 ( 2000-11-30 19:32 )
おっしゃる通りですわ。「青春デンデケデケデケ」買ったけど、たぶん1回通して読んですぐ古本屋に売りました。 / プンプン妻 ( 2000-11-30 18:48 )

2000-11-29 作家が選んだ第2位 『サム・ホーソーンの事件簿I』 エドワード・D・ホック / 東京創元社(創元推理文庫)


【古き良き時代の犯罪】

 腰巻きの「IN★POCKET 文庫翻訳ミステリーベスト10 作家が選んだ第2位 不可能犯罪愛好家必読!」の惹句も目に鮮やかな,エドワード・D・ホック(1930〜)の短編集。今年5月の発行。

 映画化を意識してか単にウケの問題か,昨今の欧米ミステリといえばサスペンス&長編が主流。そんな中,ホックは現役では非常に珍しい短編のスペシャリスト,しかも不可能犯罪パズラーが得意という,本格ファンには得がたい作家である。
 サム・ホーソーンシリーズは禁酒法のさなかの1922年を端緒に,医師が,自らかかわった事件を現在から振り返って語るという体裁のもの。舞台はアメリカ,ニューイングランドの田舎町ノースモント。『事件簿I』には初期のサム・ホーソーンもの12編と短編「長い墜落」が収録されているが,いずれもトリッキーな不可能犯罪が描かれている。

 たとえばシリーズ第1作の「有蓋橋の謎」(1974年発表)では,雪の降り積もった道を2台の馬車が走り,後からきた2台目の馬車が有蓋橋の入り口に到着してみると,轍の跡は残っているのに1台目の馬車が橋の中にいない,出口のほうにも出た形跡がない。馬車を操っていた若者は離れた場所で死体で発見される。
 続く「水車小屋の謎」では,水車小屋に住みついた男がボストンに宛てて送った頑丈な手提げ金庫から膨大な本や書類が消失し,男は水車小屋の火事跡から頭を殴られた死体として発見される。
 「投票ブースの謎」はさらにすごい。選挙当日の衆人環視の中,3方を堅い木で囲まれ,入口がカーテンで仕切られた投票ブースの中で立候補者の1人が刺され,死んでしまう。はたして殺害方法は。また,凶器はどこに。
 ノンシリーズの「長い墜落」では,会社社長が21階の窓ガラスを割って飛び降りたのに,地上では誰も落ちてきた気配がなく,途中に引っかかるような場所もない。そして4時間後,そこに墜落死した社長が発見される。短編ながら,張り巡らされた伏線が見事。

 そのほか,ブランコに乗っていて先生がちょっと目を離したすきに誘拐されてしまった少年,「エルフ」と書き残して密室で殺されていた車掌,行き止まりの廊下から消え去った覆面強盗,観衆の目前で閉じられ埋められたタイムカプセルの中に転がっていた死体,パラシュートで降下中に絞殺されたスタントマン……。

 いずれもなかなか魅力的な不可能犯罪であり,ホーソーン医師による謎解きも面白い。もちろん,指紋や解剖といった科学捜査の発達していない1920年代だからまかり通る,という話もあるし,無理押しな謎解きもなくはない。しかし,全体的にはホームズ譚を読むような,ノスタルジックで手応え豊かな時間を過ごすことができる。
 サム・ホーソーンシリーズはすでに59話まで書かれているそうで,『事件簿II』以降の発売が待たれるところである。

 ところで,「作家が選んだ第2位」とあるからには「第1位」もあるはずだ。しかし,創元推理文庫の棚を探しても見当たらない。考えてみれば当然で,「IN★POCKET」は講談社の小冊子,ベスト10は東京創元社の文庫に限定されるわけではない。
 調べたところ,2000年文庫翻訳ミステリの第1位は「読者が選んだ」「作家が選んだ」ともにトマス・ハリスの『ハンニバル』(新潮文庫)であった。なるほど。

先頭 表紙


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